逞しいアナウンサーに
■NHKの今年度全国管理職人事異動が6月8日、一斉に自動発令した。先日、内示一覧を3時間にわたって閲覧!現役後輩から「定年から3年たってお顔が紅潮してますね。人事ひとりひとりに対する絶大な思いがそうさせるのでしょう!」と言われた。詳細は「電波タイムス」に掲載される。私としては、石村報道局長、三浦広報局長、木原アナウンス室長の留任、樋口君がアナウンス室に戻れ、村上格君も局次長級になれたのでひとまず安堵感!!■●思い出話→※北海道本部長や専務理事を務めたあるOBは私に、「管理職になったら部下を幸せにすることを考えろ!さらに自分が上に昇進すれば、部下を幸せにするよう務める管理職を育てなさい!」このコトバを今もしばしば思い出す。人は年を重ねるにつれ、マサカリ・ナタ・カミソリと言われた辣腕家も好々爺になると言われるが、私は烈火のような闘争心が衰えない。はずかしや。(編集長は高校の時、NHKアナウンサーになりたいと思った。東京の大学に進んで、集金人さんの片腕となって収納に協力した。今でも講演で、受信料制度の理解と協力を強く求めている。)■今年もNHK管理職人事異動が6月2日付けで全国一斉に自動発令された。編集長が現役時代から交友を深めてきた親友が報道局長・広報局長など主要ポストについた。個人的にこんなに嬉しいことはない。先日も、「21世紀もNHKが発展し、国民に支持され続けるよう仕事をしたい」との熱い思いの親書を貰った。■■(編集長の独り言)今から20年前、私が松山局デスクをしていたとき、当時の総帥 杉沢氏は道後温泉での会議後私に、具体的な名前をあげ、「今後の指導体制はこんなメンバーだ。後は君たちで考えろ!」と言われた。同期2〜3名ずつ合わせて10数人の精鋭(大先輩)たちの名前があった。これで5年はもつだろうと、私は思った。全国500余の先頭に立つ総帥は、絶えず5年から7年先を見ながら、次の指導者(経営職)を育成しなければならない。仕事の性格から、記者やPDのように経営職は、日常の取り組みからだけでは育ちにくいのだ。それだけに、育成は執拗に、強力に展開されなければならない。(越智和憲)■昔のお話。宮田輝さんが専門職アナウンサーとして君臨した頃は高度経済成長期の波に乗ってNHK自体が拡大充実していった時代で、お茶の間にテレビ受像機が普及し、有名アナウンサーがそれこそ綺羅 星の如く生まれた時代である。ところが有名アナウンサー輩出の陰で、一度も東京で活躍することなく地方局から地方局に渡り歩いて一生を終えるアナウンサーが大勢いた。競争原理の導入で頂点は輝いたが裾野では辛い人生を強いられたのである。現在は地方局勤務のアナウンサーが東京へ出張しリポートを担当するなど、いわゆる場になれて、伸び伸びと活躍できるようになっている。高橋圭三さんのNHK時代から、アナウンサーのことを自嘲的に「いい男、カネと力はなかりけり」と言い合い慰めていた。極度に専門化し、音声表現に収斂していったため、巧いアナウンサーは輩出したが、企画提案力・予算執行能力・事務能力・危機管理能力・統率力などが衰退した。有名になったアナウンサーが自分の利益と幸福を求めて次々と民放に移って行った。NHK最高経営者の目には、背信行為とさえ映ったのである。近年、アナウンサーが「本格企画・本格制作・本格表現」を目標に実質的能力を身につけようと頑張っている。今後は組織全体への理解を進めながら、ある時は深く専門的に、ある時は視野を広げ全体の動きを見ながら、逞しく育ってもらいたいと思う。■■私は、入局当初から政治分野への理解を進めようと、まず地方議会を突破口に中央へと、多くの政治家と交際した。そして、人的風化を避けるため、少なくとも年3回以上は連絡を取り合った。それを手始めに一流会社の経営者や文化人など多くの分野の方々との交流を深めることができた。それまで世間知らずだった自分の中身を増強するため、どれだけの資金を使ったか知れない。田中角栄時代の後藤田官房長官、最近までの野中広務元幹事長の行動と発言にも極めて強い関心を抱いた。現在でも政府官邸・自民党の動き・情報を最前線デスクから獲得する努力を継続している。同時にバランス感覚を磨くことに努力した。平衡感覚はジャーナリストにとって必要不可欠だ。現在は、今の政治経済状況を正確に理解できなければ、ニュースを伝える資格はないのではないかと考える。広い知識を持ちながら、同時に他の追随を許さない独自の専門分野を持つよう努力したい。(越智和憲)

◎編集長は、実は入局2年生の若者の頃から、NHK人事異動に強い関心を寄せた。初めは、あれほど努力しているアナウンサーが何故優遇されないのか、という素朴な疑問から出発したのだがその後、報道系、番組制作系、技術系、管理系などに関心が及び、各系列の比較検討まで進んだ。中盤からは、どのような価値判断、人間関係、メカニズムで人事が実施されるのかの解明に及んだ。多数の人々が納得できる人事と、あらゆる角度から考察しても腑に落ちない異動もあった。多くの同僚が納得できる人事異動が実施されることを望みたい。人事は全経営の意志の表明であり、作品であるからだ。NHKでは近年各県単位に存在する「放送局長」の権限が強化され、全員が特別職となっている。この特別職ということばは、現在部内では使用されていないが、県庁などの役職で使用されているので多くの視聴者にはご理解願えるだろう。一方で放送現場で活躍する専門職には、「エグゼクテイブ」という役職名が与えられ、優遇されている。人事は原則として、人事評価が管理部門を通じて、放送センターの人事本部に集められ、集中管理される。が、現場ではこれと歩調を合わせながら、より現実に即した評価が結集されていく。アナウンサーについても長い歴史と伝統のなかで自己管理型の経営が積み上げられてきた。全国におよそ500人いるアナウンサーは東京のアナウンス室長のもと、集中的な品質管理が行われる。「室長」という名称は、図書室の一隅にあるような名前なので、私は、「アナウンス局長」という名称に変更するよう関係方面に求めてきたがいまだに実現されていない。現在のアナウンス室長は、昭和47年に入局し、若い頃、高松、秋田局などに勤務し、後半は広島放送局アナウンス統括などをつとめた木原秋好氏が就任している。各現場で表現活動などの実績を積み、現場での経営面の苦労を積み重ねてこられた。もの静かで穏やかな印象をもたれるが、打たれ強い強靱な精神力、深い洞察力、慈愛に満ちた人間愛などが全国の仲間から極めて高い支持を集めている。    
BNHKの放送で、今、自局のアナウンサーが大勢輝いているのだが、これはひとつに、現・海老沢会長の方針によるものだ。部外のタレントを多く起用する道もあろうが、経費節減を御旗にかかげつつ、本当は会長ご自身がアナウンサーを好きでいてくださると私は密かに信じている。ついでに述べておくが、NHKに「局アナ」ということばはない。「アナウンサー」という名称は東京・芝、愛宕山の放送開始草創期から職員の中核として存在し、現在も放送の仕事の中軸に位置づけられている。話を続けるが、かつては放送総局長(理事)が地方に来て、「標準語だけしゃべるアナウンサーはもういらないのでは?」などと指摘され、地方現場のデスクだった私などは三日三晩悩み苦しんで眠れなかった。役員・主要局長をはじめアナウンサー出身の強い経営職を育てなければと焦ったものだ。現在でも年に一人か二人の放送局長を誕生させるのがやっとである。責任者は危機管理能力が問われ、それまでの能力の蓄積と組織運営能力が評価される。素晴らしい表現力の研鑽とは又別の分野の努力が必要だ。「木を見て森を見ず」のことばがあるが、常時細かい作業だけに専念していると、広い世界を見ようとする時、目が霞んで遠く広い世間が見えない。眼球の周辺筋肉の活性化を進めて、近くも遠くも、狭くも広くも物事を見る力が是非とも必要なのだ。芸事の世界にも似て次第に人間がメス化し、極度に情緒的になって行くことも排除しなければならない。若いアナウンサーは大きなロマンをもって将来を築いて欲しい。(越智和憲)


◎「テレビ表現者」 今、放送現場には「量が質を保証する」という言葉がある。どんなに実力があってもたびたびテレビに出ていないと、希に出演したのでは力が発揮されない、という事までも含んだ事だと、私は理解している。 ところで、私が現役時代、みんなで話し合って次のように整理をした。ご参考までに! テレビ表現者の条件。 @ジャーナリステイツクな時代感覚と好奇心、正義感をもつ。 A年齢相応の豊かな知性・感性をもつ。 B的確なことばで説得力のある表現力。Cいきいきと明るく好感がもてる。Dハイセンスな服装・容姿・立ち居振る舞いができる。E適度な自己顕示と自己主張ができる。F情報の把握・分析・処理能力を持ち、先見性を備えている。 G国際感覚に優れ外国語に堪能である。H健康な身体を持ち、行動力、バイタリテイーに富んでいる。Iテレビに反復登場し、親近感、信頼感がある。以上の10箇条を、これから放送界で活躍したい方に参考にして頂きたいと思う。          (お願い)私のHP(元NHKアナ越智和憲のホームページ)を最初からご覧になるには、「越智和憲(おちかずのり)」と入力なさって下さい。kazunori-ochi       ※この後「越智和憲ホームページ(第2幕) アナウンス・朗読の広場」(愛称 ベッカム)へお誘いしますリンクプッシュ!