押尾コータローの彩られた光 ライブレポート

01/04/05(木) 大阪・福島「ヒポポタマス」




 会場のはビルの5F。エレベーターの扉が開いたらホールも何もなくすぐに店内で、いきなりびびってしまった。そういえば、ビルの名前が「びびる」である。

 大きな会場だとは思っていなかったが、一般的なライブハウスを想像しており、「並んだ順に入場する」のだろうと勝手に解釈していた。「開場の1時間前に行けば一番前で見られるだろう」と同行のN君と打合せをしていたのである。
 ところが、待つスペースなんぞないのだ。

 お店の人は「まだ1時間以上あるんですけど・・・」と、困ったような哀れむような・・・。
 「いえ、兵庫の山の中から出てきたので」と、まるで時間を読み違えたようなけったいな言い訳をしながら、「そのへんで時間を潰してきますから・・・」と、そそくさと出て行った。すぐそばにミスタードーナツがあったのが幸いである。
 開場にはまだ時間が少し早かったのだが、戻ってみると入場させてもらえ、リハーサルなのかなんなのか、押尾コータローさんが店内でギターを抱えている。笑顔で迎えてくれた。
 さて、座席は驚くべきことに指定席。名前を書いた紙が椅子に張ってある。テーブルと椅子を置いたら15名ほどで満員になりそうな店内に、所狭しと椅子が並べられていた。満員御礼なのである。
 トイレはと訊けば、そこのカーテンの向こうと店の奥のほうを指差され、カーテンをはねるとコータローさんがドーナツを食べている。その向かいがわにトイレがあり、用を足したのだが、これからギターの演奏を聴かせてもらうアーティストに、こちらの用を足す音を聞かせてしまったとは、なんか変な気分である。おまけに当人は軽食中で申し訳ないことはなはだしい。かといって、漏らすわけにもいかないから仕方ないのだ。

 お店のオーナーが聞けば気分を悪くするかもしれないけれど、「独立してやりたいことをやる」とは、こういうことなのだろうなと思った。場所がら賃貸料も決して安くはあるまい。そのギリギリのところで持てる我が城が、やっとのことで40人が入場できるちいさな場所である。サラリーマンという身分で130席もある食堂をやっている自分とは「いったいなんなんだ?」と思った。人を使い、人に使われ、時として夢を見失う。多くの人の思惑に翻弄される。それが整った施設と引き換えならば、僕は小さくてもいいから自分の城を持ちたいと思った。


1.春の歌メドレー 
 春が来た、春、春がいっぱい、の順。
 歌のタイトルとは合わないかもしれないけれど、イメージは「深海」。本当は深海には光が届かないけれど、そこはイメージだから勝手に膨らんでいく。光に満ちた青い深海である。鮮やかな水の冷たさと澄みきった輝きに満ちた音色だった。


2.In the morning
 はじめて聴く楽曲。ニューアルバム収録。タイトルを先に聞いてしまったので先入観が出来たのかもしれないけれど、たしかに「朝」の曲。
 カーテンの隙間から朝日が差しこみ、やがて少しずつ増えていく外界からの刺激(音や光やその他もろもろ)が徐々に主人公を覚醒させてゆく。これから、会社? 学校? それとも、今日は日曜日?
 食事をとり、身支度を整え、今日1日のためにテンションをあげていく。さあ、出かけよう!
 MCは、ゴンチチさんの前座に出た話。高校時代の科学の先生が今日観に来ていること、など。その先生を目の前にして「ナンの役にも立たなかった」とは、大胆な発言。ま、そのとおりなんだけど。


3.リボンの騎士
 三国ヶ丘FUZZで聴いて以来、めっぽう好きになったこの曲。オープニングの画面が脳裏に蘇る。アニメ曲って綺麗な歌がけっこう多いんだなと、改めて気付かされる。
 アンケートに「ギターで聴いてみたい曲は?」(だったかな?)があったので、「宇宙戦艦ヤマト」と「海のトリトン」を書いておく。


4.となりのトトロメドレー
 オープニングとエンディングをメドレーで。それにしても、オープニングはサビのところしか聴き覚えがなかった。けっこう記憶力っていい加減だね。もうひとつの曲は、「歩こう、わたしは元気」ってやつ(著作権大丈夫かな、ここまで書いて。そのまま引用してないから大丈夫だよな)。これはトトロのために作られた曲なのかな? なんかそれ以前から知ってるような気がする。タイトルわからないです。
 ここで驚きの奏法。6弦を5弦のほうに引き寄せて一緒に押さえ、スチールどうしが擦れ合う音を出す。スネアドラムの雰囲気?


5.blue sky
 ニューアルバム収録のオリジナル曲。MBS「毎日新聞テレビ夕刊」(毎週日曜日17:20〜17:30)のエンディングテーマに決定。
 このへんでいわゆる「観賞用理性」は吹き飛んでいて、壊れてきつつある自分。曲が終わるたびに「身を乗り出していた」自分に気が付く。身体を元に戻すと大きな簡単のため息が漏れる。メモをとってるから壊れきれない自分が悲しいね。
 右手の人差し指でフレットのひとつを全体的にボーンと叩く奏法が楽しい。弦から音を出すだけではなく、ネックを叩くような感じなので、パーカッション的な音が響く。(って、文字にすると感動が伝わらないなあ)


6.無伴奏チェロソナタ
 バッハの曲。単音が目立つ(だから無伴奏なんだろうね)。和音とはまた違った美しさ。音のピュアな部分がそのまま飛び込んで来る。田舎の道を自転車で、時に一生懸命、時にゆっくりと、走っているようなイメージ。


7.光のつばさ(?)
 本当にゴメンナサイ。オリジナル曲です。耳に馴染んでいたんですが、家に帰ってファーストアルバムを聴きなおしても、本当に「光のつばさ」だったか判断がつかないです。(アルバム収録曲とちょっとちがってるんじゃないの、とひそかに思っている) こういうとき、歌詞がないとつらいです。メモに「トテタタタ・トテトテ」とか書いていても、そんなもん再現出来るか!(笑)
 隣のギター青年N君にきくと「タッピングの応用でしょうね」とのこと。右手も左手もフレットの上にあって、トントントントンと押さえたり、はじいたりする奏法が、なんとも鮮やか。


8.DANCIN’コオロギ & MC
 DANCIN’コオロギは押尾コータローの代表曲のひとつだと思うけれど、この中に他の曲やら、MCやらが混じって、とにかく愉快で楽しいひとときを演出してくれました。「何度も来てくださっている方は『またか』と思っているでしょう」と言われていたので、詳細を記述するのは避けておきます。みなさんもライブで楽しんでください。
 本当に愉快で楽しいですよ!


休憩


9.スタンドバイミー → ぷかぷか(メドレー)
 スタンドバイミーはおなじみ映画曲。僕はあまり映画は観ないのだけれど、このスタンドバイミーは大好き。線路を歩く少年達の姿が思い出される。
 「ぷかぷか」は、僕がひそかに「大阪フォーク」とジャンル分けしている曲のひとつ。みんな、知ってるかなあ? 僕も最初はタイトルを思い出せませんでした。歌えるんですけどね。(結局、曲紹介がありましたが)。そういえば、この店のBGMにもかかっていたなあ。「あたいはタバコも男もやめません」って曲だが、こんな風に書くとぶち壊しだな。
 曲の作者が亡くなられて2年になるそうです。そうなんだ・・・
 それにしても、スタンドバイミーとぷかぷかをメドレーにするなんて、すごい感性です。チューニングが同じだからか?


10.ウルトラマンメドレー
 ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンの順。リクエストにお答えしたとのこと。こうやってあらためて聴くと、ウルトラシリーズの曲って、ベース音の組立に独特の特徴がある。
 

11.フォルクローレメドレー
 コンドルは飛んでゆく、?、母を訪ねて三千里の順。2曲目は聞き馴染みのあるスタンダードな曲なんだけど、タイトルが思い出せない。「母を訪ねて三千里」は残念ながらわからなかった。会場がざわついていたので、みんな気が付いていたんだよね。そりゃ、観てなければわかりませんわ。


12.アルプスの少女ハイジ
 ナントカお子様劇場だったかな、のシリーズ。さすがにハイジは僕もわかる。この曲もね、「こんなに美しい旋律だったんだ」ってハッとさせられる。


13.ムーミン
 思わず歌ってしまいそうになります。ギターの弾き方によるところも大きいのでしょうが、こんなに優しい気持ちにさせてくれるメロディーだったことに気付かされた。スナフキンがギターを持っている姿に憧れてギターをはじめたって、本当ですか?


14.キカイダー登場のテーマ
 この曲は「キカイダーだ」とコータローさんがいうと、「わからへん」と会場から、声。それもそのはず、これはオープニングテーマでもなんでもなく、番組中でキカイダーが登場するときのテーマだ。ピンチになるとビルの上にキカイダーが登場し、ギターでこの曲を奏でる・・・。「ビルの上から聞こえるか。アンプでも持ち歩いてたんだろうか? 誰も気が付かなかったりして」には会場大爆笑。
 ビルの上のほかに、ガケの上とかそういうシチュエーションもあったよね。高いところが好きなのかな?


15.ルパンV世メドレー
 これもリクエストが多いそうだ。オープニングとエンディングのメドレー。アニメと特撮のオンパレードなので、タイトルだけをざっと見ると、「押尾コータローって何者?」って思われるかもしれませんね。
 でも、それぞれの曲を思い出してください。音楽性に富んだ曲の数々でしょう?
 その中でも、ルパンの曲は本当にカッコイイね。


16.コンチネンタルタンゴメドレー
 仰々しくタイトルつけたけれど、やった曲は「黒猫のタンゴ」(なつかしー)と「ダンゴ三兄弟」
 これは同じタンゴでも、次にやる曲とは種類が違うことを示すためにされたようだ。ギターのために編曲してギターで演奏すると、ダンゴさん兄弟のような「ウケ狙い」ソングでも結構聴けるから不思議だ。歌詞やアニメがそういう狙いでも、曲がきちんと書かれているからだと思う。


17.リベルタンゴ
 ピアソラ(作者)が愛したリベルタに情熱を捧げるタンゴだそうだ。あまりタンゴという感じがしない。イメージとしては、情景は浮かんでこない。どちらかというと、心情を表現した、という感じかな?


18.ボレロ
 最初は、そっとやさしく。少しずつ激しく。そして、大いなる激しさに。倫典さんとのジョイントでされた曲。コータローさんのライブで決定的に惹き込まれた曲でもある。これがなければソロライブに出かけようという気にはならなかっただろう。
 ライブの翌日、子供と出かけた「デジモンアドベンチャー」という映画で使われていたのにはびっくり。これもアニメソング・・・・


アンコール
19.ずっと・・・
 もちろん永井真理子さんのカバーではなくて、オリジナル曲。この日会場に来ていたフルート奏者の女性がまもなく結婚するとかで、彼女に捧げられた曲だ。
 夜の公園に寝そべって見上げれば数えきれないほどの星の輝きと瞬き。そして、その星達が次々と降ってくる。いわゆる流れ星ではなくて、5角形をしたキラキラと輝くあの小さな、掌に乗るほどのかわいい星達が・・・
 曲の作者とは感じるイメージがきっと違いますよね。


 本当に小さな会場でしたけれど、熱気がむんむんとあふれていました。押尾ワールドを堪能しました。また、近いうちに。
 N君がまもなく北海道へ行くので、それまでにと思っています。多分、心斎橋のM・CUBEかな? 楽しみです。


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