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文化欄・俳句航海日誌 清水 昶 2001/12/24 01:02
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9999      みづうみや孤心朧の月一つ










































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文化欄・俳句航海日誌10000句満願成就! 清水 昶 2001/12/24 00:52
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         メリークリスマス!



9996     馬睡り立冬の脚終はりけり




9997     雪の船旅する女の孤愁かな




9998     雪刷きて詩を書き消す日夜かな




10000    友逝きて礼拝堂の聖夜かな




         加藤温子さんの一周忌に献句!



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本日の10000句満願成就で文筆活動の第一章は終わった。

さて俳句航海日誌の第二章、二万句に向けて旅立ちの準備にかかる。










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俳句航海日誌 投稿者:清水昶(武蔵野)  投稿日:12月16日(日)14時20分13秒



          乾葡萄



9981      黒いオルフェ革命に降る黒い雪



9982      乾葡萄陽の味ふくみ夜の卓



9983      満月や蜜月の船に大水母



9984      苔寺の苔のみどりや初しぐれ



9985      たましひの冷えし牛乳飲む冬至



9986      針で刺す血コロンブスの寒卵



9987      死海の塩神の撒かれし聖夜かな



9988      ラッキョウの壜にしずもる夕餉かな



9989      冬至来る婚姻寸前の幸不幸



9990      少年兵最後の授業雪崩かな



●清水哲男へ、上野朝夫、青山雁さんが会いたがってる。吉祥寺の蕎麦屋「中清」(電話0422・22・3049)は午前十一時から午後九時半。水曜は休日。貴兄は蕎麦アレルギーだったな。ならば手打ちうどんもあるよ。
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句航海日誌 投稿者:清水昶(武蔵野)  投稿日:12月 7日(金)06時01分57秒


             七面鳥


971          黒馬怒濤 冬の競馬場


972          寒風にテクジュベリより飛行便


973          浮世絵にからむ男女の歌麿忌


974          カフカ忌や灰とダイヤモンドの一行詩


975          原爆忌焼跡に突き刺さる傘の骨


976          妹が裸麦のごとくみのる湯舟


977          七面鳥子ら泣き出す降誕祭


978          聖クロース靴下からっぽその聖夜


979          流星雨キラキラ 聖夜


980          無惨やなもみの木はやクリスマス


さて一万句まで後二十句  島田さんよろしく














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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/12/04 /Tue 15:27



            おはようございます



お〜い馬鹿梵、異坂本隆。起きているか?

てめ〜やりやがったな。掲示板嵐。満願ニコニコ。

この掲示板の突然の閉鎖には唖然。赤いポストも悪いのも、みんなおまえのせいなのさ。


だいたいにしてよ、おまえさんは他人の掲示板をこそ泥して自分の俳句の無能力をさらけだしたのが異見。公序良俗紊乱は豚箱入り。

東大探検部二塁薬学部卒の坂本隆

          男東大何処へ行く


あ〜たを雇う掲示板など、もう何処にもない。お手前で作り給え。メイルをよこせ。喜んで参加して頂く。小生も近未来に作る。そうしたら小生が丁稚として雇ってしんぜる。


さらば巨人軍、増俳句雑記帳。



         花に嵐のたとえもあるぞさよならだけが人生さ





しかし待て!小生は許諾の上、俳句航海日誌を「干論茶の掲示板」に移動さて頂きます。


ところで吉祥寺の雪女が昨日、酒田月山方面に消えた。どうしようもない。










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俳句航海日誌 投稿者:清水昶(武蔵野)  投稿日:12月 3日(月)15時13分46秒





干論茶様、ご多忙にもかかわらず俳句航海日誌の収録ありがとうございました。おかげさまで、あと30句で1万句興行満願。小生の詩歴は40年。ひとつのものに関わったら、それを究極まで徹底して追いつめる性格です。
そして俳句定型詩に関わって一年余。現代詩歴40年を俳句で一気に乗り越えましたが、俳句は、さらに奥深い魅力に満ちています。さらに2万句への旅を用意しています。そして死後までの前人未踏の遊行へと・・・


かつて谷川雁は二十世紀を「白夜の時代」と命名しました。埴谷雄高は「戦争と革命の世紀」だったと言って、この世を去っていきました。さて二十一世紀は「宗教戦争の時代」になりそうです。

       
       「雉子も鳴かずば撃たれまい」


さて我々は、撃たれる雉子になるか、鳴かぬ雉子になるか。


増俳雑記帳は時として休暇を取る故、その時は失礼を顧みず、「俳句航海日誌」おじゃまさせて頂きます。CDの件、感謝いたします。これで一万句俳句航海日誌CD版は完璧。



底冷えの季節になりました。くれぐれもお体を大切に。と言っても今生の別れではありません(笑





















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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)     01/12/02 /Sun 23:42


            戦争と義足


961         神死せり満月かうかうと浴びし山


962         詩と絶縁そして万緑の中へ消ゆ


963         肥りゆく妹のかなしみ鱒を喰う


964         桜肉愛す肉屋の丁稚かな


965         宙吊りの肉屋の肉の寒夜かな


966         星鳴らすラ・カンパネルラの冬銀河


967         戦争と義足の子らは雪の中


968         雪降りて慈善病院熟睡す


969         死後の黒髪生えて密葬雪の家


970         冬山の遭難死後ものびる爪


改稿9948      冷えし耳つまむ寒夜の珈琲店


余句          熱燗や咄嗟につまむ冷えた耳


            (今日の名句)


            鯛焼やいつか極道身を離る 五所平之助


●彼は映画監督にして俳人。久保田万太郎に俳句指導を受ける。この句は彼が古稀の時の作。若き日の自分への追想である。
昭和五十六年〔1981年)没。享年79。
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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)        01/12/02 /Sun 20:28


            師走


951         二枚舌師走の店をいいくるめ


952         いつの世も師走の街や脚重き


953         取り立ての師走小僧泣き所


954         ともかくも師走置き去り三輪車


955         蕗を煮る母の背ちじむ夕餉かな


956         一握の砂こぼしたる啄木忌


957         弓なりに月光鳴らす楽器店


958         あつきスープ喉灼き皿に薔薇の絵図


959         万葉の教師早口師走かな


960         空豆をむひてさみどりをさなずま


改稿9948      熱き耳つまむ寒夜の珈琲店


            (今日の名句)


        雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子


註・多佳子は三十代後半に夫に先立たれている。この句は、その追慕の作。
それにしても写真で見るかぎり彼女は美人である。その後、彼女をとりまく男の俳人たちはどうしたであろうか。彼女に関する評伝が読みたい。



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俳句航海日誌9950句 清水昶( 武蔵野)       01/12/02 /Sun 12:49


            孵化


9941        年賀状待つやポストの赤い舌


9942        婚期過ぎ死後のごと眠る寒卵


9943        満月や少女ら孵化しつつあり冷蔵庫


9944        霜ふりの牛肉熟睡冷蔵庫


9945        立冬や燃える麒麟の話がしたい


9946        薄切りの檸檬珈琲愛とは何か


9947        母に似る娼婦寒月の街に佇ち


9948        熱き耳つまむがごとし珈琲店


9949        未来とは死すべきための曼珠沙華


9950        昨日生きた理由は深夜の咳一つ


●西鶴発案の矢数俳諧9950句完了。あと50句で10000句。この一両日で仕上げて見せる。


           (今日の名句)


           足軽のかたまつて行く寒さかな 井上士朗


●士朗は江戸後期の俳人。尾張名古屋の産婦人科医。国学者本居宣長に学び当時は蕪村より遥かに有名だったと言う。

しかしねえ。われわれは、みんな平成の足軽どまりだよ。師走の風が身にしみる昨今である。


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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/12/02 /Sun 02:25


            花カンナ


931         鰯干す赤銅色の若者未婚


932         立ち上がるかな巴里祭の革命歌


933         犯しあふ四肢暑し蜜月の船


934         眠る頭熱し蒲団の中の細き脚


935         髪ふれあふ恋人同士風の花


936         菊埋まる死顔や寝棺の覗窓


937         知らぬ間に濃き愛育つ花カンナ


938         ユーカリはその緑を遂げよ凍土にて


939         冬鴎撃たずに帰る少年の空気銃


940         カンナ色の舌で燃える唇厚き黒人霊歌


            (今日の名句)


          こときれてなほ邯鄲のうすみどり 富安風生


有無、哀しくも美しい邯鄲の死。それを作者は自分の命のはかなさに重ね合わせて詠み込んでいる。

本日50句。さて、おやすみなさい、馬鹿梵さんその他の諸兄弟!





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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/12/01 /Sat 21:47


            地下鉄のザジ


921         天に星地に銀蠅の堕天使


922         野火放つ月下の一群忍ぶかな


923         黒猫ポー塗り込めしあと寒の月


924         新しい記憶の果汁葡萄月


925         さり気なく死もみのりをり葡萄月


926         寒月や降りる死刑台のエレベーター


927         赤々と炭の火種子の一軒家


928         熱月や断頭台の未来あり


929         満月や地下鉄のザジ一人乗り観覧車


930         巴里祭や地下鉄のザジ常套句糞っ垂れ


            (今日の名句)


            枯野哉つばなの時の女櫛 西鶴


●西鶴、四十三歳の時、一昼夜に二万三千五百句独吟を住吉の社頭で興行。

この句は春咲くチガヤの小さな花穂(つばな)の花を摘みに来た女が落としていったに違いない女櫛を枯野で拾った事を詠んでいる。春から冬への時間の推移と侘び寂びの精神が見事に詠み込まれている。
蛇足ながら、このような名句を今後、掲示板で作れるのは清水甲斐ぐらいなものであろう。

十代半ばから俳諧の道に入り談林派の西山宗因に師事した西鶴、元禄六年〔1693年)五十二歳で没。
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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/12/01 /Sat 19:19


            如何なる星のもとに


911         如何なる星のもとに皇女生る十二月


912         冷蔵庫喰ふ青年の四肢の冷肉


913         曼珠沙華わが生誕に罪ありや


914         死もみのるべし皇女生るる曼珠沙華


915         死するよろこび熟睡薔薇の蕾かな


916         アナスタシア銃殺の夜雪深し


917         皇女生まれ紅旗政戒事もなし


918         皇女とは哀しい性よ寒の月


919         満月の満ちたる頃や皇女生る


920         皇女生るデパートいちめん蟻群るる


            註・生る「ある」。


●関西大学ラグビー同志社・近大を見ていたら小生に断り無く雅子妃が女児を儲けられた。

これで清水甲斐の第一回日本俳句天皇賞は、おじゃん!無念なり。また何処かで別の賞を作って儲けよう。

            (今日の名句)


       昔 男 と な り 女 の 柏 餅  加藤郁乎


●何やようわからんがエロスの言葉遊びやの。
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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/12/01 /Sat 15:22


            研師


901         賀状書く幾年峠を越え来しか


902         ナイフ研ぎ寒夜を透かす少年期


903         研ぎ立てるナイフ一刺青林檎


904         師の俳句夜伽手伝ふ寒夜かな


905         たましひより濃き緑陰近親相姦の絵図


906         寒夜にて研師はらわた裂いてをり


907         少年の眸青水無月に見開かれ


908         満月に空砲一発友戦死


909         仏壇に父の拳向ける修司の忌


910         剥製の雉子撃ち殺すかな銃砲店


            (今日の名句)


            天道虫間一髪を飛びにけり 奥坂まや


有無、この句の妙味は「間一髪」だろうが何だか中身がない。

●青山雁さん、加藤温子さんの一周忌・追悼ミサは12月9日(日)16時30分。カトリック吉祥寺教会でした。訂正します。なお一般の方の列席は出来ません。

●馬鹿梵度様、貴方の句はすべて駄句とは申しませんが、一句づつではなく、まとめて打ち込んで貰えないでしょうか。
以前、小生も管理人から、そのような警告を受けました。理由は一日の掲示板の駒数が34駒と限られていることと、読みずらいと言うことでした。今後も名句期待しています。

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俳句航海日誌9900句! 清水昶( 武蔵野)       01/12/01 /Sat 12:48


            罪と罰


891         壮年期過ぎゆく音盤冬の旅


892         蠅生まるるあるいは神聖受胎かな


893         罪と罰老婆殺しの聖夜の血


894         父殺す価値はありや冬の斧


895         蠅生まるる刹那生きる価値とは何か


896         死との婚姻みどりあふるる刻なりき


897         訃報来て結婚通知来る寒の月


898         冬銀河百の時計を巻き戻し


899         氷海光る死後の時間の永きかな


900         冬銀河政治と文学の刻過ぎ去りぬ


●9900句完了。10000句は雅子妃の一子誕生と同時刻に完了する。かくして第一回日本俳句天皇賞は清水甲斐に決定。


        神よ我にお恵みを!










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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/12/01 /Sat 02:47


            手毬唄


881         産婦人科晩夏光かな堕天使


882         禁欲のきはまり熟睡の聖夜来る


883         熟睡に堕ち知らぬ相姦聖夜かな


884         芥子の花致死量の愛分け与へ


885         寒泳の青年赤帽の浮き沈み


886         狂つたか男刃物ひたす秋の水


887         鶏頭の二三本咲きおはよう母よ!


888         母知らぬ子の地獄極楽手毬唄


889         蹄鉄の馬の屠殺や天高し


890         眼を病みて薔薇の刺さす眼科院


            (今日の名句)


          福寿草地球ひとつをもてあます 宇多喜代子


有無、この句は面白い。

ところで掲示板の馬鹿梵諸君,一体何時まで起きているんだ。他人迷惑だから寝てしまえ!小生、本日60句。さすがにくたびれ申したよ。





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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/12/01 /Sat 00:36


            破婚
871         美しき嘘感受性に泣く秋の月

872         去来連れ芭蕉の旅や秋の月

873         満月や少年アウシュビッツを潜り抜け

874         破婚近し雪さんさんと降り止まず

875         卒業期無血革命遠くなり

876         万緑や植物園に処女育ち

877         肉桂の香に噛む寒村の少年期

878         黒人奴隷飼ふ家鴨の寒夜かな

879         奴隷以てイソップ自由自在の寒夜明け

880         轢死する猫の恋あり路傍の死

            (今日の名句)

            木枯や人の糞まで吹きとばす 兜太

●山本洋子の評には、この句、兜太ならではの豪快さとある。

ちょっと待った!そうとも思えぬ。

            木枯や狂牛病哀し糞までも 甲斐

●本日,三頭目の狂牛病の牛、埼玉に現れる。和牛酪農家の心中を察するにあまりあり。

●雅子妃の出産、秒読み段階に入る。明日にでも、おぎゃ〜!

でも、どうしても慶賀の至りの気持ち湧かず。不敬罪。どこかの株価、跳ね上がること必須。

●訃報一つ。詩俳塾の塾生、小林佐智子さんの御母堂、心臓麻痺で急逝。母子家庭だった故ご冥福申し上げます。









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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)        01/11/30 /Fri 21:56


            寒風


861         反革命葡萄透明に妊れり


862         紅葉を貫く嬰児寝台車


863         肩で息する青年の艇庫かな


864         寒風に北条民雄立ちすくみ


865         石女の寒風の中鬼子母神


866         流氷の来る初恋のオホーツク


867         緑陰の思想みごもる嬰児かな


868         海中に鉄橋の脚冬の月


869         キャパ展にのけ反る兵士真夏の死


670         真冬の市電のろし電線に火花散り


            (今日の名句)


            遊女屋の子と仲たがい春休み 佐藤鬼房


有無、気持ちは分かる。遊女屋と春。


●           赤線の身売りし頃の春の宵 甲斐





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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/30 /Fri 17:24


            パンの耳


851         親不知子不知の岸壁冬怒濤


852         冬帽子学生地下街に流れゆき


853         菫飾りし妹の帽子かな


855         暴動を欲る寒風の中に佇ち


856         鮎放つ娶らぬ青年迅き青


857         黒死病医師リュー出来ぬ冬籠


858         パンの耳愛し立冬の珈琲館


859         革命の見放す町に賀状書く


860         眼底に紫陽花洗ふ眼科医師


            (今日の名句)


            熊の出た話わるいけど愉快 宇多喜代子


有無、あまりに馬鹿馬鹿しくて笑えない駄句中の駄句としては優れているのかも知れない。











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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/30 /Fri 13:35


            目には目を


841         逆立ちの脚細き椅子寒明けの喫茶店


842         邯鄲の夢嗚呼五月祭はじまりぬ


843         注連作る新大関の花の宴


844         特急が貫通狐火の関ヶ原


845         老父母の骨流すべし氷海のオホーツク


846         母の里完膚無きまで雪化粧


847         いつせいに光る眼鏡屋の眼鏡十二月


848         溺愛す眸に黒いチューリップ


849         目には目を報復戦争山眠る


850         目には目を片目のジャック軍鶏放ち


            (今日の名句)


            姿見にはいつてゆきし蛍かな 真鍋呉夫


有無、この句には甘いエロスがある。とても御老人の句とは思えぬような・・・ね。








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)     01/11/30 /Fri 12:05


            処女詩集

831         草庵の垣にひつそり破傘

832         生きしまま鰭酒の鰭良夜かな

833         柚子湯出て障子明るし月夜かな

834         喉仏友酌みかはす良夜かな

835         つむじ風邪丸ごと跳ばす落葉籠

836         恐山氷湖に映える月一つ

837         一雨が来るぞ狐の提灯ちらほらと

838         雨傘の狐の嫁入一軒家

839         処女詩集肌身離さず良夜かな

840         満月やつかず離れず足の音

            (今日の名句)

            初湯出て鏡の中の赤不動 真鍋呉夫

●作者は大正9年1月生。当然80歳代。老いてなお壮健なり。

●現代詩手帖12月号「現代詩年鑑2002」届く。440頁の大冊なれど2600円は、ちと高い。久しぶりに小生作品の掲載はなし。その理由は今年は一編も現代詩を書かなかったからと邯鄲。しかし清水哲男も無しとは、ちと不思議。谷内修三の作品「ハムレット、ランボー、清水昶」は掲載。

谷内さん、この作品、ちと面白いので掲示板に打ち込んでみないか?

●     俳句は一行の現代詩である 甲斐

●小生の処女詩集は二十歳の学生時代。題名は「暗視の中を疾走する朝」。友人宅のガリ版写真入りで創った。定価は千円。当時としては、べらぼうな定価である。もちろん一冊も売れず。仕方がないので嵐山の下宿の畳があまりに湿気るので畳の上にびっしり敷き詰めて腐らせた。しかし東京の有名詩人に多少送ったらしく古書店では3万前後で取引されていると聴く。処女は高く熟れる!








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/29 /Thu 14:43


            花咲蟹


821         ほろびゆく花咲蟹の波止場かな


822         菜の花の甘き香満ちる都城


823         切口の香満ちる朝餉かな


824         湯婆を抱く美少女の夢抱くごとし


825         賀状書く馬の漫画も入れておき


826         年忘文鎮鈍き重さかな


827         野火止の友より便り落葉焚き


828         野火放ち大岡昇平死肉喰う


829         野火放ち狼ほろぶ月の山


830         遠火事や聴く戦争のラジオかな


改稿801       菊花展美少女霞む夜の街


改稿810       寒卵卓上の夜非戦論


            (今日の名句)


            年忘一木の瘤拳打ち 上田五千石


●そろそろ忘年会の季節である。詩俳塾はクリスマスイブの12月24日3時、吉祥寺の蕎麦屋「中清」に決定。予約申し込みに行かなければならぬ。

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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)        01/11/29 /Thu 13:00


            蚤の市


811         創世記地球誕生寒満月


812         濁流のあとノアの箱船秋の水


813         満月やノアの洪水起こしたる


814         黒人は死ぬまで黒人聖夜来る


815         蚤の市立つデパートの脚の群れ


816         湯気を立て夜の紅茶の江藤淳


817         親不知歯若者匂ふ菊花展


818         ジャマイカの星疾走す夕月夜


819         黴の靴干しからたちの花匂ふ


820         電工の脚天窓に秋の月


            (今日の名句)


            氷室より戦争を取り出し割る 島田牙城



●お〜い、邑書林の牙城君、掲示板見ているか?この前衛俳句の気持ちは分かるが、あと一歩、何かが他林。

貴社出版の句集、何でもいいから送り給え。上京の折りは連絡せよ!


●谷内さん、小生への俳句批評、批判は有り難い。貴方はからかわれているだけだ。まともに答えるな!
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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/27 /Tue 14:37


            菊花展


801         菊花展美少女かすむ夜の街


802         昼寝してアンパンの臍押してをり


803         対位法生まれ新婚神の留守


804         新婚通知無人郵便局灼けて


805         政治棄て学生が佇つ菊花展


806         白桃を薄紙に包む冷えし愛


807         誕生をあやぶむ皇子菊花展


808         冬の月口角泡口髭のヒットラー


809         愛されず白桃冷やす青年期


810         寒卵卓上に置き非戦論


            (今日の名句)


            学校が好き朝顔に水をやる 津田清子


●彼女は、この句を含めた句集「無方」で蛇笏賞を受賞。と言うこは俳壇最大の賞は誰でも貰えるということだ。

小生は別格。の〜べる文学新人賞!


●無学子さん、その放火魔は、夢遊病者の小生かもしれません。明日の「詩俳塾」に来られよ!白黒のが判明するかもね。

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俳句航海日誌9800句! 清水昶( 武蔵野)        01/11/27 /Tue 12:14


            ゴッホの耳


791         冬山の青年地獄の一季節


792         カヌー滑る青年の冬水迅し


793         夕蝉の翅薄き余生かな


794         片耳のゴッホひまはりの首を斬る


795         糸杉は燃えよゴッホの誕生日


796         好漢の未婚立冬に佇ち尽くし


797         万緑や少女血を見る日曜日


798         娶らずに冷え込む今宵西鶴忌


799         立棺のエレベーター降りる蟻地獄


800         懲罰の屋外立冬の少年院


改稿691       聖戦を血で贖ふや感謝祭


            (今日の名句)


            はじめに神砂漠を創り私す 津田清子


●この句は聖書の創世記だ。つねづね不思議に思うことがある。

何故、人間の生命は砂漠から生まれたのか?推測するに、もともと地球は冷えた岩石の塊だった。その岩石が風化しはじめて、砂となり、砂漠を創っていった。そこにノアの大洪水が起きた。

聖書の寓話は必ず何らかの科学的根拠を、その裏に秘めている。如何なものであろうか?
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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/26 /Mon 14:03


            黄金分割


781         黄金分割父へ米寿の葉書かな


782         新海苔を焦がし娶らぬ夜過ごす


783         夭折をせざる詩人の冬花火


784         冬山へだらりと垂れる死のザイル


785         黒葡萄通夜の客も透き通り


786         肉はかなしけれども聖夜来る


787         道化師の子哀しきや日向ぼこ


788         寒村の夜菜種油満つ


789         冬に入り口髭白しビン・ラデイン


790         充電のごとし万緑授乳若き母


            (今日の名句)


           帰るべき墓ありて濃き青葉かな 成田千空


有無、小生には入るべき墓がない。嗚呼!








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/26 /Mon 12:10


            コロンブスの卵


771         たましひのおはりのごとし冬花火


772         黒百合をたれに捧げむ戦争期


773         革命のため血の薔薇黒いユリシーズ


774         忘年会破婚青年浪曲子守唄


775         語呂を巻く不良少年日向ぼこ


776         ボルジア家滅亡の城秋の月


777         コロンブス卵一刺針供養


778         姦淫の母を許して聖夜かな


779         少女期の髪を切り棄て聖夜来る


780         一人泳ぐ夜のプール底の鉄梯子


            (今日の名句)


            戦争を幾度過ぎし麦畑 有馬朗人


●彼は東大の元学長。どうも彼の句、一般的に評判よろしからず。しかし、この句、未だましなほうだと思うが如何?







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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)     01/11/25 /Sun 17:02


            男色


761         万緑や男色の医師メスを執る


762         乳母車しろむきに走る紅葉狩り


763         冬光る硝子壜嬰児みなごろし


764         安楽死語る医師をり五月祭


765         都忘れ一輪咲きし片田舎


766         青年は熟麦色の半身婚姻す


767         ひまわりも脱水症状妹よ


768         死にいたるやまひ瀕死の秋の蝿


769         秋の蝿酢の空壜に溜まりをり


770         去年の雪青年自動車の腹に入りしまま


            (今日の名句)


            落葉籠百年そこにあるごとく 大串章


有無、さすが大串さん、お見事!








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/25 /Sun 15:41


            始皇帝


751         遠雷やきみはたれの刺客なる


752         馬小屋の馬のみ信じ聖夜佇つ


753         森林浴自殺他殺の死者眠る


754         森林浴帰りて浴槽の鰐の餌


756         死海に浮きし生者の五月祭


757         若き豚若き税吏の昼寝かな


758         処女となる老婆熟す山女かな


759         始皇帝死は白金の満月


760         数知れぬ娶らぬ少女素脚立つ


            (今日の名句)


            霜柱崩れて花をなすところ 深見けん二


            霜柱踏みて崩壊家族かな 甲斐


●この二句を比べると圧倒的に後者の方がリアリテイがある。








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/25 /Sun 14:19


            浴槽の鰐


741         飼ひ殺す浴槽の鰐濁るかな


742         死を奪ふ氷雨の町の漢方医


743         坂道で蝮売る店油照り


744         浴槽で少女脚伸ばす白き葱


745         立て膝脚を丸めて浴槽葱坊主


746         愛されず緑陰で吹くハーモニカ


747         白黒の寒夜劇場のストリップ


748         エロ本に納めし寒夜少年期


749         血のシーツ干す秋晴の隣家かな


750         死への亡命遂げし聖バレンタイン祭


            (今日の名句)


            馬となる魂あをく雪原にて 正木ゆう子


            聖夜来る馬のたましい冷えるまで 甲斐


●この2句を比べると小生の句の方が抜群に上手い!

さて来年は馬年。皆さん、年賀状の馬の名句を作りましょう。



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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/11/25 /Sun 03:24


            黒いオルフェ


731         亡命のはつなつ石油満ちあふれ


732         レスラーの獅子奮迅の軍鶏愛す


733         亡命をする国もなし海豚鳴く


734         たましひの牛乳立冬に立ち飲みす


735         体育館吊り環立冬の処刑台


736         黒葡萄革命来たらず乾く街


737         黒いオルフェ教会に立つ赤ワイン


738         暴動を欲る街ありて秋の蠅


739         中世の遠近法に城の雪


740         金鉱を掘りてなだれる雪の下


今宵の話はこれでおしまい。では明日お会いしましょう。馬鹿梵さんもおやすみなさい。














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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/25 /Sun 01:34


            憂国忌


721         五月雨の大きく孵す鵞鳥卵


722         寒村の川にぽとりと赤椿


723         蕗煮つめ母老ひゆけり千一夜


724         断食月熟睡タリバン少年兵


725         また娶り冬も半裸のピカソ展


726         牛乳をのむ教室の心冷へ


727         憂国忌孔雀は羽根を閉じてをり


728         風太郎逝きし小春の忍者かな


729         革命の来ぬ街を掃く竹箒


730         母老ゆる占星術と七草粥



●俳句手帖17冊目。2001年10月25日〜十一月月25日、9080句〜9730句完了!


汗、駄句駄句 甲斐


冬月君、メイル完璧に通じた。ありがとう。







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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/24 /Sat 23:49


            落鮎


711         鮎釣りの名人黙し眸とじてをり


712         子持鮎釣る親子連れ水光る


713         名流の最上に一瞬鮎光り


714         落鮎の産みの苦しみ川濁る


715         落鮎ののけ反りたる眼串に刺す


716         高尾山子連れ猪も紅葉狩り


717         巴里祭は哀し居酒屋マリアシエル


718         秋暁の居酒屋ねえお母さん帰ろうよ


            以上2句ゾラ原作の映画「居酒屋」より


719         吉祥寺たれか咳する葬儀場


720         鮎落ちて掘なつかしや落城史


●本日は晴天なり。雪女とその義理姉親子、高尾山に紅葉狩りに行く。小生一人取り残され、仕方なくアジトでざる蕎麦。
そこに現れしは昨夜の落語会の師匠、昔々亭ぜんそく。その後、わが家の赤いカーポートを見学したのち赤のスポーツカーで闇の中に消える。


嗚呼!





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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)          01/11/23 /Fri 15:22


            成蹊大学欅祭


701         白きリラ咲き仇敵を探しをり


702         報復戦争プラハの春は今いずこ


703         いなびかり走るたれかの霊柩車


704         印度大麻のみてガンジス光りゆき


705         髑髏盃酌みたましの夏死せり


706         暗黒の宇宙より雪恐山


707         死して恋始まる二人桜桃忌


708         紅葉の欅散る音赤い屋根


709         未来とは秋暁の墓句碑の墓地


710         赤椿ぽとりと地獄の季節かな


            (今日の名句)


          いなびかりひとと逢ひきし四肢てらす 桂信子


●この句が発表された当初、ポルノ句云々で非難ごうごうだったと言う。いまはそうも考えられない。合本角川歳事記(第3版)にも、きちんと入っている。時代は変わった!

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俳句航海日誌9700句! 清水昶( 武蔵野)       01/11/23 /Fri 12:36


            勤労感謝の日


691         聖戦を血で贖ふや勤労感謝の日


692         赤蕪漬けて土間のくらがり眠り込み


693         根の国や大根すつぱり切り落とす


694         天道虫太陽系の捨子かな


695         人参の赤きを並べ子ら背比べ


696         流星雨乗り棄てられしオートバイ


697         狂牛病殺される和牛秋の水


698         大年の馬眠るかな疾風まで


699         受難節聖母マリアの肉冷える


700         満月や風邪の馬立つ目に泪


●北海道で2頭目の狂牛病の牛発見される。もう和牛は絶望かもしれない。酪農家の今後は、どうなるのだろう。


●今日は吉祥寺手打ち蕎麦屋「中清」で第一回落語大会。これも掲示板が取り持つ縁。既に15名予約済みとか。詳細は昨日の過去ログを見られよ。まだ10名ぐらいは席の余裕あり。

なお早めに来られた方は今日から成蹊大学「欅祭」が始まっているので、そちらで吟行などされるのもよろしかろう。






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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/11/22 /Thu 14:38


            銅婚式


681         海からの青年海苔の匂ひして


682         寒波来る海賊船の波頭


683         海賊の末裔なりや青き鮫


684         バイキング調理夜長の肉冷やし


685         銅婚式檸檬を搾るコップかな


686         椋鳥を飼ふ珈琲館昏きかな


687         シエパード放ちて遠く花野かな


688         馬蹄型磁石の重き針供養


689         朝顔や深井に光る水を汲み


690         母のない子が十までの手毬唄


            (今日の名句)



            竹売の日なたを来るやけさの冬 万太郎



有無、今日辺り竹竿売のトラックが来そうだな。






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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/22 /Thu 12:29


            放浪家族


671         未熟児の産院眠る火取虫


672         収容所列島カナリア鳴きしのみ


673         安息日死は永久の愛となれ


674         二重母音愛を貫く去年今年


675         青き月死もみのるかな曼珠沙華


676         夏の雪キリマンジェロを舐めてをり


677         産院の寒夜の叫び子が流れ


678         満月や乗り込む夜汽車放浪家族


679         雪ちかきギター野外音楽堂


680         苗代や朝鮮人少年鉄拳の素晴らしき


●清水哲男へ。混血の少年、助坊はわが家にとって忘れられない存在だったね。とにかく彼は喧嘩が強かった。小生、何度も庇ってもらった。彼がいれば鬼に金棒。
結婚当初、下関で会って以来、30年のご無沙汰だ。元気そうだね。歳月茫々!一度、東京へ呼ぼうか?











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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/22 /Thu 03:20


            ランボウの脚


661         良寛にあつまる子らの手毬唄


662         花束の眠る教会聖金曜日


663         いつせいに死者立ち上がる聖金曜日


664         復活祭子らに赤い卵かな


665         ボクサーが傷癒し入る小春かな


666         ランボウの脚の行方や虹の橋


667         葬儀屋の葬儀仏壇へ真紅の薔薇


668         兄妹相姦の鳩寒夜鳴き


669         切断のランボウの脚砂漠灼き


670         ランボウの妹を灼く手紙かな


            (今日の名句)


            三ツ指の夜伽なりけり花見鯛 郁乎


有無、さしたる句とは思えぬが、ま、いいか。








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)     01/11/22 /Thu 00:21


            石油満つ


651         石油満つ風とライオン冬の月


652         火屋の灯で宿題仕上げる少年期


653         火屋磨く夕べ野辺から子ら帰り


654         帆立貝缶詰切りひらく海恋し


655         石炭のトロッコ廃線山の穴


656         彼岸会に脚細き馬佇ちてをり


657         風邪の夜ランプの灯り昏きかな


658         脚細き馬佇ち尽くす聖夜かな


659         満月や血で贖ひし石油満つ


660         石油満つ砂漠に灼ける異教徒ら


●山口の片田舎、羽月部落での少年期はわが家だけが、まだランプ生活だった。今から思うと,ひどく抒情的生活に思えるが、近隣の部落の家々の電球の光りは眩しく羨ましかった。ランプの火屋を磨くのは子供達の仕事で、時として火屋の硝子を割ってしまう。
そんな時の父の激怒には怖かった。











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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/21 /Wed 21:09


            石油タンク


641         冬空の油田地帯や雲重し


642         バアレリー忌叡智の抜殻子も眠り


643         断食月冬山かうかうとして眠り


644         銀の匙抽出に一つ冬休み


645         少女期や匙一掬ひ氷菓子


646         東京湾石油タンクの油照り


647         寒月の婚姻胎児の夢満たし


648         満月や石油タンクの重き飢へ


649         朝顔や電気カミソリ水鏡


650         みごもれる妹熟睡の素足かな


            (今日の名句)


           今生に長居して聞くきりぎりす 村越化石


●本日、角川俳句12月号届く。彼の句が16句「団扇置く」と題して掲載されている。これらの句には元ハンセン病患者の悲しみが、あたかも諦観のように綴られているように思われる。

●運動不足の日々が続いている。昨日、久しぶりでダンベル体操をやってみたところ、何と、たったの二五回で既に息切れ。最盛期には200回は出来たのに・・・・嗚呼!




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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)     01/11/21 /Wed 18:33


            白内障


631         冬山に籠る髯の神学生


632         冬の月天に地獄の黙示録


633         戦争の地獄耳にも隙間風


634         墓地買ひにゆく母の背に夕月夜


635         舟を焼く飛島辺り夕月夜


636         末弟が軍鶏放つかな雪煙


637         電柱に電工貼りつく寒夜まで


638         海の音貝柱立て冷蔵庫


639         白内障眼帯裏の月明り


640         破婚してなほ白足袋の妹よ


            (今日の名句)


           春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎


有無、誰しもが、このような「槍投げ」という孤独なスポーツの光景を目撃しているはずである。能村氏の戦後もまた暗かった。







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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/21 /Wed 13:52


            青年期


621         記念日の時死体置場の時計かな


622         鳩を飼う少年逝きし虎狩笛


623         地上よりさらば夏の光りよ伝書鳩


624         復活祭われ埋葬の日の未来


625         片脚の獣医の義兄落葉焚き


626         青年期たちまち昏れて蝮酒


627         義父憎み一瞬の内冬の斧


628         サナトリュウム道造の紅葉いつまでも


629         星一つ光る寒夜の母子家庭


630         壮年の崖に落ちたる蛇の滝


            (今日の名句)


          墓標かなし青鉛筆をなめて書く 鈴木六林男


註・六林男の戦中吟。以て瞑すべし!








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)          01/11/21 /Wed 12:27


            反革命


611         雪の降る街母の墓地買ひにゆき


612         死後の悦楽老母夢中の手編みかな


613         反革命 鰐皮のベルト締め直し


614         父はむかしたれの少年アシカ鳴く


615         母国喪失 水族館の水母かな


616         臨月の母 処女の泉まで


617         悪名は死後囁かれ隙間風


618         難民のフライパン蟻炒められ


619         娶らむや卓上に一つ青蜜柑


620         巴里祭のパン籠踊る石の街


            (今日の名句)


            冬青空ひとに誤算は常のこと 飯田龍太


有無、簡潔にして明晰の一句。彼は一日一句主義者でもあった。








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/20 /Tue 14:39


            革命


601         藁婚式葬列のごとし春の雪


602         磔刑と革命おなじ聖夜かな


603         革命の炉端で十薬煮込みをり


604         革命のかなたに透ける黒葡萄


605         青年は娶らず去年の雪深し


606         鉄亜鈴耐ふる青年白夜かな


607         無名戦死生をよそほふ聖夜の灯


608         シャッを脱ぎ愛をこばむや遠き雷


609         頭より目刺喰ふ青年娶らざる


610         眼科医が眼を冷やしゐる寒夜かな


            (今日の名句)


          少年ありピカソの青のなかに病む 三橋敏雄


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俳句航海日誌9600句! 清水昶( 武蔵野)       01/11/20 /Tue 12:56



            魚市



596         盗作の後味苦きビールかな



597         失職近し黄金の麒麟ビール飲む



598         夢の川鮎を流すや少女婚



599         暖かき乳房に溺れる雪の夜



600         おうおうと掛け声大雪の魚市



●さて9600句。遠くまではるばる来たぜものだ。溜息。






















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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/20 /Tue 11:59



            沢庵



591         沢庵の糠に腕入れ土間の闇



592         口跡の上手高座や寒鴉



593         青の時代ピカソ立冬の美術館



594         そば処花の安曇野出前かな



595         真夜中の扉とんとん原爆忌



改稿590       寒村や沢庵樽の土間の闇



●谷内さんの指摘通り明らかに前稿はおかしい。改稿しました。
「沢庵」は禅僧沢庵が発明した「たくわえ漬け」。即ち雪深い地方や飢饉にそなえた食べ物と思われる。

ところで谷内さんの生国は信州信濃辺りですか?














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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/20 /Tue 00:16


            流星雨


581         越前の竹人形や竹の春


582         海荘の竹人形にずわい蟹


583         玄海の月朧なる舟の腹


584         流星雨宇宙に傘を挿し掛けて


585         流星雨きらきらきらと降りてゆき


586         蟹弁当越前の港停泊す


587         オシャマンベ烏賊飯弁当夜汽車かな


            一周忌、故・加藤温子さんへ


588         セイコ蟹背子の重きに這うてをり


589         ずわい蟹別居の夜に脚伸ばし


            清田圭子さんへ


590         寒村や沢庵着ける土間の壺


            (今日の名句)


           雪はしづかにゆたかにはやし屍室 波郷


●「ついに一人となりにけり」の高楊枝さんへ


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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/19 /Mon 14:23



            富有柿



576         大将の富有柿端座する文机



577         尋ぬれば岐阜が里だと富有柿



578         見事なる富有柿手前黙り込み



579         富有柿威張るな今喰うてやるからな



580         富有柿貧しき卓で威張りをり



●先日、吉祥寺のアジトで見事に大きな富有柿を貰った。今日は、未だ何も食べていない。さて遅い昼食に掛かる。

お前も喰ってやるからな。いいな富有柿!



















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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/19 /Mon 13:32



            花盗人



571         隙間風噂の主のあらわれぬ



572         江藤淳寒夜紅茶で読み直し



573         巴里祭に遠く琥珀のウイスキー



574         行きづりに穴あり冬の地下酒場



575         造花の薔薇花盗人の寒さかな



            (今日の名句)



            縄とびの純潔の額を組織すべし 兜太



●この一句、兜太が日銀専従事務局長であったこと念頭に置かなければ、ちと理解しがたいかもね。













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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/19 /Mon 12:05



            流れ星



566         たれか死ぬわが運命の流れ星



567         宇宙塵金管楽器流れ星



568         晩年を処女地と定め花野かな



569         エスカレーター地下までの闇蟻地獄



570         青のれん風水戸の天狗酒



            (今日の名句)


            女立ちて遠き冬田で働ける 鈴木六林男


有無、幼少年時代の母を眺めているようで何処か切ない。
















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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/19 /Mon 00:17




            特別作品「丹前」



536         俳友と将棋をさして葱坊主



537         白南風の乗る黒潮の壮年期



538         若竹の筒に挿したる桔梗かな



539         烏骨鶏酒酌み交わす秋の暮



540         竹落葉掃くや去年の暮昏し



541         九頭竜のほとりに宿の冷やし蕎麦



542         東京弁ひそか紅葉の赤煉瓦



543         吊り橋や紅葉の山と揺れてをり



544         糸杉のゴッホ燃へたる黒海



545         水の底赤き紅葉を沈めをり



546         寒行の僧渡りゆく渡月橋



547         横抱きの楽器を鳴らす寒夜街



548         ずぶ濡れのギター横抱き花野かな



549         果実酒の壜聖夜の赤い舌



550         横抱きの時計走る花野かな



551         美しき発狂母の秋の寺



552         腐刻画の詩人逝きし秋の寺



以上2句、故・田村隆一へ



553         丹前を着て寅さんの葉巻かな



●寅さん異、渥美清は本物のヤクザ出身の俳優だった。あの口上のしたたかさも本物だった。




お控えなすって、手前生国と発しまするは柴又の毘沙門天で産湯を使い、名は寅次郎、云々。




554         風呂吹きや息吹きかけて酒を酌み



555         風呂吹きや一人で食べるヤクザ者



556         寒椿母美しき時なりし



557         月光殺伐虐殺寒山殺人戦争完了す



558         暖房車とろけるやふに子は眠り



559         蜜の味昏き少女のソーダ水



560         乾電池充電の間の寒夜かな



561         焼芋のトラックのろりと月を乗せ



562         満月の夜間飛行や星の王子様



563         虐殺のカポネバレンタインデー



564         寒椿つぼみの赤子誕生す



565         手斧にて父殺したる寒の月



●この事件は秋川の小生が中学3年生の時、起こった。同級生が嘆願の署名を持ち歩いて来た。











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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)         01/11/18 /Sun 14:44



            柿紅葉



531         竹皮を脱ぐ壮年期いぶし銀



532         夕暮に美少女とゐるかきつばた



533         黄落の月夜や平家物語



534         夕映えの鴉一羽 柿紅葉



535         黄落の文科哲学の道つづく



            (今日の名句)




            百日紅雨の斜面に家族たち 小長井和子



●眼前のリアリテイより、一段とふくらみのあるリアリテイがあるのはを感じさせる場合があるのは、回想の時空に包まれているためと思う。そしてときには、回想のなかで体験対象を変容させて、それこそ虚実皮膜のリアリテイを掌握しようとすることさえある。しだいに俳句という形式に習熟するにつれて、小長井にはそうした余裕さえ生まれてきている。 金子兜太「まえがき」からの抜粋。

ただし、この評、句集の讃辞としては月並み過ぎないか?

彼女の場合は知らないが以前、俳句の宗匠に跋文を頼むと50万円が相場であると聞いた。現代詩では信じられない金額である。

●質問。先程、煙草を買いに行って気がついた。膝小僧から下の筋肉が痛い。即座に直す方法を教えて頂きたい。なお馬鹿につける薬は購入済み。


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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/18 /Sun 12:53



            黄落期



526         渡月橋照り葉の流れ迅きかな



527         天城越へ修禅寺までの黄落期



528         初紅葉うぶ湯一子誕生す



529         壮年期盛り全山紅葉す



530         本能寺跡に旅客の黄落期



●臨時ニュース



メイル開通!誕生日祝いと俳句航海日誌に対する数々の讃辞ありがとうございました。掲示板を以てお礼に変えさせて頂きます。



●駄々子さん、八木忠栄が俳句を朗読したらしいが、どないして演じるのやろう。和歌蘭。


●小長井和子句集「絹雲」(富士見書房)寄贈される。ありがとうございました。「海程」所属。夫君は故・詩人、入江亮太郎とある。跋文は金子兜太。「海程」のどなたか、この掲示板を御覧になっているのだろうか?








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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/11/17 /Sat 16:12



            紅葉



521         山の上ホテルで詠みし初紅葉



522         紅葉の盛りやホテル出版記念会



523         紅葉の燦然たりし飛騨の峰



524         大欅紅葉に射す大夕焼



525         図書館の庭の紅葉や栞かな



            (今日の名句)



            水の飛騨紅葉心身ごと落ちる 兜太




有無、お上手!













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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)        01/11/17 /Sat 15:07



            黙秘権



516         ソバカスの少年ライ麦畑で捕まえて



517         けものみち分け入りて会ふ猪鹿蝶



518         蝶わたる黄金海岸真青なる



519         黙秘権机の上の青蜜柑



520         ハンセン病勝訴の掌に青蜜柑




●ハンセン病問題、生活費の保証では一応の解決を見る。



●昨日はお茶の水「山の上ホテル」での砂子屋書房二十周年記念に参加。大岡信、高橋睦郎、永田和宏、福島泰樹、三井葉子、篠弘、その他、有象無象の懐かしい人々に会う。

しかし誰に会っても、もう昔のような感慨は湧き起こらず。印象的だったのは小生と話している内、谷川健一氏が、酔いつぶれてしまったこと。その後、大丈夫だったで御座ろうか?













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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/16 /Fri 15:11



            木賊(とくさ)



511         梟の金の目玉や飢える村



512         菊人形轟きやまぬ国技館



513         小雀に罠を仕掛けて昼寝かな



514         芦刈の人あらわれて煙かな



515         木賊刈る母の老後に夕日かな



            (今日の名句)




   革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ

                           塚本邦雄




     革命歌雪に液化のピアノかな 甲斐


●小生は何故、短歌ではなく俳句を選んだのか?







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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)       01/11/16 /Fri 13:41



            囮



506         熱燗を傾け夢の老詩人



507         少年期雪に兔の罠を掛け



508         ざる蕎麦をすする一人の秋の雨



509         新蕎麦を食べて一杯句作かな



510         降る雪や竹で仕込みし囮籠



            (今日の名句)



            生返事スプーンに映す黄落期 榎本愛子



●詩、俳句、短歌を載せた総合文芸同人誌「河」25号(非売品)、本日、寄贈される。榎本さんも、その同人の一人。小生の俳句航海日誌も6頁にわたって掲載されている。

所で元塾生の峯尾聡子さん、掲示板見ていますね。この本、欲しい人の場合、何処に申し込めばいいの?切手代はいくらなりや。主宰者名がない。
一応、貴方の住所、書いておきますね。メイルアドレスも、この掲示板に打ち込んでおいたら?

〒194−0041町田市玉川学園7−4−16

峯尾聡子





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俳句航海日誌 清水昶( 武蔵野)      01/11/16 /Fri 11:56



            虐殺



501         虐殺の始末をつけて山眠る




502         蝶一つ北部戦線異常なし



503         虐殺の少年兵や山眠る



504         戦国の道三が喰う美濃の柿



505         信長もまた熟れる柿食いのこし



●斉藤道三・戦国時代の美濃の武将。蝮の道三と言われた。信長は、その娘婿。



●カブール陥落と共に逃げ遅れたタリバン兵の虐殺が始まった。所詮、戦争とは、そんなものなのか!



            (今日の名句)



            信長の喰い残したる美濃の柿 角川春樹



●角川春樹が獄中句集を出版したという。どなたか御覧になられた方、その句集の代表作を披露して下さらぬか?