沢田聖子のそよ風の街角 コンサートレポート

アコースティックライブ with ル・クプル
01/01/14(日)




 一応表題は「アコースティックライブ」としたけれど、本当はそうではない。チケットによると「沢田聖子&ルクプルジョイントコンサート」である。でもまあ、何もタイトルがないのも寂しいので、勝手にくっつけたんだけど。
 このライブは某所のホームページに掲載されているのをファンの方から教えられて早くから知っていたが、聖子ちゃんのオフィシャルページに掲載されたのは随分後だった。
 会場は三重県の飯南町産業文化センター。松阪牛の産地なのだそうである。

 仕事の都合で行けるか行けないかわからないが、いずれにしても当日券で入れるだろうと思っていた。「来るなら泊まっていけ」とSさんから誘いを受けているし、宿の心配はない。三重なら終演後に車で帰ってきても問題ないし。

 そんな風に気軽に考えていたら、Sさんから「チケットが余ってるけど、どう?」とのメール。これで行くことを決心して「よろしく!」とお返事しておいた。

 ところどころ凍結した高速道路を走りながら、昼過ぎにSさんの家にお邪魔をしたら、有名なスパゲティの店で昼食を取ってから会場へ向かうという。これは前日、三重県の他所で行われた同じライブ(Sさんはこれも行っている)のMCに登場したところで、かなり有名らしい。ところどころで顔見知りのファンが合流してお店に行くと、なんと昼食と夕食の合間の休憩時間だった。
 それにしても、前日のライブのMCに出て来たからといって、そのお店まで見聞に行くとは、いかにもマニアックである。

 しかし、休憩時間では仕方ない。焼き肉屋に入って松坂肉(だろうな)の焼肉を食べる。飲食産業と無縁ではない仕事をしているので、「焼肉屋って楽でいいな」なんぞと思った。切った肉と野菜を用意すれば済み、調理しなくていいんだから。せいぜいタレを作るぐらいだろうけれど、自家製かどうかなんてわからない。

 その後、会場の近くまで移動。山深く喫茶店などないので、「道の駅」で時間を過ごす。外は寒く時折雪が舞い、おしるこで身体を温めた。有線テレビがひいてあって、「沢田聖子&ルクプルジョイントコンサート、当日券あり」と定期的に画面に現れた。

 さて、会場。
 「産業文化センター」という名前から、いわゆるホールにパイプ椅子を想像していたが、違う。広いステージ(ライブハウス的に使うときは、このステージの上に客席が作られ、緞帳の中で1公演行われるのだそうだ。それでも100人弱入れる)と、階段状になった客席には立派な椅子。
 すーさんが手に入れたチケットはまさしく「S」席で、本来最前列であるはずのA列のさらに前にパイプ椅子が一列並べられ、「S列」なのだった。かぶりつきである。定員は450名ほど。PAなどの都合で潰された客席を除けば、ほぼ満席だった。


1.シオン
2.約束
3.一緒に暮らそー!
4.親愛なる人へ
5.なごり雪
6.祈り


 「約束」のアレンジが少し変わったのか、イントロだけでは何の曲かはわからなかった。
 アップテンポの「一緒に暮らそー!」では、最前列に陣取った濃いファンが手拍子をするけれど、果たして会場全体としてはどうだったか。もちろんゼロではないけれど、全体の情景がわからないのが最前列の辛いところだ。
 聖子さんは「ところどころの手拍子ありがとう」みたいなことを言っていたので、「手拍子している人たちの島」みたいなのがあったのかもしれない。
 このあと、MCが入る。ピアノの上やステージに飾られたミニチュアは、最前列でもそれがナンなのか良くわからないのだけれど、動物や恐竜の模型。チョコエッグという卵型チョコレートの中に入っている組み立て式のおまけで、それなりに精巧にできているらしい。三重のサークルKで見つけてルクプルともにはまってしまい、リュージさんはホテルとサークルKを夜中にも往復したそうだ。
 良く出てくるもの、めったに出てこないレアものが入り混じって、ファン心理をくすぐるやり方は、ポケモンレアカードなどを例に出すまでもないだろう。
 「親愛なる人へ」は、村下さんをしのんで作った曲だが、「いつもはピアノで作曲するんですが、この曲はギターで作りました」なのだそうだ。「親愛なる人へ」に関するMCは何度も聞いたけれど、ギターで作曲したというエピソードははじめて聞いた。
 「なごり雪」の後は、バレンタインコンサートの告知。イルカさん、かぐや姫の山田パンダさんとのジョイントで、「新宿厚生年金会館」と近年にない大ホールでのライブだ。
 「イルカ・パンダ・ショーです。芸を仕込んでおきます」と笑いを取る。ちなみに「ショー」は「聖」のことであるらしい。実際、3人集まったからこその「何か」をやりたいと、別の会場のライブのときには語っていた。楽しみだ。

 ルクプルを招き入れてチョコエッグや血液型(この話題、本当に好きだね、聖子さん)などの話題の後、ルクプルのステージ。イメージとは全く異なる「夫婦漫才」の片鱗を見せてくれた。


7.夢で待ち合わせしよう
8.Sofa
9.縁は異なもの
10.The water is wide
11.ふたつの夢
12.あなたへ
13.ひだまりの詩
14.ジュリアン
15.1日の終わりに


 曲のタイトルには自信がない。・・・・ごめんなさい。

 ルクプルのお二人は圧倒的に「かけあい」が面白い。どこまでが天然でどこからが演出なのかわからないけれど、テレビの音楽番組などのイメージとは全く違うのである。
 テレビ番組ではインタビューの時間が限られているので「しゃべらない」とか、しゃべっても「カットされる」からで、やはり生ライブへ行ってこその臨場感と興奮と親近感がそこにある。
 エミさんは時々タンバリンなどをもつけれどほとんどボーカル専門で、ギターとハーモニカとコーラスをリュージ(?)さんがこなす。このギターがメリハリが効いている。
 ギターのインストで聴かせる人とはテクニックの種類も奏法も全く異なるから、僕の好きなギターの名手岡崎倫典さんや押尾コータローさんなどと比較しようもないが、その曲のイメージをはっきりと浮かび上がらせるみごとな伴奏であった。
 それにしても、音楽業界は厳しい。
 ナントカの主題歌だのCMソングだの、比較的聞き馴染みのあるであろう曲が選曲の中心とのことだったが、僕は「陽だまり」しか知らなかった。
 もはや「川の流れのように」や「上を向いて歩こう」などのように「誰でも知っている曲」の存在はありえないのかもしれない。嗜好の細分化が進み、ますますインディーズ化していくだろう。CDショップの店員に「はあ? なんですか、それ?」という顔をされ、「取り寄せですか。時間がかかりますけど」なんぞと言われるくらいなら、ネット上の通販で取り寄せた方がいい。
 ・・・・話がそれました。

 聖子さんの曲数とルクプルの曲数がアンバランスなのが、ちょっと不満、かな?


=アンコール=

16.卒業写真
17.あの素晴らしい愛をもう一度


 アンコールの拍手にこたえてまずルクプルが登場。続いて、ルクプルが聖子さんを招き入れる。
 「ショウコチャーン!!」の声援に、「いいなあ。わたしもして下さい」と、エミさん。
 要請にこたえるも、「エミさあ〜ん!!」と、ちょっとテンションが低い。「照れがあるでしょ!」の突っ込みが入った。その通りで、慣れないことに抵抗があるというのか、慣れと言うのは恐ろしいというべきか。

 ジョイントライブの場合、このように最後にセッションをすることも多いが、沢田聖子&ルクプルが今までのジョイントの中では最高のできだった。
 聖子さんのピアノ伴奏をメインにして、リュージさんがいわゆるリードギター(とも言いにくいけれど、コードストロークではない、という意味。こういうのをなんて言うのかなあ。オカズとも違うし)をこなし、かつ聖子さん&エミさんのハモリが最高に美しい。
 聖子さんのソロライブの場合、コーラスのメインをとっているのはギターの坪井寛さんで、男女の声質に差があるため、一度「女性同士で」というのが聞いてみたいと思っていた。
 さらに、聖子さんがホスト、ジョイントの相手がゲストという色彩が通例強いので、アンコールで呼ばれても聖子さんはゲストを立ててどこか控えめ。「一緒にやってる」という感覚がイマイチ僕には伝わりにくかった。
 ルクプルの方が知名度は圧倒的に高いけれど、キャリアでは聖子さんの方がはるかに長く、ライブの流れを引っ張っているという感じがして、聖子ファンの僕としては嬉しい。
 しかも、ピアノが違う。他人が作った曲への敬意ももちろんあるだろうし、その曲を引っ張っていくメインの伴奏であるということもあろう、適度な緊張感が漂い、また聴きなれたリズムパターンとは違う演奏が聖子さんの指から奏でられたのも価値があった。

 このようにステージは素晴らしかったのだけれど、ライブの構成としては不満もある。
 僕にとっては、ジョイントで最後にいっしょにやるのはお約束であり、これはアンコールではないと思うからだ。この後に、本当のアンコールが存在するべきだ。
 つまり、ルクプルはステージを降りずに、「最後にみんなでやりましょう」と聖子さんを招き入れ、2〜3曲やって、はじめて終演。で、アンコールがあればそれに答える。これが理想の形。もちろん、アンコールのために仕込んでおくのは当然である。

 逆にいうと、この形では、アンコールがなければ「沢田聖子&ルクプル」のセッションが観れないわけで、それでジョイントと言っていいの? という気がするのだ。


 さて、この後は、サイン&握手会である。
 会場で即売されていたCDを買った人に、そのジャケットにサインをするという趣向なので、もちろんそのまま帰ってしまう人もいるのだけれど、なんとまあたくさんの人が即売のテーブルに群がることか!
 ちょっとやそっとで近付けない。
 しかも、聖子さんのCDが飛ぶように売れる。
 「買うのなら沢田聖子の方だな」とか言う声まで聞こえる。「ルクプル」ならいつでも手に入るというひねくれた解釈もできるけれど、ともかく自分がご贔屓にしているアーティストに人気が集まるというのは嬉しい事だ。
 しかも、高価な2枚組みベストアルバムがとにかく売れるからびっくりであるが、初めてのそのアーティストのCDを買うのなら「ベスト」か「ニューシングル」だろうし、不思議ではないかもしれない。
 Sさんの知人が関係者におり、「今回の公演は町民アンケートによる結果」ということが判明。聖子さんが1位ではなかったようだが、上位から「高すぎる人」「知名度が低すぎる人」を除いた結果、こうなったとか。このあたりでは知名度が高いのだろう。昨日の(同じ三重県内の)公演では聖子さんの列が極端に短かったらしいので、かなり局地的な知名度かもしれないが。
 サインの行列も、聖子さんのほうが多い。ルクプルの方が短いので、単純に2列に並んでいるんだと思った人がルクプルの行列について、アーティストごとに並ぶのだと知らされ、改めて並びなおしていた。
 聖子さんのサインは欲しいけれど、既にいくつか持っているし、それ以前にここで販売されているCDは既に入手済みなので、僕はルクプルのCDを購入してそちらの列に並んだ。

 


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