| 夫婦あわせて206歳 |
四国山地のまっただ中、山紫水明の地、梼原(ゆすはら)町は雲の上の町ゆすはら≠ニして今発信中。四国カルスト(註)のふもとの集落、横貝(よこがい)は梼原町でも奥に入った山里である。 ここで久氏さんは生まれ育ち、農業を営みながら現在に至っている。もちろん奥さんの米穂さんとずうっと一緒に仕事をし、五人の子どもを立派に育て上げ、今は楽隠居というところ。 家のすぐ前には緑の山が迫り、清らかな小川が流れ、空気はこの上なくきれいで、豊かな自然の中の別天地という感じのところである。外界のいかなるストレスもここには及んでこないだろう。 近隣の家とは離れているが、すぐ横、庭つづきには長男の宣享(のぶきよ)さん夫妻が住み、何くれと気をつけているので、何ら不安も心配もない。 身のまわりのことはすべて自分たちでやっている。 また、私たちも住むこの山里は住民の相互扶助の精神が旺盛で、人情は豊かで、地域支え合いのネットワークができていて、対外的にも安心できる環境にある。 川上さん宅は経済的にも安定しており、好きなことにお金を使い、何不自由ないくらし。 90歳ごろまでに夫婦で旅行に行き尽くして、もう行く所がなくなったとか。宣享さんの話では年寄りにしては金をよく使い、自分たちの入るお墓も大そう立派なものをすでに作って用意したとのこと。 山里暮らしで不便かというと、さにあらず、週に2回は庭先まで生鮮食料品を積んだ移動スーパー≠アと行商の車がやってくる。 また魚屋の車も庭先まできて、新鮮なサシミもその場でさばいて作ってくれる。 その他の用事は宣享さんが、役場のある中心地梼原へ行ってすませてくれる。 月に1回は梼原病院(町営)で夫婦そろって定期検診を受けるが、2人ともどこにも、何にも異常はないとのこと。 久氏さんが私の主人に会う度に口にする言葉は 「中越さん、わしはこまったことに死なんがのうし。なかなか死ねんが、こまったことよのうし」(もちろん挨拶がわりのじょうだん) 奥さんの米穂さんは定期検診で異常なしと言われると、がっかりした顔で、 「まだどこも悪いところが出んかのうし、残念じゃ」(これも笑い話です) つまりお2人とも人生に満足し、死を恐れていない、人生を全うした者だけに言えるセリフではないだろうか。 (註)「四国カルスト」:秋吉台・平尾台と共に日本三大カルストの一つ。愛媛県と高知県の間に広がる東西25km、幅3kmの台地。仁淀村と東津野村、梼原町にまたがり、天狗高原や地芳峠を中心として白い石灰石(カレーン)と擂り鉢状の窪み(ドリーネ)が点在する美しい景観をかもし出す。
◆今回の「百歳の肖像画」は、四国に住む川上久氏・米穂さんご夫妻。 百歳をこえたご夫婦がおそろいで(ギネスブックではどうなってるのかしら)登場してくださったのは「にっち」では初めてのこと。 2003年の門出にふさわしい記事になりました。写真と文章をお寄せくださった中越睦子さんに感謝。 |