沢田聖子のそよ風の街角 コンサートレポート

インマイハートコンサート2000
鬼の蔵 第9楽章〜あっとほーむ Summer PRESENT
00/7/15(土)




 全てのシリーズに参加したいと決意して、今回出かけたのは「鬼の蔵」である。
 宮城県鬼首村。「鬼の蔵」という名前の会場で行われる聖子さんのライブは今回9回目。(おそらく)初めてインマイハートコンサートツアーの一部に組み込まれ、ファンクラブの優先予約が行われたこともあって、遠征することにした。
 ファンの横のつながりで、メールのやり取りなどをするうちに、Jさんにホテルの手配やホテルと会場の送迎などお世話していただけることになった。深くは考えていなかったのだが、実はこれがなければ僕はおそらく会場にたどり着けなかったはずだ。感謝。

 大阪を前日の夜に出発。どれくらいぶりかの夜行列車である。一度乗って見たいと思っていた「サンライズ」の「出雲号」東京行き「のびのび座席」をゲットすることが出来た。
 のびのび座席は、普通の寝台車のように通路が片方の窓際によっていて、残りの部分が客席。「席」といっても、車両の前から後ろまで広大な2段ベッドになっていると思えばいい。ただし、「のびのび座席」と座席を標榜するだけあって、寝台設備とはかなり違う。2段になったフロアは船の2等船室の雑魚寝に近い。ただ、一人づつそのスペースが区切られているのだ。あたま側は、隣との壁が上から下まであって、横になってしまえば隣を見ることも、隣から見られることもない。頭以外の部分は床が少し高くなって隣との仕切りになっている。
  照明は2種類。普通の蛍光灯と読書灯だ。片隅にコップを置くための切込みが入った小さな台があり、使い捨てコップまでサービスしてくれているが、これはなくてもいいだろう。困ったのは空調の噴出し口。寝転がると胸の真上あたりにあり、冷風がガンガン吹き付けてくる。風の量は調整できるものの完璧にカットしてしまうことが出来ず、幸い長袖のパーカーを持っていたのでそれを羽織った。
 寝台ではないが、掛け布団となぜか枕カバー風の小さな長方形の布があった。枕はないが、頭の下にこれを敷いて使いなさいということだろうか。

 「サンライズ」は米原の手前あたりの保線工事かなにかの影響を受けて動いたり止まったりのノロノロ運転。ブレーキがかかると妙な音がしてうるさい。ちょうど放送マイクのスイッチを入れた直後に、マイクは何の音も拾っていないがスピーカーが振動して、ブーっと言ってるような感じである。
 のびのび「座席」とはいうものの事実上は横になって眠れるので、寝台車の発想を転換した夜行列車の新形式と言えるだろう。枕がほしい。もともと寝台ではない、という考え方ならば、枕と毛布を有料レンタルでも構わないのだが。

 大阪発は0時30分を過ぎており、僕は苦にならなかったが、この「座席」にはるか出雲から乗ってくることを考えると、日のあるうちは苦痛であろう。
 東京での乗り換えは思いのほかスムーズで、自由席特急券を買って東北新幹線ホームにあがるが、頭がくらくらした。
 ここには、上越・長野・東北・秋田・山形の5つの新幹線が発着していて、しかも秋田・山形新幹線は途中まで東北新幹線に併結、行き先や停車駅がややこしく、土地鑑がないこともあって「どの列車が仙台に行く」のかさっぱりわからない。東京駅から東北・上越新幹線に乗るのは初めてなのだ。(降りたことはあるが)

 コンコースの発車案内でめぼしをつけた列車は(多分)E200系とかいういかつい車両。既にホームに入っているがまだおり返し準備中で乗れない。乗客が列を作って待っている。盛岡行だ。しかし、向かい側にも200系が止まっていて座席はガラガラ。行き先は「仙台」でこちらの方が先に発車する。間に合わないだろうとノロノロホームに上がったのだが、余裕で座れることがわかり、そちらに乗った。
 東京を出ると、福島、そして終点仙台という停車駅の少ないパターン。確か「福島だけに止まる仙台行」は一日上下各1本だったと思うが、利用者が少なくて意外である。最初僕が乗ろうとしていたカッコイイ方の列車は、あちこちに止まる。

 そんなこんなで10時前には仙台に着いていた。パチンコと漫画喫茶で時間をつぶして(観光してない)ホテルにチェックインする。
 偶然「EYES」という漫画雑誌を見つけたので買っていた。僕が主宰する「パワフルオンライン作家リング」に漫画家の服部あゆみ先生が加盟してくださっており、今月号から先生が新連載をスタートさせるのだ。服部先生は女性ホラー作家なのだけど、「裸の女性がでてくるので男性にも見てほしい」と言われており、ずっとこの雑誌を探していた。「裸の女性」といっても、どうやらもとは男性で、どう言う理由かはまだ出てこないがなにかのきっかけで女性の肉体を持つようになってしまったらしい。だから、実は「男性」なのだ。

 服部先生の作品を読み終えたところで、同行者のみんなもチェックインをすませてやってきた。EYESはJさんの奥さんに進呈しておく。
 ちなみにこの日の朝食は、崎陽軒のシュウマイを東北新幹線の車中で、昼食はミスタードーナツを漫画喫茶に持ちこんでたべた。

 Jさんの車に合計7人乗って、会場の鬼首村へ向かって出発。直後にIさんから「リゾートパーク鬼首」にいるから、会場に行く前によって乗せていってほしいと携帯電話が鳴った。これで総勢8名である。
 開場まで時間があるので近所の食堂で腹ごしらえをしていると、他のグループもやってきた。ファンクラブ優先予約は25枚ほど出ている模様だ。
 
 


 さて、会場の「鬼の蔵」別名「鬼首公民館」は、写真のような具合である。この写真に写っているのは入り口で、奥に土蔵のようなものがあってそこでライブが行われるのだけれど、とにかくこれでは一人ではたどり着けなかった。どこかに「公民館→」のような案内が出ているわけでもなく、もちろん入り口にだって看板はない。連れてきてもらって良かった。京阪奈プラザの時も会場探しに往生したが、聞けばわかった。こちらはそもそも「鬼の蔵」なんて名称がどの程度とおっているのかすらわからない。タクシーに乗ってもわからないだろうと言われた。

 会場は狭く暑い。今年は異例の暑さだと言う。座席は7列×6人と見受けられたが、さらに椅子が増設され、ほぼ50人の入場である。

 そして、いきなりのロングMCからはじまった。前に立ったのは、地元の大沼さん。今回のステージのメンバーでもある。

 「出演者がまだ到着していません。リハの時はいたんですが、今は居ません。音響さんも居ません」
 そんなわけで、間を持たせようとあれこれしゃべりを繰り広げるが、なんと話術の上手な人か。リハでパンダさんにボロクソに言われたことなどを面白おかしくしゃべるのだ。

 20分あまりしゃべりつづけてようやくステージが始まった。

1.縄文音楽

 大沼さんと中鉢さんの地元のお二人が、手作りの土笛と竹笛で、幻想的なメロディーを奏でた。
 縄文音楽の研究成果と創作イメージの割合がどれくらいなのかわからないけれど、喜太郎と雅楽を足して2で割り、笛で演奏することを前提に編曲したような感じ。(って、聞く人によって違うだろうけれど)

 幻想的なオープニングは、もう少し聴いていたい気がしたが、一曲だけで終わって聖子さんを招き入れる。

2.シオン(聖:エレピ・ボーカル)
3.Respect( 々 )
4.春の娘(聖:ギター・ボーカル)

 途中にご挨拶と手作り楽器についての簡単なMC。前回(鬼の蔵第8楽章)に来た人は? という質問に、挙手で答えたのが10人程度、一方、今回はじめてという人は20人くらいはいた。僕もその一人である。そして、大沼さんが再度入場。縄文音楽のいわれなど、聖子さんと大沼さんのやりとりを中心としたMC。このあたりのことは実際に現地でライブを観ながら味わってほしいので内容は書かない。同じMCが今後あるかどうかはわからないけれど、何度となく話題になるはずだと思う。

5.約束(聖:ギター・ボーカル、大:ギター)
6.一緒に暮らそう(聖:エレピ・ボーカル、大:パーカッション)
7.ガンバレ(聖:エレピ・ボーカル、大:パーカッション)

 大沼さんはこのひのために「In My Heart」を耳コピーで練習してこられたらしいのだけれど、いざあわせてみると、CDのキーやコード進行は、普段聖子さんがライブでやっているそれとは異なっていたため、だめということになったらしい。それで、もう一曲、大沼さんが練習してあった「約束」だけになる。
 この「約束」も、ライブとしては楽しかったが完成度はイマイチ。やはり一部コードが違うせいらしい。お約束のコード進行なら大沼さんは即興でかなりこなすことが出来ると後のパンダさんとのセッションでわかるのだけれど、「約束」は聖子さんと大沼さんとのコンビネーションを聴かせようとしてちぐはぐしてしまった印象を受けた。聖子さんがストロークを、大沼さんがメロディーを、それぞれ担当していればもっと完成度は高くなったろう。ただ、あえてそうしなかったところに、ライブの良さ、楽しさが現れていて、良かったと思う。
 大沼さんが陶芸家の方に頼んでボランティアで作ってもらった(しかし、制作費は10万円らしい)「はにわパーカッション」も面白かった。素朴だがとても良い音が出ているし、曲にあわせた叩き方の強弱もまったく違和感なくマッチしていた。
 普通のステージで、キーボードとパーカッションの組み合わせなんてそうそうありえないと思うけれど、二人がつむぎ出す音楽に、僕は久しぶりに感動した。そう、感動したのだ。すごい音楽に感心することはあっても、それは感動とは別物だ。聖子さんのライブに年に何度も行くようになって久しいが、慣れも手伝って、少し感動から遠ざかっていたような気がした。
 聖子さんのステージはここまでで、山田パンダさんが登場。

おまけ.ドラえもん(パ:ギター・ボーカル)
8.あしたの風( 々 )
9.落葉( 々 )

 子供がいると必ずの定番「ドラえもん」をパンダさんがいきなり歌い始める。ただし、ワンコーラスどころか、さびの手前で終わってしまう。そして、聖子さんとのやりとり。はっきりとは言わなかったが、リハの後、パンダさんが一人で出かけた喫茶店の帰りに迷子になったのがステージの遅れた原因のようだとMCで判明。
 聖子さんが退場してソロで2曲。そして「大沼君、手伝ってよ」と、パンダさんが大沼さんを呼び寄せる。リハでかなり厳しく言われたらしい大沼さんは一升瓶をラッパのみしながらステージへ。

10.眼をとじて(パ:ギター・ボーカル、大:ギター)
11.おはようおやすみ日曜日( 々 )
12.こもれ陽( 々 )
13.君がよければ( 々 )

 どうも「11」と「13」は、予定の曲をその場で変更したようだが、大沼さんはちゃんと合わせてくる。「かぐや姫」の曲のコード進行があわせやすいという理由もあるだろうけれど、さすがだと思った。リハではかなりけなしたらしいパンダさんも上機嫌である。
 パンダさんはピックを使ったストロークかアルペジオが主体で、大沼さんは間奏などを結構楽しんでやっている。僕はほとんどかぐや姫のオリジナルを知らないのだが、「遊んでいたよ」と教えてくれる人もあり、即興の要素がかなり入っていたのだろう。
 大沼さんの奏法は、コードをじゃんと弾くときもどうやらピックを使っていないようだ。親指以外の指を曲げておいて、音を出すタイミングで指を開く。こういう奏法をなんていうのかは知らないけれど、友人がこんな弾き方をしていた。

 ところで、さっきも書いたけれど、僕はかぐや姫の曲は、「神田川」はじめ大ヒット曲しか知らないので、タイトルを探すのに苦労をした。深夜にもかかわらず歌詞カードと首っ引きでタイトルを探しを手伝ってくださったJさんの奥さんには改めてお礼を申し上げたい。どうもありがとう。

 さて、聖子さんが呼ばれ、3人のステージになった。

14.初恋(聖:ギター・ボーカル、パ:ギター・ボーカル、大:ギター)
15.踊り子( 々 )

 聖子さんとパンダさんが同じステージに立てば、必ず村下さんの話題が出る。一周忌を終え、もうしんみりすることもなくなったが、それで良いと思う。振り返っても戻らないのなら、曲だけを歌い継げばいい。

16.妹(聖:コーラス、パ:ギター・ボーカル、大:ギター)
17.加茂の流れ(聖:コーラス、パ:ギター・ボーカル、大:ギター・コーラス)
18.おもかげ色の空(聖:エレピ・コーラス、パ:ギター・ボーカル、大:ギター・コーラス)

アンコール.僕の胸でおやすみ(聖:コーラス、パ:ギター・ボーカル、大:ギター・コーラス)
ダブルアンコール.神田川( 々 )

 アンコールがちょっと欲求不満かな? 聖子さんのソロなら、アンコールは3曲。そして、ダブルアンコールがあれば、そこで弾き語りやア・カペラというのが定番だから。それと、コンサートの全体構成からいけば「かぐや姫」でなくても良かったと思う。
 これが沖縄ならこれでもいい。かぐや姫のコピーバンド「かぐやひも」とのセッションだし、客の大多数も「かぐやひも」の普段からのファンだから。でも、鬼の蔵がこれでいいとは思わないのだ。
 確かに聖子さんのオリジナルである必要はないかもしれない。だったら、もっとスタンダードナンバーでいいだろう。聖子さんの定番としては、「砂浜」「夜空のムコウ」「大きな古時計」などかな? もちろんこれ以外でもいいのだが。
 でも、そうしてしまうには、パンダさんの存在は大きいからね。大物だから、というのではなくて、会場の空気を作っているのが後半はパンダさんだったから。やはりキャリアの差でしょうか、それとも年齢の差かな?


終演後のステージ。SMCの社長の許可をもらって撮影したものですが、
アーティストのポスターにはモザイクをかけてあります。

 

 さて、今回はこれで終わりではない。仙台市内に戻ってオフ会である。
 もう11時を回っていたが、土曜日の夜ということもあってなかなか店がない。上品な居酒屋という感じのお店に空席をようやく見つけた。
 「牛タンで乾杯」の予定であったが、個人的には、居酒屋で良かった。メニューには「牛タン」もあったし、その他のものも色々食べることが出来た。牛タンだけではしんどかっただろう。
 でも、なぜ仙台名物が「牛タン」なのだろう? 以前、なぜ盛岡名物が「韓国風冷麺」なんだ? と思ったのと同じである。
 宿に戻ったのは2時前後だったろうか?
 しばらくおしゃべりをして、そろそろ寝ようという頃になって暴走族が走り出した。
 といっても、別に暴走をしているわけではない。徒党を組んで、ジグザグ走行や逆行、信号無視をしているのだ。パトカーもかなり出ていたが、繁華街に侵入させないように睨んでいるだけで、取り締まろうとはしない。
 そして、僕はむかついてしまうのである。
 僕もスピード違反やシートベルトでつかまったことがある。しかし、スピード違反は当時中速車扱いだった250ccバイクを、流れに合わせて走らせていただけである。中速車の最高速度は50kmなのだ。まわりの乗用車は高速車扱いで最高速度60km。同じように走っていれば当然スピード違反になる。しかし、10キロゆっくり走らせていたらその方が危険だ。
 シートベルトにしても、もし事故ったら、やばいのは自分であって、人に迷惑をかけているわけじゃない。
 こんなのを一生懸命取り締まるくせに、集団で危険行為を犯す暴走族を野放しか?

 ふざけるなと言いたい。大切な税金を使うんだから、もっと考えてやってほしい。パトカーで道をふさぎ後ろから追いこんで、催涙弾でも投げ込んだら一網打尽じゃないか。何もしないのなら出てくるな!

 さて、ついでといってはなんだけれど、帰りに購入した駅弁を大公開。


 ご飯も2種類あるし、おかずも多くていいですね。上段左から、貝、卵焼き、肉(味噌味)、?(練り物)、魚(甘露煮)
 中段左から、おはぎ、野菜煮物、貝、笹かまぼこ、わかめ。右下は漬物とフルーツ。
 僕は純粋にお弁当として食べましたが、おかずをアテにしてお酒を飲むのも悪くないです。そういう人は、お漬物と梅干でご飯を食べられますから。
 そうそう、この梅干がまたいいんです。幕の内にありがちな硬い小梅ではなく、水分たっぷりのしんなりした「梅漬け」なんですよ。


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