5月19日・・・・mai
【館山の夜】編

館山開拓団の部屋飲みスタート。いぇい。
池田荘の男子部屋に二つ並んだ大きな机、スーパーで購入したお惣菜、
さっちゃんお手製料理、昼間のbbqの残りの秋刀魚丸干し等で埋め尽くされてる。
音さんはワイン、cさんは黒マッコリ、他のみんなはビールや焼酎、菅野さんがくれた日本酒など。昼の労働の疲れも気持ち良い。みんな湯上り、スッキリした顔、私もすっぴんで、ひと回り小さくなった目をウロウロさせ迷い箸。
湯上りさっちゃんからホカホカと良い匂い。

チーハンって知ってる?チーズはんぺんの略で、cさんによれば、千葉と栃木では定番のフライらしい。

何はともあれ、最初はやっぱりビールなのです、ああ黄金色の贈り物、魔法の水分。旅館の浴衣姿の男性陣がいなせで良いね。
菅野さんの美味しい日本酒を堪能しながらビール飲んで、そろそろ焼酎飲もうかなという時になって、cさんが「ブルームーンへ行く」とおっしゃるではないか!
待ってました、わたくしもお供します。昨日3時まで店やってグロッキーだったはずの音さんも、ノリノリで参加表明。「あんたらも良うやるねぇ」と半ば呆れ顔の皆に別れを告げていざ出陣、夜の館山へ、22時。
旅館の表玄関を開けて通りに出れば、しんと静かな真っ暗闇、iphone手にしたcさんが空を指指し、
「あの、ボンヤリと明るい所がソコです」
成る程、星も見えない真っ暗な夜は、飲み屋の明かりが空を照らすのだなぁ。
蛙の大合唱を聴き、川の底で暗く光る魚の腹を三人で覗き込み、何度か車に追い越されながら歩くこと20分、
突如として現れたる繁華街イン館山!はじめましてこんばんは!

広々とした通りの左右に巨大な豆腐みたいに素っ気ない建物が、色とりどりのネオンをまとって、ずらりとひしめく、ここはハノイか沖縄か。

あっちの店からもこっちの店からも、飽くことを知らぬ酔っ払いの歌声が聞こえてくる。
黒くて小さなドレスの女がいそいそと路地裏に消えていく。
まだ若そうな男たち、千鳥足で肩をゆらして、いきがって吠えている。
ムッと立ち込める生気、
山と海に囲まれた地に生産されは消えていく情や欲の懐かしい匂い。

霞んだ港に浮かんでいた小さな漁船
チェーンスモーク煙り越しにヤマドリさんの二重まぶた
岩間に溜まった海水をペロッと舐めて顔をしかめるオニオンさん
ゴッホが描く農民に似た音さんの背中の実直
焼けた炭をスコップですくう無精髭の三才隊長
クワさんの胸元にひょっこり顔を出す自慢の胸毛のちりちりと、いかしたサングラス
しゃがみこんで網の上の魚や肉のやけ具合を確かめるさっちゃんの柔らかな仕草
運転席のcさんの襟足とtシャツのオレンジ色
わたくし、それらを全て見ました。
もしも明日地球が滅びるならば、旋回を始める走馬灯の、最初のスクリーンに映し出されるのは、
わたしが目撃したあれらの昼間の風景と、今こうして身を置いている夜の繁華な館山が、薄く淡く溶け合う一時であるに違いなく
仮に最初の一頁目が、そんな甘美に立ち現れるならば、これはいかんともしがたい。
空想は尽きないよ、めくるめくよ。

だけど招かれるまま、中心街を通り過ぎ、少近代的な館山駅までやってきた。
がらんどうの駅前ロータリー。
そしてふと振り返ると青い明かりで看板に記されている、縦書きで。
ブルームーン。
そして本編。
音さんのブログへ続く。(日報→5月19日~20日)