【その30】 |
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句会のお題が「毛」だった。 難しいなぁ、勘弁してよね。 ところで陰毛ほど、ガーンとする毛はない。 大昔に読んだ短編で、主人公の浮気相手の女が「もう嫌になっちゃう」と陰毛の神出鬼没性に腹を立てていたのを思い出してからというものの、俳句作ろうとすると、陰毛の事を考えてしまう。 そんな事を考えながら仕事をしていると、検品中の本の間から、へなへなの縮れ毛が出て来たりするもんだから、驚かされる。 腹を立てるというよりは、遠い昔の、今となっては取り返しのつかない何物かがグッと目の前に立ち現れたかのような、やるせない気持ちになる。 抜け落ちた、見知らぬ人の陰毛に対面した時の悲哀というか、何かしらそのような物を句にしたかったが、力及ばす。 隠されていて、滑稽で、でもマジメで、馬鹿にされがちな陰毛の事を、誰か私のかわりに詠んであげてくれないかな。 |