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 第24話「これでいいのかな?」

こんにちは。おいらは、飼い主も家も名前もとくに決めていない犬であります。川ぺりをうろついていると、いろんな人たちと出会います。犬にとっては、あわててしまうこともあるけれど。
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 このごろ暑くて、なかなか眠れません。そういうとき、大きな電気屋さんの入り口の所に行くと、とっても涼しいんだ。お行儀よくすみっこに伏せていると、誰もおいらに「シッシッ!出て行け!」なんて言いません。「ご主人を待ってるの?偉いね」なんて言われたりしてね。今日も、そこでウトウトしてしまいました。

  おいらの寝ぼけた耳に、「今朝早く、花火を何発か打ち上げた」ていう話が聞こえてきました。
 変だな、いつも川ぺりでやる花火大会は朝じゃなくて夕方に始まるんだよ。だけど確かに誰かが「朝に打ち上げた」話をしていたみたいだったけれどなあ・・。秘密の花火大会だったのかな?

  ・・あ、花火じゃなくてミサイルだ! 電気屋さんの中にあるテレビのニュースで「今朝の早い時間に、ミサイルが何発か発射された」て言ったのです。おいら寝ぼけて、間違えてました。 

 ええっ!「ミサイル」ていうのは、仲の良くない国同士で戦うときに、相手の陣地に落として人をたくさん殺すものだよね? それじゃあ花火どころじゃないよ、落ちてきたら死んじゃうよ! みんな逃げるとか、「もうミサイル飛ばすな!」て言うとか、「そっちがそう来るならこっちだって!」て仕返しをするとか、とにかく何かしなくちゃ!
 あわてて電気屋さんを出たけれど、見渡す限り、あわてている人は一人もいません。街はいつもと変わらない様子です。散歩をする人たちも、高架を走る車や電車も、住宅街も学校も。

 おいらはそれから夜まで、あっちこっちうろついて、人が話すことやテレビやラジオから聞こえてくる話を聞きました。だけど、難しいことが多くて、よくわかりません。それにミサイルのことであわてているのはテレビやラジオの中の人ばかりで、川ぺりの人たちはあまり気にしていないみたいです。
 だからおいらも、だんだん自分には関係ないような気がしてきました。ミサイルは海に落ちて、怪我をした人も犬もいないみたいだしね。うーん、まあいいかな。おいら、これでいいのかな? わんわん。またね。

 

(2006.7月掲載)