2001/05/27 13:04
 競馬


501 空の青手首に剃刀光る夏の日よ

 註・森田童子

502 手綱締め天を仰ぐや青葉城

503 黒馬の大きな眸夏野かな

504 競べ馬脚踊らせて闘志見せ

505 春疾風速し土佐の草競馬

 (今日の名句)

 古墳より素足の少女草青む 大串章
大串さんは清水哲男とは「京大俳句」時代からの友人。従って小生の知人。結社「百鳥」の主
宰者。この句の柔らかな感受性や良し。



2001/05/27 17:35

 猫

506 さて仕事始めに足裏舐める猫

507 猫を踏む悲鳴天下の一大事

508 雑俳に詠まれし猫のみな哀し

509 それほどに月夜恋ひしやペルシャ猫

510 正座して黒猫月を見てをりぬ

 (今日の名句)

 猫が鶏殺すを除夜の月照らす 三鬼

さすが三鬼、よく考えて作っている。「俳句」六月号で「猫」特集を組んでいる。しかし「人類
にとって猫とは何か?」と言う問いに皆、答えてはいない。人畜無害な面からしか猫の存在を
考えているに過ぎない。そのような視点から、この句を読むと、上出来である。掲示板の紳士
淑女悪党諸君、猫の句を作られよ。これ意外に難しい。「猫」は春の季語。



2001/05/27 19:06

 猫

511 吾輩は猫ひげを生やして威張りをり

512 吾輩は猫ゆえ知らず無名なり

513 宇宙船猫の子載せて泳ぐかな

514 虎猫の畜生なるは身の勝手

515 爪とぎて暗夜行路に忍ぶ猫

訂正509 それほどに月の砂漠やペルシャ猫
 
 (今日の名句)

 尾は蛇の如く動きて春の猫 虚子

うむ、虚子の猫は、のつたりとした実存感がある。甲斐猫には哲学がある。



2001/05/27 20:29

 神の糞

516 花茨越へて来たるや整骨師

517 骨を折る仕事なりしや薔薇の園

518 追ひはらふ猫を待つかな糞の神

519 捨て猫のそこにのこるは神の糞

520 野垂れ死ぬ猫の子埋めて菫かな

 (今日の名句)

 恋猫の置きたる糞やあほらしき 山上樹実雄

これ(今日の名句)と言うほどのものじゃない。でも小生の句が目立つために挙げて置いた。



2001/05/27 23:52

 海胆(うに)

521 炭俵転がして置く空き家かな

522 炭焼の煙の絶へし山老ゆる

523 炭俵かついで真つ赤な力士かな

524 海胆の口割らせて海に黙秘権


525 海胆を割るイガ栗頭の子らの海

 (今日の名句)

 何もかも夢も抜けたりと藤枕 森澄雄

森さんは、もう八十ぎりぎりか。そんな気持ちにもなるんだわさ。
ところで雑俳梵先生、近頃なんだか可笑しいよ。いつたい誰と話しているの?奇十さん、たっ
た二週間で退院だなんて、そんなのは病気なんてものじゃない。その病名は「ハタメイワク」。



2001/05/28 02:00
 夏蝶
526 夏蝶や少年が追ふ夢の網
527 夏木立我らが未来棒立ちに
528 ずわい蟹脚へし折りて口すぼめ
529 酢海鼠をしずめて朝を迎へをり
530 しずかなるお寺の庭に仏の座
 (今日の名句)
 こがらしの鞄のなかの雷魚かな 鳴戸奈菜
着想の奇抜さに、この句の面白さがあるのかな?ところで練馬大根、大串さんの仰る「ときめ
き」て何ですか?是非教えて下さいな。



2001/05/28 03:09
 羽黒山
531 黒潮に乗りて怪魚の骨の夏
532 引出の遺影に薔薇の微笑あり
533 春疾風自転車で携帯の子空を飛び
534 満月や異常に太る里の芋
535 涼しさや石段に苔羽黒山
 (今宵の名句)
 老衰で死ぬ刺青の牡丹かな 佐藤鬼房
刺青の牡丹も老衰にはかなわずか。でも構図は単純明快。それでいいのだ。雑俳梵先生、了解。
おやすみ。永眠するな。



2001/05/28 11:19
 5月28日(月)先負 東京快晴
 四十雀
536 携帯で朝の挨拶四十雀
537 四十雀西部戦線異常なし
538 四十雀還暦までを鳴き通す
539 挨拶は青き空より四十雀
540 四十雀目覚まし時計と鳴きてをり
 (今日の名句)
 夏の朝鳥一声神の糞 関山兜太
吾が好敵手関山さん、俳句では「頂きます」と言いますね。別に御飯を頂いているわけじゃな
し。しかし、この言葉、何か食生活と関係あるのかな?この句いいですね。「神の糞」とは、自
然が人間に与えた恩恵だと思っています。



2001/05/28 12:34
 茄子
541 ときめきの遺影を残す夏野かな
542 そら豆の空の青さや鳥の鳴く
543 茄子をもぐ母の手若し裏畑
544 茄子光る朝新鮮に明けにけり
545 尋ぬれば昏き鉄線花に雨
小生の書斎に鉄線の花がある。暗い・・・・
 (今日の名句)
 老い易くして少年の芽花笛 森澄雄
「芽・花・笛」?



2001/05/28 13:53
 夏の鷹
546 老い父も寡黙壮健ひぐらしよ
547 ひぐらしや夕陽を急げ一人だぞ
548 立夏来る軍鶏の眸の輝きぬ
549 記憶喪失夏の怒濤を見にゆかむ
550 海を見にゆこうよ一緒に夏の鷹
 (今日の名句)
 かなかなや馬が首振る飼葉桶 栗山のぼる
見事だ栗山さん!と言ったところで、ご存命であるかどうか。解説によると作者は大正6年生
まれ。著者は60代半ばに句作を始め一日10句作ることを日課とした。そして毎月20数誌
に投稿。3年間で1万5000句を作る。しかし、こんな凄い人を俳壇は見殺しにしやがった
な!



2001/05/28 16:51
 金魚
551 マンションの踊場きょとんと寒鴉
552 薬湯を煮つめて母の日となりぬ
553 還暦をめぐる杯十三夜
554 目玉だけ動かし金魚見てをりぬ
555 手塩掛け筋金入りの蘭の花
改稿480 鮒鮨を握る職人目玉なり
 (今日の名句)
 木苺の金の大粒休火山 野沢節子
三宅島三十句の内〔1985年・俳句とエッセイ)。この時、野沢さん、三宅大噴火のことなど
夢想だにしていなかった。




2001/05/28 18:10

 山家集
556 麦秋や墓石の運ぶ石切場
557 山家集花の命を教えけり
558 夜店にて買ふ地球独楽綱渡り
559 星ひとつ買つたり夜店の地球独楽
560 持山を売りて老父は寒に入る
 (今日の名句)
 父うやんの灯といふ漁火の凍てにけり 山崎秋穂
厳冬の海に命を張る漁夫とその家族。切ない!
ところで雑俳梵先生、少し静かにしてもらへんやろか。近頃のノベル賞は選考が厳しくなって
身辺に下品な友達がいるとアウトになるさかな。



2001/05/28 20:36
 水着
561 仰のけに女夏空に手を伸ばし
562 潮干狩どの子らも黒くゆふぐれぬ
563 夏シャツを脱げば海の色ばかり
564 飛び込みて水着青に溶けてゆき
565 動物園河馬湯であがる残暑かな
 (今日の名句)
 暗黒や関東平野に火事一つ 金子兜太
金子兜太と言えば、その昔、帯文を書いてあげたことがあったな。小生は、あの馬鹿のように
兜太さんを格別「権威」だと思ってはお卵。ただの、ふつ〜のおじいさんが俳句を書いている
に過ぎない。なにしろ、こちらは兜太を凌ぐ「のお〜べる賞」予定。どお〜ぞ、息抜きにお茶
でも一ぱい。しかし、この句は珍しく単純な構図で書かれていて好きだな。



2001/05/28 21:44
 男鹿
566 民宿や男鹿サザエの壺を置き
567 男鹿の海荒れ放題で始末せず
568 寒風山降りゆく鴉一羽かな
569 寒風山季語の通じぬ青き空
570 一切は無や寒風山は男鹿にあり
昨年の夏、男鹿半島の旅に出た。これ、吟行の一つ。
梵先生、お分かりになりました〜か〜。小生は、これからショクジ〜。マタ、オアイイ〜しま
しょうね〜。



2001/05/29 01:40
 ひなげし
571 お寺の子お玉杓子と遊びたし
572 流れ星河原にこぼれ水の底
573 別れ道さりげなきかな虞美人草
574 ひなげしの絞りあでやか少女舞ふ
575 母の日のあたりたんぽぽ飛び立ちぬ
 (今日の名句)
 くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 蛇笏
あまりにも有名な句なので戸惑ったが、気になるので調べてみた。(秋の風鈴)季重なり。初出
は「雲毋」。表記は「鉄(クロガネ)の秋風鈴鳴りにけり」。後に彼は改稿。すなわち夏の風鈴
が取り残されたまま、秋へ侘びしく持ち越されたということだが、当時は、奇を衒う句と批判
されたらしい。しかし新進詩人の三好達治の絶賛によって評価が決まったという。



2001/05/29 13:00
 5月29日(日)仏滅 多佳子忌 東京雷
 国宝
576 姉妹二人そのメロンの匙加減
577 開山や舌のだらりと犬も連れ
578 宇宙船流れる星を曳航し
579 万愚説万年筆で愚痴一つ
580 国宝にしたきは五月雨の滴かな
ただ今、話題の鮒鮨と多佳子忌について思案中。雷が鳴り始めた。しばし連絡を絶つ。



2001/05/29 16:48
 雷雲
581 雷雲は去る由もなし文机
582 パソコンは暗箱雷轟く日
583 梅雨の雷束の間鳥の湧き出ずる
584 わが死後は馬冷ゆるまで星一つ
585 熱燗を人肌にしてそつと触れ
改稿480 鮒鮨を詰める職人目玉なり
皆さんご静粛に!鮒鮨は日本の食生活文化の花の一つです。どこかの馬鹿が俳句に「鮒鮨を握
る」と書いたそうですが、その句、重大な誤りです。鮒鮨は箱鮨ですから「押して詰める」の
です。のお〜べる賞には少しのミスも許されません。今後皆様も細心の注意怠りなく。
小生、これから池袋サンシャイン劇場で「ア一ト」観劇してきます。小生不在の折り、掲示板
嵐にくれぐれもご注意下さい。



2001/05/30 02:33
 葵祭
586 御車はまさか葵の御紋かな
587 ほろびゆく祭や牛の眼に涙
588 あでやかに葵祭や牛哀し
589 牛車引き涎も曳きて祭ゆき
590 列をなす葵祭や破戒僧
 (今日の名句)
 塩鮭の塩きびしきを好みけり 水原秋櫻子
読んでいて口中かしょっぱくなる句。清水甲斐の鮒鮨の句とは一味違う世界を開いている。
池袋サンシャイン劇場でART観劇。どうやらフランス哲学批判で、例えばジヤツク・デリダ
のデスコンストラクシオン(脱構築)など出てくるが、中身は空っぽ。ネタが古すぎて笑おう
としても笑えないコメデイ。招待券をもらって見たものの新聞の演劇欄のアホは、何で、あん
なくだらないものを激賞するんだ。返せソレントに!



2001/05/30 10:05
 5月30日(水)大安 東京曇り
 池袋
591 少年のギタ一噴水に唄ふかな
592 夏蒲団思想みたひに軽く敷き
593 噴水に月と黒人池袋
594 月一つ夜の噴水池袋
595 コメデイを観て来て笑ふは寒鴉
小生宅にも「荒川洋治全詩集」が届いたが生きている内に全詩集とはこれ如何に。いよいよ詩
集が売れないものだから思潮社も焼きが廻ったか?けだし造本や良し。



2001/05/30 11:24
 夏至
596 囀りや目覚時計より鳴き速し
597 芹の水手をひたすかな少年期
598 夏至の代に友の逝きしは由もなし
599 かたくりの花に溶け込む少女かな
600 純白の画はピカソより高値ぞ寒鴉
 
 観劇ARTより。
 (今日の名句)
 高原の蝶噴き上げて草いきれ 三鬼
あんたは相変わらず上手いなあ。貧乏人のくせに!こうなったら小生、歳時記から拾った言葉
を片っ端から全部俳句にしてみせる。男の意地だ!



2001/05/30 12:42
 新米
601 新米に水のこぼれる笑顔かな
602 お目覚めは白き大根おろしかな
603 我と棲む蟇は途方に昏れてをり
604 後の世に美田残せと田螺鳴く
605 おしぼりの少女くちびるソ一ダ水
 (今日の名句)
 木枯しや何に世渡る家五軒 蕪村
解説する。俺達世を渡ることの下手な人間が、どうして苦労してまで生きねば生きなければな
らないのだろうか。もう、死んでしまおうか。
ところで梵先生、フォイエルバッハは単細胞の教条主義者だぜ。頭の悪い人間には単純明快だ
が、おすすめ品じゃないなあ。マルクス、エンゲルスから何か拾ってくれないか?



2001/05/30 16:21
 立夏
606 柿をむく明治の子規庵近くなり
607 遠鹿や母を慕ひて若草へ
608 頓狂な声跳ね上がる草の蛇
609 草の雨葵祭りと過ぎてゆき
610 耳掻きの行方知れずや立夏来る
 (今日の名句)
 糸瓜忌や俳諧帰するところなり 村上鬼城
まあ、現在の小生にとっては、そんなところだな。しかし、これからは子規さんを凌ぐ、悪し
からず。



2001/05/31 13:15
 さらば五月よ 
 5月31日(木)赤口 東京曇り
611 さらば五月鷹の眸や少年期
612 流人墓ただ野菊いちめんに
613 寒菊の御老女なりや不意の客
614 猫柳青める岸に風の鳴る
615 落葉舞ふ露の命であればこそ
本日、皓星社の藤巻さんと会う予定。六時。場所は吉祥寺丸井の裏の居酒屋「行行子」(よしき
り)。電話(0422.48,4482)。清水昶句集「俳句航海日誌」出版目前の打ち合わせ。
長谷邦夫さん、連絡して下さいね。ところで駄々子さん、思潮社の詩集,もう出たの?



2001/05/31 14:31
 綿菓子
616 綿菓子の不思議そうなる子供の日
617 枝折戸に母は立ちをり返り花
618 おらが春あの子も嫁いだだんべいな
619 埋め立ての浜に一羽の寒鴉
620 白骨化せし老木の山眠る
 あの子もとうとう死んだそな
 嫁取り前じゃになんだんべ
 かぶら畑にや鰯がはねる
 お墓まいりでもしてやろか
 (鮫島有美子童謡集)より
わからぬ。どうして「かぶら畑に鰯がはねる」のだろう?



2001/05/31 15:35
 冷害
621 冷害の秩父一揆の真赤かな
622 蓮根を掘りて疲れただんべいな
623 団兵衛といふ男あり閑古鳥
624 春うらら鴉もきっとそうだんべ
625 意趣返し卒業生も泣きてをり
ところで梵先生、「一声関東に不平あり」とは足尾鉱毒事件を戦った田中正造の言葉だが、一帯
「関東べえべえ言葉」はどの地域まで使われているのだろう?小生も中学高校時代まで「関東
べいべい言葉」を秋川流域で使用していた。新撰組の近藤君や土方君も使っていた。



2001/06/01 14:28
 6月1日(金)先勝 東京 走り梅雨
626 秋川に梅雨来たるらし水光り
627 街灯は消へて火垂るの母子家庭
628 ひとりぼち夜ピ一マンの皿光る
629 白き歯の光る妹青林檎
630 関東のだんべい先生初英語
梵先生、「関東べいべい言葉」ついて御教授ありがとう。ところで小生「関東弁」「京都弁」「大
阪弁」「長州弁」「酒田弁」「東北弁」「東京弁」と七か国語がしゃべれる。こんなに語学が出来
る男は他に類を見ない。じゃきに小生は現代詩、俳句のみならず語学に於いても天才であった。
下郎ら下がり折ろう。
長谷邦夫さん、清水昶句集「俳句航海日誌」の表紙絵、気に入りました。帯文は大岡信氏の予
定。



2001/06/01 18:30
 花菖蒲
631 傘挿してグラジオラスの揺れて立ち
632 恋などを秘めてあやめ咲ひてをり
633 草花の地名に育つ花菖蒲
 秋川市草花1の30の7
634 少年期登校途中や菖蒲園
635 少女らの眸に揺れる花菖蒲
 (今日の名句)
 愛欲の野火の白妙翁かな 永田耕衣
白妙翁?「かぶら畑にや鰯がはねる」は分かった。鰯は肥料。清水昶句集「俳句航海日誌」初
版1000部は印税なし。増刷百万部は貰い。



2001/06/01 20:09
 杜若(かきつばた)
636 若竹の青きひかりを妬みをり
637 竹の皮脱ぐ壮年期たくましき
638 かきつばた美しかりき青き空
639 雨の降る踏石お寺のかきつばた
640 篠の子の御膳に子供かしこまり
 (今日の名句)
 寝仕度に触れて鈴鳴る雪夜かな 村越化石
村越さんが盲目のハンセン氏病患者だったとは知らなかった。だとすれば、この鈴は盲動鈴だ。
ところで、小生、来週の月曜日から「ハンセン氏病文学全集」皓星社(全20巻)の編集手伝
いのためサラリ一マンになる。二十数年ぶりの会社勤め!



2001/06/01 21:35
 弱法師
641 夜間まで花火を仕込む父老ゆる
642 夏の果て弱法師とや山頭火
643 弱法師軒の陰なる夏の宿
644 立夏来る杖を立てたる弱法師
645 花火師の意地大輪の花火かな
訂正633 草花てふ地名育つ花菖蒲
 (今日の名句)
 芦刈の舟は夕日に向き直る 老川敏彦
何だか格好いいですね。



2001/06/01 22:41
 癩の谷
646 雷鳴に光る十字架首飾
647 いなびかり凄む男も抱く柱
648 稲妻の轟き渡る荒野かな
649 雷鳴に清められたる癩の谷
650 西鶴も驚くばかり柿千句
と言うわけで矢数俳諧と「今日の名句」は持続する。生憎、勤務先の会社はパソコンを満載し
ている。
 (今日の名句)
 生き死にを俳諧の種籠枕 長谷川櫂
この句は、清水甲斐その人であろう。



2001/06/02 00:57
 理科室
651 お手前は草月流や梅の枝
652 理科室のフラスコ沸騰点の夏
653 フラスコの沸騰点や雲の峰
654 贅沢に時間を使ふ冷房機
655 雲の峰うんかの群れる俳諧師
 (今日の俳句)
 五月雨や肩など叩く火吹竹 一茶
山口の田舎での少年期、火吹竹は生活必需品だった。もう何処も使っていない。



2001/06/02 02:26
 夏野
656 らいたあの石の火花や寒の月
657 冬銀河炭住戦ふ谷川雁の逝き
 晩年の谷川雁は宮沢賢治に注目していた。
658 たましひの夏野にときめき果てしなく
659 口笛の夏野に白き犬走り
660 夏に逝く北村太郎子守唄
北村さんは夏の海で奥さんと子供を亡くしている。三島由紀夫の「真夏の死」より残酷だ。
 (今宵の名句)
 牡丹載せて今戸へ帰る小舟かな 子規
言うこと無しという感じ。そこが不満。



2001/06/02 03:28
 阿波踊
661 阿波踊無礼講にてただ狂へ
662 お月様差し上げやふか御中元
663 手ひらひら着物ひらりと風の盆
664 雑踏がたちまちにして阿波踊
665 駱駝並べ月の砂漠や涼しかり
梵先生、減らず愚痴を叩かねば一冊して進呈つかまつろう。藤巻さん、文庫名は「缶詰文庫」
は如何?さしずめ小生の句集は「俳句の缶詰」赤ラベル。



2001/06/02 11:38
 6月2日(土)友引 光琳忌 東京曇り 
 夜学教師
666 蛍雪の夜間大学夢灯り
667 ひまわりや明日に居座る夜学生
668 向日葵や夜学教師睡り落つ
669 帰路一人夜学教師の枯木立
670 寒の月夜学教師や明日の路
友人の夜学教師に詩人の以倉紘平、歌人の三枝昴之らがいる。彼らは昼間部の教師と一味違っ
て明日への志向が強いみたいだ。



2001/06/02 13:00
 射殺
671 釈迦堂や嵯峨の湯豆腐奉る
672 清涼寺嵯峨の湯豆腐浮かべをり
673 愛欲の野火止当たりや昼の月
674 お釈迦様王子の恋や蟻地獄
675 夏の月ぎらりネパ一ル国王射殺さる
先程、ネパ一ルの王子が国王夫婦を射殺したとの報あり。お釈迦様生誕の地で何たることだ!



2001/06/02 14:14
 花火
676 生き死にの一瞬大輪の花火かな
677 緑陰や哲学の径問ひつつも
678 生き死にに賭ける花火師父老ゆる
679 苦虫の父の晩年蟻地獄
680 立夏来る米寿も一緒父の杖
と言うわけで、かよさん、花火師の父は川越の新宿町から飯能の花火工場まで毎日、電車で通
勤しています。



2001/06/02 17:28
 冷房
681 人の待つ時間も過ぎて走り梅雨
682 青梅雨の傘も青しや女人ゆく
683 冷房の図書館に光源氏かな
684 冷凍車怪魚を載せて独走す
685 花氷隅に置かれし美術館
清水昶句集「俳句航海日誌」は一句一銭5厘になりまする。



2001/06/03 12:13
 6月3日(日)先負 東京快晴
686 立ち寄りて店のしずけさところてん
687 晩餐会春の灯りが消ゆるまで
688 チュ一リップ口をすぼめて母の里
689 子守唄かぶら畑にや鰯はね
690 大発見幼子四葉のクロ一バ一
奇十さんや梵先生の奇跡的な俳句の下手さ加減は、つまり女人を口説いて一度たりとも性交し
た試しがないところにありそうだ。無惨を通り越して悲惨である。俳句は「口説きの文学」で
ある。(井原西鶴・好色一代男)より。



2001/06/03 13:09
 無法松
691 どんたくや破れかぶれの無法松
692 稲を刈る父母にひろがる夕日かな
693 ものの芽の噴き出す頃の子守唄
694 玉川に溺死人消へ桜桃忌
695 新宿に春の灯りや五番街
 
 「萌」の永井恵子さんへ
 (今日の名句)
 しんしんとまひるの青柿生ることも 山上樹実雄
この情景や良し。また平仮名使いのサンプルのような俳句。



2001/06/03 14:41
 立夏
696 夏めくや手入れ忙し釣道具
697 夏来たる一粒光るアリナミン
698 夏立つや藍より青き風の色
699 棒立ちの訃報来たる立夏かな
700 紅梅や立ち止まる人の懐かしき
 (今日の名句)
 みむらさきふかむらさきに一葉忌 相生瓜人
故・相生さんは先頃亡くなった能村登四郎さんの師匠。この句は美しい。たぶん、あのボンク
ラの梵先生には理解不可能な境地だろう。タメイキ!
ただ今、甲斐句、7700句。後300句で8000句。そこで打ち止めにして1週間後には
清水昶句集「俳句航海日誌」のネット発売、東日販の店頭販売が開始される。驚くべき出版革
命!



2001/06/03 18:29
 一葉忌
701 自転車を倒して図書館夏木立
702 パイン熟れ滴一滴昼下がり
703 妹のむく夏蜜柑口すぼめ
704 坊ちゃんも来るや下駄履き漱石忌
705 雨降りて赤い鼻緒の一葉忌
 (今日の名句)
 死神に襖をしめて冬籠もり 上野泰
この句、季重なり。彼は虚子に「この頃の特異な作家としては西に朱鳥あり、東に泰がある」
と言われた。しかし、この句、あまりよろしくないようで・・・



2001/06/03 20:08
 土筆
706 つくづくし青き故郷の山河かな
707 武蔵野に土筆摘む子ら黙々と
708 土筆茹で母若きかな袖まくり
709 土筆伸び一筆献上母上様
710 土筆摘む姉妹夕日の山の影
 (今日の名句)
 女身仏春剥落のつづきをり 細見綾子
滝沢一著「映画歳時記」より。映画は今村昌平の「復讐するは我にあり」。この句は永遠のエロ
スの美を詠み込んでいる。



2001/06/03 21:03
 山法師の花
711 山法師宿なき人の通りゆく
712 独り寝の一軒家かな山法師
713 山法師雨降る道に傘もなく
714 山法師何処までつづくぬかるみぞ
715 山法師花の乱かな本能寺
 (今日の名句)
 炎天の遠き帆やわが心の帆 山口誓子
「映画歳時記」。映画は裕次郎主演の「狂った果実」より。この句はヨットの帆に戦争直後の開
放感が詠み込まれている。



2001/06/03 23:57
 若鮎
716 路線バス土手やわらかき蕗の薹
717 父さんは鬼才なりしや三鬼の忌
718 若鮎の清流の宿皿光る
719 眼に人を見ずや愁ひの原爆忌
720 夏来たる野蛮な句作石の上
 註・夏石番矢
 (今日の名句)
 流氷の無垢の大陸接岸す 伊藤彩雪
映画「アラスカ物語」より。集散、小生も梵先生の句、独立性がないと思います。みんな「く
そったれ俳句です」。でも(今日の名句)に採用されるまでお待ちしましょう。妄言多謝。



2001/06/04 01:06
 6月4日(月)仏滅 東京暗闇
 海霧
721 行人の挨拶絶へず漱石忌
722 田の水のぎらりと映すいなびかり
723 海霧に笛を鳴らして貨物船
724 玉川の上水しずもる桜桃忌
725 ハンセン氏病癒へたり藪枯らし
改稿691 祇園会や破れかぶれの無法松
 (今日の名句)
 流れつつ色を変へたるしゃぼん玉 松本たかし
若松孝二監督「水のないプ一ル」より。



2001/06/04 02:48
 日本狼
726 ポタポタと水落ち笑ふ海水帽
727 かなかなの鳴く泣き虫の帰り道
728 さくらんぼ含みてひとり遊びかな
729 ほおずきを鳴らして夕暮母の呼ぶ
730 月蒼し日本狼逝きし夏
 (今日の名句)
 女の躯白布まとひて滝打たる 山下喜代子
映画「こまつなんきん」。嵯峨三智子主演。「こまつなんきん」は肉の引き締まったカボチャの
こと。彼女の色気は抜群であった。さて明日は初出勤!



2001/06/04 09:55
 ロボット
731 みごもりて明日の暗闇病む晩夏
732 どんたくや破れかぶれの笛太鼓
733 大根の首吊り並べて夕日かな
734 空青し人間ロボット五月祭
735 輝きて甘き林檎は先に浮き
 (今日の名句)
 炎天をゆく胎内に闇浮かべ 坂巻純子
映画「越前竹人形」。不倫して身籠もり流産した水子を船頭に流してもらう情景は哀しい。



2001/06/04 12:22
 冷し麦
736 革命幻想ボルガの舟唄流れゆき
737 耳鳴りの唄流れしは海夕月夜
738 恋人と分かれて夜の冷し麦
739 雑踏を抜けてするりと冷し蕎麦
740 空の青深きがゆへに母子草
 (今日の名句)
 向日葵の光輪あつき風を吐けり 山口草堂
田坂具隆監督・主演、佐久間良子。[五番町夕霧楼]。この映画は学生時代に見た。向日葵は、
やるせない暑さに耐えて咲く。金閣寺の放火僧と夕霧楼の夕子との悲恋も、また、むせかえる
ようにやるせなかった。少し余計なことを書く。以来、すっかり佐久間良子の不安になってし
まい彼女の写真を大学ノ一トに挟み込んで持ち歩いていた。さらば童貞の夏の光りよ?



2001/06/05 12:34
 6月5日(火)大安 東京曇り
 竹張りの床
741 水を呑む百姓の子に寒の月
742 竹張りの床に居座る子猫かな
743 寒村にうぐいす張りや夏座敷
744 寒の月かうかうたりし火吹竹
745 夕月夜すだれめぐらす野天風呂
農少年時代、軍人追放の憂き目にあった父は、長州の故郷に帰り独力で家を造った。竹張りの
床の十畳一間と、台所、そして野天風呂。さすが東大工学部!とは、その時、露にも思わなか
った。貧困のどん底の父を憎んだ。しかし振り返れば、あの貧困の少年期は懐かしい。現在の
発想の原点は、すべて、あの少年時代にあると言っても過言ではない。格別、運命論者ではな
いが時代の中の運命というものはある。さて、大名出勤。



2001/06/06 11:22
 6月6日(水)晴子忌 東京梅雨入り
 友禅
746 松の花鋸切形の歯青き波
747 青き空友禅染や秋の帯
748 冴え返る友禅染の立ち姿
749 友禅を流す鴨川水の澄む
750 断崖に風の風鈴鳴りにけり
岡山のライ施設、長島愛生園には盲目のライ患者のために断崖の危険地帯に4ないしは6角形
の風鈴が取り付けられている。



2001/06/06 12:08
 野火
751 露草の花芽に傘をさしかけて
752 武蔵野の天の闇より雪の降る
753 早春の水流れゆく少年期
754 野火放つ夕日の彼方に鴉かな
755 山茶花やこぼれ落ちたる青き垣
 (今日の名句)
 虫の音も草の底なる夜長かな 九幸
九幸は杉田玄白の俳号。この一句はライ患者の詩作品の中で見つけた。



2001/06/06 13:20
 紫陽花
756 紫陽花の雨に打たれし赤い墓
757 少女らの水蜜桃や初潮来る
758 夏蜜柑果汁しぼるやちぎれ雲
759 流灯のながす心や水の町
760 すすきの穂するどし風の荒野かな
先程、雨の中、吉祥寺の小生宅まで雑誌ユリイカの岡本さんが俳句航海日誌の原稿を、わざわ
ざ返しにきてくれる。掲載は2001/08号。彼女帰り際に粋なことを言った。「紫陽花がとても
綺麗ですよ」。私は彼女にほうれん草。



2001/06/07 11:37
 6月7日(木)先勝 東京快晴
 石楠花(しゃくなげ)
761 菜の花や灯りの彼方少年期
762 丹精を込めて牡丹に忍従す
763 干柿の軒に鴉黙り込み
764 石楠花や地獄谷にて貰ひ水
765 紫陽花がとても綺麗よ傘の中
「詩と思想」の土曜美術社の社長、加藤さんが1ヶ月前、癌で亡くなっているとは知らなかっ
た。小生は、川上明日夫詩集の「跋文」を彼女から依頼されていたのである。享年51。合掌。



2001/06/07 13:14
 梅雨晴れ
766 火の酒を舐め梅雨の世をやり過ごし
767 梅雨の中「らい」は昏きや納骨堂
768 水を飲む炎天の町の鴉かな
769 仰ぎ見る積乱雲に水渇き
770 梅雨晴れやふと嘘八百を並べたし
7770句、天神様に献上!余白句会の宗匠小沢信男氏、桑原武夫賞を受賞。賞金100万円。
おめでとうございます!カネオクレタノム。さて大名出勤。



2001/06/08 12:35
 6月8日(金)友引 東京梅雨曇り
 日傘
771 女体富士駿河を望む療養所
772 かれんだあ水着の少女青に濡れ
773 風鈴の舌しずかなり療養所
774 療養所忘れて青き日傘かな
775 朔太郎泳ぐ人あり伸び縮み
清水昶句集「俳句航海日誌」は全二巻。「夏から冬」「春から秋」。
はんなさん、小生の句に現れる「母子家庭」は小生が初めて仲人をした枅川文子さんの母子。
その後、彼女は重傷脳性小児麻痺の子を出産。そして離婚。その子の名は「繭」ちゃん。



2001/06/09 10:46
 6月9日(土)先負 東京快晴
 人生に青き打ち水正午過ぎ
 海亀の涙の溜まる原爆忌
 新茶入れ老ゆる母の香若きかな
 歯磨粉散る朝顔にご挨拶
清水哲男へ。本日の余白句会、小生遅刻。この句を立て打ちにして、持っていってもらえない
だろうか?井川博年は立て打ちプリントアウトが出来ぬゆえ。



2001/06/10 17:27
 
 6月10日(日)仏滅 東京雷雨
 ライ
776 熟れ鮨の琵琶湖湖畔や春の月
777 地獄谷うぐひすの木霊ライ哀し
778 店頭で身売り可愛い夏蜜柑
779 鴬の谺ライ者の輝きぬ
780 梅雨入りや雷の嵐夕べかな
武蔵野一帯、ただ今、雷雨発生!しばし音信を立つ。



2001/06/13 11:36
 6月13日(水)先勝 桜桃忌 東京曇り
本日は、桜桃忌。三鷹の禅林寺は、さぞかし少年少女でいっぱいになるだろう。太宰人気は衰
えず。そして、また本日は「詩俳塾」。清水昶人気は衰えず。まずはめでたし。
最近は「ハンセン文学」の仕事で忙しく掲示板を読む閑がない。どうやら「手のつけられない
馬鹿」と「真面目な馬鹿」が論争しているらしい。馬鹿馬鹿しい。いい加減にして止めて頂戴。
小生の純粋な心が汚れる。
余白句会での小沢昭一さんに、「テレビと同じお顔をしていらっしゃいますね」と言ったら苦笑
いしていた。しかしさすが話術の達人。俳句はあまり上手くはないが、話術は抜群。多田道太
郎さんは、持病の腸閉塞のせいか、お会いするたびに衰弱されていらっしゃるご様子。心配だ。



2001/06/18 12:00
 6月18日(月)赤口 東京快晴
 関口芭蕉庵にて
781 開き見る落葉の夜や落城史
782 水澄みて亀甲羅干し神田川
783 涼しさや水魚集まる芭蕉庵
784 神田川緋鯉真鯉の水光り
785 老優の声涼しきや芭蕉庵
小沢昭一さんへ。でも小沢さんは自分を老優だとは思っていらっしゃらないだろう。失礼しま
した!
余白句会は早稲田の関口芭蕉庵で行われたが、その道すがら神田川の水の綺麗になったことに
は驚かされた。あの、どぶ川がね。
干論茶さん、皓星社でハンセン病文学の仕事をしていたら東京新聞の特報部の久間木さんが取
材に来ていた。そういう取材は本来、文化部がやるものだと思っていたのだが。でも、社会的
事件だから遊軍が動くのかな?ところで、差別用語辞典では、癩病、ライ、レプラという言葉
は差別の項目に載っていますか?だとしたら奇妙なことになりますね。患者自らが、文学作品
に使っているのにもかかわれずハンセン病文学は成立不可能になってしまいかねない。ま、編
集部は、その辺の事、調べていると思いますが。岩波の「暗夜行路」は、部落差別で、「部落」
なる言葉を全部、削除した例もあることだし。



2001/06/20 06:13
 6月20日(水)友引 東京明け方 豪雨
 パンの耳
786 菜の花や夜汽車の灯り流れゆき
787 陽炎の中より帰り畳の目
788 爆笑の真只中に閑古鳥
789 四十雀鳴きて目覚めのパンの耳
790 死の棘の聖書に触れる寒夜かな
 (今日の名句)
 新巻を一本孤独へぶらさげる 中山秋夫
 心臓をある日死神取り忘れ 秋夫
 註・心臓手術成功の日に
 木魚叩く僧に倒れる瓜の馬 吉田香春
 闘う身眉よせ剥ぎぬ夏みかん 香春
 註・ライ予防法反対闘争の日に
以上は「ハンセン文学全集」三万五千句より抜粋。
あのなあ、掲示板の愚兄弟。小生、なんだか疲れたよ。生き甲斐とは何か?甲斐性とは何か?
電車の中に乗っている日本人の間抜けたちを見ていると情けなくなる。しかし俺も男だ!それ
が問題だ。
昨日は、元「薔薇十字社」の内藤三津子さん、元、極左の江村信晴さんと会う。元々でしたで
すよ。嗚呼!



2001/06/24 03:57
 6月24日(日)友引 東京暗闇
 牡蛎
791 釣り竿で捕らえ損ねし鬼やんま
792 とつくりと土鍋に牡蛎は往生す
793 声あげて読む教室や啄木忌
794 炊き込みの御飯に牡蛎の赤い舌
795 天の川流れに光る星の王子さま
 (今日の名句)
 石蕗のゆるる鏡を打ち割りぬ 石浦洋
 ハンセン文学全集より
梵さん、谷内さん、実は小生、この句よく分からないのですが選んでしまいました。ご批評願
えませんか?彼はライで戦争中に中国戦線から日本に後送され「俺は関東軍の狼だ」と言って
一時,軍刀を木刀に持ち替えて巷で暴れていた人物らしい。そしてライゆえ盲目になり死にま
した。ライの人々を調べてみると、みんな盲目になるか結核で死んでいます。ライの病気その
もので死んだ例はあまりないようです。他は自殺。



2001/06/24 12:52
 手打ち蕎麦
776 脱柵の牛に萌えたつ牧草地
777 蝸牛一生暗闇を這い眠り
778 百足虫叩き潰して鬨の声
779 満月や盲目ライの目輝くや
800 涼しさや暖簾をくぐる手打ち蕎麦
あと200句で8000句。かくして清水昶句集「俳句航海日誌」は完成せり!しかし最近、
飲み過ぎで気持ちが悪い。句作も不調。今日は都議選。小生は投票せず。→キッパリ



2001/06/24 17:15
 樽御輿
801 土間あたり深夜の噂ふかし芋
802 投票にゆかず昼寝に鴉鳴き
803 水光る山の青さや花水木
804 よしきりの多弁の噂裏の山
805 空青し子供ばかりの樽御輿
俳句航海日誌の番号が間違っていました。はたして都議選は小泉自民党が圧勝するか?今夜中
に判明。



2001/06/24 18:40
 鮒
806 どぜう汁喰わせてやるから泥を吐け
807 一年の鮒の命に水光り
808 病み上がり夏痩せ言葉口ごもり
809 清流や鮒の湧き出し岩光る
810 使い捨てカメラが穫える信天翁
あきこさん、皓星社では並製で30〜50万で詩集ひきうけるそうです。詳しくは27日(水)
の「詩俳塾」で。来られる?ちなみに前回の参加者は11名でした。



2001/06/24 20:51
 立葵
811 落蝉や広島球場に灯を入れて
812 夏病みて呑むや紙より薄きオブラ一ト
813 立葵山懐で風はらみ
814 青蛙水溜りにてかたまりぬ
815 球根を埋めて秘密の花を待つ
差別用語について一言
梵先生は重大なな誤解をしています。まず既に掲示板がマスコミ、ジャナ一リズムの一部とし
て存在している事に気づいていない。差別用語について言えば、例えばハンセン病の場合、片
仮名の「ライ」「レプラ」平仮名の「らい」はかまわないのですが象形文字の「癩」は禁じられ
ています。何故ならこの病ダレの名によって我々日本人が彼等を徹底的に90年間も差別、隔
離してきたからです。しかし小生の考えでは文脈によっては使用許可かもしれません。微妙で
すね。



2001/06/25 00:03
 蜆汁
816 寒稽古不立文字に喝を入れ
817 春眠や夢の中なる神の糞
818 海に来て麦藁帽子飛ばしたり
819 母子家庭黙してすする蜆汁
820 朝帰りして恋猫の糞を踏み
VONさん、初めまして。NHKの「名作の食卓」見ていません。面白そうな番組でしたね。
片や梵!レプラの人々を差別しつづけ隔離し黙殺したのは俺達日本人よ。俺達に責任がある。
何か文句ある?
ところで、都議選の小泉人気は凄い。自民圧勝。ヤレヤレ。



2001/06/25 02:05
 6月25日(月)先負 一石路忌 東京暗闇
 筍飯(たけのこめし)
821 熊さんと徳利転がしどぜう鍋
822 蜜豆を食べ睫毛涼しき少女かな
823 鮎鮨や水の旅荘の青畳
824 麦飯の黙々と喰ふ少年期
825 九谷まで筍飯へ旅支度
改稿818 海に来て麦藁帽子水平線



2001/06/26 13:23
 6月26日(火)仏滅 東京曇り
 小雀(こがら)
826 旱魃や心眼の菩薩に身をゆだね
827 定年を前に百足虫踏み潰す
828 尿する馬をみつめる羽抜鶏
829 緑陰や赤い錠剤喉仏
830 小雀来て内緒の話新松子
 (今日の名句)
 メスの光芒風の行方をとうなかれ 小山史陽
高松宮記念ハンセン病資料館蔵書より。作者は故人。何とも凄い一句を書き残したものである。
しかも、この一句、川柳集に収められている。生への執着を越えて、この句は虚無だな。恐れ
入りました。ハンセン文学全集の俳句、川柳は五万句もあった!選者は青息吐息、疲労絶頂、
性欲激減、食欲激減。地獄に仏。汚染にキャラメル。したがって、今日は会社を休みました。



2001/06/27 01:31
 竹トンボ
831 夏至の夜月明るきに抱き寝かな
832 夏痩せの帯に秘めたる母の恋
833 銀河より来たる聖夜の美少年
834 竹トンボ少年ひとり早苗月
835 黒揚羽夜の運河をひらひらと
坪内捻典さま、ごぶさたしています。句誌「船団」の原稿依頼、了解。ところで「船団」の同
人の皆さん、この掲示板、御覧になっていたら一筆打ち込んで下さい。
ATOKU14の冬月君、明日は楽しい「詩俳塾」。野暮用を大切にして俳句芸術の上達に励ん
でください。お待ちしています。ところで故・酒巻賢治君へのメ一ル。まだ開いている様子。
誰か知らぬが死してなお「気狂いなんぞ死んじまえ!」ですか。逆探知して、そいつを半殺し
にする。しかし彼は何故ホモセクシュアリテイの「人権」を支援していたのだろう?何か関係
あるのかもね。



2001/06/28 11:38
 六月二十八日(木)赤口 東京晴れ
 
 地蔵坂
836 梅雨晴れや全生園に深海魚
837 沖光る麦藁帽の少年期
838 梅雨入りや土砂降り犬の地蔵坂
839 梅雨晴れてひとり異形の遍路かな
840 梅雨の中自転車倒す地蔵坂
森澄雄さんとか飯田龍太氏はライ患者の句作の指導にあたっていた時期があった。上田五千石
も若干関わっている。東京の清瀬にあるライ医療施設、多磨全生園の近くに五千石主催の句会
があった。詩俳塾の女性のひとりが、五千石氏を慕ってその句会に出席してみたらところ鼻の
ない人が隣に座っていたという。ライ患者の人だった。彼女は、気味悪がって句会を止めた。
ま、世間とは、そういうものだろう。昨日の詩俳塾で聞いた話。さて、お出かけ。



2001/06/29 09:40
 6月29日(金)先勝 東京快晴 梅雨は何処に行ったのだろう
841 病み上がり夜半満月に咳ひとつ
842 寒村で母と一緒の蓬餅
843 十三夜鏡の如く目覚めをり
844 松蝉や木陰の石に腰を据え
845 犬の舌垂らして走る喜雨の中
ATOKU14を入れる。快調!



2001/07/08 08:49
 2001/07/8日(日)重信忌 東京曇り
 野分
846 蓮根の穴覗かれる短夜かな
847 水鳥の巣より溺れし卵かな
848 野分立つ埴輪童子の耳飾り
849 少年の海耳鳴りの晩夏光
850 らい院に薔薇の刺あり抜歯以後
このところ忙しい日々が続いていている。先日はらいの多磨全生園で「らい文学全集」の編集
委員、鶴見俊輔、大岡信、加賀乙彦氏ら、それに、らい患者さんさんらエリ一ト幹部と会う。
その会合、なんと延々7時間におよんだ。鶴見さんは同志社時代の恩師である。ところがこの
恩師、初耳だったが、16歳の時、女中に手をつけて鶴見一族から追放されさらにアメリカに、
追放されたのである。要する桃色遊技の非行少年。鶴見さんとはその前日、小沢信男さんの桑
原武夫賞の時、東京会館とお茶の水の「山の上ホテル」でお会いしている。四十年ぶりの再会
でありました。鶴見さんは小生の事を、キッパリ覚えていた。学生時代、一度、詩人の正津勉
と鶴見さん宅に尋ねていったことがある。その間約2時間。小生は、一言もしゃべらず退散し
た。鶴見さん曰く。「当時あなたは私のことを馬鹿にしていたんだね」。小生、答えて曰く。「違
います、高倉健に会うみたいで堅くなっていただけです」。しかしねえ鶴見さん、「社会思想史」
試験で鶴見さんの悪口を書いたらで80点を下さいましたね。→キッパリ。 またお会いした
いです。鶴見さん、人生というものは疲れるものですね。パソコンぐらいは修得しなさい!



2001/07/08 14:35
 寒風
851 老ゆる母来たりてへこむ梅雨畳
852 金色の目玉百舌鳥の月窓寺
853 晩年や夏の木菟眠り込み
854 青春期髪切虫の下宿かな
855 寒風やレプラの園に盲ひゆき
川端康成に北条民雄の葬儀に参加した壮絶な小説「寒風」あり。
しゅうさん、小生の句に注目してくださってありがとう。あのねボンクラ梵の土阿呆は掲示板
のトリック・スタ一なんです。地上最低の屑。そこに自ら気がついていない。文学的センスは
ゼロの糞ったれ。あの糞たれのお陰で書き込みをしない友人は沢山います。何とかして糞たれ
を社会的に抹殺しようと考えていますが、今度出る清水昶句集「俳句航海日誌」に、この文章
も載ります。それでね、多くの人々に買っていただけると、あの糞たれをぐにゃぐにやにして
しまうことが出来る。小生、格別、気が狂るって訳ではないのですが税金のない南極に独立国
家を作ろうとしています。もちろん強制収容所も作ります。そんでね、あの糞の阿呆を拉致し
て拷問に掛ける。しゅうさん、そこの警視総監になっていただけませんか?今のところ国家予
算は二億用意しています。給料ははずみます。返信願います。食料は白熊とペンギンの丸焼き。



2001/07/10 00:45
 2001/07/9日(月)鴎外忌・大安 東京暗闇
 白薔薇
856 白薔薇を見て真昼の倦怠期
857 母のためマッチ擦るかな笛祭
858 釣鐘草盲動鈴や地獄谷
859 トカトントン大工不在の桜桃忌
860 寒風の癩の輝き反抗期
清水哲男へ。掲示板を閉鎖するのですか?ならば清水昶句集はこのネットを使っているので他
の掲示板に移動しなければなりません。残念です。
探検家、愚弟梵先生。あのね、南極独立国家構想は真面目な発想です。マルクス・エンゲルス
の「国家と革命」のユ一トピア国家の建設を目指しています。例えば好きなときに魚を釣り、
好きなときにセックスをする。しかし、こいつは相当退屈な世界ですね。それに土地柄寒い。
暖房が必要です。炬燵を持っていけるだろうか。あるいは女性を湯たんぽ代わりに持っていく
か。それに食糧問題。ペンギンは保護鳥なので丸焼きに出来ない。
発想はオウム真理教に似ています。小生は日陰者なので愚弟は南極独立国家の独裁大統領にな
ってもらいたい。どぎゃんすべいか渡り鳥。応答せよ!
冬月君。メイルぶっこ割れている。直します。



2001/07/10 03:11
訂正 マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」でした。
あきこさん、暑中見舞いありがとう。小生夏ばて。東京新聞2001/07/7日号特報部に「ハン
セン病文学全集」全10巻「患者達の魂の叫び」と言う記事が出ています。小生の写真も出て
いますが記事の中には名前はありません。大岡信が歌人となっています。干論茶さま、大岡信
は詩人です。特報部の彼に厳重注意してあげてください。皓星社の藤巻さん、能登さんご苦労
様でした。なた方のハンセン病文学への情熱には頭が下がります。小生なんぞ無知無力。汚染
にキャラメル、間抜けの阿呆。今後ともご指導のほどよろしくお願いします。
ところで谷内さん、大阪読売の斎藤喬、東京読売の水巻はご存知ですか?共に同志社で一緒で
した。



2001/07/10 10:33
 2001/07/10日(火)赤口 東京快晴
 青大将
861 母子家庭水羊羹に溶け込めり
862 母臥して氷菓をひとり買いにゆき
863 手打ち蕎麦風の潜りて夏暖簾
864 籐椅子を揺らして眠る天の夢
865 青大将梁より落ちる昏き家
千里さん、許可が下りれば絵馬さんの掲示板に行く。しかしこの掲示板を夏休みにする理由が、
さっぱり和歌欄。文学に夏休みなんかない。清水哲男は疲れているだけなんだと思う。



2001/07/11 02:50
あきこさん、夏ばてと飲み過ぎ。それに「らい文学全集」の編集で疲労困憊。でも明日の「詩
俳塾」は行きます。
絵馬さん、貴兄の掲示板、複雑怪奇。干論茶さんにお願いして、「俳句航海日誌」を8000句
まで巻き込もうとしています。
清水哲男へ。掲示板の夏休み了解。でもきちんと期日を教えて欲しい。この掲示板から清水昶
句集を編集しているので・・・。こないだ大岡信に帯文頼みました。OK!



2001/07/13 09:36
新着
 2001/07/13日(金)先負 東京快晴
さらば、夏の光りよ?一年間、お世話になりました。小生は谷内さんや梵の宿敵干論茶さんの
無宿人別帖記載されました。もつとも最近は忙しくて、ろくに掲示板を読んでいない。さらば
愛しの梵!
かよさん、多田道太郎さんは腸閉塞。あれは、とても苦しい病気です。



2001/07/14 14:36:52
 梅雨明け
866 去年今年風の中なる露天商
867 魚売り野太き声に野分けかな
868 夏蜜柑むく少年の海遙か
869 満月や湯の匂い立つ湯殿山
870 梅雨明けの真青に放つ竹トンボ
 (今日の名句)
 メスの光芒風の行方をとうなかれ 小山史陽
現在、小生が選句しているハンセン病文学全集の秀逸の一句。作者は故人。らい患者の病状は
様々ですが、昔の手術は実に乱暴なもので神経の麻痺に伴って腐乱する指や手足の切断はごく
日常的だったようです。戦後、新薬プロミンの登場にによってハンセン病は完治する病になり
ましたが、この作者は新薬登場以前の患者であり「明日」というものが絶望的に閉じられてい
た状況にあったと思われます。曰く虚無。
一言、断っておきますが小生は、いわゆる社会派の詩人ではありません。
干論茶さんへ初歩的な質問一つ。URLに記入しないと、この文章は保存されないのですか?
記入の仕方が分かりません。



2001/07/14 20:29:41
 鉄砲百合
871 満月やのけ反るごとの女体富士
872 愛されず全生園に毒苺
873 子らはしゃぎ押しくら饅頭柏餅
874 山深し鉄砲百合にマタギかな
875 籾殻に顔突っ込みて母離郷
その時、母は納屋の籾殻の山に顔を突っ込んで過労で倒れていた。茫然と立ちつくしている小
生に母は蚊の鳴くような声で「お父さんを呼んできて」と言った。夢中で野良にいる父の元に
走っていった。小学校6年の夏の出来事である。農家は夫婦の労働で成立する。母は大阪の春
日丘の実家に療養のため帰ることになる。かくして我が家が長州の羽月部落から離農
る羽目になる。
あきこさん、先日はハンセン病文学の選句、手伝って貰いありがとう。まだまだ天文学的数字
の句が残っています。従って小生夏ばて。また、あきこさんの救援の愛の手が欲しい、なんち
ゃって。と言うより選句も座なのでおしゃべり仕合ながら選句していると選句漏れが少なくな
るのです。
干論茶さん、ギオさん、俳句航海日誌よろしくお願いします。



2001/07/14 22:14:41
 遠雷
876 炭俵納屋に置き去り昏き婚
877 蟻地獄覗いて齢恐れなし
878 らい癒えて癒えぬ病舎や曼珠沙華
879 突堤に鳶の口笛夏怒濤
880 遠雷や再会の門に雨霏々と
 (今日の名句)
 春障子開け閉めてのたび齢をとる 宇多喜代子
第35回蛇笏賞句集「象」より。彼女は、さり気ない日常的な風景に、時間を流すのが上手い。
正さん俳句航海日誌をよろしく。しかし干論茶さん、凄い機械の使い手ですね。一流のオペレ
タ一!



2001/07/15 01:29:44
 流人墓
881 天狗酒や水戸天狗党梅の散る
882 酒の香に母郷を思ふ遠蛙
883 四面楚歌どん底の街毛虫焼き
884 蕎麦湯飲む細長い町日脚伸ぶ
885 流人墓破れ傘に埋もれて
 (今日の名句)
 絶叫する高度一万の若い戦死 三鬼
若い戦闘機乗りを悼んだ句。しかし高度一万を飛んだ戦闘機が日本にあっただろうか?たぶん
高度一万を飛んだB29から撃ちをとされた零戦かもしれない。他に「少年ノ単座戦闘機血ヲ
垂ラス」あり。



2001/07/15 03:20:28
 松蝉
886 満月や梟の森金色の目玉かな
887 華厳の滝嗚呼人生不可解と落ち続け
888 上高地夏の鶯風の中
889 鳩を飼う少年の屋根五月晴れ
890 松蝉の声吹き流す海辺かな
 (今日の名句)
 軟体の兄ゐる春のガス燈よ 秦夕美
先日、秦さん贈られてきた句集「失光遊世」(邑書林)より。小生は、かつて彼女と九州でお会
いしている。発想の視点が特異な方です。
干論茶さん、この掲示板、俳句のペイジと勘違いしている御仁がいるみたいです。御注意あれ。



2001/07/15 13:38:51
 柊(ひいらぎ)の花
891 梅雨明けて行きたし初恋の地中海
892 裸婦像の乳房冷房の美術館
893 羽抜鶏知らず殺人乳児院
894 庄内は夕焼け土門写真館
895 柊の花乱れ散る全生園
ハンセン病施設、多磨全生園には、柊の垣根がぐるりと張り巡らされている。柊の棘は鋭い。
すなわち、患者の逃亡避けに、その綺麗な垣根は作られていた。一種の有刺鉄線だったのであ
る。美しい花には棘があるか。自虐!
 (今日の名句)
 戦友ヲ葬リピストルヲ天ニ撃ツ 三鬼
あまりにも名句なので解説は不要。



2001/07/15 18:05:42
俳句航海日誌7900句 
地獄谷
896 転校生寒夜に深き失語症
897 賢治読む銀河鉄道涼しかり
898 修司忌や覗く初恋地獄変
899 舌読で点字を舐める寒夜かな
900 満月や盲導鈴鳴る地獄谷
註1・舌読。ハンセン病患者は盲人が多いい。そして彼が手の指がない場合、点字を舌で舐め
ながら読む。これを長時間続けると舌が傷つき口中が血だらけになると言う。
註2・盲導鈴(もうどうりん)。盲目のハンセン病患者の散歩のために、要所要所に吊られてい
る鈴。彼らは、その鈴の音を頼りに盲導柵を伝って歩く。
註3・地獄谷。ハンセン病患者のほとんどは、家族と絶縁しているので遺骨の引き取り手がな
い。したがって、昔は焼いた骨を谷に放り込んだ。それを通称「地獄谷」と呼んだ。
茂樹さん、この掲示板の新参者に、丁寧な挨拶ありがとう。俳句航海日誌も、後100句で8
000句。本格的に俳句を始めたのが去年の2001/07/6日ですから、今日で1年と2週間。
8000句になったら、2週間で、この文章も含めて本屋の店頭に清水昶句集「俳句航海日誌」
が並ぶ予定。ところで皓星社の藤巻さん、そういう手はずだったよね。戦闘態勢は大ジョブか?
100句なんて吾が卓越した才能を以てすれば2,3日で出来ちゃうよ。明日会おう!



2001/07/15 21:18:03
 夜火事
901 焼き茄子の湯気の彼方や少年期
902 包帯の白薔薇の刺戦後まで
903 炎天に一角の犀見て帰る
904 饒舌な夜火事の赤美しき
905 老母むく夏蜜柑のみ黙しをり
 (今日の名句)
 パラシウト天地ノ機銃フト黙ル 三鬼
戦争と平和である。丸腰の落下傘兵を撃ち殺すには、敵であれ味方であれ、一瞬のためらいが
あっただろう。
ところで干論茶さん、清水哲男の「荒れる掲示板」の元住人として思うのですが、この別荘は、
不気味なほど静まりかえってますね。いつも、こんなに静かなんですか?お化けでも出るのか
な。怖い!



2001/07/16 01:14:19
 夏期休暇
906 二十歳炎天の学僧金閣寺
907 夏期休暇半死半生の汽車がゆく
908 ランドセル欠伸したまま夏休み
909 納豆に寒卵落とし出陣す
910 武蔵野やその日暮の声沁みとうる
本日、初めて吉祥寺で蝉の声を聞く。
 (今日の名句)
 少女にも飢餓の夏くる草の原 六林男
ほう、干論茶さん、この別荘は皿屋敷でしたか。ところで、この句、何だか異常でしょ。飢え
た少女が、どうして草の原にいるのか。どう考えても国民全体が飢えていた戦後の食糧難の時
代が背景ですね。しかし、現在の若者には、もう、この句を分かれと言っても無理。おそらく
戦後の飢餓を知る世代は昭和十五年生の小生ぐらいまで。ちなみに同世代には野球の王、相撲
の大鵬、アル中で死んだボクサ一の海老原、詩人の清水昶がいます。



2001/07/16 03:12:06
 花火
911 大輪の花火の中で父老ゆる
912 戦争を黙して育てる父の葱
913 滅びゆく焦土にも咲く曼珠沙華
914 第三の男と芥子の観覧車
915 高度1万絶叫の祖国花火かな
正さん、三鬼の句、高度一万のB29への戦闘機の体当たり特攻作戦とは驚きました。日本人
の殉教の美学ですね。嗚呼!



2001/07/16 07:56:15
 
 おはようねぼすけ
 
 
 黒い絨毯
916 蟻地獄熱湯注ぐ少年期
917 蟻穴を出ずアフリカの飢え明日ありや
918 アフリカの夜明け軍隊蟻地獄
919 黒い絨毯蟻塚軍隊皆殺し
920 盲目の軍隊蟻地獄牛の骨
以上映画「黒い絨毯」より
 (今日の名句)
 血を喀いて目玉の乾く油照り 石原八束
要するに彼の晩年は結核だった。そこからの精神的な表現としての病気と闘う俳句。



2001/07/23 01:30:59
 むざんやな甲の下のきりぎりす 芭蕉
この句はどこかの古戦場を詠んだ句だと思います。どなたかご存知ありませんか?
あきこさん、航海日誌は停泊中。さすがにばてました。ハンセン病の選句よろしくお願いしま
す。



2001/07/28 19:27:22
 生命線
921 事実とは真実ならずや寒の月
922 らい患者青息吐息夏の果て
923 笑う死者二度も殺すか雪の中
924 生命線薄ら笑ひや寒の月
925 被差別が差別草津雪の檻
ハンセン病の草津療養所は、患者に「死の療養所」として恐れられていたらしい。患者のエ一
リトが、他の患者のを監視し監獄に放り込む。したがって極寒の草津では凍死者が続出するこ
とになる。この差別の構造はヒットラ一の強制収容所と酷似している。すなわち差別れた者が
逆差別するという構造の残忍さ。
明日の投票には行かない。投票しない権利。何で日本に住んでもいない大橋巨泉が立候補して
んの?



2001/07/29 01:15:45
 採血
926 紫陽花やしとしと雨呑む学生街
927 流れ星恋の終はりの水平線
928 秋風の立つ武蔵野に臥してをり
929 採血をして炎天の眩暈来る
930 色鳥の声で朝の目覚めかな
能登さん、詩俳塾(金)の朝、脚が腫れいるのに気づき病院に行って採血、尿の検査、胸部の
レントゲンを撮ってきました。きっと夏ばてでしょう。
ところでハンセン病文学の件、ある新聞から原稿依頼が来ています。皓星社で15年間ハンセ
ン病に関わったあなたは、その病気を酷知していらしゃる。皇太后の誕生日「らい予防法」が
施行され山川草木をかき分けて「らい者狩り」が行われたのは90年前からでしたね。膨大な
彼らの詩と俳句を選んでいて驚くのは、彼らは差別、隔離されたにもかかわらず天皇制を心か
ら敬愛しているらしいことです。天皇選民=賎民説がありますね。何か関係あるのかな?その
辺をご存知なら教えてください。なをハンセン文学全集については、まだ「引継」の話が残っ
ています。責任者の能登さんと直接話がしたい。では又ね。



2001/07/29 14:16:10
 総選挙
931 夏山に登る青年半獣神
932 僧一人すすきが原でバスを降り
933 幽霊船と舟虫一族漂流し
934 颱風待つ根こそぎ倒れよマイ国家
935 暗雲の颱風を待つ総選挙
次会の余白句会の兼題は「山(無季)」「颱風」「舟虫」「薄」。皆さんも句作してみませんか?
さて本日は総選挙(編注:参院選)。野球観戦代わりにテレビにしがみつくことになりそうだ。



2001/07/30 01:18:53
干論茶さんテストです。機械が言うことを聞きません。自民圧勝。嗚呼!



2001/07/31 04:09:50
干論茶さん、半日がかりで機械を初期化して組み立てた。即ち、空っぽにした。ゼロからの出
発。今までのメ-ルは全部、消えてしまった。しかし、貴兄の作ってくださった「俳句航海日誌」
だけは無事!ありがたい。め-るは、新規に設定。今度は大丈夫だと思う。
元々、小生は少年時代、漫画家か旋盤工になりたかった。図画工作も好きだった。交通安全週
間のポスタ-で、金賞を貰ったこともある。しかも車がほとんど通っていない田舎の、学校で・・・
笑止。
かつて、寺山修司は、子供には、ものを解体することが好きな人間と組み立てることが好きな
人間の2種類があると言ったことがある。小泉さんは、まず人間を解体し、ぶち壊し、壊した
人間をリストラ、再生、組み立てようとしている。それを称して構造改革。しかし一度壊れた
人間を組み立てるのは困難を極める。偽善の匂いがぷんぷんしている。
詩人も俳人も、あらかじめ、社会からリストラされた壊れた人間だ。立派な市民などになりた
くなんかはなりたくもない。今、政治屋はいても政治家はいない。屑の彼らこそ、リストラす
べきだ。
くたばりそこないの小生は、明後日、病院に検診の結果を聞きにいく。神の御恵みを・・・笑
止!



2001/07/31 12:57:47
 昼顔
936 生きよとふ浜昼顔に怒濤かな
937 石蕗や笑ふ娼婦の裏通り
938 娼婦らに夜の向日葵頭垂れ
939 昼顔の娼婦に絡む夜の蔦
940 代筆の盲人の句や月見草
ハンセン病文学全集の選詩、選句は一段落。小生にとって、彼らとの出会いは驚異に値する異
次元空間、未知との遭遇と言っても過言ではなかった。彼らには、例えば村越化石を筆頭に代
筆を必要とする盲人の俳人、詩人が実に多い。暗闇の世界で、目が見えた頃の思い出を手掛か
りに、代筆で作品を書き続けているのである。凄いものである。さしずめ、当方は「開きめく
ら」。哄笑!
干論茶さん、小生の「三島由紀夫」(小沢書店)は当時、書評で松本健一から酷評されたことを
覚えています。しかし版を重ねた不思議な本でした。



2001/07/31:18:33:30
 蝉
941 熊蝉の唸り始める日暮時
942 ちりじりと鳴く蝉離散家族かな
943 風を飼ふ山懐の青大将
944 水を汲む農少年や油蝉
945 蝉の鳴くちぎれちぎれの大欅
東東京決勝戦で都立城東高校、対岩倉高校に辛勝。小生は都立高校出身なので、ちとウレシ。
小泉旋風は冷え、風は夏の甲子園へとキッパリ向かう。ちなみに岩倉高校は落語家の歌奴の母
校で昔は岩倉鉄道学校と言った。歌奴は高校を卒業して新大久保駅の駅員となるが真面目に働
くことが馬鹿馬鹿しくなって辞め「山の穴あな」の落語家に転職。←笑止。



2001/07/31 22:12:24
 俳句航海日誌7950句目
 戦争
946 目刺し焼く戦争の父も老いにけり
 改稿946 目刺し焼く戦争の父老ひにけり
947 母の戦争在りし日の唄田螺く
 改稿947 母の戦争在りし日の唄田螺鳴く
948 戦争に口を閉ざして田螺鳴く
949 天と地の和解なるかな花火打つ
950 無政府を思ふ岬に夏怒濤
清水哲男へ。以上は「笑止」(笑ってはいられない)の句。
ところで皓星社の藤巻さ〜ん。清水昶句集「俳句航海日誌」は、後50句で約束の8000句
になる。挿画の長谷邦夫氏を始め大岡信への連絡、臨戦態勢は如何?



2001/07/31 23:47:09
改稿946 目刺し焼く戦争の父老ひにけり
改稿947 母の戦争在りし日の唄田螺鳴く
茂樹さんは京大医学部の先生なのですか?ハンセン病文学全集の選をしていて気がついたので
すが、戦後、アメリカから輸入されたハンセン病の特効薬プロミンとサリドマイド児とは、ど
うも密接な関係があるらしいのです。ご存じならご教授ください。



2001/08/1 15:19:54
 風鈴
951 花火師の父の戦後や闇の中
952 大輪の花火の中で父老ゆる
953 黙祷の眼底光る原爆忌
954 風鈴の舌で居眠り赤子かな
改稿954 風鈴の舌で赤子は舟の籠
改改稿954 風鈴の舌に赤子は籠の舟
955 噂立ち障子の針に眠られず
茂樹さん、ハンセン病に於けるプロミンとサリドマイドの関係は良く分かりました。要するに
強い鎮痛剤。ただ、もうひとつハンセン病で分からないのは、この病気は感染性ではないとい
うことです。持って生まれた遺伝子に、たまたまライ菌が含まれていて、その人しか発病しな
い謎の病気です。この謎の病気をめぐって北条民雄「いのちの初夜」、遠藤周作「私が捨てた女」、
川端康成「寒風」、松本清張「不安な演奏」「砂の器」などの小説が書かれています。そして聖
書。遺伝子は人間の運命を決定することもあるのですね。余談ですが京大医学部教授に歌人の
永田和宏がいますね。彼とは長年の知り合いです。彼をご存じかなあ?
余談もう一つ。上智大学の絵馬さんによると一年と少しで小生の俳句8000句は明治以降の
日本新記録だそうです。当人はポカン。「俳句航海日誌」は昨年の七月六日から俳句手帖に書き
始め、それをネットに打ち込み始めました。



2001/08/01 20:29:25
 夏痩
956 夏痩や胸骨透かす写真絵図
957 夏痩や病院の門影法師
958 夏怒濤防風林に影動き
959 油蝉鳴きやまずをり爆心地
960 かげろうの中影法師僧も揺れ
本日、検査結果を聞きに病院に行く。いわゆる「熱中症」。平たく言えば?暑さと栄養障害にや
られた。食べて安静にしていれば良しとのことでした。この飽食の時代に栄養失調とはねえ。
茂樹さん、ネット検索でハンセン病の文章、小生も読みました。小児感染はするということで
すね。ヒトの遺伝子とライ菌の遺伝子は別ですか。となると隔離政策は正しかったがプロミン
輸入後は間違っていた。しかし断種はやむおえない処置としてある?う〜む。



2001/08 /02 12:03:27
 すみれ草
961 ピッチャ-の孤独夏の甲子園
962 草野球ライ麦畑に雨が降り
963 すすき野や余生なるかな僧一人
改稿963 すすき野や余生を歩く僧ひとり
964 殺人の路傍に咲きし菫草
965 だれのものでもないのに野菊咲き
改稿954 風鈴の舌で赤子は舟の籠
藤巻さんよ、もうこれでやめるなんて言わないでよ。この掲示板では、もうハンセン病文学全
集を離れて、みんな、もっとハンセン病の実体と知識が欲しいんだ。我々は知らなすぎた。し
かし貴兄には豊富な知識がある。そいつを貰いたいんだ。考えてもごらん。北条民雄の「いの
ちの初夜」や映画「砂の器」論は、すでに、いっぱい書かれている。小生とて「いのちの初夜」
につては書いている。もはや「時間をかけて」批評するといった悠長なこと言っている場合じ
ゃない。こんなことは、お互いに知り合いなんだから、個人的に電話一本で話せば済むことだ
が掲示板は公的な場所だ。他の読者にも知らしめる必要があるよ。今のままでは、お互いに、
まるで懺悔のしあいじゃないか。頼む、応答せよ!
ところで清水昶句集「俳句航海日誌」の進行状態どう?



2001/08 /02 16:39:02
 蛍の木
966 熟れ柿の舌にとろりと古里の味
967 富有柿貧しき家や少年期
968 木漏れ陽に落柿舎の葉裏濡れてをり
969 蛍の木夢の彼方に光る島
改稿969 蛍の木夢の青さに光る島
970 冷や酒を傾け月の一軒家
改稿963 すすき野や余生を歩く僧ひとり
改稿954 風鈴の舌に赤子は籠の舟
忘れていた!北条民雄については昨年、大宅壮一賞を受賞した「火花」(飛鳥書房新社)があっ
た。著者の高山文彦とは、ずいぶん古くからの友達だ。彼は単独取材で本書を書き上げた。
ところで、あきこ姉貴、小生の頭の何処が迷走しているんだ。明日は新宿百人町で300回目
の楽しい「詩俳塾」。ゆっくり聞かせて頂こう。



2001/08 /02 23:31:02
改稿969 蛍の木夢の青さに光る島
NHKテレビで見たが「蛍の木」と言うものが東南アジアの島(島の名亡失)にあるらしい。
一本の大木に無数の蛍が群がる光景は美しい。
能登さん、ハンセン病文学全集の成功を祈る。しかし悲壮感溢れて、また病気になっちゃうぜ。
今から起きて10分間、体操せよ。始め!



2001/08 /03 11:13:48
 泡盛
971 下戸の母梅酒ばかりは舌鼓
972 帰郷して母の漬けたる梅酒かな
973 独り飲む麦酒は苦し明日ありや
974 九米島の泡盛風で割りて飲み
 改稿974 久米島の泡盛風で割って飲み
975 久米島の泡盛飲みて草枕
夏目漱石は第五高等学校の先生の時、久米島で暮らしている。しかし彼が泡盛を飲んだかどう
かは不明。彼は、多分、下戸だったのであるまいか。小生が文学散歩の集材がてら行った時の
久米島の丘で飲んだ泡盛の味は今でも忘れられない。風が綺麗なのである。即ち、水割りでは
なく風割りの泡盛。
ハンセン病を調べているうちに昨夜、一度捨てたはずの現代詩が書きたくなった。ハンセン病
の奥深さを表現するには俳句では駄目だ。小説も駄目。現代詩のアホリズムが最適かもしれな
い。カムバック・シエ一ン!
徳子さん、小生は「愛は惜しみなく奪う」です。しかし、これ何だっけ?能登さんは体操終わ
ったかな?
今日は楽しい「詩俳塾」。男、家を出て七人の敵あり。

2001/08 /03 11:25:39
改稿974 久米島の泡盛風で割って飲み



2001/08/0 5 14:26:22
*この投稿時間、サーバーの時計不調により推定5日(日)0時ごろ
 同志社詩人
976 胡麻の鉢老母の匂ひ若きかな
977 天皇の水漬く屍や原爆忌
978 どすを巻きライ輝くや麦畑
979 泡盛や無頼詩人の浮き沈み
980 窓を開け同志社詩人の残暑かな
註978「どすを巻く」。ハンセン病患者のいる家を指して東北地方では「どす巻きの家」と言
ったらしい」。昨日の詩俳塾の塾生からの報告。何だか「どすが利いて」いる。簀巻きにされて
ズタズタのなった人間と言う意味の隠語だろう。
干論茶さん、今日は電話にて失礼。パソコンを4台もお持ちとはねえ。プチブルめ!(笑)。し
かし、小生もパワ-マックを、もう一台持っている。
ところで、いつも気になっていたのですが掲示板の新島譲が勝海舟に宛てた手紙の文面、同志
社出身の人間として、ひどく気になりますね。倫理的で教条的。好きなの?
長谷邦夫さま、清水昶句集「俳句航海日誌」は、あと20句で約束の8000句になるのです
が2001/088日から小生、下北半島、恐山方面へ約一週間、巡礼の旅に出るため、最後の句は
恐山の句で打ち止めにしようと思っています。だから出版は、少し延期。藤巻さんとは了解済
み。恐山の霊石、おみやげに持ってきてあげるね。巫女さんに加藤温子さんの霊も呼び出すよ
う頼んでみる。
詩俳塾のみなさん、俳句航海日誌は、この掲示板では干論茶さんの許諾を得ているので、どん
どん批評してください。それが俳句の「座」です。鈴木正枝さん詩作品落手。
どうしたことか、この掲示板のみなさん、おるかさんの「うつわ歳時記」で合宿している。



2001/08 /05 22:41:55
 明日は広島原爆忌
981 鐘の音や広島の海夏怒濤
982 ハンセン病「癩」の谷間や月見草
 能登恵美子へ
983 広島の廃虚の城郭油蝉
984 大地震の神戸磔刑の残暑かな
 地震(なひ)
985 キリストの磔刑残し原爆忌
いやさ干論茶さん、ハンセン病の患者の出た家を「どすを巻いた家」と言う隠語とスラング、
差別用語の表現の小生の句、削除すべきなのかな。小生にとっては、奇妙な生々しさがあって
迫力がある。「聖書」ではハンセン病患者のことを「皮膚の悪い人」と書き直している。志賀直
哉の「暗夜行路」、藤村の「夜明け前」では「部落」の文字は消えている。この差別用語と言う
やつはいったい何だろう。言葉における実体と、その貴重な負の文化、明日NHKスペシャル
で放映される原爆被爆者達の、多分、差別の問題。我々は彼らを差別してきたのだろうか。イ
エス。ただし、知らなかった。もし文学上で差別用語を使うとすれば、文脈上の均衡でのみ許
されると思う。マスコミ・ジャナ一リズムも、そして小生のような「物書き」も差別用語に自
己規制、ないしは屈服しては駄目だ。はて、そうなると?



投稿日: 8月 6日(月)23時34分43秒
           残暑
986        子育飴売る店もあり残暑かな
987        ぶり返し来るや雨の曼珠沙華
988        毛深き夜尼僧院にも残暑かな
989        遠雷や雨来る赤い地図眺め
990        かつと照る残暑に友の見舞ひかな
忘れていた。7975句を以って俳句手帖14冊目を完了。何処まで続く荒れ
野かな!嗚呼。
少し困ったことが起こった。恐山に行く同行衆の一人が倒れてしまった。明日、
何とかなればいいが。



投稿日: 8月15日(水)11時03分04秒
昨夜遅く下北半島「恐山」を中心に、まぐろの一本釣りで有名な本州の最北端、
大間岬までの東北の旅から帰りました。交通手段は、すべてレンタカー。
寺山修司記念館にも行って来ました。総工費は7億と聞いてびっくり。設計原
案は粟津潔。館長は修司の甥で中学の同級生、寺山孝四郎。アンケート用紙を
書いていたら小生の名前を御存知で(現代詩文庫「寺山修司詩集・思潮社」の
「あとがき」は小生)丁寧に館内を案内
してくださいました。この設計は面白い。外形も内部も、すべて時計型。死ん
だ寺山修司と直接、話すことも出来る。これまさに恐山!あ、恐山で、つげ義
春が描くような,ひなびた木の温泉に入ってきた。本来の温泉の姿だろう。そ
れにしても疲れたな〜。8月18日(土)にはロルカ詩祭のため神戸へ招待旅
行、行けるかな?「まろうど社」の大橋君、小生、旅行中に筋肉痛になり、歩
くと痛いんだ。この掲示板でも、ロルカ詩祭の件、宣伝しておいたほうがいい
よ。
藤巻さん、清水昶句集「俳句航海日誌」出版の件、断念しようと思っています。
と言うのも、ハンセン病云々の問題ではなくユリイカ9月号に発表する「俳句
航海日誌」の校正ゲラ(7000句中、100余句編集部選)を見ていたら推
敲無くして小生の句は成立しないことを痛感。その代わり、以前から話のあっ
たCD出版社「BOX200」に出版権を譲渡して句の推敲の準備に掛かりま
す。長谷邦夫さん、その折りは、新しい挿絵、お願いできますか?
藤巻さん、午前中に必ず電話ください。



投稿日: 8月15日(水)14時49分58秒
           恐山
991        恐山地獄谷まで白帝期
992        暗門の滝落ちるまで恐山
993        恐山硫黄の匂ひや月見草
994        風車いたる所や恐山
995        恐山炎帝油の地獄谷
西目屋村「森の泉ホテル」にて独吟。
待てよ藤巻さん、CD出版とは別に、やっぱり清水昶句集出しますか?でなけ
れば何だか、そちらの今までのCD編集の苦労が水の泡になってしまう。再考
願います!



投稿日: 8月16日(木)10時54分26秒
恐山は地獄だらけである。曰く、地獄谷、どうや地獄、修羅王地獄、塩屋地獄、
博打地獄、血の池地獄、金堀地獄、賽の河原等々。そして恐山一帯は異様な硫
黄の匂いが鼻を突く。賽の河原を歩くと靴は硫黄で真っ白になる。洗ってもな
かなか落ちない。「山川大地まさに霊山となり定めし所が、ここ霊山となる」。
そして戦没者慰霊の碑までもある。この碑は、いつ建てられたか不明。おそら
く日露戦争の頃かもしれない。
「今を辿ること1千200年前、慈覚大師円仁はが入唐救法中の一夜、霊夢に
聖僧現れ(汝、国に帰り、東方行程三十余日の所に至れば霊山あり。地蔵尊一
体を刻し,その地に仏道を広めよ)とある。宗教の発生は大抵、そのように始
まっている。「1千年の永きに亘り人が死ねばお山(恐山)に行く」と言う素
朴な庶民心情の下に恐山信仰はある。
           恐山心と見ゆる湖を囲める峰も蓮華なりけり 桂月
長谷邦夫様、清水昶句集「俳句航海日誌」の件、小生が神戸のロルカ詩祭から
帰った後、藤巻さんと会うことになっています。彼の方からも連絡があるでし
ょう。あと五句で8000句!あのね、もっと漫画の現状の話きかせてよ。新
潮社の漫画週刊誌は売り切れだと聞いたけど?



投稿日: 8月17日(金)11時21分14秒
           寺山修司記念館よりの報告
ひとの一生かくれんぼ あたしはいつも鬼ばかり
赤い夕日の裏町で もういいかい まあだだよ
百年たったら帰っておいで 百年たてばその意味わかる
かもめは飛びながら歌をおぼえ 人は遊びながら年をとってゆく
人はだれでも遊びというな名の劇場をもつことができる
どんな鳥だって 想像力より高く飛ぶことはできないだろう
わかれは必然的だが 出会いは偶然である
野に咲く花の名前は知らないが 野に咲く花は好き
人生はたかだかレースの競馬だ!
その晩遅くなってわが家に火事があり、近所の家まで焼けてしまった。警察で
は漏電だといったが嘘だった。ほんとは「机の引き出し」にかくしておいた一
匹の蛍が原因だったのだ。自伝映画「田園に死す」より。従って記念館には机
の引き出しがいっぱいあって、その中には、例えば幼年期に修司が父親に抱か
れている珍しい写真とか小中学校時代の写真がふんだんに納められている。す
なわち、そこには無数の寺山修司が存在するのである。彼は自分を一人の人間
ではなく「多重人格者」考えていたようなふしがある。
時には母のない子のように
だまって海を見つめていたい
時には母のない子のように
ひとりで旅に出てみたい
だけど心はすぐ変わる
母のない子になったなら
だれにも愛を話せない
カルメン・マキに歌わせたこの歌謡の意味、以前からどうしても分からなかっ
た。しかし今回、記念館で寺山孝四郎氏の説明を聞いて「分かったつもり」に
なった。三沢米軍基地で働いていた彼の母親は米兵の、いわゆるオンリーにな
ってしまい、それから激しい親子喧嘩が絶えなかったという。即ち母えの愛憎
の激しさだ。哀しすぎる歌謡曲でもある。
寺山修司記念館
青森県三沢市大字三沢字淋代平116ー2955
電話0176・59・3434
FAX0176・59・3440
連絡すれば楽しいパンフレット送ってくれるかもしれない。記念館の入り口の
扉は横尾忠則の設計でした。
ところで昨日、お目に掛かった上野朝夫さん、見ていますか?小生、明日は神
戸のロルカ詩祭へ旅立ちます。



投稿日: 8月17日(金)16時34分18秒
           
           村越化石
           もの蒼む梅雨や片目を失くし佇つ
           独眼の身や掌の上の柿高む
           探り食う柿の重みの夜の底
           夜の底の蟇と化してぞさまよえる
           落葉踏み天を鏡と思ひけり
           百合の香を深く吸ふさえいのちかな
           手毬唄その身が毬の雪ふる子
           闘うて鷹のえぐりし深雪なり
           虫聞いて今宵僧のごとく立つ
           生者死者癩の名負へる燈籠かな
           葛湯とき哀感あはくなりしかな
           くらがりを生きて葱汁すするなり
以上はハンセン病患者で盲目の俳人村越化石の作品。東北の旅から帰京したら
大串章評論集「現代俳句の山河」(本阿弥書房)が寄贈されてあった。その中
に「村越化石論」がある。そこには次のように記されている。
おそらく様々な形象や色彩は化石の頭の中で純化され、精錬されていくだろう。
作品は一見淡くなって行くには違いないが、一方そこには、従来にも増して済
んだ光が添うようになるだろう。作品はいっそう透徹した詩境をしのばせる静
穏な光芒をまとうようになるだろう。そこには放下のひろやかな世界が見えて
くるだろう。
化石の終生の師は大野林火。確か大串章氏も林火に師事していた。ちなみに化
石の第一句集は1962年の「独眼」。
冬月君、まいりましたですよ。どうしてもメールが繋がらない。プロバイダに
電話を入れても処置なし!ネットは繋がるのにどうしたことか?タメイキ



投稿日: 8月17日(金)23時05分02秒
           
           そら豆の殻一せいに鳴る夕べ
           母につながるわれのソネット
           アカハタ売るわれを夏蝶越えゆけり
           母は故郷の田を打ちていむ
           母は息もて籠火創るチエホフ忌
           香水や母と故郷を異なれり
           ひぐらしの道のなかばに母と逢う
           われとわが戦後とかさならず
           郵便局に燕来るビル
           母売りてかえりみちなる少年が
           溜息橋で月を吐きをり
           神無月はもみじ
           母に似してふ巫女(いたこ)見にゆく
           母を消す火事の中なる鏡台に
           母恋し鍛冶屋に赤き鉄仮面
           出奔す母の白髪を地平とし
           母の蛍捨てにゆく顔照らされて
大志さん、以上、寺山修司の俳句、短歌の「母恋の唄」を拾ってみました。み
んな母を恋して恨んでいるみたいですね。彼の母の名は確か「寺山ハツ」。
干論茶さん、塩原温泉郷は栃木県塩原町。尾崎紅葉が「金色夜叉」を、その辺
で執筆している。源三窟鍾乳洞にも行かれよ。その温泉、神経痛、皮膚病、婦
人病に効く。妙齢な御夫人同伴なりや?



投稿日: 8月18日(土)01時49分24秒
           野天風呂
           
           野天風呂混浴なりし秋の風
           蛇衣を脱ぐや混浴温泉郷
           花虻や藪の中から美女狙ひ
           深海に目の無き魚水温む
以上、塩原吟行に触発されて。
天 露天風呂よくぞ男に初紅葉
地 箒川身にしむ宿の古さかな
人 新涼や有情の人あり箒川



投稿日: 8月18日(土)02時26分59秒
おっと待った!
箒川身にしむ宿の古さかな
は季語なしで「地」は入れない。
廃屋の石段藤の実の垂るる
を「地」としたいが「藤の実」ではなく「藤の房」では?



投稿日: 8月18日(土)09時09分56秒
なるほど正さん。合本俳句歳時記(角川書店編)を調べ直したら、そのとうり
でした。失礼!従って天地人は従来どうりとします。
さて、神戸へ。東京駅発ひかり129号、3時7分。(まろうど社)の大橋君、
新神戸で身柄の拘束頼む!



俳句航海日誌8000句  投稿日: 8月21日(火)12時30分16秒
           御霊石(みたまいし)
996        御霊石賽の河原に残暑かな
997        御霊石残暑硫黄の恐山
998        向日葵や君も他人も恐山
999        満月や賽の河原に僧ひとり
8000       恐山寺山修司の残暑かな
手持ちの俳句手帖から清水哲男の「俳句雑記帖」に俳句を打ち込み始めたのは
2000年7月6日、そして今年の夏休みは「干論茶の掲示板」で8月21日
8000句完了。さて校正に掛かかる。
昨晩遅く新神戸から帰京。ロルカ詩祭では懐かしい友達と会う。富哲世、今野
和代、大橋愛由等、海風社の作為満それに正津勉のお姉さんの正津房子さんな
ど。4時半、無事、朗読会
を終えて大阪の三井葉子の出版記念会へ。そこでは長谷川龍生、斉藤慎爾、倉
橋健一、高城修三、真継信彦らに。その会が刎ねた後、何故か真継、高城両氏
が乱闘を開始。その乱闘を後目に正津房子の神戸の別邸へ一泊。そこで赤旗日
曜版のハンセン病特集を読む。旅行中は酒浸り。おかげさまで今日は吐き気が
して気持ちが悪い。自業自得の脳天気。嗚呼!