結局、その夜遅くに寛也は帰ってきた。コンパではなくて、バイトだと翔に耳打ちしてきたが、杳には他の言い訳をしていた。何の為にバイトをしていたのか、杳に知られるのが嫌なのだろう。そんなもの、隠していたってバレバレだとは思ったが、意外と当の杳は気づいていないようだった。
寛也が、そのバイト代で買っただろう誕生日プレゼントを渡しているのを横目に見ながら、翔はそっと部屋を出た。
何をプレゼントしたのか、その形状から察せられた。
出掛けに見えた杳の横顔から、そうだと知った。
自分と、同じもの。
結局渡せなかったプレゼントは、多分、もう渡せない。小箱の中のアメジスト。
――今生だけは、完敗かな。
夜の舗道を踏み締めて、翔は竜玉を天へと掲げた。
−終−
このお話時間は、現在連載中の竜神伝U完結、勾玉編完結、そして第三部と続いた、更に1年後です。もう、パラレルと思っていただいた方が良いくらいの勢いで。この時点でこの三人が健在かどうかすら怪しいですから…(汗)
また、この時期、高校三年生は自由登校ではないかと…。そんなツッコミは無しでお願いします。