【その49】

mai日誌     mai   

【2月24日】
長野のみーさんが珍しく長居していってくれた。小学生の頃は学校の授業で半日いなご捕りをしたそうだ。それから、当時は鼠の害が深刻だった為、捕まえた鼠の尻尾を映画館に持っていくと尻尾1本につき映画1本観れたとの事。花粉症発症したそうで、鼻の頭を抑えながら、しかし饒舌。雪の話やトイレの話。同郷の剣喜さんとも話が弾む。
みーさん同様ご近所赤提灯から流れてきたナカちゃん寺さん、すーさんも、ほっぺたを桃色に染めて賑やか。寺さんトリオとの念願の東十条呑み屋巡り、やっと約束にこぎつけたすーさんはいよいよご機嫌。
三蔵法師さんから穴子の山椒煮の差入れ。禁断の味で、一気に日本酒になだれ込みそうになりましたが、皆さん自制心を働かせて、ドロドロ飲みに足を踏み入れることなく割と早めのご帰宅。
最後は上機嫌のDTさんトリオ&三蔵法師さん。DTさんが帰り際に私の背中にひしっとしがみついて、頬ずりめいた仕草。笑っていたら、音さんが一言。
あ、鼻水拭いてるよ!
えー!!
冗談だったらしいけど、どうだか。
でもまあ、DTさんの鼻水くらいだったら名誉の負傷みたいなもんだから、良しとしよう。ダメかしら?

【2月25日】
さやちゃん最終日、お客様殺到し、何らかの化学反応、終盤、所々で愛がだだ漏れた。老若男女が今この瞬間を愛おしみ杯を交わし、手を取り、あるいは肩を抱き合い「またね」と言葉を交わす。酒場ならではのこの光景。さやちゃん、ありがとうございました。素敵な笑顔としなやかな物腰に、我らどれだけ胸ときめいてドキドキさせられたことか。
偶然与えられた尊い日々の中、こんなふうに立ち寄れる場所があるって幸せだと改めて感じた。酒場の夜は実に多様で予想不能。美味い酒とそれほどでもない酒、美味いつまみと普通のつまみ、大好きな人と少し苦手な人。全て揃って初めて完璧。で、それら全部を飲み込んで、明日の私がこしらえられる。
いささか手前味噌が過ぎたかしら、閑話休題。
さやちゃんカウンターお終いでお嘆きの皆さま、大丈夫、この世の終わりではございません。これからはお客様として飲みにきてくれるとの事。次回はカウンター越しではなく隣にさやちゃん、特等席はお早めに。

【2月27日】
まずはご近所赤提灯からのお客様勢揃い。お初にお目にかかります、短い金髪の日本舞踊の女先生はスーさんとご一緒に。まろやかな目をした
シノさんは、寺さん中ちゃんのお仲間。やい爺いだの、馬鹿だのなんだと軽快に罵り合う様が見ていて気持ちいい。所詮はどんぐりの背比べと分かった上での遊びであって、私のような青二才にはなかなか難しい。罵り語の豊かさは言語総体の豊かさだ。話題はポンポン弾けてとどまらず。
そもそも日本は江戸時代より偽装社会であったのだ。四つ足動物禁止されてたから、猪を山鯨、馬を桜と呼ぶではないか。
みぞおち辺りを抑えて、うっかり不調を漏らした音さん、カウンターにずらり並んだご長寿集団にこてんぱんにやっつけられる。
ただの膨満感だ、元気な証拠。屁も実もあっちで出してこい。お前は実に頑健で、色白で、頭には毛まで生えてる。面白いから私も悪ノリ。そうそう、鼻の頭は濡れてるし、エラはピンク色、目やにもついてない!
話は代わり「マスクするのは何故?」三才さんの答えが傑作。マスクしないと鼻くそが硬くなる。硬くなってどうなるかというと、鼻くそとる時に毛が抜けて、血がダァーっと出るわけですよ!
それから骨粗鬆症からの流れで脳粗忽症の話など。人生が育む素晴らしいユーモアのセンスに拍手。
Cさんの類稀なる画才を私は常日頃大絶賛しているのだが、この日も似顔絵を描いて貰った。みんなでわいわい盛り上がる。DTさんは目がよく見えないためカメラで似顔絵を撮影していった。現像されたの見たら怒るかしら。でもよく似ている。私も描いて貰って嬉しかった。
最後は二階バーからのお客様がずらりご来店。私はDTさんと二人で豚足食べに行き、貪り食ってるところへ二人が合流し、それからDTさんと別れて四人組に合流し、そこへまたまた二人が合流して何がなんだか。いよいよ楽しくて帰りたくない。久々に始発電車を逃す。店を出れば空は刷毛ではいたような明るい灰色。タクシーの運転手とボソボソ四方山話をして帰宅。