山口探訪記(2019.9.21~9.23)
三才さんを訪ねて

【9月21日】
山口の三才さん訪問ツアーをぶちあげたのが4月。山口県の西をぐるり一周する突貫ツアー、宮ちゃんと行ってきました。
台風17号が九州に接近する日の夕方、西にむかって飛ぶ飛行機に乗る。眼下は厚い雲に覆われていた。山口宇部空港に迎えに来てくれた三才さん。7月末に店で会っているから、それほどの久しぶり感でもない。なつかしの三才号に乗ってスーパーで酒や弁当、つまみの買出しをして、ご自宅へ。台風のきまぐれな雨は降りはじめていた。
お宅はご両親が亡くなられて十年以上、住まいとしては使っていなかったそうだが、家具調度品もそろっていて、部屋数もある立派な家。これなら地元に帰りたくなるわ、と思う。

エビ、カニ、天ぷら、果物など用意してくれた肴もあってさっそく家飲み。
すっかりくつろいだ宮ちゃんは「親戚の家に来ているみたいですよ!」と。

【9月22日】
山口県の西海岸をめぐるピンポイント探訪ドライブに出発。天気は小雨・曇り。
まずは湾岸の工業地帯へ。見渡す限り宇部興産の工場群がつづく。壮観!

一般道につけられた踏切は宇部興産専用道路のものだった。40t積みの連結トレーラーが走りぬけていく。
専用道路で巨大な橋まで作ってしまうのだから、おそるべしと言わざるをえない。

山陽自動車道を駆って長府へ。

【巧山寺】
幕末維新前夜、長州藩の主流日和見派と対立した高杉晋作たちがここに集結、挙兵した。巧山寺挙兵。これによって藩は倒幕へと向かい、ブルジョア革命たる明治維新の歴史的一ページをきざんだ場所だ。

周辺は武家屋敷の残った塀が立ち並んで趣がある。
そばの博物館で、使い道のない高杉晋作の缶バッジなど買ってよろこぶ!

宇部を出て西進する道すがら、民家の屋根瓦にシャチホコが乗っているのが目についた。大きな家の屋根にはこれがついている。火除けのまじないらしい。


【下関・赤間神宮】
平家終焉の地で、来てみたいところだった。
壇ノ浦で幼い命を絶った安徳帝を祀っている。もともとは寺で太平洋戦争で焼失した。「波の下にも都はあります」という二位の尼の言葉にちなんで、竜宮城をイメージする派手な社殿にして再建された。
本殿の手前脇にひっそりと立ち並ぶ平家一門の墓とは一対一億の比だ。

「ひとえに春の夜の夢の如し」を絵に描いたよう。平家物語の知盛も教経も勇猛だった。だらしないと言われる宗盛だって立派なものだ。南都のあばれ坊主三千人を丸焼きにした重衡がいい!
旧遊廓のあった丸山町や下関新地を歩いてみたかったが、そんなてくてく歩きの旅ではない。あきらめる。

「混んでるから、どこかささっと食べられるところにしようよ」
「とにかく入ってみましょうよ。だめだったら出ればいいじゃないですか」
昼食は唐戸市場で、という宮ちゃんの意見におされて市場内へ。
雨風ともに強くなってきた。海峡の対岸は霞みはじめ、ついさっきまで通過していた大型船も小型船もいつの間にか姿を消している。
うまい刺身で腹ごしらえして、山陰本線に沿って北上する。

ここから先は三才さんにチョイスしてもらった名所めぐり。
単線、ディーゼル、二両編成の山陰本線の気動車と並んで走る。

【角島(つのしま)】
通行止めかと危ぶんでいた角島大橋は通れた。

台風が近づいているため観光客はいない。島の海岸線にはいくつも漁港があって小型の漁船が係留してある。どの船も電球を張っている。烏賊つり漁の船だろうか、底引き漁の船だろうか。この漁港のたたずまいがいい。大橋なんかよりこの光景のほうがよほど気に入った。

【青海島(おおみしま)】
宿に入るまえに、先崎湾を形づくる青海島に渡った。海上に奇岩が聳えているのを遊覧船で見物するのが定番らしいが、台風で欠航。島の東を車で回った。この島も、角島と同じく湾の内側には漁港がつぎつぎにあらわれる。先崎の港も漁船だらけ。漁もなく人っ子ひとりいないが、この漁港の景色に圧倒される。

すばらしく豊かな海と漁場があるのだろう。すっかりこの地に魅せられている自分に気づく。
宿についてから大風が吹きはじめた。外へは出られない。道路を隔てたさきは港だ。

夕飯はうまかったが、飯にはあまり関心がない。近辺に居酒屋もない。開いているのはコンビニ一軒。ひたすら部屋飲みするしかない。

【9月23日】
早起き散歩。まだ雨も風もある。
先崎駅に向かって歩くと、追い越していった娘さんが「おはようございます」という。まわりをみても誰もいない。同じ言葉を返したが、あとで三才さんに聞くと「こっちでは朝は知らぬ人にもそういう挨拶をするんですよ」。習慣らしい。

朝食。腹いっぱいになったが何を食べたか忘れた。晩と朝、まともな食事で栄養はとれたろう。食いすぎて腹具合が悪くなることのほうが心配だった。
金子みすず記念館はパスしたので時間の余裕ができて、青海島の西半分を探検。
島にも田んぼがある。いわれてみればそうとわかる棚田だ。
山のなかにも道路が通っていて、こんな道路を島民が使う必要あるのかと思わせる。昨夜の大風であちこちに倒木が散乱していた。それをどけたり蹴散らしたりしながら車は走る。風も雨もおさまっていた。

萩へ。
【松陰神社】
松下村塾の小屋も、松陰幽閉の間も実物を見ることができて感慨深い。
【萩城址】
駐車場から荒削りの勇壮な石垣の間を抜ける。

海に近い二の丸東門跡の石垣がすばらしい打込みはぎだった。

こんな丁寧な打込みはぎはそうは見られない。後世の手が入っているのかもしれない。

この城址の周辺も武家屋敷あとの土塀がめぐらされて、おちついた雰囲気に囲まれている。
萩城後ろの指月山には城の石垣を切り出した石切り場跡が残されているそうで、ここも行ってみたかったが、車ではいかれない。

【秋芳洞】
秋吉台のカルスト台地を走り抜けて、秋芳洞へ。
鍾乳洞に凝っていた中学・高校時代があって、それで開拓団でも探検部などと称していまでも洞窟探検遊びから抜けられない。
鍾乳洞もぐりに連れていった妹は、のちに日大探検部に入って洞窟探検エキスパートになり、マッキンリーに行く山女になってしまった。

予想以上に壮大な洞窟だった。
昼を食べたみやげ物屋のおばちゃんが「日本一ですよ!」と言い放つものわかる。
地面から突き出している石灰岩の脇にかけらが…
拾ってきました。鉱物標本第一号採集。

【山口市内】
瑠璃光寺、旧山口県庁舎をまわって、宇部空港へ。
前便まで遅れがでていたが、搭乗便は定刻の出発になっていた。
すっかりお世話になった三才さん、ありがとうございます。

雲もとぎれて、眼下には街の灯りがみえる。
てんこもりの西山口の旅。楽しかった! こんどはひとところに滞在して、ゆっくり過ごしたいなとも思ったり…。