11月になると、一足早く、茶家では正月を迎えます。
この時期、茶壺を床に飾り、主客共に厳かな気持ちで口切りの茶事に臨みます。
茶壺には桐の蓋が被せられ、蓋と壺は美濃紙で糊つけされています。
その蓋を開ける=口を切るので口切りといいます。
壺の中から取り出した御茶はすぐに石臼で挽きますが
懐石の間、水屋から聞こえてくる石臼の音もご馳走です。
おごそかに壺の口を切ります
2002年11月24日
巻紙で、水茎も麗しい、口切りの茶事の案内状を頂きました。
ご亭主は中年の紳士で、稽古場での茶事だそうです。
待合いで菊湯を頂いて席入りすると、床には立派な真壺。
正客様がさっそくに拝見を乞います。
ご亭主は応えて茶壺の口を切り、
美しい緑の茶葉が葉茶漏斗に出されました。
初めて拝見させて頂くルソンの壺を手に感慨無量。
本物に対するこだわりは席中のすべてに、
道具類、懐石料理にも如実に現れ、
石臼の音も心地よく、まこと至福の茶事でした。
水屋の師匠の力量はそこここにかいま見られ、
茶道をこれほどにもしっかと学ばれて、
長い1本道を歩んでこられた流儀の大先輩の存在に、
心打たれた茶事でした。
2011年11月13日
こちらの先生の古希の御祝いの席にお招き頂きました。
会場は、淡々斉も上京のおりには必ず立ち寄ったという山脇邸・睡庵。1畳台目席です。
長い道のりを真摯に歩んでこられた御姿を拝見する事が出来ました。
2001年11月11日
今年も、一陽來復、恙なく茶の湯の正月を迎える事が出来ました。
この好日に、ベテランの正客様をお迎えして、口切りの茶事を致しました。
初入りで早速正客様から壺の拝見を乞われました。
壺を床から降ろして壺座に置きます。
御茶入日記を運び出し、記載の濃茶からお好みを選んで頂いている間に
葉茶漏斗、挽家、封印紙、小刀等を運び出し壺の封を切ります。
座が緊張する一瞬です。
葉茶漏斗に詰茶をさらさらと出して後、壺の中から所望の袋を取り出します。
その後、再び和紙と糊で封、茶家の印を施します。
封印された茶壺は、先ほどの正客様からの拝見に応えます。
床の掛け物は「楓葉紅霜経」、炭斗は新瓢です。
毎年の事ながら、炉炭の大きさに驚きます。
炉釜からたち上る湯気にも、茶の湯の好季の到来を感じます。
灰器にこんもりと盛った湿し灰に対しては
炎天下での灰作りに対する、ねぎらいの言葉を頂戴しました。
幸い好天に恵まれ、正客様の話題の豊かさに席中は華やぎ
おごそかに楽しく茶の湯の正月を祝いました。