茶飯釜の茶事

茶飯釜は懐石料理の飯を茶席で炊く茶事です。
まぼろしの茶事とも言われています。
丿貫(へちかん)の狂歌に
「手どりめよ おのれハ 口がさしでたぞ 噌水(みそうず)たくと 人にかたるな」
とありますように、飯を炊く釜も茶の湯をする釜も一つだけという、ごく侘びたものです。
これといった流儀としての決まり事はなく
それぞれの師のやりかたが伝えられているようです。
現在は、釣り釜の時期に、茶の湯の楽しみとしてなさる方が多いように伺っています。






2015年3月25日・29日

社中の稽古茶事で茶飯釜をしました。
5年ぶりの茶飯釜で、久しぶりの茶事は緊張します。
今回は思い立って、茶事直前に庭の蹲を新しくしました。
茶道執心は精神だけでなく、形にだって現れます。

25日は好天に恵まれて、新しい蹲を使って席入り。
稽古茶事も回数を重ねていますので、
それぞれの役割をきちんとこなしてくれました。
茶飯釜では、初炭の後で同じ釜に洗い米を入れてご飯を炊きます。
ご飯が炊けるまで少し時間がありますので、折敷を運び出して向付でまず一献。
煮物椀で二献目を差し上げます。そうこうしているうちにご飯が炊けますので、
点前座で飯と汁を給仕します。
他は通常の段取りで。
亭主は2回目の茶飯釜担当でベテランです。
正客も熱心な方で、しっかりと予習して来てくれました。
この日は釜を上げるタイミングが少し遅かったので、おこげが沢山できました。
でも、ちゃんと美味しいおこげでした。


29日は初めての方が亭主を担当してくれました。
事前に自身で手順を覚えて来てくれましたので、
思いのほかスムーズに進行しました。
前回の反省を生かして釜もタイミング良くあげましたので、
さらに美味しいご飯が炊けました。
この日は茶事の回数を重ねている方が半東でしたので、
次の動作を自然体で自身で判断していました。
やはり茶事は回数です。

今回もリラックスして指導する事ができました。
社中の力がついて来たのだと思います。




2010年4月24日

社中の稽古茶事で茶飯釜をしました。
稽古茶事とはいえ、準備してお迎えする側の茶飯釜は7年振りです。
上手に炊けて、美味しいご飯を食べてもらいたいなぁ。。。

このところ天候不順でしたが、当日は日本晴れ。
席中6名の給仕は亭主一人で大変なのですが、
旅箪笥を使用して、汁は金色、炊き合わせは鉄鍋で
お客様にセルフサービスして頂きました。



後座の花は山里の春をイメージしてヤブレガサにシュンラン。
続薄茶にしましたが席中はスムーズに進行して
楽しいお茶事になりました。

主客互いの思いやりが必要な茶事ですが、
皆きちんと気遣いが出来て、
裏方としては大満足の茶事でした。

2009年12月23日

年の瀬に茶飯釜にお招き頂きました。
お伺いすると、待合の火鉢には
藁灰が放射状に見事に入れられていました。
汲みだしは甘酒、もったりしたお味で
茶事後にお尋ねしたら、豆乳を入れているそうです。

こちらのお宅はたいそうご立派な庭で、
露地の風情も楽しみました。

本席ではお道具も懐石道具もすばらしく
懐石はどれもとても美味しく頂きました。
ご飯の湯気が横に噴出した頃、釜をあげました。
金色に入れたお汁はセルフサービスで。

後座の花はトリトマラズと大神楽椿。
水指は詫びた焼抜き。
小間にとてもよく似合っていました。
主客とも巧者で、贅沢で楽しい年の瀬茶事でした。

2014年秋,逝去されました。幾たびもの茶事をご一緒しました。
本当に色々な事を学ばせて頂きました。合掌



2003年3月19日

親しい方においで頂き、自宅茶事をしました。
今回は茶飯釜に挑戦してみました。
炭をおこして茶席で飯を炊き、炉の炭火で汁を温めて、席中で給仕する、
そんな茶事ですが、その分、亭主が席にいる時間が長く、
お客様との交流がとてもはかりやすい茶事だと感じました。

白い麻布の大津袋から釜に米をいれます。
米はさらさらと釜の中に吸い込まれていきました。
火吹き竹で素早く火をおこします。
お客様は火吹き名人が揃い、皆で童心にかえって炎に向かいました。

ほどなく茶室には飯の香が。。。。
茶室に広がる飯の香に、しばし、故郷の風景を思いました。

今回はベテランの茶人をお迎えしましたが、
茶道を学んでいらっしゃらない方をお迎えしても
十分に楽しんで頂ける茶事だと感じました。



2000年3月13日

今回、ぜひにと所望して親しい方に茶飯釜をして頂きました。
ご亭主は生活センスのとても良い方で、ご自分の感覚で道具を組まれます。
それがとても心地良い空間を作り出します。

初入りの床には掛け物とともに香合が飾り付けられていました。
風炉先は仮名文字の色紙が幾枚か貼り付けられた美しいもので
「をんな」ばかりの飯焚きの茶事に、ちょうどの華やぎを添えていました。

初入りのご挨拶のあと、ご亭主は炭斗を持ち出し炭を置きます。
炭の置き方にも一工夫があって火力が釜底に均等に当たるようにします。
香合は有馬筆でした。
風炉先の仮名文字とあわせて心憎い組み合わせです。

飯が吹いてきたら吊り釜で火力を調節します。
釜からたち上る湯気の向きを頼りに釣り釜の鎖の長さを調節します。
茶室にプーンとお焦げの香りが、、、
茶室に飯の香が漂う雰囲気は格別のものでした。

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