■MoonNightSymphony■
-番外-
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「大丈夫ですか?」
クシャミを繰り返すエドガーの顔を覗き込んで、ライムは気の毒そうに聞いてきた。
着の身着のままどころか、夜の情事の後だったので下着ひとつつけていない格好だった。
しかし、今更宿にとって返すこともできず、仕方なくライムの厚意にすがる形となった。
ライムは深夜であるにもかかわらず、どこから失敬してきたものか、エドガーに合わせた旅人の服を用意してきた。
この時点で既にエドガーはライムに頭が上がらない事となってしまった。
「あの魔物は何なんですか?」
辛うじて夜露をしのげる町外れの廃屋に入って、人心地付いてからライムは尋ねてきた。
妖精の羽はとうにしまわれ、ライムは人間の姿に戻っていた。エドガーにとってはこのライムの方こそ何者なのか疑問だった。
こうして人間に化けているところを見ると、仲間からはぐれたか、逃げ出したか。どちらにしても連れはいない様子だった。
「俺が退治してきた魔物の残党だ」
エドガーはライムをジロリと眺めやりながら答える。
「残党…? そんなに恨みを買うようなことをしてたんですか?」
「恨み…そうかもな」
エドガーはそう言って言葉を閉ざした。それ以上は何も語らないエドガーに諦めたようにライムは小さくため息をついた。
「じゃあ、もう休みますか。明日は次の町でゆっくり宿を取りましょう」
そう言って、ライムはごろりと横になる。エドガーもそれに習おうとして、ふと気づく。
「お前、付いて来る気か?」
そう言えば宿まで来ていたと言うことは、あそこまで勝手に付いて来ていたと言うことなのだ。追い返したつもりだったのに。
「だって、旅は道連れって言うじゃないですか」
ライムはもう一度起き上がり、エドガーを見上げてくる。
「それにオレがいなかったら貴方はあそこで死んでいましたよ。やっぱり役に立つと思いませんか?」
青い空を切り取ったような瞳が、笑ってそう言った。
-END-