その他みんなの言いたい放題 【その28】 mai
どうせ阿呆なら

仕事終えて書店を出るとき、スニーカーにオレンジ色の付箋がついているのに気付いたのだけど、歩いてるうちに取れるだろ、そのまま夜の錦糸町へ向った。
目当ては河内盆踊り。

この祭の事を聞いたのは三年前だ。とにかく凄いから行ってみなさいと、原始人っぽくて大好きなお兄さんが教えてくれた。だけど類は友を呼ぶで、私の友人なんて夜は酒飲むこと以外興味なさそうな輩ばかり、案の定誰も乗ってくれない。仕方ないので「酒飲むだけだから」と神保町の(今なお悪名高き)酒飲みだまくらかして錦糸町におびき出した。

盆踊り会場近くの「三四郎」にて、くりからなど食いながら、何気なく盆踊りの事を囁いてみる。
ところがジジイは自慢のへの字口をぴくりともさせずにグイグイ飲むばかり、俺はテコでもこのカウンターから動かねぇ。てな感じ。煮詰めたがんもみたいになっちゃったから、これじゃあお手上げ、諦めて、結局どろっどろになるまではしご酒した。
昨年はやんごとなき事情により機会を見送り、さあて今年。

何人かに打診するも暖簾に腕押し。ギリギリに辛くも一人確保!というわけで、心優しき師を連れて錦糸町へ。駅を降り、渋い小さな飲み屋や蛍光ピンクのデリヘル案内所や暗い無国籍料理屋立ち並ぶ通りを通過。道にそって赤い提灯がぶら下がり、なんともいえないごたまぜ感。
で、高架下到着。どっと人の群れ。思わず二の足を踏んでしまう程の群衆。恐る恐る中に入ると会場左右に連なる屋台を押しつぶさんばかりに広がる人の輪の中どいつもこいつも踊ってる。
若い姉ちゃんもヤンキー風の兄ちゃんも、子供抱えたお母さんも、もう30年以上参加してますよって感じの爺ちゃん婆ちゃんも、脂ののった中年オヤジもおばちゃんも。大きな外国人も小さな子供も。いない人はいないってくらい多様な人間が、煮えたつるつぼの中でぐるぐる踊ってる。
そして。人の群れの向こう、ずっと向こう。舞台があって、5〜6人の着物の人間がいて、太鼓叩いて歌うたってギターかきならしている。演奏に併せて踊る人々の手拍子、ちゃんちゃんちゃん!楽しそうなので私も加わってみたけれど、全く動きが分からず人にぶつかって謝るばかり。悲しい気持ちで5分で止めた。来年は踊り覚えて来ておどりたい。
それから三四郎スタートではしご酒。

翌朝、店を開けていると、せいこさんが「靴に付箋がついてるよ」と指差す。
えー、まだ付いてたの? 剥がした付箋を二人で覗き込み、ちょっと笑った。付箋にメモ書き「あいつに恋して」。森高千里さん出演映画のタイトルだ。