第28回 名古屋ポーカーオフ(POKER in NAGOYA)


平成13年11月24日(土)快晴 於 愛知県スポーツ会館


小春日和の中部地方。スポーツするには絶好の陽気にカーテン閉めてインドアポーカー。それもまたよし。
この日は関西のイベントでポーカーに興味を持ったというふたりの学生プレイヤーが初参加してくれるなど、いつもより活気のあるイベントになったと思う。

2テーブルに分かれて行われたテキサスホールデム。 わたしのテーブルはといえば、左に爆破道&LAC-HERO両氏、右に伊与氏を挟んでいわた、すみ両氏が控えるという、ポジションとしては決して悪くはないものの、全体的にみてやりにくいテーブルである。 振り返ってみると、トーナメント初参加の伊与氏にとっては少々きついテーブルだったかもしれない。
始めのうちはなかなかフロップの開かない緊張感のあるゲーム展開ではあったが、すみ氏といわた氏がいるからにはそれも長く続くはずはなく、直にフロップ出陣。 UTGで伊与氏がリンプし、隣のなごやんレイズ。例のブラインド2人組の動きに合わせ、伊与氏もコール。たかが10や15のブラインド、何ゆえそれほど執着する。
フロップではベビーカードばかり、ここはきちんとポジションベット。いわた氏が降りて、フェイスカードJのターンでもチェックチェックで回ってくる。ここもしっかりベットしてみた。辛うじて打ち切り成功。
LAC-HERO氏の冴え。sbからリンプしたLAC-HERO氏に、すみ氏はチェックでAのめくられたボード上。ここでLAC-HERO氏がチェックレイズ。迷いながらもコールしたすみ氏だが、ターンのベットには耐えられずポット獲得を断念。 他をみると、コールのしすぎが祟ってか、伊与氏といわた氏が序盤からきつい展開。ソリッドプレイヤー(褒めすぎという気もする)の爆破道氏も攻める糸口を見つけられずに苦しい展開を強いられる。
それにしても、この爆破道氏とLAC-HERO氏とのヘッズアップは見ていて楽しい。 爆破道氏が最初のオールインをした時、コールしたLAC-HERO氏の手札は28oであった。 爆破道氏のチップ量が少なかったからとはいえ、たとえチップ量が多くともコールする可能性は残されていたという。 これに限らず、嘘か本当か分からない両者の読み合い探り合いは−参考になるならないは別として−面白い。

さて、ゲームもノーリミットに突入し、愈々攻めの中盤戦。 ポジションプレーを知る者と知らない者との差がついてくるのもこのあたりからである。
いわた氏がLAC-HERO氏のストレートにAQで突っ込んでリタイアすると、爆破道氏もやむなく奇策のローカードでオールイン。ともにLAC−HERO氏が取って危なげなくここまできた。 なごやんも、伊与氏に対してオールイン要求するなど、ノーリミット突入時までに手持ちのチップをほぼ倍増させ、極めて順調。 やがてテーブルもまとまり、ゲームが進んでいくにつれて、終盤戦への切符を手に入れるメンツが次第に絞られてくる。
テーブルが残り6人になったところで、チップリーダーは依然LAC−HERO氏。 だが、さほど大きく水をあけている訳ではない。初参加の高橋氏もなかなか充実。一方、阿部、にしの両氏がショートスタックで厳しいか。 そして、このあたりから事態は急展開。突然ミディアムスタックのはづき氏が猛チャージをかけ始めたのである。
すべては、軽くレイズ200と発声した高橋氏に対して、中途半端に100をリレイズするという彼女の奇妙なアクションから始まった。 ささむくれのような不快感を覚えたのか、高橋氏がさらに倍額をかぶせる。ここはきっちり受けとめて注目のボードはどれも真っ赤な7-9-T。 チェックチェックでターンはJ。ここで高橋氏が動いた。そしてはづき氏が取ったアクションは…

ALL-IN

800弱ある。高橋氏はコールし、相手の手札を見た。そこには真っ黒なQ8。氏のJJに、リバーは振り向かなかった。
ここでの敗北が致命傷となり、ほどなくして高橋氏はリタイア。このビッグスタック同士の食い合いを最も喜んだのは誰か、想像に難くない。
たったワンゲームにして相手の首をとったはづき氏は「これで、黙っていても上位に残れる」と口では言っているのに、両手はしっかりチップをわし掴み。 氏のすぐ左隣に位置し、真っ先にその動向が気になるなごやん。とりあえずベットの額を尋ねてみた。

「いくら。」

「えーっと…。」

「300?400?」

「んー… 1000。」

この大胆な賭けっぷりを見よ。トーナメントリーダーにbbの10倍以上の額をあっさり賭けられては、他のプレイヤーはマックするしかなかろう。 わたしにしても、比較的安定したチップ量とポジションを考えれば、AAやKKが入っているのなら別として、AKとかQQなんかで無理にぶつける必要はない。
スティールを確認してから、ジャックのポケットペアをめくってみせる彼女。そのうちしっぺ返しを食らうぞと心の中ではほくそ笑みつつ、顔では爽やかに「ナイススティール!」。

その数試合後、何やら隣でもぞもぞと怪しげな手つき。どうやらまた出動してくるらしい。

「またベット1000なんて言うんじゃないだろーな。」

「ううん… 2000。」

「コラ待てぃ!!」

彼女はヤフーポーカーで実践を重ね、ハンドの強弱は理解している。しかも、自分の手札だけではなく、相手をみて押したり引いたりすることのできるプレイヤーでもある。 とはいえ、"Tournament Poker"や"Championship PL & NL Hold'em"を読んで戦略を研究したこともなければ、ウィルソンのソフトウェアを愛用しているわけでもない。もちろん妥当なベットの額も、インプライドオッズの定義も、おそらくはポジションプレーのなんたるかも、知らない。 だが、この彼女、トーナメントの戦い方に決して通じているとは言えない彼女に、周りはうろたえている。 すべては、体当たりの迫力によるものである。ガッツと体当たり、実はこれが一番恐い。
隣にいるのは、もはや当イベントを盛り上げてくれる可愛らしいマスコットではない。ひとつの、紛れもない「脅威」である。

さて、やりたい放題ひっかき回されて、隣のなごやんはスティールの機会を逸してしまい、チップ量も次第に覚束なくなってきた。まるで出番なし。 来る終盤戦へ向けて、確実に優勝を掴めるだけの足固めをしておかねばならない時に、一歩も動かないのは明らかにまずい。 こうなってくると、もはや作戦をレイズアンドリリースから体当たり一発ムーブインに切り替えざるを得ない。 大事なことは、ここで弱気さを悟られないことだ。手持ちは約800。一周耐えて阿部、にし両氏の焦りを誘うか、それとも…。
UTGでカードを覗く。1枚目でKが見えた。ここだ…。しかし、剣呑に思えてならないのはビッグブラインドに控えしトーナメントリーダー、はづき氏のアクションである。 まったく、中学2、3年かそこらで人生の駆け引きをすべて体得したような涼しげな顔つきをしおって。 うむ、やはりここはだ。義務教育課程を終える前に、人生とはどれだけ厳しいものかということを一丁教えてやらねばなるまい。

RAISE ALL-IN

2枚目を見ずして腹を決めたなごやんに対し、注目の彼女のアクション…

CALL

その間、僅か1秒。
わたしの手札はK、そして8だった。勝ち誇ったようにKQを開く彼女。依然として風向きは変わらないまま。フロップ、ラグ。

「…参りました。」

人生の厳しさはどうした。
席を立ちかけたその時、リバーに現れたカードを見て周りが沸きかえるのに気付くなごやん。

「BINGO!」

ダブルアップ。これでますます先行きが不透明になってきた。

依然としてトーナメントリーダーは女子中学生のはづき氏。それをLAC-HERO氏が僅差で追う。 見下ろされるのはいつでもショートスタックのプレイヤーたち。にし、阿部両氏は勝負のタイミングを見計らっているところだ。
まずはにし氏が動いた。sbからJ8でbbのLAC-HERO氏にぶち当て、生き残りに成功する。 こうなると辛くなってくるのが阿部氏。この人、たまにぬらりくらりととらえどころのない奇策を 打ってくるので決して油断はならないのだが、全体としては穏やかな攻めで、ボードに忠実なプレイヤーである。 その阿部氏がカットオフのポジションからリンプイン。ボタンのはづき氏はフォールドし、sbのなごやんコール。 bbのにし氏チェックで、Aのみえるボード上。チェックチェックで阿部氏が300弱をオールイン。それをフラットコールするなごやん。氏のA2を見届けてからAQを開く。

阿部氏の後を追ってにし氏がリタイアすると、長丁場のレースは残すところ3人。 この時点でチップリーダーはLAC-HERO氏。はづき氏も健闘し、十分に戦えるチップを残して1位を窺う。 後半戦を有利に進められなかった戦略ミスのなごやんは、優勝を狙うにはやや厳しい状況。 守勢に出たはづき氏のおかげで、なごやんは何度も無視できない量のアンティとブラインドを手に入れることになり、 3人の勢力均衡は長引いたものの、最後まで決定打を見出せなかったなごやんがブラインドを前にしてオールインの決断を迫られる。 コールしたLAC-HERO氏はA8、わたしはK7と明らかに分が悪い。しかも、ボードにAが出てしまっては、もはやこれまで。 ちなみにこのK7、ラスベガスで思い出に残ったハンドのひとつなのだが、それはトリップレポートにて語らせてもらおう。

ヘッズアップ。TOC入賞者に対して女子中学生が挑むという奇妙な光景に、ギャラリーの関心も集まる。 が、決着までにはさほど時間はかからなかった。相手のオールイン要求に34で飛びこむという奇策で 対抗したはづき氏だったが、及ばず2位。LAC-HERO氏の貫禄勝ちでトーナメントは終了した。


1st LAC-HERO

2nd はづき

3rd なごやん

4th にし

5th 阿部(博)

6th 高橋

7th すみ

8th 高井

9th 佐々木MMX

10th 爆破道

11th いわた

12th 伊与

13th heba




池永、点心乱丸両氏を加え、15名で始められたセブンスタッドのトーナメント。
まずは、テキサスに続いて不運な終わり方をした佐々木MMX氏について報告しておかねばなるまい。氏のスト杯での不運のほどはこちらにもぼちぼちと伝わってきているが、 今回のイベントにおける見事なまでのまくられようを見れば、その不運っぷりを知らない人でもなるほどと納得させられることであろう。
氏のオールインを受けとめたのは初参加の伊与氏。佐々木MMX氏の持つフェイスカードのペアはツーペアにまで発展し、残すところあと1枚という6thストリートの時点でガッツショットストレートが頼みの伊与氏を−大方の予想通り−降さんとしていた。 伊与氏の引き目は、明らかにTしかなかったのだから。しかし、伊与氏がつまんだラストカードは、まさにそのTであった。もしかすると、両者にラストカードが配られ、伊与氏が周りを見渡したとき、 佐々木MMX氏ひとりだけは己の不運を悟っていたのかもしれない。
氏はそのまますっと席を立った。諦めの態度と取るか、紳士的な態度と取るか、それは周りの受け止め方次第。少なくとも、自分ならきっと天を仰いで皮肉のひとつでも言いたくなるような場面でぐっと堪えて席を立つという態度は、大いに学ぶべきところがあると思う。 テキサスの時も、不本意な負け方をしたにも関わらず、決して取り乱したりしなかったのが印象に残っている。勝つにせよ負けるにせよ、ポーカープレイヤーとはかくありたいもの。

わたしの動きも話しておこう。序盤戦はフラッシュで佐々木MMX氏を降したり、ガツンと痛快なブラフを決めたりと派手なポット獲得が多かったのだが、如何せん苦手意識を克服できないこの種目。 中盤目前にして、隣の高井氏とともに危機的状況に追いこまれる有様。だが、ここで本日最高のホールカードであるAAが入り、伊与氏を巻きこみながら高井氏を降すことに成功すると、しばらくは静観を決め込むことに。
テーブルがまとまるや否やAK-Kという有り難い札が入り、ここはガツンと迷わずレイズ。すると、わたしと同じくらい安定したチップを持つ伊与氏がオープンカード9でコールしてくるではないか。 ビッグスタック同士、何故ここでぶつかる必要がある…?と、思わず愚痴が顔つきと視線を通してあらわれてしまうも、攻めたのはわたしのほうだからおおっぴらに文句も言えない。4thでAが入るも、 あちらにもう1枚9が配られてベットされば、喜んでコールしようという気にはなれず、ディーラーに断ってから暫時考量に入る。こちらは最も強いAces up、とはいえ相手を手を普通に考えると9のセット…。 しかし、ちらちらと脳裏をかすめるのは、つい先ほど、氏のベットを信用して勝っている手を降ろされたという悔しい一戦。

(こいつのベットは信用ならない…)

結局、わたしの出した結論はこれだった。そして、負けた。直球勝負で。手は言うまでもなかろう。

後半、波乱を巻き起こしたのは−やはり、というべきか−この人、はづき氏であった。heba、LAC-HERO両氏をともにラストカードで玉砕するなど、ひたすら暴走。 中盤から後半にかけて充実ぶりを見せた伊与氏だったが、ヘッズアップではチップ量の差もつけられており、おいしいところを悉くはづき氏にさらわれた、といった印象がある。

いつぞやのdenko_sekka氏の爆発ぶりといい、前回の待宵草氏とすみ氏との名勝負といい、スタッドは何かとドラマを生む。


1st はづき

2nd 伊与

3rd LAC-HERO

4th いわた

5th すみ

6th heba

7th 池永

8th にし

9th なごやん

10th 阿部(博)

11th 高橋

12th 爆破道

13th 高井

14th 佐々木MMX

15th 点心乱丸




オマハハイローのトーナメント、結果は次の通り。


1st 池永

2nd にし

3rd 爆破道

4th なごやん

5th LAC-HERO

6th いわた

7th 高井

8th 佐々木MMX

9th 高橋

10th すみ

11th 谷本

12th 阿部(博)

13th 点心乱丸

14th heba

15th 伊与


3本のトーナメントを終えて、総合優勝はLAC-HERO氏、オマハハイローに参戦しなかったはづき氏は 惜しくも2位に終わった。とはいえ、海千山千の兵たちを相手にここまで踏ん張ったのだ。堂々の準優勝である。 以下、池永、にし、伊与の各氏が続いた。

今回は、名古屋のイベントの持つ魅力を改めて実感させられた。というのも、 初めて参加して基本的なアクション−例えばチップの出し方など−に戸惑っているプレイヤーたちがいれば、 周りが自然にアドバイスをしてあげたり、過ぎた言動の目立つギャラリーがいればこれを諭すなど、スムーズな ゲーム進行という面も含めて、とてもいい雰囲気で行われたためである。このイベントの魅力は、取りも直さずプレイヤーたちの持つ魅力といってよい。 今更かもしれないが、このイベントを訪れるプレイヤーたちは、本当に皆最高だ。いや、冗談ではなくて。
興味があるけどなんとなく参加し辛いというプレイヤーの皆さんもいるかもしれないが、ぜひとも臆さず来てもらいたいと思う。 そして−これが一番大事なことなのだが−楽しんで帰ってもらいたい。その環境は、いつでも整っている。

次回12月15日(土)は今年最後のイベントとなる。締めくくりとしてふさわしいイベントになることを、名古屋のイベントを愛するひとりのポーカープレイヤーとして願って止まない。


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◆関連サイト◆
次回名古屋ポーカーオフ(Poker in NAGOYA)の予定等はこちら(heba氏)
全国統一レーティングはこちら(Doyle氏提供)
名古屋オフ限定ポイントランキングはこちら(LAC-HERO氏提供)



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