お手本
部員o

朝7時半に朝飯。こんな早い時間に飯を食うことはまずない。ザックに握り飯をつめて出発だった。
食えばトコロテン式にでるものがでるので、危険を感じていたがやむをえない。団体行動である!

最初の藪こぎ、それも最難関が待っている。意を決して山にとりつく。
が、やはりきた! 緊張しているからではない。体は自然の摂理にしたがう。
隊列の下には斜面を四つんばいでよじ登ってくる同志たちがいる。距離をあけよう! ハイピッチで斜面を登り、脇にそれて「場」を物色した。すばやい行動が要求される。

30センチほどの木の根元がウロになっていた。ここだ。即断即決できる己に自己満足をおぼえながらスボンのベルトを解いた。こんな急斜面でキジを狙うのははじめてだ。いつもなら瞬間芸で済むのに、ブツが渋滞した。
無駄な時間は使えないので、構えながらもカメラバッグからティッシュを取り出すという早ワザもやってのけた。

しかし、下から登ってくる同志が、我が輩のコースをたどってくる。
おいおいこっちへくるなよ!
やっと私のスーパーパフォーマンスに気づいた同志たちが動揺した。わずか下まで接近していた。
すんなり出ていかない渋滞ヤロウをリキ入れて追い出す。
土もかけずにその場を立ち去るという犬にも劣る所行を恥たが、これもやむをえない。すなわち藪である。

うしろを振り向くと、同志たちがあの木のウロの脇を這い登ってくる。
見てはいけないものを見てしまったうれしさに顔がほころんでいる。
しかし、そこを這いまわってはいけない!
ベルトを締めなおした我が輩はすでに余裕で、後続に声をかけた。
「あっ。そこ気をつけてね~」