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にっち創刊号

< 百 歳 の 肖 像 1 >


ダンディー百歳は語る


鵜飼泰三郎さん(芦屋・明32年生れ)

  百歳になった鵜飼泰三郎さんは80年前の出来事をあたかも昨日のことのように話してくださった。
 「10分前のことも忘れてしまうのよ」という長女の五十嵐かほるさんの言葉からは信じられないが、 トムというニックネームで呼ばれていた頃のことが、今も鵜飼さんにとって一番取り出しやすい引き出しの中にあるらしい。



  ●ガ−シュイン●
 「二十歳のころ、イギリスのプレストンというところに仕事で行きました。ニューヨーク経由でね。
そう、ニューヨークには結局、船待ちで二ヶ月いました。
 昔から歌が好きだったんですがそこで、ガーシュインを知り、夢中になってしまいました」
 更に、出張先のプレストンでは仕事の合間をぬって英語の楽譜を前に、時間を惜しんでは歌う日々だったとか。
 江利チエミでお馴染みの『スワニー』に初めて巡り会い、今や鵜飼さんの一八番。
 第一次大戦と世界恐慌の間の「狂乱の20年代」は、今の鵜飼さんの根っこになっていった。


●マイウェイ●
 「前は自分でピアノも弾いていたんですがね、ちょっとこのごろめんどうになりました。シャンソンやシナトラの『マイウェイ』がいいですね」
 ちなみに取材当日の鵜飼さんの装いはえんじ色のセーター、紺のズボン、セーターの襟元からはえんじ色と紺色の線が入ったシャツがみえる。
 「シャツとセーターとズボンの色を合わせるなんてさすがですね」と言うと「いやあ、たまたま自分で選んだ」と照れた。


●ベ−クドエッグ●
 毎日の生活も英国流、ゆっくり朝食を取る。
 メニューは、コーンフレーク、オートミールにベイクドエッグほうれん草添え。
 自分で調理する。
 それから、近くまで買い物に出かける。最近は一人用の少量パックもたくさんあり、「つい買いすぎることもある」と苦笑い。


●ビリヤ−ド●
 午後、運動も兼ねて、ビリヤードのキューを手にする。
 ビリヤードの仲間にはちょっと知られた存在、これも英国仕込み。
 壁には几帳面な鵜飼さんが角度まで書き入れたビリヤードの図解があった。
 「自分のリズムに合わせてゆっくりと毎日やっています。
 次に、練習したいと思っているのはピアフの『愛の賛歌』でしょうか」この恋の歌は鵜飼さんに新しいパワーを与え、鵜飼さんの歌声に触れた人たちにもきっと活力のお裾分けがあるにちがいない。


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