【その66】

 栃木県アカザ市        音

アカザ栽培一年目。
雑草だからと高をくくっていたのが大間違いで、どうにも思うように育ってくれない。
栃木にいる友人にそんなことをぼやくと「うちの周りには1mを越したアカザがいくらでも生えている。みんな刈っちゃうよ」と言うので、ちょっと待ったとストップをかけて、大きなやつを残しておいてもらうことにした。

あれから一ヵ月たった本日、彼のいる栃木県小山を訪ねた。アカザや如何にと。

小山から水戸線にのりかえて三つめの東結城駅で降りる。
電車は一時間に一、二本の無人駅だ。

踏切を渡って北へ向かって歩きだすと、いきなり目に飛びこんできたのが道路に生えているアカザ。

吉兆。さいさきの良さに足どりが軽くなる。
曹洞宗の乗國寺という大きな寺があって、のどかに線香の香りが漂う。
めずらしい火の見櫓があった。

ひっそりしたたたずまいの「結城市伝統工芸館」を偶然みつけて入ってみた。結城といえば結城紬(ゆうきつむぎ)。
ちょっとのぞくつもりだったのだが、これがそんじょそこらの工芸館とは大違いの素晴らしさ。
私のほかに入館者は誰もいなかったが、案内をしてくれた女性が懇切丁寧に説明をしてくれる。ここは糸つむぎや地機織の研修施設で、はた織りの実演を見せて体験もさせてもらえるとのこと。
筒状に広げた真綿を触らせてもらったが、なんとも言えない心地よさ。
地機(じばた)が10台ほど置いてある。さすが結城だ。

織りあげた作品もいくつかあったが、「もっと見たければ、街のショップにいけば沢山見られますから」と…。
今回は目的が違うからそこそこに退館したが、次はここ目当てに行きたいくらいだ。


南南東に見えるのは筑波山。

道端のそこかしこにアカザが生えている。

やっと友人の所にたどりついて、ひと息。冷たい麦茶を出してもらって生き返った。
彼は犬の訓練士。まずシェパードを見せてもらった。
犬舎から連れてきてくれたのは三歳半のオス。


犬のなかの犬だね!

「アカザ見に、こっちまで来るって言うから、あちこち探しといたよ」
という彼に連れられて、近所の畑のまわりを歩き回り、よさげなのがいくつも見つかった。
野生に放置してあるものなので、曲がったり、倒れたりしているものも多々ある。休耕の荒れ畑にあるものは、除草剤にやられて太いのが惜しくもしなびている。残念感もたっぷり。

「置いといても、刈られるか除草剤を撒かれたりするから、掘るか」と大小三本を引っこ抜いた。シャベルも枝切りバサミも彼が用意して手伝ってくれた。

帰りは小山の駅まで車で送ってくれた。
途中、「群生地があるんだ」と車を止めた場所が…、すごい!

よだれが出そうなくらいに大きなアカザがわんさか。
秋の台風になぎ倒されないことを祈る。
台風直撃情報がでたら、臨時出動せねばならない!
掘った三本をたばねて電車に乗って、しゃれこうべに帰還。

これで最低1本は杖を作ることができる。

「春の小川アカザ本舗」は栃木が聖地になるかな、、、