あまりにも突然で、唐突の通知だった。 ファンクラブから送られてきた「今世紀最後の弾き語りコンサート」 のっけからこんなことを言うのはなんだけど、ミレニアムだの、20世紀だの、21世紀だの。そんなことにチャラチャラと浮かれることに、僕は興味はない。 今世紀最後だからと言って、弾き語りライブは弾き語りライブなのである。いつものように、フルバンドライブとは違った雰囲気と演出で、じっくりと聴かせてくれればそれで良いのである。 とまあ、僕はこんな気持ちだった。 一回でも多くライブに足を運びたいファンとしては、どんな趣向であれタイトルであれ、ライブをしてくれればそれでよいのだけれど、なんかちょっとタイトルに「あれ?」とか思っていたのである。 しかし! 結論から先に言うと、聖子さんは単に「浮かれて」などいなかった。 タイトルはともかくとして、今までにない演出で、すっかり僕を楽しませてくれたのである。聖子流の新しい弾き語りライブを聞かせてもらった。 |
1.青春の光と影 2.涙はつばさに 3.走って下さい 4.卒業 5.青春エピローグ 6.悲しむ程まだ人生は知らない 7.あなたからF.O. 8.想い出のオルゴール 9.小さな船 10.まっすぐに・・・愛 11.振り向けば いつも あなたがいた 12.LIFE 13.17の頃 14.未来の子供達のために 15.空を見上げて 16.すべては君のためだけに 17.風になりたい 18.せつなさを抱きしめて 19.smile 20.PRESENT 21.風を感じて 坪井寛さん登場(ギター&コーラス) 22.約束(聖:ギター) 23.シオン(聖:ギター) 24.Natural(聖:ギター) 25.笑顔が好きだから(聖:ギター) 26.二人の明日(聖:タンバリン) 27.一緒に暮らそー!(聖:ピアノ) 28.少年とドルフィン(聖:ピアノ) <アンコール> 29.ハッピー・クリスマス(ジョン・レノン)(聖:鳴り物) 30.親愛なる人へ(聖:ギター) 31.友達(聖:ギター) <ダブルアンコール> 32.In My Heart(聖:ピアノ) |
一曲終わるごとに僕たち観客は拍手をし、聖子さんは深々と頭を下げ、曲のタイトル紹介があり、そして短く、時には長くMCがある。 これがこれまでの聖子さんのステージのパターンである。 ところがナント、前半約50分。延々とメドレーが続いた。 (僕の記憶が確かなら・・・・記録を無くしたのだ!)3曲目と4曲目の間に、我慢し切れなくなって拍手が起こったけれど、それにもお辞儀をした程度でさらに曲は続いてゆく。 3曲目まではフルコーラスとはいかなくてもおそらくツーコーラスくらいやったと思うけれど、そこから先はワンコーラスのみである。 1番だけで次々新しい曲になるということはメドレーだなと気がつくことになるわけだけど、それでも普通は5曲程度である。ところが、いつまでたっても終わらない。 7曲、8曲となると、「いくらなんでもそれは独り善がりの演出だよ。せっかくのライブなんだからフルコーラスでじっくりと聴かせてくれ」ってな気持ちになってくる。 しかし、人間、限度を越えると感動するもんだね。 10曲を超える頃から、「ええーい、行っちゃえ行っちゃえ」てな気分になってきた。 それに、ワンコーラスだけであっても、たくさんの曲が聴けるということは、思い入れの強い曲や、好きな曲にめぐり合える確率が高くなるのであって、逆に「フルコーラス聴きたかったらCDでいいじゃないの」とさえ思えて来る。 「悲しむほどまだ人生は知らない」は、別に僕は当時具体的に何かに「悲しんで」いたわけではないけれど、随分励まされた。なにか上手く行かなかったり考え込んでしまうようなことがあったとき、人は「その場その時」だけのことで落ち込んだり悲しんだりする。でも、そうじゃないんだよ、悲しむほどまだ人生なんて知らないじゃない、これからじゃない、って語りかけて来るこの唄はとても力強い。 そして、「せつなさを抱きしめて」。 この曲は僕的に言えば、「悲しむほどまだ人生は知らない」の続編で、あれからいくつもの時が流れて、やっぱりせつないこともいっぱいあったけれど、そういうことすらも自分の中に包含して、それでも前向きにやっていこうよ、という唄だ。「悲しむほど」が25歳前後の人のための曲なら、「せつなさ」は35歳前後。そんな気がした。 そして、なによりも「17の頃」が聴けたのが嬉しい。ちっともライブでやらないし、サブタイトルが「10 years ago」であるから、27歳の聖子さんが作った唄だと思う。今は38歳だから、さすがにもうやらないだろうと思っていた。 でも、そんな年齢のことはともかく、僕はこの曲が大すき。歌詞を紹介すると著作権やらなんやらにひっかかるから書けないのが残念だけれど、17の頃の純粋で前向きで無鉄砲だった心情を、壮大なイメージで歌い上げている。メジャーコード・ミディアムテンポ、そしてサビの部分は高音域で伸びのある曲である。(四分音符以上の長さを主に使い、二分音符なども頻出するからであろう。逆に8分音符は少ない) 海岸段丘の草原の上にたち、雲がポツリポツリと浮かぶ大空を眺めながら、爽やかな気持ちのいい風に吹かれ、胸を広げて深呼吸をしたり、思いっきり走ったりする。時には眼を閉じて風と波の音に耳を傾けたりもする。そんなイメージの曲なのだ。 メドレーを終えて「何曲やったと思いますか?」と、聖子さん。 21世紀にちなんで、21曲だったとのこと。家で何度やっても45分を切れなかったそうだ。 そして、後半は坪やんこと坪井寛さんの登場。 実はステージのセッティングを見れば、ギターサポートがつくことは予想がついたはずなのに、うっかりしていた。聖子さんがギターの弾き語りを一人でするのなら、正面にセッティングされるはずである。それがステージに向かって少し右手にセッティングされている。これはサーポートが入ることを意味している。なのに、全然これまで気がつかなかった。「弾き語り」なので、ずっと聖子さんが一人でやるものと思っていたのだ。 前回の「あの頃を思い出して」は僕は行けなかったのだけれど、そこでも坪やんのサポート付だったから、これを観ていたら想像がついていただろう。 あまり多くは語らないけれど、聖子&坪やんのコンビは、ひとつのユニットを感じさせるほど完成度が高かった。 フルバンドライブでも坪やんはメインコーラスを担当しているから、ハモリの息はピッタリだし、MCも坪ヤンがいると聖子さんのノリがいいし、何より音楽の厚みが全然違うのだ。 これまで横にギターサポートがつくと、どちらかというと聖子さんはハンドマイクで楽器を持たずに唄うことが多かったように思う。多分これはリハの関係だろうと邪推している。坪やんが一人でギターをして、聖子さんがボーカル、という形ならば、お互いプロだからそれほどのリハーサルは要らないはずである。けれど、ギター2本となると、下手なフルバンドよりも息を合わせるのは難しいと思う。 それを見事に今回はこなしている。 しかも、聖子さんもコードストロークのみにとどまらず、それぞれがパートを分け合っているのが良い。 坪ヤンも、あくまでコーラスとしてのパートだけれど一人でボーカルを取ることがあり、これがステージの演出に緩急をつけて見事なものだ。 そして、たった3曲だけれども、ギター2本ではなく、ピアノ&ギターでやってくれたのも嬉しい。ギター2本もいいけれど、基本的に音の種類も奏法もなにもかも違う二つの楽器でやった方が、広がりが出ると思うのだ。 最後に、ダブルアンコール。 「最後はこれだよ、これ。もう長年いっしょにやってるんだから、わかるよね?」という聖子さんのMCで、二人で演奏するインマイハートが始まった。 マイクを使わないアカペラの「インマイハート」が実は強く心に残っているんだけど、このピアノ&ギターの「インマイハート」もまた強く印象に残った。 |