夏休み開拓団
釣り記録(mai)

2日目。
朝5時に起床した。
隣ではヤッシーがモゾモゾと身支度をしている最中だった。
そっとついたてをずらして部屋を見渡すと、柱にもたれかかって、音さんが酒を飲んでいる。
どうやら既に起きているのはこの二人だけらしい。
ごろんごろんと寝転がっている人々の間を、抜き足差し足で通り抜け、私はそっと朝風呂。

cパパのアイディアで朝食は船上でとるという事になった。
黒い袋に鍋・米・コンロを入れて、それから
「水よーし。ビールよーし。」
指差し確認。いざ出発。

メンバーは、cさん・cパパ・焚火さん・勝ちゃん・電気さん・宮ちゃん、そして私の計7名。

港に到着。宮ちゃんがみんなにライフジャケットを配ってくれた。船長はcパパ。

ドドドドド・・・とエンジンが音を立て、7人を乗せたボートが丸い海の中を前進する。
前方に座っている勝ちゃんの肩や背中に、水しぶきが降り注ぐ。

最初の釣地点に到着。
釣竿を落とすと直ぐにビビビときたので、引き上げようとするが「?」空回りするばかりで、うまくいかない。
勝ちゃんに「なんだかオカシイみたい」と見てもらったら、釣り糸のつけ方が間違っていた。
自業自得。手でくるくると手繰り寄せること5分、ようやく天秤が姿を現わす。
そうしたらびっくり。赤くて小さな魚が2尾、ひらひらお伴してきていた。
想定外の長旅にうんざりした様子で、口をパクパクさせながら私をにらみ
「へったくそー。なにやってんだー。ばかー。」と苦情を言ってる。
「ごめん」と平謝りしつつ、針を外そうと胴体を抑えたら「きゅっ」と鳴いた。海女の笛みたいに切ない音色だなと思った。

焚火さんに釣り糸をつけなおしてもらって、よーし、これで間違いない。ところが今度は魚がいなくなった。

貰った地図と魚群探知機の合図を頼りに場所を移動しながら、場所を転々とする。
その間、やんごとなき事情につき、宮ちゃんとcさんは途中で下船。空を覆いつくしていた雲も、すこしずつ離れ離れになっていく。

cパパが、水と醤油を目分量で入れて、米をたいている。
「具材が何もない。かめの手でもとってくれば良かったな。」

炊き上がった醤油ご飯を、鍋から直接手づかみで食べてみる。
ううう、めちゃウマイ、醤油だけなのに、ちょーウマイ!

そのとき、勝ちゃんが小さな蛸を吊り上げた。
蛸「やられたー!」と、8本の手足をクネクネと動かして、小さな吸盤であちこちに吸い付いている。
cパパ「そいつを入れよう」そう言って、蛸をそのまま飯の上に投げ入れた。

蛸。窮地に追い込まれる。
「熱い~。醤油クサイ~。」
飯の上でクネクネと、濡れ手で粟、じゃなくて手足に米粒、くっつけて悶絶している。
そこをcパパに一旦救出され、海水でザバザバ洗われて、あー助かったかと胸を撫で下ろしたのもつかの間。
そのまま船の上でトントントンと細切れにされ再び飯の上。


そうして出来上がったタコ飯、私も今度はきっちり紙皿によそって配布、ちゃんと箸でみんなで有難く食べた。
蛸は海の塩味がして、奇妙に爽やかで、本当に美味しかった。

腹が膨れ、満たされた一行は釣りを再開。
何かしら釣果をあげたくて、夢中になっていたが、途中である異変に気づいた。
やばい。ものすごい暑さだ。気づけば空も海も太陽でぎんぎらぎん、私も背中にびっしょり汗をかいている。
飲みかけのビールも、あっという間にぬるくなり、釣り部の士気にも緩みが出始めた。
イソメも、ぐったり、やる気低下。

そんなわけで、ここだけの話だけど、船長ごっこをして遊んだ。でも、詳しいことは言えない。

みんなが待っているのだからと、なにか大物を持ち帰りたかったのだけれど、結局そのあと私が釣ったのは、黄色い顎髭が自慢の小さい「オジサン」1尾だけ。
勝ちゃんは蛸とり名人で、ひきつづき蛸を釣っていた。
電気さんはボートの一番後ろに陣取り、今回一番の大物を釣り上げた。ヒイラギ。ピンク色と濃い黄色の鮮やかな平べったい魚。
焚火さんは流石の腕前、なにやらヒョイヒョイ生簀に放り込んでいた。たくさん取れたキタマクラは食べると僕らが北枕になるからと海にリリース。cパパはスレンダーで別嬪なアナゴを釣り上げた。帰って焚火さんに捌いてもらったら、子持ちだった。ぶつ切りにして塩焼きで食べたら、これまた絶品だった。

期待したほどの釣果はなかったけれど、それでもとても楽しい時間を過ごすことが出来た。
船を借りるという企画を許可してくれた隊長と団長にこの場を借りてお礼したい。
それから、私たちが持ち帰ったまま玄関に放置していたタコ飯の鍋を洗ってくれた音さんに感謝。
本当だったら、もっとスッゴイ大物を捕まえてみんなをビックリさせたかったけど、叶わず残念。でも本当に楽しかった。
皆さま、ありがとうございました!!!