あれはいつごろか。
tぽん(いわゆる「軍曹」)の「しゃれこうべ開拓団参加表明」は。
やがてワレワレは気づく事になる。
tぽんの口から溢れ出る、来たるべき彼の地「館山」に捧ぐ食いモノ譚!
それも熊にウサギにカンガルー、果てはワニのお手てや後ろあし。
店の扉を開けるや否や、やれ焼いてくれよう煮てやろうと、
目をキラキラさせ息つく暇なくまくしたてる食料計画。
弱いところを刺激され、食いしんぼうの私は赤ら顔にて狂喜乱舞、
バシバシ尻尾を振るもんだから、危険を察知した音治郎(当店マスター)、
なんとtぽんを料理係から外してしまった!!!!
アァ!モン・デュー!!
でもね。それはそれ。これはこれ。
一歩現地に足踏み入れたらもう最後、
事前に与えられた役割分担など関係ない。
おのがじしの得意分野にて、せいぜいのびのび活躍すべし。
ということで準備万端tぽんは現れた。
「ジンギスカン2キロ、ふぐ1キロ」それから「鹿肉馬肉」を持参して!
空まだ青いろ。コンロ前にはtぽん。
「にひひ」と笑いながら、いつものポーズにてグツグツと、鹿肉煮ているその隣には、
えー、恐れ多くも不肖なるこのわたくし、
内に秘めたるガルガンチュワの炎ふたたび灯し、
謹んで「にひひ」笑いを堪え、
缶ビール片手に鍋覗き込む。
どろんとした汁がボコボコ沸いてる。
仲間は外で汗流し、清き労働に身をやつしているというのに。
こんなに熱心に覗きこんだなら、ついには鍋底に我が目玉2個、
つるんと落っことし、ジュッっと溶けても言い逃れはできまい。
このまま行けばいつの日か「キョンの丸焼き」も夢ではなかろう。
そんな不埒な考えに、
またも「にひひ」が鍋にこぼれそうになる。
― おっとっと。
東の親方tぽんに対し、こちらも初参加、西の親方kさん。
10代の頃からアウトドアに慣れ親しんできた彼は「海と山の友だち」
茫々生えてる竹を使い、あれもこれも、ちゃっちゃと作る。
海に遊びにいこうとなれば、ひょいと釣竿出してきて、
ほんの数分にてフグの2尾を釣り上げる。
砂まみれになったフグ「こんなばずじゃなかった」と、怒った顔で私を睨む。
(因みにフグは再び大海原に帰ることを許された。)
(ぽーんと、風船みたいに投げ飛ばされて。)
kさんの数ある便利グッズ中でも、特筆すべきは自作の即席燗仕込水筒。
「外出先、ふいに燗酒ほんの一杯飲みたくなっても大丈夫、これがあれば直ちに叶えます」
そのからくりを目にした我々、「特許とってボロ儲け!」と大騒ぎしたのだが、
当の本人はどこ吹く風「単なる酒好きの遊びですから。頼まれれば廉価でお作りします。」
だが、酔狂人風の無欲さとは裏腹に、細部までこだわり抜かれた水筒のツラには書いてある
尋常ならざる酒へのこだわり、玄人好みの執念と愛。
「まいちゃん、日本酒飲むときは『やわらぎみず』を忘れずにね」
「ぶー。せっかく酒飲んでるのに『みず』をさすなど」
「そうすれば歯を磨いたまま寝るなんて事はしないで済むからね」
「・・・。(まさに返す言葉もない)」
という訳で、食道楽と酒道楽の達人加わり、楽しみ方さらに色々。
としみつさんと山鳥人がキッチンスペースに棚を二つこしらえてくれたので
調理補助担当としてはかなり使い勝手が良くなり嬉しい。
マスターの排水溝との闘いは未だ継続中だし、
やっつけなければならない竹は未だたくさん、gさんが見つけては根っこを掘り起こしてくれてる。
そんな中、役立たずの私はあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
手持無沙汰でギーコギコと竹伐る間、空じゃトンビがぴーひょろろ
傍らで火にくべた枝がバチンと爆ぜ、家の中からはトンカチの音がリズムを刻む。
そんな日曜日、ギーコギコと鋸動かしながらわたくしは
時々、人生の事など考える。
最後に、私の記憶には多少の誇張と嘘が伴います。予めご了承ください。