その他みんなの言いたい放題 【その18】mai
ベーコンについて。興奮を抑制しつつ言いたい放題。

家には捨てたいくらいあるライター。でも持っていくのをしょっちゅう忘れる。
ない、ない、ない。鞄逆さまにしてぶんぶん振ってもライターはない!そんな時は誰かに借りよう。

フランシス・ベーコン展を観て、国立近代美術館の喫煙所にて、ちょっと風変わりな雰囲気のおっさんに火を借りた。ベーコン話で花が咲く。舞踏関係の方だそうで、今回の展示にあったフォーサイスと土方巽の事など熱弁。ライター忘れるのもたまには良い。
会場には土方巽さんの舞踏の原稿があった。殴り書きなので判読困難な部分もあったが実に面白かったので幾つかメモを取った。
「犬、背中のモヤモヤ」「ぶれた犬の発展」「変な羊の発展、乾いた内臓、小さな足腰」(舞踏劇ベーコン初稿、制作年不明)「足の裏の水たまり」「こめかみから鳥がとぶ」(スクラップブック)

展示では土方さんの舞踏の映像も見ることができる。ちゃんと見るのは初めてだったので、一番前の真ん中に座ってスクリーンを凝視。風に揺れる草、水底を転がる小石のような動き。何かが(しいていうなら肉体の主人が?)するりと抜け落ちてしまっているような体。そこには非常に無垢な、身体としての身体が生きている。

ベーコンもまた、理由もなくここにいる「私」の極限の姿を切り取る人だと思う。その前を去り難くなるほどに、延々と対話出来る絵だ。画集で何度も観た絵でも、実際に観ると絵の具の厚みや筆使いの勢いが感じられて「あっ」と思ってしまう。ずっと憧れていた人の秘部を見てしまうような生々しい体験だ。ああ、好き。おうちに担いで帰りたい。それが叶わぬならば、パタパタパタと、心の毛穴にベーコンのピンク色を塗り込んでいくのみだ。

国立近代美術館、26日までやってます。