今回は北海道旅行や、谷山浩子チャペルコンサートも混じって、長い! コンサートレポートだけを読みたい方は、じゃんじゃん読み飛ばして下さいね。
1月のシフトを組んだ12月中旬、Iさんからメールで第一報が届いた。
1月16日にイルカさんとのジョイントライブが新富良野プリンスホテルで開催されます。
僕はサービス業従事者なのでY2Kとは関係なく年末年始は仕事で、その分どこかで冬休みがとれることいなっている。そして、組を得たばかりのシフト表によると1月13日〜17日が休みなのだ。ライブにあわせて休みを取ったのではない。偶然だ。日頃の行いがさぞよかったんだろう。これだけバッチリ休みが重なれば行くしかない。
ライブの前日の15日、僕は関空から旭川に飛んだ。Iさんからの情報は多岐に渡っており、ホテルの空室状況からバスの時間まで詳しい。もともと15日は満室とのことだったが、その後部屋が取れたので15日に富良野入りを決めたのだ。16日はビジネスホテルかどこかでいいと思っていた。ところが16日はIさんがファン仲間のために2室を確保してくれていて、エキストラベッドを入れれば最大6人まで宿泊可能と言うから、それに乗ることにした。
新富良野プリンスホテルの正規の宿泊料がいくらか知らないのだけれど、16日のコンサートと宿泊をセットしたパックがあり、これだと朝食付きで9000円。15日の宿泊にも適用可能ということで、2泊2朝食1ライブで18000円と格安なのだ。
Iさんからのもうひとつのありがたい情報は、旭川空港からの直行バスの存在だった。
全国版の時刻表には掲載されていない。時刻表を頼りにすると、旭川空港から旭川駅へ、さらにJRで富良野へ、そしてバスで新富良野プリンスホテルへとなり、3時間以上かかる。これが直通バスで1時間教なのだからありがたい。各駅停車の路線バスもあったが、直通バスもあるのでそちらに乗った。中型のバスで7人が乗車。
1時すぎにホテルに着いた。これならスキーが出来る。ウエアもスキーも全てレンタルで揃えてさっそくゲレンデに出て、半日券を買った。
素晴らしいゲレンデだ。雪質はいいし、リフト待ちはほとんどない。ゴンドラには若干の列があるけれど、それだけだ。ゲレンデはもちろんすいている。何度か中腹程度までリフトで上がって滑るうちになんとなく全体のレイアウトがつかめ、頂上からでも初心者オッケーのコースが設定されていることもわかった。よし、なら次はゴンドラとリフトを乗り継いで頂上まで行こう。そう思ったら、ゴンドラの営業時間が終わってしまった。それからもしばらく滑ったが、数年ぶりのスキーで左足の土踏まずがひきつりはじめた。靴を脱いでマッサージするも限界のようだ。3時間ちょっとだったが、正月や連休の信州のゲレンデ2日分はたっぷり滑った。
新富良野プリンスホテルについても触れておこう。素晴らしいホテルだ。スキー場にありながら、クラフト教室やパン工房、バスツアーなどが用意されている。つまり、スキーをしない人を連れていっても楽しんでもらえる。
カラオケやパブはなく、またあってもおそらくみんなスポーツをしに来ているのだから、利用はあまり見込めまい。部屋の冷蔵庫は空っぽで、ロビー階のコンビニで買って持ち込んで下さい、とある。しかも、このコンビニ、24時間営業の上、高くない。運営コンセプトがしっかりしているなと思った。
この日、僕の部屋に宿泊したのは3人。最初はシングルユースでとっていたのだが、徐々に仕事などの都合をつけて集まってくる人が増えたのだ。この他に、自分たちでホテルを予約した顔なじみなどが集まって、バイキングで夕食の後、チャペルコンサートだ。バイキング会場で聖子さんに会った。
もともとは明日のライブが目当てだったが、土曜日の夜なのでこの日もチャペルコンサートが企画されている。出演は谷山浩子さんである。
谷山浩子&岡崎倫典コンサート
1.曲目不明(ピアノ弾き語り)
2.ドア(ピアノ弾き語り)
3.まっくら森のうた(岡崎倫典ギターサポート)
4.麻衣(岡崎倫典ソロ)
5.Eros(〃)
6.うさぎ(岡崎倫典ギターサポート)
7.カントリーガール(〃)
8.あかり(〃)
9.アンコール 大きな古時計(〃)
表向きは「谷山浩子コンサート」だったが、ふたを開けたら岡崎倫典さんが登場してびっくり。しかも、ギターサポートだけではなく、ソロでオリジナル曲も披露。事実上のジョイントライブとなった。
谷山さんのライブは2度目だけれど、あの独特のふるえる声質にやはり惹かれる。知っている曲は少なかったが、じっくりと聴かせてくれる。MCや倫典さんとのやりとりなども楽しい。
曲数が通常のホールライブの半分以下であることは事前に承知していた。しかし、内容の濃さは決して半分ではなく、時間に追われるような風情もなくてMCにも余裕があった。有料とはいえホテル宿泊者を対象にしたライブなので、曲だけに重点を置かない構成を心がけているのかも知れない。
中でもヒット曲で代表曲である「カントリーガール」は、多くの人の耳に馴染みがあるだろう。聖子さんにもこういう曲をたったひとつでいいから生まれないかなといつも思う。
客席は補助椅子も含めて120席ほどで、おそらく100人前後の入場者数だった。最前列に濃い〜谷山ファンらしき人達が陣取っている。聖子さんのライブの時は、我々もあんな風に見られているのだろうか。人の振りみて我が振り直さねばなるまい。
聖子さんのファンであちこちのライブ会場で知り合った10人弱のメンバーが僕たちの部屋に集まってきて、オフ会。ネットやメールで連絡を取り合っているのでとりあえずオフ会と何となく称しているけれど、実体は非公認ファンの集いみたいなものだ。
夜遅くまで話をしていたせいもあって、翌朝は寝坊した。15日にスキーが出来なければ16日にと思っていたが、昨日実現したので今日はバスツアーにでも参加しようと思っていた。拓真館などを巡る無料バスツアーで、この一帯は僕にとって思い出の地だ。なにしろトマムで結婚式をして富良野の市役所に婚姻届を出し、息子の名前が拓真なのだから。
しかし8時半に朝食会場へ行ってたのでは9時出発のバスツアーには間に合わない。はなから諦めてゆっくりとバイキングの朝食を食べる。チョコデニッシュが美味しく、いったいいくつ食べただろう?
というわけで、ゆっくり支度をして雪道に繰り出した。目指すは北時計である。「北の国から」の倉本聡さんの喫茶店だ。冬の北時計は初めてかも知れない。暖かい室内で暖かいコーヒーを飲む。一人で来るつもりだったのだが、Iさんが同行している。何もない雪道を歩くこと1時間、お互いに酔狂なことだ。
僕は自分のペースでのんびりぶらぶら歩くのが好きなので苦にならない。Iさんも同様らしく、二人とも歩いて往復するつもりだったが、馴染みのメンバーから携帯電話にホテル到着を知らせるコールがどんどんくるので、タクシーで戻った。
みんなで昼食をとりながら雑談し、開場の15分ぐらい前に会場前へ行くと、結構な行列だ。おおよそ200人とみた。
僕の名前で15日1室、Iさんの名前で16日に2室の予約をしてあり、さらにこれは連泊ですよと予約変更を入れ、シングルユースが、2人、さらにトリプルユースと変更をくわえ、さらにさらに、日帰りでコンサートを観る人の予約まで入れたのでフロントが混乱しており、チケットが不足、Iさんが走り回る羽目になった。
もともとホテル側が混乱していたことは実は承知していた。
コンサートパック9000円のところ、旅行代理店を通じて予約した人はノーマルの宿泊料金でさらにコンサート代を払わねばならなかったり、直接予約の人でも「パック」と言わなければパック料金で案内されなかったりしていた。
それに、僕が最初予約したときは「イルカさんのソロで、今のところ沢田さんとのジョイントになるとは聞いていません」とも言われた。
12月、1月のチャペコンのステージで、聖子さんがこのライブについて何度か予告していることが、ファン仲間からのメールで知らされているが、それも「一緒にやります」とか「ちょっと出させていただこうかなと思っています」まで、聖子さんの語るニュアンスも色々あり、2転3転したのかもしれない。
そうこうするうちに大量の人並みが列の後ろに付いた。おそらくツアーバスが到着したのだろう。JR北海道がこのコンサートを中心にしたツアーを組んでいる。日帰りと宿泊コースがあり、それぞれ鉄道付きと現地集合解散の2パターンが設定されている。それはともかく、現地集合解散で朝食付き宿泊パックが9400円と、ホテルに直接申し込むより400円高い。
予定通り1時30分に開場となった。朝夕のバイキングに使われるメインバンケットホールには、ざっと数えて800の座席があった。
入場者数はおそらく700人弱。聖子さんのライブとしては結構な数だ。
ライブそのものはホスト役が聖子さん、スペシャルゲストがイルカさん、という感じである。聖子さんの拍手アンケートによると、もっとも遠方から来ている人でも関西。それも数人。通常の夜のチャペコンは関西からの人が結構多いと聞く。だがこのスペシャルはほとんどが道内の人だ。遠方から来ている人はスキーが目的であるわけだし、昼間の良い時間にコンサートをされても食指が動きにくいだろう。つまり、観客はこのライブのためだけにやってきているのだ。さすがイルカさんの吸引力は大きい。
僕たち聖子さんの熱心なファンも、スキーを全くしていないメンバーがいる。僕は若干したけれども、やはりどちらかというとコンサートがメインなのだ。もっともわずかな隙を見て滑りに行く強者ももちろんいる。いや、強者と言っては失礼だ。富良野に来てスキーをしない方が強者なのかも知れない。
1.シオン
2.約束
3.少年とドルフィン
まずは聖子さんのソロステージ。ピアノの弾き語りだ。イルカさんとのジョイントをこの会場の中で最も楽しみにしていたのはわたしだと思います、という聖子さんの台詞に、きっとそうだろうなと思ってしまう。
感動の対面をするはずだった羽田で、バスに乗っているときにイルカさんの方から声をかけられてしまったとか。本当は両手を拡げて抱き合うはずだったらしい。
3曲を終えた聖子さんはイルカさんを招き入れ、空港では実現しなかった涙の再開シーンをステージ上で演じた。
多くのイルカファンは、もしかしたら良く意味がわからなかったかも知れない。きちんとわかっているのは、全国から駆けつけた20名くらいの聖子さんファンだ。
聖子さんはイルカオフィスからデビューしている。その後、独立。歌手を引退するのならともかく、そうではないのだから、色々な想いが双方にあっても当然だ。しかもステージはビジネスなんだからなおさらだと思う。それらを乗り越えて実現した師弟のステージはそれだけでも素晴らしいと思う。
そして、延々とトークショーが始まった。
聖子さんの語るところによると、確か自伝の「少女期」という本に、イルカオフィスのオーディションではもうひとりの候補者が辞退したため、聖子さんのデビューが決まった、と言うことになっている。
でも、「そうじゃないのよ」と、イルカさん。
出産前後の2年間の休業中に、新しい人を発掘しようとして、聖子さんに目が止まった。イルカさんのご主人(イルカオフィス社長)が言うには、「是非、彼女をプロデュースしたい」だったのだとか。
実力は女性シンガーはみんな見栄えがイマイチなので、これからは可愛い子を歌の世界に送り出したいという希望があったようだ。もちろん可愛いだけではダメで、実力や性格など、色々な意味で目に留まったのだとイルカさんは語った。
二人のトークが続く中、聖子さんは涙を拭きながらの会話で、僕も思わず涙腺が緩くなってしまう。イルカファンにとっての沢田聖子にどれほどの意味があるのかはわからないけれど、聖子ファンにとってはイルカさん非常に大きな存在であり、ファンの多くがこの日を夢見てきたのだ。
イルカさんが聖子さんに提供した楽曲は多いし、イルカさんもセルフカバーしているから、二人で歌える曲はかなり存在するはず。今後もイルカ&沢田聖子のジョイントが各地で行われればいいなと思った。
4.海岸通り
5.光のとびら
光のとびらはイルカさんのニューシングルで、震災にあった神戸への応援ソング。
僕はその日、神戸市北区よりもわずか北の地で目を覚まし、ろくな情報がないまま「電車、動くのかなあ」と出勤の準備をしていた。そこへ、妻の実家から「全壊」の電話が入った。こちらから電話をしても全く通じなかったのだが、これでおおよその様子をつかむことが出来た。
おにぎりを作り飲料水を確保して、神戸へ向かう。1時過ぎには妻の実家に到着した。三田から神戸への道は無傷だったのだ。まだ車での神戸進入自粛の呼びかけは始まっていなかったが、大阪から神戸へ向かう道路は既に麻痺状態になっていたらしい。
明日で震災から5年。テレビや新聞は色々な形でそれらを報道していたが、まさか北海道で、イルカさんの唄として、震災が語られるとは思ってもみなかった。おそらくこの会場にいるほとんどの人が震災と無縁だった人だろう。
なのに、みんなでこうして振り返り、そして未来を考えることが出来たのは、本当にありがたいと思う。忘れてはいけないのだ。震災はまだ終わっていない。身も心も傷ついた被災者と、この会場の誰かがどこで出会うかわからない。そんなとき、ほんの小さな何かでも被災した人達を癒せる人間であって欲しいと願う。
僕は側にいながらほとんど傍観者でしかなかったけれど、それでもこうして唄があるということに、涙が溢れて止まらなかった。
6.冬の馬
7.いつか冷たい雨が
8.君の人生
9.祈り
10.心配させたい帰り道
アンコール
11.なごり雪
12.春(聖子さんを呼び寄せて二人で)
約2時間のステージで、たった12曲だから、いかにトークの多かったかがわかると思う。
このあと同じ場所で夕食バイキングを控えており、多くのスタッフが待ちかまえていて、一斉に撤収が始まろうとしていた。
僕たちは本日帰宅組を見送って、約10名で富良野市内に出て居酒屋で夕食。日が暮れていたせいもあるが、雪に埋もれてほとんど人通りもない町は、しずかで淋しかった。夏の富良野の、そう、へそまつりに代表されるような明るいイメージは全くない。北の果てのさびれた田舎町だった。まだ6時にもなっていないのに、なんだか真夜中のような印象を受けた。
食事の後、電車で帰る人をやはり見送って、僕たちは新富良野プリンスホテルに戻った。
富良野のチャペルコンサートと沖縄のアコースティックライブはいつか観たいと思っていたが、なんとアッという間に両方とも実現してしまった。富良野については実は今年は予定していなかった。イルカさんとのジョイントが実現するということで急遽駆けつけたのだが、これがなければおそらく来年になっていただろう。
ともあれ、これで地方公演への追っかけは当分しないだろう。大阪公演を地道に見つめていきたい。