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 第37話 「無所属なおいら」

  こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをうろついていると、いろんな人たちと出会います。犬にとっては、少し迷惑なこともあるけれど。
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 まださむいけれど、梅の花がきれいに咲いています。風が吹くと、お花のいいにおいがするんだよ。
 そんな中、今日は川ぺりで「犬猫里親会」が開かれています。「里親会」て、なんだか不思議な集まりです。車に乗った人が、柵に入れた犬や猫を何匹か連れてきます。初めて見たときおいら、こんな優しそうな人たちが犬や猫を捨てに来たの?て思ったよ。でもその逆で、他のところで捨てられた犬や猫を預かって、新しい飼い主を見つけるためにたくさんの人に見てもらうのです。

 おいらにとっては、やっぱり不思議だな。犬や猫は、飼い主がいる方が幸せってことらしいんだ。名前をつけてもらって、いつもおいしいご飯をもらえるということがね。そう信じている人が多いらしいよ。だから、おいらが里親会のボランティアさんにへたに近づくと、大変なことになるんだ。
 「あれ、このわんちゃん、この前もウロウロしていたわね?」
 「首輪、してないね。ずっとこの辺で暮らしているのかしら。」
  「ええ、この近所の方のお話によると、ホームレスの人からごはんをもらったり、ごみをあさったりしてるみたいです。性格はいいみたいですよ、めったに吠えないらしいし。」
・・なんて、噂されちゃうんだ。「おいらのことを話してるな」てわかると、逃げることにしています。ちょっぴり恥ずかしいし、「保護」されそうで少し怖いんだ。だって「保護する」ていうのは「つかまえる」てことなんだよ。

 里親会に来ている大人の犬や猫は、なかなか飼い主が決まらないみたいです。たいていは同じ柵に入れられたままでどこかに帰ってゆきます。なぜかというと、人間は「こいぬ」や「こねこ」が好きだからなんだって。
 狭いところに入れられて知らない人たちにジロジロ見られた上に、なかなか飼い主は決まらないなんて、「保護される」のも大変そうだなあ。どうして、おいらみたいに気ままにうろついていたらいけないのかなあ?

「アジアの他の国では、あんがい都会でも犬が自由にうろうろしているのにね。」
「いやあ、日本だって僕らが子どもの頃は、そこいら中に犬がうろうろしていたよ。」
「そうそう。野良犬も多かったが、飼い犬も割と自由だったよなあ。人間の子どもも、親の目のないところで好き勝手してた時代だったが。」
 そんなお話が聞こえてきました。
 ふうん、この国の人たちは、昔よりも管理するのが好きになったらしいです。犬や猫のこと子どものこと、全部がどこかに所属していることがね。選挙では「無所属」という看板をつけた人に人気があるのだけ、別みたいだけれど。
 わんわん。またね。

(2007.2月掲載)