夕去りの茶事

夕去りの茶事は秋を迎えるにふさわしい茶事です。
秋の夕方がやってきて去っていく、
夕去りの茶事は、そんなはかない一時を愛でる茶事です。

夜の花を嫌うため、通常は初座で花を入れます。
夕顔、カラスウリなど、出来ることなら夕方から咲く花を選びます。

中立ちの頃に露地に夕闇がやってくるように時間を塩梅します。
中立ちで再度迎え付けをして、手燭の交換などします。
後座は夜の茶事となります









2018年9月30日

社中の稽古事をしました。
この日は大型台風の通過予報でしたが、
台風の進路は不確定です。
社中の安全を考えると、実施すべきか否か、
直前まで自問自答しました。

前日打ち合わせの際、
水屋方は全員自分の担当の予習メモを持参していました。
勉強熱心で、頭が下がります。

茶事当日、日中は青空も見えましたので、
いったん片付けた露地道具を再び出しました。
4時の席入りでした。結局、席入りの時刻は雨。
露地を使用出来ませんので、
待合から直接茶室に席入りして頂きました。

夕去りの初座は陽の席です。
台風接近でお客様が不安にならないように
茶室の電燈を点けて、明るくして懐石をお出ししました。

中立から後座は和蝋燭を使用して幽玄の世界を作りました。
亭主の楚々としたお茶の姿も、半東の力量も、共に心強く、
普段の精進が発揮された茶事だったと思います。
水屋で耳を澄ませていましたが、
席中の客の動きもスムーズでした。

後座は続薄茶の予定でしたが、
帰路の足を考えて、さらに時間短縮を図り、
3客から詰までは薄茶を点て出しにしました。
反省会も予定していたのですが、取りやめにして、
雨が小降りの間にお帰り頂きました。

夕茜の168回目の茶事でした。
茶事が大好きで夢中で追いかけて後、
社中が出来て後進の育成にエネルギーが必要でしたから、
自身の茶事からは少し遠ざかりました。
今回水屋を担当して、
茶事でお客様をもてなす楽しさを再認識しました。

2016年9月28日

6月の大寄せの茶会にお越し下さったお客様から
ひとづてに茶事の所望がありました。
茶人冥利に尽きる嬉しい事です。
暑い盛りのお申し出でしたが、秋までお待ち頂き、
夕去りの茶事でお迎えしたいと思いました。

今回は料理人さんがいませんので、
社中の2名に半東を依頼しました。
とても頼りになる半東で大助かりでした。

茶事を始めてから四分の一世紀が経過しました。
以前は一人で料理も亭主もできたのですが、
最近は料理人に依頼する事が多くなりました。
そして、今回は半東もお願いするようになりました。
自分で出来ないところは手伝って頂いて、
技術をお伝えする、そんな段階になってきたと思います。

初座は花床です。
懐石、初炭、主菓子に続いて中立、
後入りの合図は鐘鉦です。
後座は続薄茶にして、
和蝋燭の元での茶事を主客で楽しみました。

数日後、皆様から御礼状を頂きましたが、
半東さんに労いの言葉を頂いた事が一番嬉しかったです。

NO、167


2015年1月31日

昨年の初夏、水郷の茶事にお招き頂きましたので、
その返礼の茶事を企画しました。
炉の時期ですが夕去り形式でお迎えする事にしました。
遠方からお越しくださいますので、席入り時刻を2時にしました。
この時間でしたら早朝の出立も遅すぎる帰宅も避けられると思いまして。

正客様は他流の男性です。
他流の方をお迎えするのも、男性のお客様も常より緊張します。

前席は花床です。
向掛けにした竹一重切花入れに蕗の薹と木蓮の蕾を入れました。

流儀は違ってもベテランのお客様ですから、
初炭では菊炭をお褒め頂き、
懐石道具類についても沢山のお尋ねがあって、
亭主冥利に尽きる2刻になりました。



2013年8月25日・27日

年に一度は社中全員での稽古茶事をするようにしています。
今年は夕去りの茶事にしました。
なるべく全員が御役が出来るようにと考えて今年はリレー方式にしました。
今まで、色々な都合で、お役をあまりしなかった方が今回の水屋担当です


初座は迎え付、主客挨拶、懐石、初炭です。
両日とも初座の亭主は自分の動きを纏めて来ました。
茶歴が生きているのだと思います。

席入りを5時にしました。
25日は曇天で、懐石の途中で席中が暗くなってしまいましたので、
急遽、膳燭を持ち出しました。

27日はゆるゆると懐石が進みましたので、
少し暗くなりましたが、手燭を貴人畳に置いて凌ぎました。
主客とも動作が練れていませんので、
席入り時刻を4時にすべきだったというのが私の反省点です。

後座は濃茶と薄茶の別分担です。
濃茶担当は再度の迎え付、手燭交換から重茶碗を。
小習い事は全て茶事に応用できますので、そんな勉強も兼ねて。

薄茶は新人の担当です。懐石のお運びも手伝って頂きました。
灯火の元での点前は初めての事だと思います。
最後の主客挨拶も堂々としていて、人間力を感じました。
良い経験を積み重ねて、良い御茶が身に付くよう願っています。

時々、席に入って、私も夕去りの雰囲気を楽しみました。
和の灯りの周囲に闇があって、
闇のお蔭で八畳の空間がかえって広がったような錯覚を覚えました。

来年も稽古茶事をします。それまでお互いに、精進致しましょう。



2006年9月23日

稽古場で社中の稽古茶事をしました。
夕方5時の席入りです。
秋分とはいえ露地はまだ十分に明るく、
外腰掛けには吹く風に金木犀の香りが漂う心地よさです。

初座は花床にして、水屋に控えて席中の進行は社中に任せます。
今回は、前回より1歩前進の1品持ち寄りの茶事ですが、
お料理はどれもとても美味しく、
また、席中も滞りなく進行している様子です。

初炭のあと、主菓子をお出しして中立ち。
亭主は後座の用意を自身で済ませ、迎え付けに出ます。
露地は夕闇に沈んでいます。
虫の音を聞きながらの手燭の交換です。

後座は和蝋燭と短檠の灯りの中での続薄茶です。
秋の灯火を囲んでのゆったりとした一時を
主客ともに十分に堪能出来た様子です。


2004年10月27日

風炉の名残の季節に
夕去りの茶事のお招きをいただきました。
ご亭主は先輩であり、長年の茶友です。
長いお付き合いですが、初めて亭主としてのお姿を拝見しました。

幼い頃から茶道に親しんで来られたご亭主が醸し出す
しっとりとしたお茶事で、ゆるやかな時間をすごさせて頂きました。
気心の知れたお仲間同士で、ゆっくりと灯火を囲む、
こんな茶事もいいですね。
親しい茶友を再発見した茶事でした。

〜2006年初夏 急逝されました ご冥福をお祈り致します


2003年9月23日

夕去りの茶事にお招き頂きました。
ご亭主は流儀の大先輩で、ご自宅での茶事です。

丹精の露地の風情を楽しみながら席入りしますと、
まるで登り龍のような見事な花入れに、
秋の野の花が力強く入れられていました。

心尽くしの懐石料理はどれも美味しく、
お一人で茶事をこなされながらの立ち居振る舞いも
席中のお言葉もまた美しく、
目指す修行の道のりの遠さ、深さを感じました。

修行の道すがら求められたという道具類は、どれも、
ご亭主その人のように優しく上品なものでした。

中立ちの露地の景色は、夕去りの茶事の大きな楽しみでしたが、
秋の夕闇迫る露地のそちこちに浮かぶ行灯は
ご主人様の手作りの灯りだそうです!

ひとつひとつの灯りは、
ご夫妻が共に年月を歩んで来られた道しるべ、
互いを照らし合った灯台のように感じられました。




風炉中拝見

2002年9月29日

グループで夕去りの茶事を企画して、半東を担当しました。
インターネットのお仲間同士の茶事でしたので、
水屋グループは、MLでの打ち合わせ段階から茶事が始まります。

幸いお天気に恵まれ、中立ちの夕闇の露地では
行灯が幽玄の世界を作り出してくれました。

ご亭主は仕事を持った女性ですが、忙しい仕事の合間に
茶席の準備を、すべてお一人でこなされました。

しなやかなお姿のなかに、茶事に向かわれる姿勢、心の潔さ、
それらのすべてが席中で、静かに、でもしっかりと花開いた事を感じました。
素晴らしいお仲間と、一緒に茶事が出来ることに感謝!!



2001年9月15日

夕去りの茶事の御案内を頂きました。
午後4時半の御案内です。

待合いで身支度を整えて外腰掛けに進むと
露地に訪れた蝶がいつまでもその場を去らず
迎え付けの亭主の周りを舞い飛びます。
小督の局がテーマということでしたので
ご亭主の精進が小督を呼び寄せたのでしょう。

初座の床は秋の野の花
香合は琴蒔絵一文字香合でした。

中立ちでは頃合いに夕闇が迫り、暮れゆく秋の空にものの哀れを感じます。
外腰掛けで後座の迎え付けを待つ間に、夕景色が少しずつ変化していきました。
まるで嵯峨野に佇んでいるような心地がします。
露地に点在する行灯が心地よいリズムをつくりだします。
そちこちから沸き立つ虫の音に混じって
小督の弾く琴の音も聞こえて来るように感じました。

手燭を頼りに雁行して席入りすると
後座の床は掛け物に改まり、釜は松籟を奏でています。
灯りを囲んで頂く濃茶の美味しさは格別でした。
秋の黄昏を堪能いたしました。


1999年9月5日

夕去りの茶事と聞くと
洞床の中央に咲いた一輪の夕顔を思い出してしまいます。
あのときの夕顔の花は それはそれは見事でした。
ご亭主は裏千家の茶の湯を長く学ばれた方です。

初座で掛け物、後座で床に花という趣向でした。
中立ちで手燭を交換をした正客様に続いて
連客一同手水を使い、躙口を入って見上げると
薄暗い室内に夕顔の白い花が一輪、見事に咲いていました。
花をみた途端に、すーっと床に吸い寄せられてしまいました。

茶花は亭主の心を映します。
茶花に心入れのある茶事はいつまでも深く心に残ります。



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