大阪UMEDA HEAT BEATで行われるアコースティックライブは今回が3回目。
弾き語りをメインに行われるジョイントライブで、大阪だけのシリーズものである。
地方公演も時々追いかけるので最近はライブへの欲求不満はほどんどないけれど、もし大阪公演だけを対象にするなら、このシリーズのおかげで聖子さんの歌を聴く機会が増えてありがたい。
昨年はアコースティックライブが2本、あの頃を思い出してが1本、そして、メインのインマイハートコンサートが1本と、大阪だけで4回も公演が行われた。もっとも、インマイハートコンサートは年2回という印象があり、1回だけだったのはちょっと心残りかな?
谷山浩子さんは、盛岡菓子博でのジョイント、そしてつい先日、1月の富良野チャペコンと、いずれも聖子さんがらみの遠征で2度ほど経験がある。
今回のライブには谷山浩子さんのファンも多数おり、おそらく半分、またはそれ以上だったかもしれない。聖子さんがステージから「初めて沢田聖子を生で聴く人」というアンケートにもかなりの拍手があり、また、聖子さんファンの集まりでも「谷山さんは初めて」という人が結構多く、ジョイントがきっかけで新しい音楽に親しむ機会をえたようである。
会場はほぼ満席で、もしかしたら立ち見もあったかもしれない。期待通りインディーズの「at home」を会場販売で入手できてごきげんである。
沢田聖子ステージ
1.シオン
2.Respect
3.smile
4.ガンバレ
5.at home(ギター)
6.初恋(ギター)
7.少年とドルフィン
MCが珍しく少なめ。
「at home」というTBS系ドラマ「愛の劇場」シリーズの主題歌を担当したこと。これは11人のアーティストが週替りで主題歌を担当するという企画で、メロディーが同じで歌詞が違う。11週目まではソロバージョン、12週目は全員で唄うので、12番まで歌詞があるというわけだ。
聖子さんの週はちょうど今週で、ライブは土曜日だから、既に終わったことになる。一人か二人だけだったけど、会場から「エー!」とうい声が響いた。他にも心の中で叫んでいた人もいただろう。
僕はファンクラブやインターネットで知っていたから何度か観る(聴く)ことが出来たけれど、こういう情報を入手するのはむつかしいだろう。CDそのものはインディーズだし、よほどの大物歌手でなければ黙って座っていて情報を得るのは至難の業だ。
それからこのアコースティックライブの説明。第一回が「村下孝蔵」さんとのジョイントで、その3週間後ぐらいに村下さんは他界。しかし、歌は唄い続けていきたいと「初恋」を唄った。
そして、聖子さんが長年やっているソロでのライブ「インマイハートコンサート」や、「かたつむり大作戦」(KBS京都テレビの交通安全キャンペーンで、募金が交通遺児などに配られる)のボウリング大会のイベントのお知らせ、そして「at home」を唄うアーティストによるリレーコンサートのことなどがあった。
インマイハートコンサートは、東京・名古屋・大阪がバンド編成でのライブで、他にアコースティックバージョンで札幌・鬼首・日程が未定だが福岡で行われる。僕は2バージョンを楽しむために大阪と鬼首に行く予定だ。
リレーコンサートは五十嵐浩晃さんとのジョイント。珍しくSMCが企画・製作をしないライブに「呼ばれて」の出演だ。
この他に、今回のジョイントの相棒、谷山浩子さんのこと。
「浩子さんの歌ってよくきいているとなんだかすごいのがありますね。さかなガールとか。『君がよそ見をしているから焼いて食べちゃった』」とか、「普段のことが想像つかないですね。たとえば『何を着て寝ているんだろう? ネグリジェじゃないですよね』」などなど。聖子さんのステージの感想。
曲数が少なめかなと感じた。
僕は本人じゃないから本当のことはわからないけれど、ジョイントのためにいつもの半分の時間しか出来ないので、選曲にもそれなりに苦心があったような気がする。というものの、これは後で曲目を書き並べたのを眺めて感じることだ。
それと、今回はじめてギターの弾き語りに「?」と感じた。ピックを使ったストロークだけではちょっと物足りない。
「at home」を生で聴けたのは大きな収穫。直前のほかのライブでこの曲をやったという情報は得ていたので、おそらく今日もやるだろうという予想はしていたけれど。事前にCDを購入できなかったので、何番と何番をやったのかは不明だけれど、CD収録のフルバージョン(詞は6人分で聖子さんの部分は含まれていない)ともまた異なる。いずれにしても聖子さんの歌で1曲分堪能するにはライブしかなく、6月のライブではバンドバージョンでこの曲が聴けるのではないかなと期待が膨らんだ。
沢田聖子&谷山浩子トークショー
ステージに椅子が二つ用意されて、聖子さんが浩子さんをステージに招きいれた。
「それでは次のステージは谷山浩子さんです」のような紹介程度なら椅子は要らない。腰を据えて(?)のトークの始まりである。MCが少なめだったのも、このために控えていたのだろう。
「浩子さんって、何を着て寝ているんですか?」
「パジャマです。聖子さんは?」
「ジャージとか、そのへんにあるTシャツとか」
二人のキャラクターの典型的な違いを見た思いがする。
話の順番をよくは覚えていないんだけれど、話題はダイエットに。
聖子さんはつい先日、「テレカダイエット」にチャレンジをしたそうだ。テレカの磁気が聴くのだそうでお腹にある3ヶ所のツボに貼り付ける。
「三日続ければ効果があります。て雑誌に書いてあったんですが、一日半で挫折」
かぶれたそうである。
「わたしは朝食抜きダイエットをしています」
「朝食抜き? 朝食を抜くと太るって言われてますよ」
「それは、朝食の分を昼食と夕食で取り返すから太るんです。わたしは普通に昼食と夕食を食べてますから。ハンバーガーとか身体によくないものを食べるでしょ? 朝食を抜くということは軽い断食みたいなもので、悪いものが身体から出て行くんです」
説得力があるような、無いような話である。
そして、トークは「谷山浩子の一日」に。
「浩子さんは何時に起きるんですか?」
「そうねえ。何も無いときは、1時半とか、2時とか」
「それじゃあ、世間の昼食も終わってるじゃないですか」
「だから、私的に朝食を食べないんですよ」
「それで、起きたらまず何を?」
「パソコンの電源を入れます」
「は? 普通は歯を磨くとかトイレに行くとか」
「その前にパソコンの電源を入れるんです。立ち上げるのに時間がかかりますから」
「それで、寝るまで一日中つけてるんですか?」
「外出するときは消しますけど」
そんなこんなで結局「谷山浩子の一日」どころか、朝(一般的には午後)の話だけで時間が過ぎていく。
そして話題は「人間ドックに」
「ああ、あれは身体によくないからやめたほうがいいです」
「あれは辛いらしいですよね」
「朝、早いんです。8時に行かなくちゃいけないんです。前の日に何も食べちゃいけなくて、それで徹夜で病院へ行って、炭酸のきついのを飲まされて…」
「徹夜しなくてもいいじゃないですか」
「8時に行こうと思ったら徹夜になるんです」
午後2時くらいにおきて、寝るのが大体朝方という生活の浩子さんなのだ。
「それで身体の具合が悪くなって、一週間ぐらい辛かったんですよ。それに、検査の結果、健康だったんです」
「健康だったらいいじゃないですか」
とまあ、こんな具合でおそらく約30分。この他に浩子さんは全くお酒を飲まないなどという話題なども。
聖子さんは一人で語るMCと、相棒がいるのとでは全然ペースが違い、おしゃべりが機関銃のようになる。
谷山浩子ステージ
8.一人でお帰り
9.鳥かご姫
10.さかなガール
11.小さなさかな
12.ドア
13.窓
14.おやすみ
トークショーでそれなりに時間を消化したせいかやはり長いMCは無し。
沢田さんとジョイントするときはいつも私が後で、『お待たせしました、谷山浩子さんです』と紹介を受けて出てくるので、いつも悪いなあって思っています、と谷山さん。
簡単な曲紹介と共にライブが進んでいく。
鳥かご姫は岩男潤子さんに提供した曲のセルフカバー。
「最近、新潟のほうで猟奇的な事件がありましたけれど、全く関係ありませんからね。」と、言い訳をする。
「私の歌には、エキセントリックな男の子の詞が多いんですが、ええっと、次の曲も、関係ありませんからね。偶然ですからね。なんでわたし言い訳してるんだろう?」と、「さかなガール」を曲紹介。会場から笑い声が。
「今、笑った人はこの曲を知っている人ですね」と、浩子さん。実は聖子さんが前振りをしていたのだが。
聖子さんのMCでは浩子さんが語られたように、浩子さんも自分のMCで聖子さんの事に付いて語る。
「繊細で傷つきやすく、そして立ち直りが早い」のだそうだ。
相談の電話を受けたことがあり、話しているうちに自分まで悲しくなってしまい、2週間ほど悩みつづけたという浩子さん。後日「あれからどうなったの?」と問えば、「話を聞いてもらってすっきりした」という返事。浩子さんが悩んだ2週間とは、いったいなんだったのだ?
「聖子さんは典型的なB型。私はA型です」
そして、手塚治虫原作「ガラスののう(脳かな?)」映画のエンディングテーマとなった「ドア」。この曲は、作詞を担当し、作曲は崎谷健二郎。石井聖子さんが歌っている。
石井聖子さんは今日、岡崎倫典(聖子さんと同じSMCグループの所属)さんとジョイントのコンサートを別の会場で行っている。(だから、ここにはサポートに来れないのだ。期待していたが迂闊だった)
そして、崎谷健二郎さんといえば、SMC内に事務所を構えている(ややこしいな)アーティストで、ライブなどはSMCが企画制作をしているらしく、なんだか近いところをぐるぐる回っている感じ。
「純愛を描いたとってもいい作品です。以前ストーリーの全てをしゃべってしまって叱られてしまいました。映画は終わったけれど、ビデオとか出ると思いますし、そちらでご覧になってください」と言いながら、どんどんストーリーをしゃべり始める。
「あ、喋ってしまっている」
何かの引用だと谷山さんはおっしゃっていたが、本当の愛かどうかの見分け方について語られた。
「かっこいい」だとか「学歴がある」とか「優しい」とかの条件が先に来る愛は本物じゃなくて、ただそこに存在する人が「ただ好き」というのが本物。条件はあとからついてくる。「そういえば、この人やさしいのね」みたいな。
学歴や収入だけでなく、優しいなど人格に関わる部分すらも「条件」「外見」の範疇に入ってしまうのだ。ちょっと衝撃的だった。
(曲タイトルの表記が間違っていたらごめんなさい)
浩子さんのステージの感想。
谷山浩子さんの曲はやはり生のステージがいいなあと思った。
「カントリーガール」の大ヒット以来、谷山さんの作品は時々耳にするけれど、詞も曲も独特のもので、カントリーガールほど聞きやすい歌は少ない。ライブでMCを挟みながら独特の世界に浸るのがいい。CDを自分の部屋などで聞くと、その独自の世界観に浸りきれなくて違和感を感じそうだ。
谷山さんはピアノの奏法をいくつも持っていて、曲それぞれに使い分けているのが凄いと感じた。
富良野のチャペコンの時はエレピだったが、今日のように生ピアノの方がいい。聖子さんの場合はどちらで聴いても優劣を感じないが、浩子さんは断然グランドピアノでなくてはならないだろう。
ふたりで
15.大きな古時計
16.カントリーガール(アンコール)
浩子さんが聖子さんを呼び寄せて、二人のステージ。
「スタンダードです」
というので、カントリーガールかなと思ったが、「大きな古時計」だった。浩子さんが伴奏をし、二人でハモる。
ここでいったんステージは終了、アンコールの拍手。
「実はアンコールの曲を用意していなかったので、どうしましょう」
聖子さんのリクエストは「カントリーガール」。
「カントリーガールは、歌詞カードを持ってきているんですけど、聖子さん歌える?」
「うー、多分…」
「練習しましょうか」
「れ、練習?」
1番と3番を浩子さんが、2番を聖子さんが、さびの部分は二人で、と打ち合わせが整って、聖子さんが2番の出だしを少しだけ歌う。
「あ、大丈夫」と、浩子さん。
「本当に?」
「大丈夫ですよ」
そんなわけではじまったカントリーガール、ちょっと聖子さんはとちったけれど、無事歌い終える。
二人が袖に引っ込むと、客席が明るくなり、BGMが流れる。けれど、再度アンコールの拍手がやまない。
しばらくして「終了」のアナウンスが流れるが、少しタイミングが遅い気がした。
ライブ全体の感想。
ライブそのもの、ひとつひとつの曲やお喋りは十分堪能させてもらったけれど、全体としてはちょっと消化不良。というか、欲求不満。
普段の谷山さんのライブがどうかは知らないのだけれど、聖子さんのソロライブの場合、アンコールはだいたい3曲する。それに慣れていたせいもあるだろう。
準備をしていない関係でダブルアンコールが無理なら、ステージ上であいさつだけして「気をつけてお帰りください。またお会いしましょう」だけでも良かったと思うけれど。
そして、もうひとつはせっかくのジョイントなので、セッションの要素をもっと取り入れて欲しいと思う。
さらに言えば、これも谷山さんについては知らないのだけれど、聖子さんの場合は「ピアノ弾き語りコンサート」というバンドの入らないライブもひとつの形になっているので、この「アコースティックライブ」は弾き語りにこだわらなくてもいいと思う。
今回はスケジュールがダブっていたので倫典さんは無理だとしても、ギターが入ってもいいんじゃないの? などと感じた。
ギターのほかに、ブルースハープ、バイオリン、フルート、サックス、マリンバ、ウッドベース、リズム楽器としてコンガやボンゴなど、いつもとは異なったバンド編成で「アコースティックライブ」を演出してみてはどうだろうか。(というか、これだといつもより豪華だね)
収容人員と入場料というシビアな問題は生じるだろうけれど、個人的には若干高くなっても構わないと思うし、これだけのことをすれば東京と名古屋でも実施して、それなりの形になるように思う。
コンサートはいわば「毎日食べるAランチ」ではなく、僕にとっては「ディナー」である。正装をして聴きに行くわけではないが、特別なものであって欲しい。
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