ドィムカ Dymkovo Дымка
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Dymkovo

 土器製玩具の伝統は、他のロシアの手作り玩具より良い形で20世紀に生き残りました。
 かつてヴャツカの名前でよく知られていた、キーロフという都市の近くにあるドィムカという集落は、最もよく知られた土器製玩具生産の中心地です。
 この集落は15世紀に、皇帝イワン三世が設立したモスクワの支配に抗して、北方の町ヴェリーキー・ウスチュクの住民によって作られました。
 その時、優秀な工芸や玩具の職人が、ホリノフという町に移動しました。


Z.ペンキナ
(Z.Penkina.)
「豚に乗った馬鹿なイワン
(イワンのばか)」
 1999年






Z.ペンキナ
(Z.Penkina.)
 「火の鳥」 
1973年






Z.ペンキナ
(Z.Penkina.) 
「散歩(カップル)」 
1978年






Z.ペンキナ
(Z.Penkina.) 
「せむしの仔馬」 
1983年






L.ファラリョワ
(L.Falalyeva.)
「メリーゴーラウンド
(回転木馬)」
 1979年






L.ファラリョワ
(L.Falalyeva.) 
「バラライカ」 
1975年






S.コーシキナ
(S.Koshkina.)
 「井戸端の少女」 
1997年






S.コーシキナ
(S.Koshkina.)
 「散歩(カップル)」 
2001年






S.コーシキナ
(S.Koshkina.)
 「友達(少女たち)」
 1981年






S.コーシキナ
(S.Koshkina.)
「樵」 
1995年






S.コーシキナ
(S.Koshkina.)
 「七面鳥」 
1998年
L.ファラレワ(L.Falalyeva)「蕪」 1966年

 玩具製造業は、まず、「ウィスリング・セレブレーション(笛吹祭り)」としてよく知られている地方の祭りの需要に応じて成長しました。
 祭りの間、地方の工芸家が作った鳥、馬、小羊などの小さな像に対する大きな需要がありました。祭りは、「ヤリーロ」というスラブの(キリスト教以前の)異教太陽神への信仰に根ざしたものです。
 地方の祭りは、拳闘士や雪男などあらゆる土着玩具の需要を刺激しました。
 19世紀の田舎の祭りは、重要な出来事で、青空市場などの交易を伴って数日間続きました。
 ドィムカ玩具は、破裂を防ぐために精選された川砂を混ぜた赤土で作られました。
 最初の玩具の基本となる固まりを形作り、胸、腕、頭、衣服のヒダ、髪飾り等の小さな部品を付け加えます。
Z.ペンキナ(Z.Penkina) 「ペチカの上のエメリア」 1989年

訳注
 ロシアに詳しくない読者のために付記します。
 「ペチカ」と聞いたとき、どんな形を想像されますか?
 ペチカの写真は、インターネット検索で簡単に見られますので、そちらで御覧ください。
 特にウィキペディアでは、記述内容は多少異なりますが、英、露、日のページで同じ写真が使われていて、「概ねこんなイメージかな」と筆者は、感じました。
 ロシアには、「昔の農民の家」が「木造建築博物館」に保存されています。
 広い土地に、木造建築が建っているものです。

 筆者がここで見たペチカは、焼き窯のような大きな、普通のホテルで見られるセミダブルベッドを縦に二つ、上下に3つ積み上げたような、角が丸くなった、土の塊でした。
 土間ですから、日本で言えば「おくどはん」が大きくなったようなもの。
 天井とペチカの間に板が張ってあって、ここが、老人などの一家で大切な人の寝床だったそうです。
 と、言うわけで、上図、エメリアがペチカに座っても、少しも不思議は無いのです。

 猶、本文は、主に英文から訳したのですが、当然英文表記は「ストーブの上のエメリア」でした。
 でも、訳者の好みで、「ペチカの上のエメリア」と訳しておきました。

 
 形作られた玩具は数日間乾燥させて、3〜5時間焼成し、石灰を混ぜたバターミルクのカゼインで白く下塗りした上にテンペラで着色します。
 石灰を溶かしたミルクの白濁液に浸して製品を白くするのはドィムカ玩具だけです。
 風に晒して乾燥したカゼイン膜は玩具の表面に石灰を定着させます。
 ドィムカ玩具の最も古いモチーフは、動物と鳥ですが、主としてサーカスや青空市場で見られる、高慢な貴婦人、太った商人の妻、エレガントな紳士、勇敢な軽騎兵等が有名です。
 可愛く、活発で、しばしば滑稽なキャラクターは、19世紀ロシアに見られた、小さな村の生活を視覚的に再現します。
 玩具の基本的な構造は、ベル形スカート、胴体に後から取り付ける小さく丸い頭と曲がった腕、そして小さい子供等です。
 他のロシア土製玩具が2〜3色なのに対して、ドィムカ玩具は、たくさんの色で着色されます。
 それらは、独特の、正方形、縞、円、輪、点等で、そして最終的に、お祭り気分を醸し出す菱形の金箔等で装飾されます。
Z.ペンキナ(Z.Penkina.) 「喫茶」 1995年

 新しいドィムカ玩具も、19世紀後半のものと同じく、「荘園領主」、「貴婦人」、「乳母」、「水汲み」などの古風なモチーフ含んでいます。
 1930年代に、ドィムカ玩具は、おとぎ話と現代のライフスタイルをモチーフにした表現を加えました。そして、高さ30センチメートルを超えるようなものを含めて、多様なモチーフの組合せが現れました。
 抽象的な塊で、どこかグロテスクな雰囲気のドィムカ玩具は、フリル、膨らませた襟飾り、その他の容貌で強調されます。玩具は、円、チェック、点等の、様々な色や大きさの幾何学模様で、即興的に飾りつけられます。
 ドィムカ玩具は、その芸術性、明快な特徴、機智に富んだユーモア、および楽観的容貌で、同時代人の興味を惹きます。
 これらが、この個性的な芸術の特徴です。
Z.ペンキナ(Z.Penkina.) 「橇上のエメリヤ」 1996年

Z.ペンキナ(Z.Penkina.)1996年

Z.ペンキナ(Z.Penkina.) 「荷馬車」 1971年