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切迫流産と切迫早産
「切迫」というのは文字通り「差し迫っている」という状態で、「流産しかかっている」「早産になりかかっている」という状態を表します。本当に流産や早産になってしまうのではなく、必要な処置によって回避されることが多いのですが、この状態になってしまう妊婦さんは意外と多く、これがまたストレスフルな状態なのです。
切迫の症状としては出血、子宮の収縮(お腹の張り)、子宮口が開く、子宮頚管が短くなる、といったものがあります。子宮の収縮というのは妊娠時には生理的な範囲で時々起こり、週数が進むにつれて多くなりますが、あまりに回数が多かったり規則的に収縮するのは早産になりかかっていると判断されます。規則的に子宮が収縮して、痛みを伴うのが「陣痛」ですから、これが臨月以外で起こってしまっては困るわけです。また、子宮口が開いたり子宮頚管が短くなるのも、普通は出産直前に起こることなので、あまり早い時期からそうなってしまってはいけないのです。子宮口の開きや子宮頚管の長さなどは自分では自覚できないので、健診の際に内診されていきなり判明することもあります。
「切迫流産」とは、妊娠21週までにこのような状態になってしまった場合を言い、妊娠22週以降では「切迫早産」になります。未熟児に対する医療もめざましく進歩し、現在のところは妊娠22週で早産してしまったケースから生存例がある、というところから分けられています(あまりいい話ではないですが、妊娠を中絶せざる得なくなった場合、法的に認められるのは21週までです)。しかし、いくら医療が進んでいるといっても、胎児の発育にとっては子宮内にいることが一番適しているわけですから、可能な限りは早産にならない妊娠37週以降まで妊娠を継続する方向に持っていきます(母体の状態や多胎妊娠の場合などその限りでないこともありますが)。
こうなってしまった時、まず必要なのは「安静」です。「自宅安静」と「入院安静」があります。安静と言われたら、食事、トイレ以外は寝ていなくてはいけません。しかし自宅にいると、ついつい家事が気になってしまい、そうもいかないことがあります。なにしろ、熱があるとか気分が悪くもないのにずっと寝ていなくてはいけない、ということもあるのですから。そして、自宅安静で症状が改善されなかったら入院となってしまいます。
切迫状態の場合、出血がある場合には止血剤が、子宮の収縮の場合は子宮収縮抑制剤を処方されます。自宅安静の場合は飲み薬となりますが、入院となった場合、子宮収縮抑制剤は点滴されることが多いです。代表的な薬剤名は「ウテメリン」といいますが、この薬を点滴することになると、24時間ずっと点滴の針を差したままになってしまうのです。24時間様子を見ながらひたすら差しつづけて、後は寝ているだけ。それも、状態が軽ければ点滴を差したまま洗面所やトイレに行くことができますが、より状態が重くなってしまうとベッドから離れることが全くできなくなり、トイレもポータブルをベッドのそばに置いてもらったり、歯磨きもベッドで済ませることになるのです。そして、点滴の針が24時間刺さっているわけですから、お風呂もシャワーもダメになります。その間は蒸しタオルで身体を拭くだけでがまんしなくてはいけないのです。シャンプーもできないので、2日か3日に1度洗髪してもらいます。いかにストレスのたまる毎日となってしまうか・・・想像がつくでしょう?
このような状態になってしまった場合、一時的なもので短い入院期間で改善する人もいれば、出産まで入院生活が続いてしまう場合もあります。私は16週で自宅安静と言われ、19週から23週にかけて入院していました。その後26週からは日常生活に戻れましたが、病院にはもう何ヶ月も入院されて出産までがんばっていらっしゃる方がいました。私自身、16週から23週といえば妊娠5,6ヶ月の「安定期」と言われる時期になるので、まさかこんなことになってしまうとは想像もしていませんでした。そして日常生活に戻れたとはいえ、マタニティースポーツなどはできなくなり、ウテメリンの飲み薬を臨月に入るまで服用していました。ウテメリンは副作用が強い薬で、動悸などが起こります。点滴されると心臓がバクバクといい、ペンを握ると手がブルブル震えてしまって字が書けなくなりました。
意外と多くの妊婦さんが経験するトラブルですが、私も自分が経験するまでは、「妊婦さんが大変なのは、初期のつわりの時期と生まれる直前くらいだろう」と思い込んでいました。「安定期」になれば遊びに行くのも大丈夫さ、って思っていたのです。でも実際には「安定期」がない妊婦さんもいるんだと片隅にでも心にとめておいてくだされば、と思います。
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