第4回 : ライブポーカーの手引き


今はインターネットを通じて対人ポーカーを楽しめるようにはなったが、それでも実際に向かい合って行うポーカーの魅力には敵わないであろう。そこで、ライブポーカーの手引きを設けてみることにした。ぜひ、あなたの友人、家族、同僚と一緒にテキサスホールデムポーカーを楽しんでもらいたい。なお、ここではプレーする人数を5-6人と想定しているが、2-3人でもゲームをすること自体は可能である。


[1] 用意するもの

1) カード1組(1デック)
2) チップ、またはそれに代わるもの
3) ディーラーズボタン、またはそれに代わるもの


1) カード1組(1デック)

1組のカードのことを、通常デック(deck)と呼ぶ。52枚のカード(ジョーカーを除く)がきちんと揃っているならば、自宅の暗い引き出しにしまわれてひっそりと出番を待っているトランプに活躍の場を与えるいいチャンスだ。もう少し雰囲気を出したければ、"Bee" や "Bicycle" といったブランドのデックがポピュラーかつ安価なので、それらを買い求めてもいい。東急ハンズ等の雑貨店で容易に入手可能である。
ラスベガスのポーカールームで使われているような本格的なデックもオンラインで入手できるが、やや値段が張ってしまう。始めのうちは、不慣れのせいで折れ曲がったりしやすいから、安価なものを手に入れることをお勧めしたい。


2) チップ、またはそれに代わるもの

ポーカーをするからには、チップは揃えておきたいところだ。本場仕様のチップならば、Gambler's General Store等でオンライン注文が可能だが、資金面で余裕がある人ならともかく、始めは雑貨店で売られているような安価なもので十分である。
チップは、便宜上色分けされているから、色違いのものを3 - 4 種類ほど揃えておくとよい。本場では、1ドルチップは白、5ドルチップは赤、25ドルチップは緑、そして100ドルチップは黒、というパターンが多い。ただ、使うチップの種類はストラクチャの決め方次第で融通が利くから、必ずしもそれにこだわる必要はない。財布の都合がつかなければ、色違いのものが2種類もあれば大丈夫である。なお、ストラクチャについては後述する。


3) ディーラーズボタン、またはそれに代わるもの

ディーラーズボタン(button)は、特定の位置にいるプレイヤーの前に置かれるマーカーのことで、このボタンの置かれているプレイヤーは、他のプレイヤーのアクションをすべて見届けてから自分のそれを決めることができる。つまり、ボタンは、テキサスホールデムにおいて最も有利な位置を示す印なのである。この位置は、ワンゲーム毎に左隣のプレイヤー、つまり時計回りに移される。
このボタンはアクションの順番を示す目印になるので、ぜひ用意しておきたい。わざわざ買い求めなくとも、その位置がはっきりと分かるような印(たとえば、大きめのコイン等)があれば、代替できる。


[2] 手順

1) ストラクチャと、それに応じたチップ量を決める
2) ディーラーを決める
3) プレイヤーの席次を決める
4) ボタンの位置を決める
5) ゲームを進める


1) ストラクチャと、それに応じたチップ量を決める

まずは、ストラクチャを決めておく必要がある。
ストラクチャ(structure)とは、要するにゲームのフォーマットをいう。ゲームをどのようなレートで行うか、ブラインドはいくらにするか、といったことを始めに決めておくことは欠かせない作業である。

そのストラクチャには、大きく分けて2種類ある。
ひとつは、ベット額が固定されているストラクチャリミット(structured limit)である。たとえば$4-8ならば、フロップまでは4ドルずつ、ターン及びリバーではそれぞれ8ドルずつしかベット、或いはレイズをすることが出来ないことを示す。通常はこのようなストラクチャが多く、$4-8(four-eight)のほかにも$6-12, $8-16, $10-20, $15-30 などバラエティに富む。
いまひとつは、ベット額が固定されていないスプレッドリミット(spread limit)である。テキサスホールデムにおける代表的なスプレッドリミットには $1-4-8-8(one four double-eight) があり、これはフロップまでは1ドルから4ドル、ターン以降は1ドルから8ドルまでの間ならどの額を賭けてもよい、というものである。セブンスタッドポーカーでも、$1-5といったスプレッドリミットをよく見かける。
ちなみに、Yahoo! Games Pokerをみると、そのストラクチャは$1-2のブラインドを伴った$2-4のストラクチャリミットが採用されている、ということができる。


* ブラインドについて

さて、先ほどからたびたび登場しているブラインド(blind)という用語について、第1回よりも少し詳しく説明しておこう。
ドローポーカーやスタッドポーカーでは、ゲームを開始する前、各プレイヤーに対して毎回アンティ(ante)と呼ばれる参加料を要求するケースが多い。しかし、ホールデムポーカーにはそれがない。その代わりに採用されているのが、ブラインドと呼ばれるルールである。
ブラインドは、それが参加料ではなく、プレイヤーのベットの一部と見なされるという点において、アンティとは概念が異なる。そして、そのベットはカードが配られる前、ボタンの左隣に位置する2名のプレイヤーによって行われるのが通常である。とくに、ボタンのすぐ左隣の位置をスモールブラインド(small blind : 以下sb)、その隣をビッグブラインド(big blind : 以下bb)と呼ぶ。2名はそれぞれベットの額が異なり、たとえば$4-8のゲームを行う際、sbに位置するプレイヤーは1ドル乃至2ドル、bbに位置するプレイヤーは2ドル乃至4ドルを予めベットすることになる。そして、ブラインドの中でもとくにsbは、最初のラウンドを除いて一番始めにアクションをしなければならないという最も不利な位置にあり、すべてのプレイヤーたちより狙われていることから、アンダー・ザ・ガン(under the gun)と呼ばれる。また、bbはすでにコール額を支払っているので、レイズされなければ、そのまま第2ラウンドに進むことが許される。

以上で、ひとまずストラクチャに関する説明を終えたい。
採用するストラクチャに関しては、何もラスベガスで行われているものに合わせる必要はない。仲間同士でわいわいやる分には、自由に設定して構わない性質のものである。


2) ディーラーを決める

ストラクチャが決まったら、次はディーラーを決めよう。ディーラーは、ゲーム進行全体を取り仕切る存在である。ディーラーは、それのみに専念しても、またはプレイヤーとしてゲームに加わってもよい(本場ではディーラーのみに専念)。ディーラーの行うべき仕事の内容については後述する。


3) プレイヤーの席次を決める

次に、プレイヤーの座る位置を決めておく。カードのランクによって決めてもよいし、別にじゃんけんやあみだくじによって決めたって構わない。
プレイヤーの席次が決まったら、続いてボタンの位置を決めることになる。ボタンの位置が決まれば、それによって自動的にブラインドを支払うプレイヤーが決まることになる。
人数が少ない時は、ブラインドを1人だけにしてもよい。


4) ゲームを進める

◇ ディーラー側の注意点

ゲームはディーラーによって進められるものであるので、ここではディーラーの行う仕事を、ゲームの流れに沿って説明していくことから始めたい。
まず、ディーラーはカードを配りやすい位置に座り、それをよくシャッフル、カットする。そして、片方の手でデックを構え、もう片方で各プレイヤーにカードを配る。この時、配る順番に注意しなければならない。
カードは1枚ずつ、ボタンの左隣のプレイヤー、すなわちsbのプレイヤーから時計回りに伏せて配っていき、ボタンのプレイヤーで終わるようにする。2枚とも配り終えたら、まずは(スモール及びビッグ)ブラインドの左隣のプレイヤーからアクションをすることになっているので、ディーラーはそれを促す。
1ラウンド目が終わったら、ディーラーは場札を開く前に、すべての賭け金を1ヶ所に集める。それから、すべてのプレイヤーにとって見やすいような位置で(通常はテーブルの中央)、最初の場札であるフロップを表向きに3枚広げる。
ここで、ディーラーはアクションを促す順番に注意しなければならない。フロップのめくられる前とは違い、フロップ以降は、ボタンの左隣のプレイヤー(sbのプレイヤー、又はそれに最も近い左側のプレイヤー)が最初のアクションをすべきプレイヤーになる。そして、すべてのアクションが終わったら、1ラウンド目と同様、速やかに賭け金を集めなければならない。そして、次の場札を開く。以降は、2ラウンド目と同じような手順で進める。
勝負が決まったら、ディーラーは場に集められた賭け金の総額(ポット)を勝利者に渡す。これがディーラーによる最後の大切な役目である。
以降は、ボタンを順番に動かしながらこうした手順を繰り返す。


* まとめ (ディーラーの作業手順)

1. カードをシャッフル、カットする
2. ブラインドを確認してからカードを配る (sbから)
3. アクションを促す (bbの左隣から)
4. 賭け金を1ヶ所に集める

5. フロップ (最初の3枚)を開く
6. アクションを促す (sbから)
7. 賭け金を1ヶ所に集める

8. ターン (4枚目)を開く
9. アクションを促す
10. 賭け金を1ヶ所に集める

11. リバー (5枚目)を開く
12. アクションを促す
13. 賭け金を1ヶ所に集める

14. ショウダウンを促す
15. ポットを勝利者に渡す
16. ボタンを左隣のプレイヤーに移し、ブラインドのポストを促す

ゲームが済んだら、作業1-16を繰り返す


◇ プレイヤー側の注意点

さて、ゲームの進行において、今度はいくつかプレイヤー側の注意点を挙げておきたい。

1) アクションの順番は守る
2) 手札は自分で守る
3) 紛らわしいアクションを避ける
4) プレー中は、相手の手役やアクションに関する口出しを避ける


1) アクションの順番は守る

基本中の基本なのだが、アクションの順番は案外破られてしまうことが多い。人並み以上の観察力が求められるポーカープレイヤーとして、周りのアクションを見過ごすということは、単にマナーが良くないというだけではなく、その適性にも関わる重大な問題ともいうべきである。必ず、自分の前のプレイヤーのアクションを見届け、それから自分のアクションに移ることである。


2) 手札は自分で守る

最も大切であるはずの自分のカードを守ることに対して意識の甘さが見られるわが国のプレイヤーは驚くほど多い。
プレー中は、勘違いしたディーラーによって手札を捨てられてしまうかもしれないという危険性を常に孕んでいるだけではなく、隣のプレイヤーから覗き見られる可能性だってある。それらを防ぐために、手札を開示する時も、しっかり自分の手札だけは押さえておくくらいの慎重さが求められる。 自分の手札の上にチップをのせておくことも有効である。


3) 紛らわしいアクションを避ける

オンラインポーカーではクリックひとつで片づくことも、ライブポーカーではそうはいかない。 時に、プレイヤーの不用意なアクションによって、円滑なゲームの進行が妨げられてしまうこともある。 よって、ひとりのプレイヤーとしてゲームに参加する以上は、その責任として最低限のアクションに関するマナーを押さえておく必要がある。
プレイヤーによる紛らわしいアクションの種類はさまざまである。たとえば、チップやカードを手に持ってテーブルの外に出したり、チップを手で覆い被せるような行為をするプレイヤーがいる。こうした行為は不正を疑われるだけではなく、スムーズなゲーム進行にも悪影響を与えてしまうので避けたい。とくに、カードを持ち上げたり、胸の前まで近づけて見るプレイヤーは、隣から手札を盗み見られかねないという危険性もあり、注意が必要だ。スマートなアクションに関しては、ポーカーに慣れているプレイヤーを参考にするとよい。
また、相手のベットにレイズする段階で、まずコール分のチップだけを前に出し、そしてさらにレイズ分のチップを加えるという行為は、コールかレイズかが紛らわしいので避ける必要がある。これはストリングベット(string bet)と呼ばれ、多くのポーカールームでは原則として認められない。
これを防ぐには、まずレイズと発声することである。そして、一度にレイズ分のチップを出すようにする。発声もなく、単にコール分のチップしか出さない場合、これはコールのアクションとみなされてしまう。わが国のイベントにおいても、このストリングベットについてはとくに厳しい対応を迫っているので、注意を要する。
あとは、不用意に指でテーブルをトントンと叩く(これは通常チェックのアクションを意味する)など、紛らわしいボディランゲージを使う人がいる。こうした細かい仕草も、スムーズなゲーム進行を妨げることになりかねないので、留意されたい。ボディランゲージに自信のない人は、常に発声を心がけることである。


4) プレー中は、相手の手役やアクションに関する口出しを避ける

プレー中は、相手の手役やアクションに関する口出しを避けるのが常識であるが、ついついしゃべって要らぬ顰蹙を買ってしまう人がいる。とくに、降りてしまったプレイヤーやギャラリーからの口出しは問題視されることが多い。
もっとも、ポーカーはあれこれ言い合うことで、熱気のある雰囲気が生まれることもあり、一概に押し黙っていろ、とは言いたくない。悪意のない野次程度なら、むしろあったほうがいい、或いはあって当然だと思う。要は、度の問題である。
その他、アクションを決定するのにやたらと時間がかかるプレイヤーも嫌がられる傾向にある。始めのうちは、慣れないせいでアクションに戸惑うことも多いと思うが、なるべく相手を待たせないようにするという配慮は常に持っていたい。


ライブポーカーの手引きは以上である。
ここで触れた内容が、少しでも皆さんの助けになれば嬉しい。



メインページへ戻る