名残りの茶事


10月は名残の季節です。
茶壺のお茶が残り少なくなって、お茶にも、半年間親しんできた風炉にも名残りを惜しみます。
通常、5月から10月まで、茶室には風炉を据えます。
11月には風炉を仕舞い、炉を開き、茶人の正月を迎えます。
11月の口切りや開炉と対照的に、この時期は侘びたものが好まれます。

風炉は中置きにして、五行棚や鉄の窶れ風炉などを使用、
灰は藁灰や掻き上げにして、寄せ香やつけほし香にする事が出来ます。
茶器類もこの月に限り、金継ぎをしたり、割れを繕ったようなものが使用出来ます。
花は風炉の名残りの花を籠いっぱいに入れたいものです。



五行棚を置いて

2014年10月16日

名残りの茶事にお招き頂きました。

秋晴れの良き日に露地に吹く風を心地よく感じながら席入りしますと、
美しい釜肌の鉄風炉が迎えてくれました。
そして、何にもまして、鉄風炉に入れられた藁灰がお見事でした。
香はつけほし香を作られたそうです。とても良い香りがしました。

大変美味しい濃茶を頂きました。
また、手作りの懐石の美味しい事、毎回ながら感服致します。
主菓子も干菓子も手作りでした。

謙遜なさいながらも、縁あってお手元に集まって来た道具類の立派な事。
目も堪能いたしました。
今年の名残りの季節に素晴らしい二刻を過ごす事ができました。

それぞれがこだわって、自分のお茶事をなさる、
そんな茶事にお招き頂ける御縁って有難いですね〜。



2013年10月31日

不定期に釜を掛けています。
今回は名残の季節に、私の一番好きな夕去りをしようと思いました。
席中三名という贅沢な茶事です。
正客様は少し前に知り合った方で、ご近所の方。
他の二名はネットを通じて申し込み頂きました。
インターネットで茶道を楽しむ良さは、自分の世界が広がる事ですね。

今日知り遭った者同士が、灯火を囲んで
茶道のルールを守って語り合えるって、素晴らしい事だと思いませんか。

褒め上手な正客さんで、まるで、自分が
茶事巧者になったような錯覚をしました。
一座建立を有難う。




竹尺八にホウチャクソウとリンドウを入れました。
侘びた、心が騒ぐような花が好きです。

名残の季節ですから、当日は寄せ香にしましたが、
この文章を書きながら、沈香が聞こえてきました。


2011年10月15日

社中で、名残の稽古茶事をしました。
日常の稽古の合間の茶事でなので、
たっぷりとした準備時間は作れませんでしたが、せっかくの名残の茶事です。
それなりの工夫をしてみました。
この時期の茶事なので、鉄風炉、中置、藁灰にしました。
席入りの時、黒い藁灰の間から見える赤い下火はこの時期ならではの喜びです。
(そういえば、初めて茶事で藁灰を拝見してから12年経過しました。
このページ最下段 ↓ )
懐石は寄せ向うにして、これまで1年間使用してきた器を愛でる事ができました。
備前の細水指も金繕いのある三島茶碗も、この時期ならではのもの。
点前座で侘びた存在になってくれました。

天気が心配でしたが、席入り、中立ちでは奇跡的に陽が差してきて
露地の所作も社中 皆で勉強する事が出来ました。
御役は分担、それぞれが堂々とした亭主振りでした。
お茶の楽しみいっぱいの茶事になりました。
今日の成果を糧に、また一緒に稽古に励みたいと思います。



2009年10月26日

正午の茶事にお招きいただきました。
連客さんと最寄駅で待ち合わせご自宅に。

初入りはあいにくの雨で、廊下伝いに席入りさせて頂きました。
陰影のある茶室の床は、日々是好日のお軸。
懐石の器はセンス良く、懐石も美味しく。

後入りの頃は雨も上がり、蹲を使って席入りさせて頂きました。
床は秋の野の花。 ご亭主は男性なのですが、
半東をおかずに御一人でのお働き、
お忙しかった事と拝察いたします。連客さんはみな顔見知りで、
席中は楽しく、あっという間の2刻でした。

ご使用のお道具もまた御亭主の交流の豊かさを物語る
センスの良い品々で、自然体で無理なく、でもため息が出ました。
名残の季節の得難い一会でございました。


2000年10月29日

インターネットを通じての友人に茶事によんで頂きました。
茶事の会場は利休生誕の地、堺です。
初の遠方での茶事でしたので、期待と不安が入り交じった
気持ちで待ち合わせの場所に到着しましたが
そこには亭主自らがにこやかに出迎えてくださいました。

歴史小説などには桃山、江戸前期の堺の町の自由闊達な空気が描かれ
登場人物の行動に心躍る思いを感じていましたので
ぜひ一度訪れたいと願っていた町でした。

最初、亭主は利休屋敷跡をご案内下さいました。
ビルの谷間に杭が打たれたのみの空き地に、井戸が残されていました。
さすが切なさを感じましたが、大安寺、虹の蹲い、南宗寺、実相庵
利休当時のままの袈裟形の蹲いとご案内頂くに従って
よそ者の目には利休を生んだ歴史の町の重みを思う事しきりです。



茶事の会場に到着。
茶室は想像よりも暗くしつらえてあり
先ほど堺の町を案内くださった亭主とご挨拶をかわしても
また、あらたに心が引き締まる心地がします。

堺の町を大きな露地にみたてたご案内、
利休にちなんだ懐石の美味しさ!
「パペットの晩餐会」をご存じでしょうか?
あの映画のように、とても幸せな気持ちを抱かせる料理でした。
利休にちなんだ道具組もまたご馳走で、
さすがこの亭主の趣向と感服いたします。

土地それぞれに文化があり
亭主の生き方が茶事の深みを作り出すんですね。
いい茶事に巡り会う事が出来ました。



1999年10月27日

忘れられない名残りの茶事があります。

「風炉の藁灰が見事だから是非に」と正客様に誘っていただいて、
名残りの茶事に連客として出席いたしました。が、
見事なのは藁灰だけでは有りませんでした。

あいにくの雨で廊下伝いの席入となりましたが
初座の懐石では、とりどりの懐石道具が眼を楽しませてくれました。

さて、茶事の進行に併せるように、雨はますます激しく降ります。
雨音が世の中のすべての音を消し去るようです。
その中でのご亭主の優雅な立ち居振る舞いはまるで、
一羽の鶴が舞い降りたような見事さです。
豪雨の中での茶事は夢のように過ぎて行きました。

素質に加えての、ご亭主の修業を積まれた姿を拝見出来て、
このような境地に少しずつでも近づきたいと念じました。

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