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 第43話 「島国の大リーグ中継」

  こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをうろついていると、いろんなお話が聞こえてきます。犬にとっては、染みつきそうなこともあるけれど。
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 おいら、野球のことはよく知らないのだけれど、プロ野球にはセ・リーグとパ・リーグがあって、それぞれに6球団ずつが所属して、毎年優勝争いをするそうです。そのほかにも、学生野球、社会人野球や地方のプロ野球リーグまであるそうです。

 そんな野球に、何年か前に新しいリーグができたんだよね。「だいリーグ」というのです。この「だいリーグ」、いくらかの人気者のほかには何人かの外国人選手しかいない、小さなリーグらしいんだ。おいらが人の家のテレビニュースをたまに見ると、いつも同じ選手の話ばかりしているから、間違いありません。

 今日のニュースでも、人気の「だいリーガー」の細かい情報を取り上げています。
「ダイスキ投手の登板、地元のファンも盛り上がりました! 試合開始○時間前に球場入り、ランニング後はフォームを調整しながら軽く投球練習。試合では7回を投げて8奪三振。毎回走者を出しながらも失点は2点に抑えました。次回は○日に先発予定です。」
 ダイスキ投手っておいらも聞いたことがあるよ。確か、パ・リーグで活躍していたよね。どうして小さな「だいリーグ」へ移ってしまったのかなあ?

 そういえば、やっぱり人気者だったホームランバッター・ごじら選手も少し前に「だいリーグ」に移ったのでした。
「ごじら選手、今日は4回打席に立ち、内容は三振・センター前ヒット・ピッチャーゴロ、ライト線を突く二塁打はタイムリーとなって打点は13となりました。打率は何厘上がって何割何分何厘。守備でも大活躍、難しいフライを見事に捕りました。」・・なんて、ごじら選手のいい話ばかりしているから、てっきり今日は彼のチームが勝ったのかと思ったら、14対2で負けたのだって。わかりにくいニュースだなあ。
 一試合終わるごとに、負けても活躍しなくても、ごじら選手はインタビューに丁寧に答えています。人気者は大変だね。きっと、他の「だいリーガー」は恥ずかしがり屋だったりしてお話がうまくできないから、ごじら選手が代表して答えているのだね。

 とにかく、おかしいなあ。ごじら選手やダイスキ投手のほかにも、にちろー選手やジョージ捕手、いかー投手、少し前まではセ・リーグやパ・リーグで活躍していたはずだよね。その人達が続々と「だいリーグ」に移ってしまうなんて、どういうこと?

 ある日、やっとわかりました。おいらがテレビを見せて貰っていたお家の人が、チャンネルを変えながら呆れたように言ったのです。
「まったく、また大リーグの話だ。一日に何度やるんだかね! それも日本人選手の話ばっかり。本当にアメリカの野球なのかしらって思っちゃうわ。」 

 えー!! 「だいリーグ」、いや「大リーグ」は地方の小さなリーグなんかではないのだって。海の向こうの大きな国・アメリカの野球リーグで、日本のプロ野球よりもすごく規模が大きくて、お給料も高くて、パワーもプレーも桁違いの人たちがいっぱい揃っているところなんだって。おいらが知っている選手たちは、レベルの高いところで自分を試したくて大リーグに移ったのだね。それなら納得するよ。

 どうして今まで、大リーグを「日本国内の小さなリーグ」だと勘違いしていたのかな?と、おいらが小さな犬の頭で考えてみると、どうやらニュースが変なのです。テレビが、日本人選手の話ばかりを流すせいなのです。日本のプロ野球よりも多くの時間を割いて、他のもっと大切なニュースよりも優先してね。ダイスキ投手が何日に登場するとか、日本人選手同士が対戦するということが、そんなに価値あるニュースなのかなあ?
 外国で活躍する自分の国の人たちの話題ばかり取り上げることを「島国根性」というそうです。選手達が「島国根性」なわけではないんだよ、ニュースを作る人たちが「島国根性」なんだよ。
 大リーグニュースを見ていると、本当に日本人選手ばかりで試合がまわっているかのようだね。外国人選手の名前は全然言わないもの。

 ・・あっ、おいら間違えちゃった! 大リーグでは、日本人選手の方が「外国人」なんだね! おいらまで「島国根性」が染みついてきちゃったのかなあ?
 わんわん。またね。

(2007.5月掲載)