白いノルウェージャンフォレストキャット

白いNFCについてのレポート<1> -For Breeder-

北欧神話で語られる、女神フレイアのそりを引いていた巨大な2頭の猫、これがノルウェージャンフォレストキャットの始祖であったという伝説があります。そしてその猫は真っ白だったとも。

猫の白い遺伝子には知られているWSがあります。SはNFCにはよく見られる、いわゆる&ホワイトの遺伝子です。対になる2つの因子の組み合わせはss(without White)やSsSSと表現されますが、後者になる程身体に占める白い割り合いが大きくなるといわれています。このようなハイホワイトの猫同士の交配を繰り返すと、バンのような頭と尾にだけ色があるような白い猫が多く産まれるようになります。

さて一方Wという白遺伝子があります。これは優勢白色遺伝子というもので、全ての色を隠してしまうマスク遺伝子です。今回はこのW遺伝子についてのお話しです。

Wをひとつでも持っていれば全身を白で覆われてしまうので、WWWwも白色になります。有色の猫の場合の表現型はwwです。ということは、このW遺伝子によって白い猫として産まれた猫は、実はその下に別の有色の遺伝子を隠し持っているわけです。

白い子猫には頭にスポットやパッチがあることがあります。これは成長するにしたがって薄く小さくなり、あるいは消えてしまう事が多いですが、このスポットはその猫が持っている色の遺伝子を知る手がかりを示してくれるかもしれません。たとえば黒いスポットに赤い毛が混じっていたら、その猫は三毛の色を隠しているというようにです。血統書による両親や祖先の色を知る事でいっそう予測の確実性があがることでしょう。しかしながらどんな遺伝子を持っているかを確認するには、やはり実際に交配してみるしか方法はありません。

Wの遺伝子は白いコートを生産すると同時に、何割かの確率で青い目および聴覚障害をも生み出します。ノルウェージャンフォレストキャットも例外ではなく、ホワイトのNFCにはときおり耳の聞こえない猫が見られます。一般的にこれらは目色に依存するともいわれます。つまり黄色の目の猫は聞こえ、青い目の猫は聞こえない。そして目色が不揃いの猫は黄色の目の側からのみ聞くというようにです。しかしこのケースは確率的にその傾向があるといいながらも、残念ながら必ずしも真実ではありません。実際黄色の目の猫でも聞こえない例はあるし、オッドアイの猫やブルーアイの猫でも両耳とも完全に聞く事のできる猫はいるからです。

聴覚を司る遺伝子と色の遺伝子は一緒に移動するので、頭にはっきりスポットを持つ白い猫は、聞こえる確率が高いというデータが紹介されていますが、こちらも絶対ではありません。スポットを持っていても聞こえない猫は存在します。
また白いNFCを繁殖する上で 重要な事は、聴覚の問題だけではありません。聞こえるからという理由のみで、別の欠陥がある猫を繁殖に使う事は、聴覚障害よりもっと有害ないくつかの特性が遺伝する可能性があります。 毛色に関わらない良い形質と性質、そして危険性の低い交配を心掛ける事が大切です。

日本には猫の聴覚テストをしてくれる機関は残念ながらありませんので、ブリーダーが心掛けて子猫のヒアリングテストをすることになるでしょう。例えば子猫から見えないところから音をたてる、口笛を吹く‥‥などです。右から左から反応を細かくチェックすることです。振動が伝わらないよう、音だけで反応を確かめるのです。両耳が聞こえるか、片方だけ聞こえるか、あるいは全く反応しないか‥‥。

片方は完全に聞こえるがもう片方が少し難聴気味という例もあります。私は白い日本猫で片耳が完全に聞こえないために大層臆病であった猫を知っています。しかしNFCは‥‥特に屋内で兄弟や家族と平和に暮らしているNFCは警戒心に乏しく無防備です。それゆえに性質から聴覚障害を見い出すことはほとんど不可能であるように思います。特に成猫は振動と空気の揺れ、経験と知識によっても反応するので、子猫よりもっと検査が難しいでしょう。地道に実験を繰り返すしか方法はありません。そしてそれはおそらくとても重要でしょう。

そして実際に両耳の聞こえない猫に会った時、当惑してはいけません。その子猫は甘え依存し、人間や他の仲間を必要とする傾向があります。でも反面、掃除機やドライヤーの音、例えば同居の大きな犬の鳴き声を恐れることもないのです。彼らはペットとして申し分ありません。しかし声や音に反応しない分、視覚的なコミュニケーションの合図(こっそり近付いて驚かしてはいけません)、密なスキンシップ(但しいきなり後ろから触らない事)、アイコンタクトの確立(躾の上でも大切です)、そして危険な外の世界からの保護‥‥、これらをより心掛ける必要があります。彼らは警告音や怒声を理解しません。でもこれらはそれほど深刻な事ではないでしょう。猫とは往々にしてそういう生き物だからです。日常的に健康であるか否かの方がずっと大事です。事情を理解した上でそれらを託せるオーナーに会えることは幸いです。あるいはブリーダーがその責任を果たすことになるでしょう。

いずれにしてもブリーダーは、Wの遺伝子をもつ猫同士(つまりホワイトの猫同士)を交配すべきではありません。WWの猫は白い猫しか生み出しません。それは即ち、聴覚障害を持つ猫をより多く作出する事につながります。 実際のところ聴覚障害を完全に除去する事は、現在ではまだ可能ではありませんが、私たちは将来の世代のために、その発生率を低下させるように努力していくべきであります。

ブルーアイの猫はより聴覚障害の傾向があるという説から、現状において私たちはブルーアイの猫の交配について慎重です。またゴールドアイやオッドアイだとしても重度の聴覚障害の認められる猫はやはり交配を避けるべきと考えます。そして自らはもちろん、後進の白いNFCのブリード希望者に対して、そのリスク情報と方針を啓蒙及び助言していくことを心掛けなければなりません。またペットとして聴覚障害を持つ白いNFCを迎えるオーナーにも同様に、障害が深刻な欠陥ではない事の説明といくつかの飼い方の助言をすることが必要になるでしょう。

私たちは海外及び国内のブリーダーと情報交換をしながら、またオーナーの意見を聞きながら、白い猫の聴覚障害に関してのデータを更新していくために、互いに協力していく必要があります。

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以上の文章は、主に英国のクラブサイトで紹介されている「白いNFC」に関するレポートを参考に構成致しました。できるだけ簡素にまとめようと努力しましたが、力不足についてはどうぞご容赦下さいませ。

私たちはまだ経験の浅いブリーダーですが、この情報がお役に立てれば幸いです。 現時点では他のホワイトNFCブリーダーと、この件についての交流はまだありませんが、今後NFCも含めて特に同系の猫種のブリーダーにもご意見を伺っていきたいと希望しています。お気付きの点やご意見などありましたら、また新しい情報をご存知でしたら、是非こちらまでお寄せ下さいますようお願い申し上げます。情報がまとまり次第、またご紹介する予定です。

'03.2.20

*'04年後半から新たなレポートの製作に入っています。青い目と聴覚障害には白班遺伝子S
大きく関わっていることは以前から報告されているので、レポート<2>ではその辺りを含めてもう少し
詳しくご紹介できたらと思っているのですが、まとめる暇がないのが悩みです‥‥(>_<;)

参考Web Site:

La Maison Forte
WHITE CATS and DEAFNESS

GENETICS AND THE WHITE CAT
jette's web
The Snow Cats - White Forest Cats - are they deaf?
Keoka Maine Coons
The 1995 All Breed White Deafness Survey

*'04年現在、国内の以下のキャッテリ−でも[白猫の聴覚障害]に
ついて取り上げています。ご参照下さい。
Lisblanc「White Cat and Deafness」


当キャッテリーではWhite の Norwegian Forest Catを繁殖に使っています。
上記のレポートは私たちの白猫オーナーに配付しているものですが、
白いNFCに興味を持たれる方のために、ここに御紹介しております。

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