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つわりの対策法
女性が突然「うっ」を口元をおさえて洗面所か流し台に走って吐きそうになる。それを見た男性か周りの人が「もしかして…」といい、水を流しながら女性がはっと顔をあげる。ドラマで妊娠が発覚する時は、今も昔も変わらずだいたいこのシーンが起こります。
ここまで気付かないわけないでしょう?それに吐くのなら洗面所じゃなくてトイレに行ってくれ、と私は1人で突っ込みを入れていました。そしてドラマの中で女性の気分が悪くなるのはこの時だけ、後は普通にレストランで食事をしていたりするのです。
まあしかし、現実はそんなものではありません。
妊娠初期のトラブルの代表格であるつわりですが、あまりにも個人差が激しいことから、原因やメカニズムについては未だによく分かっていないそうです。重症なものは点滴などの医療的処置が必要となりますが、多くの場合はある時期が過ぎれば軽快することなどから、あまり真剣に研究されてこなかったのだと思われます。
私も妊娠発覚後、まず恐れたのは「いつごろから始まるんだろう。どれほど重症なんだろう」ということでした。これまでにもつわりが辛かったという周りの経験談を散々聞かされていたので恐怖におののき、早速「たまごクラブ」を購入して対策法について考えたものです。
あの日々が過ぎ去って思うのは、はっきり言って対策法はないということです。この時期は、ただ身体の要求のままに過ごすしかない、身体の方だって突然の変化に慣れていないのですから、辛いときに無理をしてもどうにもならないということでした。楽だった人はラッキーだったと思ってください。「気の持ちよう」でどうにかなるものでもないのです。
私の場合も、その日々はある日唐突に始まりました。妊娠6週に入った頃「なんだか気持ちが悪い」と自覚したのが全ての始まりでした。それから、私の本能は「食べる」ということを拒否し始めたのです。何を見ても「食べたい」と思えない。食べても全く「美味しい」と感じないのです。しかしあまりにも食べないでいると胃がキリキリしてくるので、何か食べるものを探すのですが、目が泳いでいる中を胃におさまりそうなものを探していました。
食べていないから当然体力も落ちていきます。このころまだ会社に勤めていましたが、帰ってくるころにはグッタリしているので、さらに食欲のなさに拍車がかかりました。夕食にはグレープフルーツのシロップをかけたかき氷を夫につくってもらいました(食べたのはそれだけ)。会社の昼食は社食も取り寄せのお弁当もパスになりました。歓送迎会も全て欠席。そんな中食べられたのは「梅干のおにぎり」「C1000タケダのようなレモンのジュース」「グレープフルーツ、りんごなどの果物」でした。そんなものを昼食時に食べていたので、妊娠を知っている同僚が「ホントにそうなるんだね〜」としみじみ言ったものです。
油を使った料理がまず食べられなくなりました。お菓子もダメです。チョコレートを拒絶したのには自分でもびっくりしました。そんな感じだったので、肌はかさかさ、唇もひび割れてしまいました。しかし別の友人はこの時期「ケンタッキーフライドチキン」や「コロッケ」にはまったと言います。食べないと具合が悪くなってしまい、食べ続けるパターンに陥る人もいました。本当に個人差が激しいものです。
また、つわりが明らかに「普通の胃腸炎など」と異なるのは、意外なものが吐き気を起こさせることです。料理番組を見ただけで吐いてしまう人もいます。私の場合は「下を向く」「濡れた髪の毛が首にひっつく」「浴室の湯気」「タートルネックのセーター」などがなぜか吐き気をそそりました。歯磨きも嫌いなものになりましたが、まだ勤めていたので風呂に入らない、歯も磨かないなんてできるわけありません。気分が少しでも良くなった時を見計らって決死隊のように浴室に向かい、ドアを開けてすばやくシャワーを浴びていました。髪の毛は首にまとわりつくとダメなので1つに縛りました。美容院もダメ(首にタオルなど巻かれたらアウト)だし、ファンデーションも肌にのらず、外見もどんどんひどくなり「やつれてるよ」とよく言われていました。
私の場合は実際に嘔吐することはありませんでした。吐き気はするが吐けない状態でした。でも体重はおもしろいようにどんどん落ちていきました。乳がんの手術の後、ホルモン療法で太ってしまった体重はあっという間に術前に戻りました。今まで何をやっても減らなかった、ヴァームを飲んでジム通いをしてもダメだったのに、妊娠8週頃には術前の体重に戻ってしまったのです。結局妊娠前より4kg減り、「あと1kg減ったら点滴」と言われたところで下げ止まりました。でも、ここで体重を減らしたことが後の体重管理にプラスにはたらいたのはラッキーでした。この時期に胎児がいることを実感する術は「吐き気」でしかないので、毎日気分が悪いことに安心している自分がいたのも確かでした。
いつまで続くんだろうと思われた日々も4ヶ月に入るころから「気分の悪くなるパターン」をつかむようになり、食べる物とタイミングがつかめるようになりました。実家に帰った時や外食などは不思議と食べられましたが、なぜか自分で台所に立つと料理が出来上がるころに気分が悪くなるので、しばらくキッチンは使いませんでした。そして、5ヶ月に入り「切迫流産」のどさくさにまぎれて、気がついたら食欲が完全に戻ってしまったのです。あっという間に術後に増えた体重をも上回ってしまいました。
今でも思います。「あの日々はいったい何だったんだろう」って。
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