第26回 名古屋ポーカーオフ(POKER in NAGOYA)


平成13年9月30日(日)雨天 於 愛知県スポーツ会館


わたしにとって、前人未到の大会3連覇達成が懸かった今回のイベント。爆破道、LAC-HEROの好敵手2人が湯河原へ遠征している今、それを狙うタイミングとしては申し分ない。しかし、優勝したいのは誰も同じだ。関西から遠征してきている徳江、TA_2両氏、そして前回はあと一歩のところで総合優勝を阻まれリベンジに燃える点心乱丸氏、ここでメダルを獲得すれば首位に並ぶheba氏、そして今年度のポイント数でわたしのすぐ後ろを追うすみ氏など、気合いと執念では不利に立たされているといわざるを得ないが、厳しい状況を切りぬけてこそ、達成感も大きなものとなる。
まずはテキサスホールデム。とくにスタッドが苦手なわたしにとって、今回優勝を狙うためにはなんとしてでもこの種目で充実した結果を残しておかねばならない。

ポジションは次の通り。

seat1 おさかな [兵庫]
seat2 池永 [愛知]
seat3 なごやん [愛知]
seat4 すみ [岐阜]
seat5 いわた [大阪]
seat6 点心乱丸 [徳島]
seat7 待宵草 [愛知]
seat8 TA_2 [大阪]
seat9 heba [愛知]


どう考えても恵まれた位置とはいえない。後ろにはすみ、いわた、点心氏と、どちらかというとプロテクトに重きをおくメンバーが集中して控えているからスティールは効きづらいであろうし、さらに目の前にはアグレッシブな池永氏ときたもんだ。やすやすとクズ手でフロップを拝ませてくれそうにはない。ルーズになる序盤は、多少それに乗じ、ノーリミットになってから勝負手でガツンとレイズを見舞うという作戦しかあるまい。

序盤、いわた氏がいつものように怪しいレイズを連発し、点心氏がその度においしいポットを獲得。もちろん、レイザーの直後にK7sでコールという判断を下したことに対しては半畳のひとつも入れたくなるところではあるが、それがボードで2ペアになってしまっては口をつぐむより他ない。ただ、点心氏のこのコール、完全にいわた氏をみくびっているとしか思えぬ。
再びいわた氏がレイズし、ポケット2持ちの点心氏含む多数のコーラーで迎えたボードで、ヒットしたのが2。いわた氏ベットに、殆どがコール。信用度ゼロ。ターンで負けじとベットすれば、点心氏にレイズを食らってばらばら落ちるも、いわた氏含めた少数コール。リバーでベットの点心氏。ここも好奇心に動かされ、かなりの量のポットを吸い上げられる。今日のいわた氏は、この点心氏にハートのバックドアフラッシュまでかまされ、序盤ですでに虫の息。一方、なごやんはレイトから2度ほどポケットペアでコールしたが、いずれも発展せずひたすら忍耐。隣のすみ氏も今日はおとなしい。
時間が経てば経つほど、点心氏と周りとのチップ差が歴然としてくる試合展開にぽつりと不平を零せば、「序盤で勝ったってしょうがない」との声が返ってくる。声の主はheba氏。破竹の勢いの点心氏を尻目にマイペースを保っている人である。氏も、いわた氏からきっちりとチップを削り取り、他のプレイヤーたちの順位上昇に貢献したひとり。たとえばこんな試合があった。heba氏がKKでプリフロップ、フロップ、そしてターンと信用のある攻めをしているのに対し、いわた氏がA狙いで悉くコールしたのである。手札がいくらAQとはいえ、これではheba氏がベットしている意味がない。こうなるともはやゲームの枠を超えた意地の張り合いというしかなく、少なくともこのゲームに限っては、他のプレイヤーたちの共感を得るのも難しいのではないか。heba氏がノーペアのブラフだと読んでいたのならばいた仕方ないが、いわた氏ほどのプレイヤーがそんな読みをしていたとはとても思えない。今回のイベントの中で、解せない展開のひとつだった。

さて、ゲームはノーリミットに入り、ほどなくいわた氏がアーリーからKQoでレイズオールインすると、待っていたかのようにリレイズオールインしたのが関西組のひとり、TA_2氏。この瞬間に決まったな、と思った。果して、手札はKK。heba氏の2度目のKKをAXで破るなどして最後まで抵抗したいわた氏であるが、かくして氏は席を立ち、部屋をあとにした。氏の去ったあとでテーブル上を見渡せば、点心氏とTA_2氏がダントツのチップリードで、言うなればチップの独占禁止法違反。あとはどっこいどっこいである。
一向に勝負手がこない。レイトだったらリンプできるような手は数回きたが、あとは「問題外」である。序盤にきたミドルのポケットペア以外は、それ以下のペア、さらには揃いの絵札さえも配られない。一度だけアーリーでATが配られたが、これは捨てている。そろそろ焦りを感じ始めていると、ボタン手前で33が回ってきた。オールフォールド。レイズ。bbの待宵草氏はかなり迷ったが、なんとかスティールに成功。わたしとしては、すみ氏と、同じく窮地に追い込まれたおさかな氏の脱落まで踏みとどまるのが当面の課題であった。しかし、おさかな氏がA9のオールインで生き残ると、その見通しも翳りを帯び始める。
他方、耐えに耐えたすみ氏も這い上がるチャンスを掴めずにいた。おとなしいプレーにつけこまれたのか、池永氏がすみ氏のブラインドをもぎ取ったあとで嬉しそうに34を開くのをみると、同じくタイトに徹してきたこちらとしてもいたたまれない気持ちになる。だが、こちらだっていつ脱落するやもしれぬ。人の心配をする余裕などない筈。そう思いなおして同情する自分を戒める。間もなく、そのすみ氏が不本意にも24での勝負を余儀なくさせられると、遂にその矛先がわたしに向けられた。
UTGから点心氏がレイズ、途中heba氏がかなり悩むも、フォールド。あとはわたしのアクションを残すのみ。手札をのぞいてみる。最初の札、2。もう1枚、2。少々迷うも、おさかな氏が息を吹き返してしまった以上、ここで待ってもいたずらに自滅を待つのみと判断した。オールイン。「ペアはやめて」と点心氏がTJを開けば、それをみたheba氏があなやと絶叫。どうやら強い手を落としたらしい。そうしたやり取りを傍らで見ていたなごやんは、TJでレイズしてくるとは、とフロップをみて心中冷ややかに嗤うも、ターンでTが出てしまっては、喉元までこみあげてきた全てのコトバを必死の思いで飲み下さずにはおけない。やんぬるかな。リバー、ラグ。
かくしてなごやんが脱落すると、点心氏の右隣は、丁度禾穂を薙いだ颪の爪あとのように、そこだけぽっかりと空きができていた。それに、誰もその近くまで席を移動しようとはしない。悪い気が伝染する、とか何とか。風水論者とオカルトの集会所か、ここは。

試合は続き、幾度か虎口を脱した待宵草氏がsbで動いた。開いた手は、この状況を切りぬけるには申し分のないBig Slick。そして、コールしたビッグスタックのTA_2氏、AQ。フロップは、すべて関係ないランクの札が並ぶ。だが、スーツは同じハートで揃えられていたのが不幸の始まり。両者ともにハートを持っていたからである。そして、決定的なハートのエースを持っていたのは、AQで完全にドミネートされているように見えたTA_2氏のほうだった。待宵草氏の表情がくもる。そして、物語の展開がすべてそうであるようにターンでハートが現れ、待宵草氏の脱落が決定した。噫乎、これぞポーカー。
やがて、heba氏も66でオールインした。しかし、ターンの時点でナッツを完成させられては、いくらリバーで6が出たところで仕方がない。ただ、相手のおさかな氏は、始めからより高いポケットペアを持つことによって相手を見下ろしていたことを、忘れず記録しておく必要があろう。
ところで、終盤はとくに点心氏の攻めが充実していたように思われる。隣のTA_2氏はかなり優位な状況にも関わらず、殆ど点心氏のレイズに対するプロテクトを考えず。一度点心氏がショートスタックでオールインした時は、大方の予想に反してフォールドという判断をとったTA_2氏。思わず「ここはコールじゃないの?」と言いたくなる気持ちも、氏の持つチップ量と点心氏のそれとの差を比べれば頷ける。

テーブルも残すところあと3人に絞られ、最後まで残った点心氏が微妙な手で池永氏に降されると、愈々TA_2氏とのヘッズアップが始まった。このヘッズアップは、今回のレポートを長引かせるのに一役買っている。いや、とくに両者の試合ぶりが素晴らしかったからではない。ある意味、意外な展開だったからである。
サシの勝負が始まって間もなく、あのアグレッシブな池永氏がリンプインした。

「なんやて、コール…?」

怪訝そうな表情をみせるTA_2氏。最終的には不承不承チェックにとどめた。ローカード付きA-Kフロップと、地味なアクションに比してボードは賑やか。ほぼ判断を迷うことなく池永氏がとった選択はオールイン。ややチップ差において優るTA_2がこのポットを取れば、同氏の優勝がこの瞬間に決まることになる。暫時考量に入った。
池永氏の取ったこのアクションは、一体何を意味するのであろうか。TA_2氏のアクションは量りかねたが、わたしは少なくともコールされたくないハンドで池永氏がオールインという大胆なアクションを取ったのではないか、と感じた。それにはいくつか理由があるが、なんといっても池永氏のプレースタイルが挙げられる。つまり、もしもフロップでトップペアかセカンドペアのKがヒットしていれば、プリフロップでまずレイズをかけてくるはずである。そして、そのようなアクションを取ってきたことを、わたしはこれまで見てきて知っている。従って、ポケットペアの可能性は、AXやKXと同じくらい低いのではないか、というのがその時の予想だった。
翻って考えてみるに、ドローはどうか。たしかに、フロップ上にはスペードが2枚あり、手札によってはドローを狙う余地が残されていることが分かる。しかしながら、もしもドローを狙うためにここでオールインという判断をとったならば、忽ちこれに対して疑問が投げかけられることになる。なぜなら、ここでドローを引きにいくには、相手を無理矢理オールインに引きこませ、かつ自分がそれを取りこぼしても十分に戦えるだけのチップの残っていることが求められるからである。或いは相手のチップが多ければ、ドローを狙う前に、相手がマジ手であり、手札完成時には確実に致命的なコールドコールをしてくるということを読みきっておかねばならない。言うまでもなく、この場合はフリーカードを獲得することが先決だから、こちらからオールインのような激しいベットするのは得策ではなかろう。もしもドローに失敗すれば、優勝への望みは砕け散ることになる。そして、そのことは氏も十分すぎるほど知っているはずだ。よって、ドローという可能性も薄い。となると、必然的に、相手のAK以下のポケットペアかフラッシュドローを落とすためのピュアブラフか ほぼそれに近いような手(たとえば極端に低いポケットペアか、或いはTJやTQによるガッツショット狙いなど)ではないか、という考えに達する。
いずれにせよ、問題はただひとつ。TA_2氏がこのオールインの意味をどのように取るか、ということのみに絞られていた。

CALL

その発声に、身じろぎひとつせず表情を固くしていた池永氏が始めてたじろいだ。そして一声。

「ああ!負けました!」

開いた手札、Q3。ピュアブラフであった。おそらく、プリフロップの時点でTA_2氏がアクションを躊躇ったのをみて、氏の手を低め、或いはミドルのポケットペアと踏んでいたのかもしれない。もしそうならば、たしかにオールインはコールさせてしまわない為にも有効な一手であったろう。けれども、コールされてしまった今、その読みは幸運にも良い方へと外れた。そう、TA_2が手札を開き、スペード2枚のフラッシュドローを狙うことが分かった時から、池永氏にとって物語の第ニ幕が始まったのだ。こちらもフロップのヒットさえなく、しかも氏の手札のうち、ランクの高いJは池永氏のQにほぼドミネートされてしまっている。わたしは、池永氏のオールインにも驚いたが、このTA_2氏のアクションにも少なからず衝撃を受けた。正直に白状すると、TA_2氏がコールし、池永氏がブラフを認めた瞬間、これで勝負は決したと思った。だが、これで試合の行方がますます分からなくなってしまった。
谷底へ落ちかけた池永氏のからだを途中でひっかけ、その身を救った木の幹ひとつ。スペードさえ出なければ、ぽっかりと口を開けてすべてを呑み込まんとする闇から解き放たれる。一方、相手を蹴落とそうとして、今や自分の身を守ることも覚束なくなってしまったTA_2氏は、その時どのような心境だったろうか。わたしには、まるで切り立った崖の中に半身を委ねてもがきながら、それでも悪鬼の形相で池永氏を落とさんとひたすら爪先を繰り出す氏の姿がみえるようだ。ターン、ラグ。これでタイの可能性が消えた。あとはスペードが現れるのを祈るしかない。そして、その祈りが届いた刹那、池永氏の肢体を支えていた幹が音をたてて挫き折れ、あとに残ったのはただ一面の闇、闇、闇。

わたしは、このような状況に出くわすと、非礼を承知でこう思わざるを得ない。「世界クラスのプレイヤーならば、この状況でどのようにアクションしたであろうか。」と。おそらく、違ったアクションを取ったに違いない。ブラフにしても、それに対するアクションにしても。結果的にはドローを成功させ、それなりの劇的な瞬間ではあったため、こうしてレポートにしているわけだが、正直なところ、もし引けなかったらと思うとキーボードを打つ指が重たくならずにはいられない。ポーカープレイヤーなら誰しも、ブラフを見破った側がドローで、結局最後まで何も落ちずにAハイのキッカー勝ちで優勝を決めた、などという試合を喜んで記事にしたくはないものだ。


1st TA_2

2nd 池永

3rd 点心乱丸

4th おさかな

5th heba

6th 待宵草

7th なごやん

8th すみ

9th いわた




続くセブンスタッドのトーナメント、序盤から中盤にかけて点心氏が飛ばす。初っ端、フラッシュ狙いでローの2ペアを完成させてしまった待宵草氏と、同じく氏に及ばぬ2ペアでコールしたすみ氏などを巻きこみ、幸先のよいスタートを切る。待宵草氏がその後も手札がのびず脱落すると、フラッシュ目のTA_2氏が勝負時とオールインするも、点心氏のフルハウスに降され、終了。点心氏にとっては、文句なしの展開といえる。
その後、一時はオールインにまで追いこまれたheba氏が盛り返すと、ホールカードAAでいわた、なごやんの2人を沈めるなどしたおさかな氏も、上位争いに加わる地盤を築いていった。
試合は流れて残り3人となるも、ショートスタックのおさかな氏が土壇場で粘りに粘ったことから、チップリーダーのheba氏がなかなかヘッズアップに持ちこめずにいた。とくに、覚束ない28のツーペアでオールインから逃げ切った試合や、heba氏のフラッシュに対し、ラストカードでフルハウスに持ちこんだあたりは終盤の見所のひとつ。しかし、このようなオールインせざるを得ない局面ばかりが殊更に語られ、説得力のある攻めが埋もれてしまうようではいけない。ミドルのペアに対するQペアなど、勝てる可能性の高い時は必ず大きく動き、この位置にまでつけることができたのだ、ということは記しておく必要があろう。しかし、ヘッズアップはさすがに両者のチップ差が大きかったか、heba氏が順当に勝利を決めた。


1st heba

2nd おさかな

3rd 点心乱丸

4th すみ

5th なごやん

6th いわた

7th 池永

8th TA_2

9th 待宵草




テキサス、スタッドともに満足のいく結果を残せず、わたしの3連覇達成は儚くも夢に終わった。いや、少なくとも、オマハの試合開始前にはそう思っていた。だが、その望みが消されていないことを、やがて悟ることになるのである。


seat1 heba
seat2 なごやん
seat3 TA_2
seat4 点心乱丸
seat5 いわた
seat6 おさかな
seat7 池永
seat8 すみ
seat9 denko_sekka [三重]


緒戦はいわた氏にしてやられた。アーリーからすみ氏がミドルのストレート目(ハイ)でレイズ、すかさずA2TQのAスーツでリレイズのなごやん。すると、いわた氏がさらにリレイズをかけてくる。フロップJ-K-8でなごやんベット、双方コールしターンは8。チェックで回してラストはA。グッズニュース&バッドニュースの典型だ。いわた氏が間髪入れずにベットをかけてくるので、ポットの大きさから仕方なくコール。美しい手が出てきたではないか。AA。
この試合で手痛い打撃を被ったなごやん。一方、同じように被害を受けたすみ氏はチップに余裕があって涼やかな表情。だが、その後はハイでかけたレイズが2度とも、そしてA-2のロー狙いはリンプインしてこちらも決まり、順調に中盤を迎える。
その後も引き続き、攻守ともに充実。アーリーからリンプインしたKKがボードのJJJとかみ合い、ベット。コールという声が聞こえた瞬間にJとAAがないのを悟る。また、おさかな氏とぶつかった際、リバーのKでなごやんがベットし、窮地に立たされたおさかな氏がコール。ローナッツを示したなごやんが「ハイはKで十分でしょ。」と自信たっぷりに言えば、2ペアを持っていた(という)氏が手札をマック。そのあとで状況を把握し、すぐさま場に捨てたカードを拾おうとしたが、時すでに遅し。氏ほどのプレイヤーがこのようなミスをするのは意外であった。そして、このミスが氏にとって致命傷となる。
わたしが快調に飛ばせば飛ばすほど、会場内がぴりぴりしてくる。そりゃそうだ。総合優勝のチャンスを狙っているのはわたしだけではないのだから。こちらも総合優勝の可能性のあるチップリーダーのすみ氏がミドルから1人だけリンプしてくれば、AA2Jダブルスーツで再び攻めのレイズ。すると、ショートスタックのTA_2氏が勝負時とみてbbからリレイズ。すみ氏がコールしてきたので、ここはリードを広げるすみ氏からチップを削り取るためにも、さらにもうひと押ししてみることにした。TA_2氏がオールインで迎えた注目のフロップ、クラブの付いたオールロー。ターンでハイもナッツフラッシュが完成し、もう言うことなし。さすがに無理と判断したか、すみ氏がフォールド。同じくロー狙いでフラッシュドローだったTA_2氏は完全にドミネートされており、ここで脱落。わたしにとっては、ひとつの山場だった。
やがて、チップリーダーだったすみ氏まで脱落すると、いつの間にか2000近くのチップがわたしの手許に集まっていることに気付く。はじめは、ディーラーのdenko氏に対して「あと20分待って。」と場内の緊張をほぐしていた点心氏も、なんとか戦えるだけのチップを持って食いこんできていた。
さて、わたしがこの時点で優先させるべきは、チップに頼り、自らマージナルハンドで点心氏を沈めにいくことか、それともヘッズアップまではひたすら動かず、いわた氏が点心氏を仕留めるのを待つことか。答えは明白である。後者以外に選択の余地はない。そして、点心氏になんとか勝負をさせるべく、ひとつ挑発してみることにした。
まずはディーラーに

「しっかりシャッフルしてもらって悪いんですが…」

と言いながら、ボタンでわざとカードを見ずにマックしたのである。
もし、わたしの前でこんなことをするプレイヤーがいたら、なんとしてでも残ってぎゃふんと言わせてやりたいと思うであろう。だが、許せ点心よ。この試合はなんとしてでも勝たせてもらいたいのだ。
この暴挙、もとい作戦が功を奏したかどうか分からないけれども、点心氏がオールイン。そして、いわた氏がこのポットを取った瞬間、目の前で総合優勝、すなわち3連覇を達成した自分の姿が光彩を放ちながら明滅するのを見た。

いわた氏とのヘッズアップ。
前々回は因縁の対決で点心氏に、前回はheba氏との死闘の末に、捷った。そして今回、オマハハイローではわたしよりもレーティング上位につけ、かつこのゲームに自負を抱くいわた氏との対決。こうしてオマハハイローで氏と向き合うのはこれが初めてだが、たやすく勝たせてくれる相手でないことだけは分かる。状況だけをみれば、たしかにチップ差2:1のドッグと分も悪い。だが、わたしには、周りから「口でポーカーをしている。」と言われてしまうくらい、相手を挑発してチルトに持っていこうとするほどの余裕があった。かつては、EXITのライブゲームにおいて、ポットリミットオマハハイローをゲームした際、同氏のチップをおよそ10分あまりですべて吸い上げた経験もあるし、試合前に対戦したオマハハイローの前哨戦で勝利を決めてもいる。やれるもんならやってみろ!のノリである。

ブラインドは100-200。
初手、A22Kのレイズから入る。フロップで3を含んだ理想的なローが完成し、ここはベット。いわた氏コール。ターンはK。こででわたしはナッツローとともに、手持ちのKでトップペアも出来た。ハイ、ローともに主導権はこちらにある。が、ここでもコールされてリバー、K。すべてが文句なしの展開だ。いわた氏がここでもチェックした時点で、わたしは勝利を確信した。このポットをとれば、映画「ラウンダーズ」のセリフにあるように「寄りかかるだけで相手は倒れ」る。そしてショウダウン。わたしは即座に手を広げ、ハイ、ローともに示したが、いわた氏がなかなかカードを示そうとしない。この人、ゲームとは関係ないが、いつも手札を示すのが遅くて参ってしまう。コールされた側にいても決して自分からカードを開こうとしないのである。だから、「分かんなかったらとりあえず開いて。」といらいらしながらカードのオープンを促した。だが、突然くぐもった笑い声をたてながら開かれたカードをみて、思わず口元がひきつってしまった。出てきたのは33。そして本人は、今3フルが出来ているのに気付いたような雰囲気だった。なかなか気の利いた心理戦じゃないか。 なんとか平静を取り戻そうと努めるも、カードをシャッフルしている間中、心の乱れに気付かれぬようにするだけで精一杯だった。 続くゲームはリンプインするも、フロップでベットされフォールド。ローの望みはあったが、たとえローだけ取れたとしても、リスクの割には寒いだけである。
さて、静かな探り合いが続く中、一度はナッツでいわた氏をショウダウンまで引きこむことに成功し、チップ差をほぼイーブンにまで持ちこむも、ほどなく回ってきたのがローの狙えぬKK。リンプしてきたいわた氏に対して、息つく暇なくレイズ。すると、ここを正念場と思ったか、初めて氏がリレイズしてくる。実は、このレイズによって、わたしはすんでのことで命拾いをすることになるのだ。フロップは2枚のミドルとロー1枚。チェック、ここはベット意外に考えられぬ。かなり悩んでいる様子だが、この仕草もやがて迫りくる危機を回避する手がかりとなった。結局コール。ターンに2が出た。氏はベット。もしも、氏が初手でレイズしてくれなかったなら、ここは勝負にいっていたであろう。フォールドして手札をみせる。氏も手札を開いてくれた。現れた手札、果してA2。かなりの痛手は被ったが、この勝負にショウダウンまで付き合っていたら、もはや次のゲームを瀕死で迎えねばならなかった。
その後もフロップでのナッツフラッシュを隠し持たれてショウダウンし、ブラインドを持っていかれるなどしてじりじりと詰め寄られると、そろそろ後がなくなってきた。一度はフロップでのブラフも成功したが、テキサスと違ってブラフをかけるタイミングを図るのはかなり難しい。初めて焦りを感じ出した。
そして、ブラインドの上昇を告げるブザーが鳴り響いた。

待ってましたといわんばかりに氏がレイズしてきたので、仕方なくbbのわたしは手札をめくってみる。47付きの5ペア。中途半端なカードだ。だが、ここまできたらあとはフロップ次第である。そして注目のフロップに、5が現れた。口を引き結んだまま、鋭くいわた氏を直視するなごやん。だが、わたしはここで許されないミスを犯してしまう。勝利を信じたわたしは、やってはいけないスロープレーをしてしまったのだ。ターン、J。まったく関係ない札が配られる。しかし、予想外にもいわた氏がベット。すかさずレイズ、と発声したが、レイズするほどのチップがなく、コールオールイン。またもいわた氏が手札を開かない。たまらずこちらから55を示すと、目の前に飛びこんできたカード、A7。そして、JJ。リバーは7が落ち、勝負はJのセットで決まった。

さんざんコトバで挑発したりして威勢が良かったくせに、最後はこの体たらく。格好悪いったらありゃしない。これを、無様という。それにしても、いくら妙なレイズをされても、コール&コレクトされても、さんざん手を隠されても、この人、最後にはなんか憎めないんである。表情を見ていると、本当に楽しそうにポーカーをしているのが分かる。負けると本当に残念そうな顔をするし、勝つと本当に嬉しそうだ。そう感じさせるのは、きっとわたし以上に、このような「ゲーム」に慣れ親しんでいるせいかもしれない。
そうはいっても、悔しいもんは悔しい。だから、とくにいわた氏に対して、ここでひとつ高らかに宣言しておかねばならないことがある。
「次はない。」

懲りない性分である。


1st いわた

2nd なごやん

3rd 点心乱丸

4th すみ

5th 池永

6th TA_2

7th heba

8th denko_sekka

9th おさかな




なお、総合優勝は最後の最後までもつれ、heba氏が実に僅差で他のプレイヤーたちを斥けた。準優勝はいわた氏、3位はTA_2氏だった。


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◆関連サイト◆
次回Poker in NGAOYAの予定はこちら(heba氏)
全国統一レーティングはこちら(Doyle氏提供)
名古屋オフ限定ポイントランキングはこちら(LAC-HERO氏提供)
連珠でもその名を馳せるいわた氏のサイトはこちら



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