ルチン

  そばが高血圧によいといわれるのは、そば粉に「ルチン」が多く含まれて
いるからだ。「ルチン」は、今注目されている栄養成分の一つで、かっては
ビタミンPと呼ばれていたビタミン類である。毛細血管の働きを安定、強化させ
脳出血や出血性の病気の予防効果があるといわれている。「ルチン」には
弾力性のなくなった、また破れやすくなった血管を新しい弾力性のある血管に
取り替える働きがあり、血管をスムーズに流す作用がある。
毛細血管を強化するためには1日20mgの接取が目安で、茹で上げたそば
10gの中には10mgの「ルチン」が含有されるので、一人前(200mg)のそばを
毎日食べればよい。また、単独よりもビタミンCと一緒に取ると効果が強め
られる。「ルチン」は水溶性のため、茹でている間にどんどん茹で湯の中に
溶け出してしまう。そば湯はビタミン類の貴重な補給源でもある。

●参考文献「蕎麦辞典」


鴨南ばん


 「鴨南ばん」に使用される鴨肉は、真鴨(まがも)の雄と家鴨(あひる)の雌との
間に生まれる合鴨(青くび)の両胸にある「抱き身(ダキ)」という部分などを
使うが、これは本鴨では味に癖があり、麺の風味を損なうためである。また
昔から、鴨肉以外に鶏肉を使ったメニューを「鴨南ばん」と称している場合も
あるようだが、消費者の混乱を避けるためにも、鶏肉を使用した場合は
「鳥南ばん」か「かしわ南ばん」と表示するのが適切であろう。
ちなみに「南ばん」は、ネギやトウガラシを意味するが、これはインドシナなどを
中心とする南海諸国を意味する「南蛮」からきており、室町末期から江戸時代に
かけては、タイやジャワなど諸国を巡って渡来する人や物を広く「南蛮」と称した。

●参考文献「蕎麦辞典」



たぬききつね

 「たぬき」の由来であるが、揚げ玉とネギ以外タネらしいものが入って
いないことから、「たねぬき」と呼ばれたものが「たぬき」になったという
説や、見た目のコッテリとした色合いや、味付けからそう呼ばれたという
説もある。「たぬき」に対して、油揚げを薄甘く煮て入れた種ものを「きつね」と
いう。「きつね」は関西がルーツというイメージに対して、油揚げを種に使う
そばは、文献的に江戸のほうが古いという説もある。稲荷神社の初午の
祭りに油揚げを供える風習から、お稲荷様使いである狐の好物・油揚げを
入れた麺類をこう呼んだそうである。
昔、関西鉄道の葛葉の地の近くに白狐の住む「信田の森」があったため
関西では「きつね」を「しのだ」と呼び、「信田」または「篠田」とも書く。
大阪などではきつねそばのことは「たぬき」と呼び、京都ではきつねの
あんかけを「たぬき」と呼んだ。また、場所によっては「けつね」「稲荷そば」
「稲荷うどん」「志乃田」とも表記する。

●参考文献「蕎麦辞典」

 

年越しそば


 「年越しそば」のことを別名「みそかそば」、「つごもりそば」、「大年そば」など
とも呼ぶが、大晦日の夜にいわゆる「運そば」を食べるという風習は、そばに
まつわる食習の中でもポピュラーなものである。「年越しそば」の起源については
諸説があるようだが、江戸中期のころには、商家を中心にして毎月末にそばを
食べる風習があり、これが大晦日に食べる年越しそばにつながったという説が
ある。そばは細く長くのびるということから、家運や身代、寿命などが永くのびる
ように縁起をかつぎ、地方によってはこれを「寿命そば」や「のびそば」と呼んだ。
また、そばが切れやすいことから、旧年の苦労や借財などを切り捨てる意味で
「年切りそば」、「借銭切りそば」を食べる風習があったという説や、金銀細工師が
金箔を打つときにそば粉を用いると金箔の裂け目が防げ、金銀の粉を寄せ集める
ときにもそば粉を使ったことから、そばで金を集めるという縁起で食べたという
説もある。

●参考文献「蕎麦辞典」



南蛮(なんばん)

 麺類店で「南蛮」といえば、江戸時代から葱など辛味野菜のことである。
これはインドシナを中心とする南海諸国を意味する「南蛮」という言葉から
きており、室町末期から江戸時代にかけて、タイやジャワなど諸国を巡って
渡米する人や物を広く「南蛮」と称したことに由来する。つまり、葱、唐辛子
カボチャなどを「南蛮」と称するのは、これらの野菜類が外国から渡米したことを
意味する。江戸時代には、主としてポルトガル人やイスパニア人を「南蛮人」と
呼んだが、一説にはこうした渡米人たちが異国での病気予防のためもあって
辛い野菜を好んで食べたのでこう呼ばれるようになったともいう。
ところで大阪などでは、昔から葱のことを「なんば」と呼ぶ習慣があるが、これは
「なんばん」という言葉から転化して呼ばれたという説と、江戸のころには
大阪の「難波」が葱の産地だったのでその名残りでそう呼ばれるという説の
二通りがある。

●参考文献「蕎麦辞典」



二八そば

 「二八そば」の解釈をめぐっては、いろいろな説があるが、次の二説に大別
される。ひとつは、「二八、十六」の語呂でそば一杯が十六文だったから、という
代価説。