モンスターコレクション・ノベル 7    外伝・2 少女が見た流星(ショウジョガミタリュウセイ)                 1  「11月18日午前3時、わたしは上着をはおってベランダへ出ました。星空のきれいな夜でした。わたしでも知っているオリオン座があざやかに見え、すこし感動しました。でもわたしの本当の目的は、獅子座流星群です。わたしはそれが見たくて、3時に目覚ましをかけ、ベランダにでたのです。  目覚ましがなり、顔を洗って外へでると、お母さんがいました。星空をいっしょに眺め、星座の話を一つ二つかわしました。けれど、その間に流星は見えませんでした。  外はかなりの寒さで、ほんの数分が長く感じられます。わたしはもっと簡単に、また大げさに流星が見られると思っていたので、その短い時間すらよけい長く感じられました。  お母さんもそうだったようです。「ぜんぜん見えないね」とあきれたように言い、部屋に戻ろうとしていました。と、そのとき、わたしとお母さんの目の前に光が走ったのです。  ほんの一瞬の出来事でした。夜空に銀色よりまぶしい光が流れたのです。  「見えたね」とわたしが言うと、「願いごとをいうヒマもないじゃない」とお母さんは答えました。  わたしたちはまた、夜空をワクワクしながら見上げました。次の輝きはいつだろう、もっとたくさんこないかな、と思いながら。  でも、それからしばらくはまったく静かな空でした。お母さんもさすがに待ちくたびれて、部屋へ戻っていきました。それでもわたしは窓枠に腰かけて星を待ちました。  どれくらいたったのか、時計のないわたしにはわかりません。けれど、その間に流星は4つ瞬きました。1つめほどまぶしくも、長くもないものでしたが、わたしには貴重なきらめきでした。  ふと、窓がまた開きました。お母さんがコーヒーを持ってきてくれたのです。インスタントで、すこし水っぽいコーヒーでしたが、とてもおいしかったです。 「いないあいだに4つ見えたよ」  わたしの言葉に、お母さんは残念そうな顔をしました。でも、その後すぐに6つめが流れました。お母さんはそれを見ると、わたしに肩かけをあずけ、今度こそ布団にかえっていきました。  それからわたしは4時半までずっと、星空を彩るキセキを待っていました。  16個の星が、夜空に舞いおりました。もっとたくさんの仲間がいたのかも知れませんが、わたしにはそれしか見えませんでした。こんなとき、もっと目がよかったらいいのにと、つくづく思います。でも、流れ星は見えました。それで充分です。  16コの星が、かがやき、きらめく。  16コの光が、またたき、ひらめく。  とても幻想的な、秋と冬の間の一夜でした」                 2  竜堂舞美は草野駿の本陣に、<明星に奏でる天使>と<クラウド・ジャイアント>を進軍させた。ジャイアントには<シューティングスター>が装備されており、即時召還は<鏡蟲>と<ラブスター>だ。  駿は頭をかきむしり、本陣を手薄にしていた自分を呪った。 「ダメだ、それは勝てないや」  少年はあきらめて手札を捨て、降参をしめした。 「<星を掴める距離>か……。やられたね」 「きのう作ったのよ、このデック」  舞美はカードを片付けながら、うれしそうにほほえんだ。  彼女の手の中にあるカードは、聖系のユニットばかりであった。駿が疑問に思いそれを口にすると、少女は答えた。 「コンセプトにそって作ってたら、聖系が多くなったの。だから、このさいだと思って統一しただけなのよ」 「コンセプト?」 「うん。このデックはね――」  少女が見た流星は、少女の胸の中にあり、そして手の中にあった。少女の流星は、いつまでも輝き、きらめいているのである。                  1998年11月18日 <了>