第6回 : ショートハンドの考え方
ひとつのテーブルに8〜10人参加しているフルゲームに対し、通常5人以下しか参加していないゲームをショートハンド(short-handed table)という。
ショートハンドではフルゲームと比べて攻めるべき機会が増えるため、ハンドセレクションやポジション、相手のプレースタイルの把握といったポーカーのスキルが最大限試されることになり、ライブゲームの醍醐味をもたらしてくれる。
しかしながら、ショートハンドでは基本的にポットが大きくなりづらく、ブラインドの順番もすぐに回ってきてしまうばかりか、折角取ったポットもレーキやトークで削られてしまうため、初級者が利益をあげるのは難しい。
従って、皆さんのようなポーカーを始めたてのかたにとっては、まず勝つためのテーブル選びに注意を向けて頂きたい。すなわち、娯楽目的の観光客や初級者たちで占められたフルゲームであること。勝つのが第一義の目的であれば、これが大前提である。
それでも、当初はフルゲームだったものが次第にひとり減りふたり減り、いつの間にかショートハンドに突入してしまったということがよくある。しかも、気づいてみたらメンバーも入れ替わり、初級者相手に小遣いを稼ごうとショートハンドを狙いに群がってきたサメばかりという状況。こうした否応なくショートに直面してしまうケースにどう対応すべきか、順を追ってみていくことにしよう。
基本スタンスは以下の4点である。
1) アグレッシブであること
2) ポジションを徹底的に使いこなすこと
3) ローカードは捨てること
4) ドローカードに執着しないこと
1) アグレッシブであること
これは非常に大切である。必要なカードが配られたら網を手繰り寄せるだけで沢山の魚が釣れる可能性が高いフルゲームに対し、ショートハンドでこのような悠長なことはしていられない。
人数が少なければ、それだけ自分に思うようなカードは回ってこないが、それは相手についてもいえることである。はっきりいって、相手もベストスターティングハンドなどもっていやしない。
あなたがフルゲームと同じような考え方に固執していたら、たとえ素晴らしいカードが配られても、相手から警戒されて旨味のあるポットは獲得できないか、或いはブラインドやレーキでいつの間にかバンクロールが削られてしまうことになるのがオチである。
例えば、A3やK8のようなカードであっても、ショートハンドでは大いに参加する価値があるとみてよい。
基本的には、キッカーがたとえ弱くてもハイカードが配られたら攻めるべきである。ここでの「攻める」という意味はレイズであり、コールは極めて下策だ。ショートハンドにおいて、ブラインド以外でのコールは原則として正解とはいえない。
リンプインを避けることは、ポットを熱くできるだけでなく、相手のハンドを推し量りやすくし、ゲームをより有利に展開できるという効果が狙える。パッシブな印象がある限り、常にべったりコールされてしまい、自分のゲームをさせてもらえないはずだ。
ボード上でも、セカンドペアができればかなり有利なはずである。積極的にベッティングを仕掛けることが求められる。
セカンドペアすらヒットしなかったらどうするのかって?その問いを発するあなたは、いま一度ポジションの考え方に立ち返る必要があろう。
2) ポジションを徹底的に使いこなすこと
第4回「ポジションの守・破・離」で述べた通り、ポーカーにおいてポジションが使いこなせない限り、あなたは決して勝利プレイヤーにはなれない。
ショートハンドではフルゲームよりもポジションに関するスキルの有無が際立つため、ポジションに対する考え方が定まっていないうちからショートハンドのゲームに参加することは、いうなれば丸腰でギャングのアジトへ乗り込むようなものである。
5人卓と仮定して、一番難しい判断が迫られるのはファーストアクションのプレイヤーである。あなたの後には4人控えており、予想のつかないアクションをされる恐れがある。ここはフルゲームに近い基準で手を絞ったほうが良い。
では、カットオフではどうか。ファーストアクションのプレイヤーがフォールドし、あなたがハイカードやミディアムペアを持っていたら、ここは火を噴くべきである。
一方、J7や55のようなカードの場合はどうか。ボタンはともかく、ブラインドがどのようなタイプのプレイヤーかによる。ブラインドに未練を残さないタイプか、あなたにある程度リスペクトのあるプレイヤーならレイズも考えられるが、次に回すのも一手である。少なくとも、コールは考えられない。
加えて、このような微妙な手で攻める場合は、あなたがこれまであまり沈んでいないことも重要な条件である。ポーカーでは足元を見られては負け。ひとたびテーブルに操作される状況に陥ると、その糸を振りほどいて自由に動き回ることは容易ではない。
3) ローカードは捨てること
54や22といったカードは、たとえコネクタやスーツやペアであっても、ブラインドでなければ潔く捨てることが賢明である。逆に、ローカード付きのハイカードは、たとえK2やQ5のようなものであっても勝負に出る余地は残されている。Axであればなおさらである。
ただし、ショートハンドだからといって83とかT2といった意味不明のカードはどの程度勝負する価値があるのかどうか考えなければならない。あくまでベーシックなハンドセレクションの基準は常に身につけておくべきである。
たまに、ショートハンドでローペアのレイズをかけたがるプレイヤーを見かけるが、ヘッズアップやスリーウェイならともかく、4人も5人もいる中では甲斐はない。
4) ドローカードに執着しないこと
54sや86sといったコネクタスーツやギャップでポットへ参加してしまうのは多くの人が陥りやすいミスである。なにゆえポットの少ないショートハンドで、フラッシュやストレートを狙おうとするのか。
こうしたカードでベストスターティングハンドを華々しく木っ端微塵にしたフルゲームの経験が染み付いてしまっているからかもしれないが、ショートハンドでも同様の恍惚を得られると思ったら大間違いである。
これはきちんと線引きをしておかなければ、あなたのバンクロールは必ずや晴れた日の雪だるまの如く無残な姿を晒してしまうことになるであろう。
繰り返しになるが、はじめのうちはショートハンドでのプレーは危険だということを肝に銘じて頂きたい。勝てるゲームはいくらでもある中、勝てないゲームにわざわざ飛び込む必要はない。
もし、ショートハンドを試してみたいあなたがある程度基本的なスキルを身につけたプレイヤーなら、パッシブなコーリングステーションタイプのプレイヤーが紛れ込んでいるゲームを探すことである。この場合は、フルゲームよりもモノにできる可能性が高い。
ちなみに、テーブル選びはフルゲームでも大切な要素である。旨味のあるテーブルのメンバーは常に一定ではない。テーブルが次第に自分好みでなくなってきた場合、ゲームの合間に見つけた良さそうなテーブルに移ること(若しくは同じテーブル内での座席変更)を検討すべきである。
毎日プレーしている常連ならばそこまで気を回す必要はないかもしれないが、せいぜい数日、長くて数週間しか現地にいない我々にとって、「何となく」ゲームに参加している時間はないのだ。