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生活習慣病と歯周病(せいかつしゅうかんびょうとししゅうびょう)[Disease
Caused by Various Life Style]
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生活習慣病とは,食習慣,運動習慣,休養習慣,喫煙,飲酒などの生活習慣が,その発症・進行に関与する症候群のことをいう.従来これらは成人病と呼ばれていたが,成人期以降に生じる疾患の多くは生活習慣が関与する場合が多いことから,厚生省は1996年に,生活習慣病と名称を変更した経緯がある.すなわち疾患の発症は,加齢により起こるのでなく,毎日の不適切な生活習慣の積み重ねによるものであるとの考え方が根底にある.
歯周病もその1つとして定義されており,食習慣との関連では,軟らかい食物や蔗糖の摂取が歯面に対する細菌性プラークの形成を助長すること,また,野菜や果物を避ける偏食により,ビタミン摂取量が低下し,歯周組織の代謝が不調和となり,組織抵抗性が減弱することが考えられる.
さらに最近,喫煙と歯周病との関連がクローズアップされてきている.すなわち,タバコの煙のなかのニコチン,タール,一酸化炭素,シアン化物をはじめとする2,000を越える潜在的な有毒物質のいくつかが,肺や心臓と同様に,歯周組織にも悪影響を及ぼすことが知られている.
その影響には,煙のなかのタールが歯の表面に沈着し,それを介して歯やその周囲に汚れがたまりやすくなり,プラーク(歯垢)の付着が助長されること,ニコチンなどの作用により歯周組織,とくに歯肉上皮の免疫抵抗力が低下し,歯周病原菌などの侵入を許しやすくし,歯周病の発症,成立に関与することなどがあげられる.事実,ヘビースモーカーにおいて,重度歯周病の患者が多い傾向にあることも示されている.
また,喫煙者の創傷治癒能力が低下することも報告され,ニコチンなどが歯肉線維芽細胞や歯肉上皮細胞などの機能を低下させ,歯周治療後の創傷治癒を遅延させている可能性が指摘されている.よって喫煙は,歯周病の発症予防や歯周治療に対する正常な組織応答の獲得の面からも,不利な条件を歯周組織に提供しているものと考えられる.
このように生活習慣における食習慣,喫煙習慣の2点に対する配慮は,少なくとも今後の歯周病の予防,治療を考えるうえで不可欠なものであるといえる.