第5回 : ラスベガスのポーカールーム part 1 −その仕組みとルール−
これまでは、わが国でポーカーをすることに前提を置いて項を進めてきたわけだが、本場ラスベガスのポーカールームはどうなっているのかを知りたい人も多いと思う。そこで、ここでは実際に本場のポーカールームに足を踏み入れても戸惑わないように、ポーカールームへの入り方からプレーの仕方、それに退出の仕方に至るまで、出来るだけ丁寧に解説してみることにした。ぜひ、これを読んで本場のポーカールームにおけるライブゲームにチャレンジしてみてほしい。
[1] プレーするまで
1) 順番待ち
2) ハウスルールの確認
3) タイムカードへの記入依頼
4) チップへの交換
[2] プレーしてから
1) レーキ
2) トーク
3) ルール、マナーに関する注意点
4) リバイの方法
5) 席及びテーブルの移動について
[3] プレーを終えて
1) チップの現金化
2) コンプの要求
3) ポーカールームマネージャとの面会
[1] プレーするまで
1) 順番待ち
まず、ポーカールームへ入る前に、入り口付近にあるカウンターでプレーをするための手続きをとることになる。
始めに、カウンターにいる係員(フロアパースン)に対し、プレーしたいゲームとレートを伝える。ゲームは、たとえばテキサスホールデムとか、セブンスタッドといった具合である。また、レートは$4-8とか$10-20、$1-4-8-8(one four double-eight)などのことで、自分の腕と資金に見合ったものを選ぶ。これらの情報は、カウンター近くに示されているウェイティングリストと呼ばれるボード(或いはフロアパースンの手許にあるメモ帳)で得ることができるし、もちろんフロアパースンに尋ねればきちんと教えてくれる。これで手続きはほぼ完了。あとは自分の名前を告げるだけである。日本人の名前は難しいので、イニシャルやニックネームでも構わない。
告げた名前は、フロアパースンによって先ほどのウェイティングリストに記載され、順番がきたらマイクで呼び出される仕組みになっている。すぐにプレーできればそれに越したことはないが、人気のあるポーカールームではテーブルが埋まっていることも多く、たいてい順番待ちをしなければならないのが現状である。
待機に要する時間については一概に言えないが、ベラージオやオーリンズなど、とくに人気の高いポーカールームでは何時間も待たされることがあるので、自分の名前がきちんと記載されているかを確認し、テーブルに入るにはどれくらいかかるかを尋ねたほうがよい。
2) ハウスルールの確認
ポーカールームでは、それぞれ独自のルールを採用しており、とくに重要なルールは壁など目立つところに表示されていることが多い。たとえば、テーブルステークス(後述)や、ショウダウンの際のルールなどである。
また、ブラインドやミニマムバイイン(最低ゲーム参加額)、それにレーキ(後述)といった事項はテーブルに取り付けられているプレートに示されているが、着席するまでは見づらいので、予め確認しておいたほうがよいであろう。
3) タイムカードへの記入依頼
他のカジノゲームと同様、ポーカーをプレーすることによってもコンプをもらうことが出来る。
コンプ(complimentary)とは、手短かに言えば、カジノで遊んだ見返りにさまざまなサービスを受けられる制度のことをいう。とくにポーカールームにおいては、落としていった「額」ではなくて、ゲームをした「時間」をコンプ獲得の基準としている。従って、長く遊べば遊ぶほど、より快適なサービスを受けられることになる。コンプの種類としてはさまざまだが、ポーカールームで容易に得られるものとしては、一定額の食事代を無料(または減額)にしてくれるフードコンプがある。
ある一定時間プレーしてから、「**時間やったけど、コンプは貰えるか」と尋ねれば、それなりに対応してくれるはずだ。そのためには、当然のことながら開始時刻と終了時刻をチェックしておいてもらわなければならない。プレイヤーズカードによる方法でコンプを管理してくれるオーリンズのようなところもあるが、たいていはフロアパースンに控えてもらうようである。
4) チップへの交換
自分の名前が呼ばれたら、いよいよゲームに入るべく現金をチップに交換する。通常は、受付カウンターとキャッシャーは別になっているので、現金やT/Cはポーカールーム内のキャッシャーでチップに替えてもらうことになる。ただし、あまりに額面が大きすぎるとカジノのメインキャッシュ(main cage)でしか取り扱ってもらえないので注意のこと。なお、多少ルーズではあるが、そのままテーブルへ行ってディーラーに頼むという方法もある。とくに小額のバイイン(buy-in)であれば、こちらのほうが手っ取り早いといえよう。
さて、どれくらいチップをもって参加すればよいかということだが、希望するレートのビッグベット($4-8ならば$8、$15-30ならば$30)の30〜50倍程度を目安にするとよい。
[2] プレーしてから
1) レーキ
オンライン上のゲームとは違い、実際のポーカールームではゲームに参加しているプレイヤーから一定のサービス料を徴収する。これをレーキ(rake)という。
レーキの徴収には、大きく分けて3つのパターンがあるが、ポットから毎回差し引くというパターンが一般的である。たいてい、各テーブルにはゲームの種類を表すプレートが備え付けられているが、いくらレーキをとり、そしてその上限はいくらか、ということもそこで示されている。控除率は、ポットの5〜10%が一般的である。たとえば、オーリンズの$4ー8のレート(テキサスホールデム及びオマハハイロー)におけるレーキは5%(最大3ドル)である。
また、ボタンに一定のレーキを課したり、時間単位(たいてい30分毎)でレーキを徴収する場合もある。レーキの徴収の仕方は、レートによって左右されるようである。
2) トーク
トークといってもお喋りのことではなく、ディーラーに対して渡すチップのことである。 toke と綴る。
ポットを獲得したプレイヤーは、たいていその中から1ドル程度のチップを渡すことが慣習となっている。もっとも、ルールとして厳格に決められているわけではなく、必ずしも渡さなければならないという性質のものではないが、わたし個人の意見では、サービスに対する報酬として快く渡せばよいのではないか、と思っている。それに、実際の様子を見てみると、チップを渡さないプレイヤーは殆どいなかった。
ただ、訓練を受けたディーラーも人間である。時には信じられないようなミスをしでかす。このように、ゲームの中で、明らかに報酬を与えるに値しない状況であると判断すれば、自分の気持ちに従えばよい。ディーラーにしても、義務として嫌々ながら渡されるトークには、心から喜びを感じないであろう。渡すからには快く渡すように心がけたいもの。とくに気持ちよいサービスを受けた時は、多めに渡すなど、額に拘らず独自の判断があっていい。
なお、あまりにポットが少ない時には、渡す必要はない。
3) ルール、マナーに関する注意点
まず、テーブルステークス(table stakes)について知っておく必要がある。これは、ネットプレイヤーの皆さんには馴染みのないコトバかもしれないが、要するに、テーブル上のチップをプレー中に動かすことはできないというルールのことである(ただし、カクテルガールへのチップは例外)。従って、たとえばテーブルに置いてあった自分のチップをプレーの最中にすべて切らしたからといって、おもむろにポケットの中から財布を取り出して賭けることはできない。チップがなくなりそうな場合は、予め紙幣をテーブルの上に置いておくことである。ポーカールームでは、チップの後ろにたたんだ紙幣を忍ばせているプレーヤーがいるのをよく見かける。ただ、このあたりは置ける紙幣の額面など、場所によって違いがあるので確認してもらいたい。当然のことながら、隣のプレイヤーとチップのやりとりをすることなどは固く禁じられている。あくまで、自分の前にあるチップだけでゲームをしなければならない。
また、チップをラックに収納したままでプレーをすることも注意される場合がある。チップを受け取ったら、着席後速やかにラックから取り出してテーブルの上に置くことである。
ほかに、これは第4回で述べたことと重なるが、プレーの最中にチップやカードをテーブルの外に持っていったり、テーブルの下に隠したりする行為はあってはならないし、ストリングベットにも注意が必要である。
加えて、ポーカールームでは原則として英語以外の言語で話すことは認められていない。これは、不正を防止するためである。あらぬ疑いをかけられ、不愉快な思いをしないためにも、とくにプレー中には英語を用いることが好ましい。
4) リバイの方法
バイインしたチップがすべてなくなってしまった、或いは残り少なくなってきたが、ゲームは続行したいという場合、ディーラーにリバイ(re-buy)を頼むことになる。希望の額をディーラーに告げると、速やかにチップが用意される。
5) 席及びテーブルの移動
同じテーブルの中で席を移動したい時はディーラーに頼むとよい。また、ゲーム自体を変更したい時は、そのゲームで順番待ちをしているプレイヤーが他にいなければ、認められる。空席を埋めるため、時々フロアパースンがマイクで希望者を呼びかけたりするので、その時に挙手で応えるなどして参加の意思を伝え、移動するのが一番スムーズな方法である。
また、座席を一時的に離れたいときには、チップをテーブルの上に置いたまま離れればよい。ただし、待っている人が大勢いるのにも関わらず、食事などで長時間席を離れるというのは好ましくない。長く空けるといっても、せいぜい20〜30分くらいが限度であろう。
なお、あまりに長く席を空けたままでいると、ゲームから追い出されてしまうことがある。戻ってきたら自分の席で他人がプレーしていたという場合は、慌てず騒がずフロアパースンに席を立ったおよその時刻、テーブル番号と着席していた位置を告げよう。そうすれば、自分のチップ(或いは、それが入った袋)が手渡される。もちろん、プレーを続けたいときには、新たに手続きを願い出ることになる。
[3] プレーを終えて
1)チップの現金化
プレーを終えたら、残ったチップをキャッシャーにて現金化してもらう。運んでいくべきチップが多ければ、たいていカウンターにラックが用意されているので、それを利用する。
2)コンプの要求
コンプの要求は、フロアパースンのいる受付カウンターですることになる。2〜4時間のプレーで5ドルほどを目安として考えるとよい。ちなみに、オーリンズでは4時間で5ドルである。
3)ポーカールームマネージャとの面会
ポーカールームマネージャは、ポーカールームにおける総責任者である。ホテルの部屋代を安くしてくれたり(ポーカールームレート)、何かと便宜をはかってくれる。フロアパースンに一言頼めば会ってくれるので、英語による交渉力を多少はつけておきたい。
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