モンスターコレクション・ノベル 6    第五章 真田洋平(サナダヨウヘイ)                 1  その一部屋の人口は、めずらしく少なかった。祭日にもかかわらず机の上は閑散とし、イスはのせるべき主人を見いだせずにいる。いつもの場所、いつもの時間にもかかわらず、日常になりかけていた空間は、突然別の景色を映しだしていた。真夜はふと視線をめぐらせ、両手の指で事足りるほどの人びとを眺めた。知っている顔も当然ながら少ない。  彼女の仲間と呼べるのは、目の前の少年ととなりに座る少女だけであり、その他には別のゲームを興じているグループだけだ。真夜は首をかしげ、なにがあったのだろうかと思った。  少年が、そんな彼女に呼びかけた。声は驚くほどよくとおり、かえって少年が面くらったほどだ。  真夜は少年・草野駿にむきなおり、「今日はどうしたのかしら?」と疑問を投げかけながら、カードを引き抜いて本陣においた。ゲームがはじまって、まだ5ターン目である。  彼女の問いに答えたのは、二人の勝負を観戦している少女だった。 「お兄ちゃんが言ってたんですけど、今日、有明でイベントをやっているそうです。きのう冴木さんから電話があって、二人はそっちに行ってますよ」  竜堂舞美がカバンからだしたイベントの広告を流し見して、真夜はうなずいた。それは、彼女にはまったく興味のない催し物だった。 「そのおかげでこんなにすいてるのね。でも、対戦者が少ないのも困りものだわ」 「あ、でも今日はヨーヘイさんが来るらしいよ。このまえ上村さんが言ってた」 「真田さんか……。ひと月ほどあってなかったわね。また、なにか交換してくれないかなぁ」  真夜は以前<七つの海の王子>を、星カードで交換してもらったことを思い出した。 「ヨーヘイさんも彰兄ちゃんなみにカードを持ってるからね。……あれ、そういえば――」  駿が首をかしげると、真夜もそれに気づいてのどの奥で笑った。 「あのサギ師は、また真田さんにあえずじまいね。どっちにとって幸運なのかわからないけど」  真夜の言葉どおり、冴木彰と真田洋平はいまだ面識をもたずにいる。彰としては彼がいると駿や真夜をとられるようで不機嫌になるだろうし、洋平はそんな彰に気づかぬまま、いつもどおり優しくほほえんでいることだろう。それがはっきりと想像できるので、真夜はつい笑ってしまうのだ。  真夜と駿の勝負が引き分けで終わると、二人の女性はすこし遅めの昼食をとりに、ファーストフード店に向かった。駿は食事代までカードにつぎこんでしまったため、おとなしく机をキープする役目についていた。真夜はかわいい弟分に「おごろうか?」と誘ってみたのだが、妙なところできまじめな少年は、丁重にお断りしたのだった。ただ、これは女性からの申し出であったからで、もし彰であったら遠慮はしなかっただろう。 「ところで――」  はたからは姉妹にしか見えない真夜と舞美は、期間限定メニューのセットを口にはこびながら、いくつかの話題を交換していた。不意に真夜が口にした質問は、彼女のいたずら心が良心をにぎりつぶした、悪気のない結果である。 「最近、駿くんとどう?」 「……!」  瞬間、舞美は照り焼きチキンエッグバーガーをのどにつまらせ、むせた。  真夜は笑いながらあやまり、彼女に飲み物をすすめる。涙目になりながらコーラを飲む少女が、たまらなくかわいらしく思えた。女の子をからかいたがる男の子の気持ちが、真夜には理解できるような気がした。 「ま…真夜さん、わた…わたしは――!」 「あー、冗談。冗談だから気にしないで。一度こういうのやってみたかっただけだから」  弁明にも弁解にもならないセリフをもって、真夜は自分からふった話題を強制的に終了させた。  舞美は動転しかけた心を無理やりおさえこまれ、恥ずかしさに頬をふくらませる。口に出して反論しなかったのは、墓穴を掘りそうでこわかったからだ。  二歳年上の姉は、そんな舞美を抱きしめてやりたかった。つい笑みがこぼれてしまうほどに。 「……なにがおかしいんですか?」  ストローをくわえる向こうで、顔を真っ赤にしながら舞美がにらんでいる。  真夜はとっさに口もとを隠した。 「ごめん、ごめん。もう、そんなに怒らないでよ。……アイスクリーム、食べる?」 「いりません!」  そんな心温まる会話を二人は交わし、最後は仲良く駿の待つ戦場に帰っていった。  そう、戦場だった。                 2  駿のいるテーブルには、二人の男が待っていた。真夜も舞美も面識はなく、新たな仲間がやってきたと、彼女たちは思った。が、彼らの正面にすわる駿の表情はけわしく、不快を表わす色が舞美にもみてとれた。  片方の男が二人の女性に視線を移し、言った。 「こ…このふた…二人も、おまえのなな…仲間か?」  少年より15歳は年長と見られる風貌、パーマをかけた髪、人を値踏みするような目つきを隠す黒ぶちメガネ、しまりのない口もと。真夜も舞美も、好感をいだくことはできなかった。  駿のうなずきを返事とすると、その男・大杉巨史(オオスギマサフミ)は彼女たちにも聞こえるくらい大きく舌打ちした。 「あ、あの男はどど…どうした? に、にに…逃げたのか?」 「逃げるもなにも、あんたと約束してたわけでもないじゃん」  駿のツッコミに、大杉のとなりにいた男がふきだした。大杉の友人のようだが、彼とはどうやら対象的のようだ。彼は見た目にもさっぱりとして、整った顔立ちをしている20歳くらいの青年だった。濃紺のジャケットが、センスのよさを感じさせる。なにより笑顔に険がなかった。 「わ、笑うな鳥井。きょ…今日はオオオレ…オレのサポートで、きき…きてるんだぞ」 「それだけどさ大杉、やっぱやめようぜ。なんでオレがおまえの手伝いをしなきゃいけないんだよ。オレは女の子を敵にまわすのいやだぜ」 「う…うるさい。もも…文句があるなら、しゃしゃ…借金をかえしてから言え」  駿をはじめ、真夜と舞美も納得した。かわいそうに、と内心で同情したのも、三人ともほぼ同時だった。  真夜は駿のとなりに腰をおろし、ひそやかに状況説明を求めた。答えて少年は、どうどうと大杉巨史とのいきさつを話す。そして彼が、冴木彰との再戦を望んでいるとも。 「なんだ、わたしたちには関係ないじゃない。あのサギ師なら、今日は来ないわよ。また出直してくれないかしら」 「――と言ったんだけどね、聞く耳もたず。それなら誰か秋葉原の代表となるやつとやらせろって。しかもタッグマッチだってさ」  「タッグマッチ!?」真夜の声がおもわず裏がえった。  わざわざルールをつくってきたらしいよ、と駿はため息をついた。一対一では勝てないと思ったのか、それとも思慮遠望な作戦でも練ってきたのだろうか。どちらにしても、少年はあきれるしかなかった。 「勝負するの?」  舞美が駿の服をひっぱった。彼は心配げなクラスメイトに「まさか」とおどけるようなしぐさをとり、安心を与えた。 「こ、ここ…こっちからお断りだ。いい…一度勝ったやつとは、戦うだけムム…ムダだ。だ、だからといって、おお…女なんか、ああ…相手にもならない。チクショウ、きょ…今日はかか…帰るか」 「待ちなさいよ!」  大杉がデックケースをカバンにしまおうとするのを、真夜の怒声がとめた。駿と舞美は顔を見合わせ、困った表情をたがいに認める。彼女に“女なんか”は禁句であるのを、大杉は知らないのだ。 「わたしが勝負するわ。もちろん本陣賭けでね」  圧倒的な迫力と「本陣賭け」の単語が、大杉をしりごませる。だが、大杉には勝つ自信があふれていた。かつて、真夜と勝負して敗れた多くの男たちと同じように。いや、それ以上に。 「い、いいだろう。だ、だが、パパ…パートナーはどうする? そ、そそ…そいつがやる…やるのか?」 「オレしかいないもんな。真夜姉ェ、やろう」  真夜が駿にうなずきかけたとき、エレベータの開く音が聞こえた。 「やぁ、駿くん。久しぶりだね」  緊張感のかけらもない、穏和な声が少年をつつんだ。 「真田さん!」  駿と真夜は最高の援軍の到来に、心から喜んだ。                 3 ☆モンスターコレクション・タッグマッチルール  用意するものは、プレイヤー四人と各自デック1つ、それにダイスです。  戦場の広さは、縦4ブロック、横5ブロックです。表記は縦を1〜4、横は先手側から見て、一番左はじからLL、L、C、R、RRとします。  本陣は、先手側のプレイヤー1がR1、プレイヤー2がL1。後手側のプレイヤー1がL4、プレイヤー2がR4となります。  また、「自軍領土」は先手側がLL1〜RR2、後手側はLL3〜RR4です。  「支配地形」は自分のユニットがいる場所になります。パートナーのユニットのいるところは対象となりません。  「自軍パーティ」は、一つの地形上にいる、自分とパートナーのユニットをさします。 ○ゲームの準備 1、パートナーが決まっていないフリープレイでは、各自がダイスをふってパートナーを決定します。奇数・偶数で決めるのが一番無難でしょう。 2、席決めをします。パートナー同士でダイスをふりあい、目の高いほうが自分たちから見て右側に座ります。 3、本陣をセットして、手札を6枚とります。 4、先手・後手の決定は、四人がダイスをふり、パートナーの目と合計してください。総合で高いほうが先手となります。 ○勝敗  勝利条件は、相手の本陣を二つともおとすことです(オープン・ルール)。  このとき、陥落した本陣は、10レベルの<泉>として扱われ、はりかえはできないものとします。儀式スペル<バイオ・ハザード>や<テラー・ドラゴン>などの能力も受けません。  本陣をおとされたプレイヤーは、地形・<魔法陣「??」>もしくは<ゲート>などの儀式スペルを使わないかぎり、普通召還はできなくなります。ただしそれまで呼び出したユニットは排除されませんし、即時召還は可能です。  また、時間短縮ルールとして、相手本陣一つをおとすとゲーム終了とするものもあります。これを「ハーフルール」といい、対戦前に「オープン」か「ハーフ」のどちらを用いるか相談してください。  判定は、全員の山札がつきたときに発生します。最後に山札がつきたプレイヤーの、対戦相手側のターンでゲームは終了です。 ○ゲームの手順  ゲームはパートナーと同時に進行します。先手側の行動ターンでしたら、先手側・二人が同時に「第1手札調整フェイズ」「メインフェイズ」「普通召還フェイズ」「第2手札調整フェイズ」「終了宣言フェイズ」を行ないます。二人が「終了」を宣言したら、後手側・二人のターンになります。 ○プレイヤーの権限  各プレイヤーは、自分の用意したデックのユニットのみ、行動させることができます。例えば自分の手札に消耗品アイテムがあり、パートナーにアイテムを使えるユニットがいても、そのユニットを用いてアイテムを使わせることはできません。装備品アイテムや魔法も同様です。  儀式スペルの使用も、自分のユニットが<ストーンサークル>を支配しているか、<虹を紡ぐ天使>などをよびだしている必要があります。また、<アーマゲドン>などの「召還」系儀式スペルの効果や発動条件も、自分のユニットにのみ影響を及ぼします。  戦闘スペルによっては複数のユニットでかけもちできるものがありますが、これについては使用したプレイヤーのユニットが絡んでいれば、パートナーといっしょに使ってもよいものとします。 ○即時召還と能力  もしパートナーが戦闘をすることになったときは、基本ルールを無視していなければ自分のユニットを即時召還できます。このユニットは自分の手札にあるアイテム、魔法を使用でき、また特殊能力をパートナーのユニットと協力して発揮できます。例えばパートナーの<アースドラゴン>に、こちらから<ホブゴブリン用心棒>を即時召還した場合は、<アースドラゴン>の死亡に対して身代わりになることができます。 ○特殊カードについて  以下のカードについてのタッグ用の解釈を説明します。 ・陥落した本陣にも効果を発揮するカード  <テレポート> <デス・スペル> <シングル・イズ・ベスト> <ファイア・ストーム> <メテオ・ストライク> <アース・クェイク> <エンシェント・レイン> <コール・ライトニング> <シークレット・ヘブン><オーバー・ザ・レインボー> <メイズ> <エスケイプ> <ゲート> <エレメンタル・エンブレム> <オーシャン・ロード> <デーモン・タックス> <テンペスト・クィーン> <星を掴める距離> ・陥落した本陣にも効果を発揮しないカード  <テラー・ドラゴン> <十尺棒> <黄金のシャベル> <リベンジ> <バイオ・ハザード> <チェンジ・フィールド> <イエスタディ・ワンス・モア> <ミラージュ> ・<パーフェクト・ワールド>……自分の本陣外側(LL/L/R/RR列)に対してはそのプレイヤーが代理地形を配し、C列はパートナーと相談して代理地形をおいてよいものとします。 ・<アクアマリン・バックラー><虹を紡ぐ天使>など……陥落した本陣でもその能力を使用できます。 ・<カントリー・ロード>……陥落した本陣のプレイヤーは、その本陣があった場所にユニットを戻します。リミットは10です。 ・<モラル>……この儀式スペルは、使用したプレイヤーのユニットがいなければ発動しません。例えば自分の<クラウド・ドラゴン>しかいないところに、パートナーが<モラル>を使っても再進軍はできません。ですが、自分の<クラウド・ドラゴン>とパートナーの<サキュバス>がいた場合は、<モラル>の効果をうけて、ドラゴンもいっしょに再進軍できます。このとき、<クラウド・ドラゴン>の「○雲の道」の能力も使えます。 ・<ケルベロス>……このユニットは、自分のユニットだけでなく、パートナーのユニットしかいない支配地形にも進軍できます(「支配地形」ルールの例外になります)。                 4  「よくまとまってるね」  ルールを読んだ真田の感想は、悪意も敵意もない素直なものだった。だからといって大杉が喜んだという事実はない。むしろ敵からほめられて、侮辱に感じるのが彼だった。 「フン、わ、わかったら、はははや…はやく用意しろ。い、言っておくが、そそ…相談してデックをあわ…合わせるのはなななし…なしだからな」 「つまり、君たちのほうはやっているんだね」  真田が誰にもマネできないような素敵なほほえみを浮かべると、大杉は次の言葉につまった。そのとなりで鳥井は、口をおさえて必死に笑いをこらえている。 「あいかわらずセコイ人だな」  駿はため息をつき、真夜は軽蔑のまなざしを大杉にむけ、舞美は心配そうに真夜と真田を見ていた。 「まぁ、それはいいとして、10分ほど時間をくれないか? まだデックが完成していないんだ」  大杉がぎこちなくも了承すると、真田は礼をいい、奥のテーブルに移ってカードの束を広げはじめた。 「大丈夫かな? 二人のデックの相性が悪いと、タッグの意味がなくなりそうだけど」 「平気よ、真田さんとなら。おたがいが強いデックで望めば、きっと勝てるわ」  真夜は気楽である。自分のデックに自信もあるし、まして真田の援護――逆に自分のほうが援護しかできないかも知れないが――がある。どこに負ける要素があるというのか。  「そうだね」と答える少年は、内心、彼女ほど楽観的ではなかった。もしシングル戦であれば、真夜も真田も簡単に負けるわけがない。だが、今回はタッグマッチなのだ。それも敵は共闘してデックをつくってきている。それが不安でたまらなかった。 「準備できたよ。はじめようか」  真田が完成したデックを手に、真夜のとなりに座った。真夜は一瞬だけ、彼の横顔に見とれた。  大杉にうながされ、席と先手・後手が決められた。先手は大杉・鳥井組である。それぞれの本陣は、L1が大杉、R1が鳥井。L4が真夜で、R4が真田となった。ルールは「オープン」、つまり二つの敵本陣をおとしたほうの勝利である。 「よし、こ…これはさい先がいい。いい…いっきにちちちけ…地形を広げるとしよう」  大杉はL2に地形<戦慄せまる日々>、LL2に地形<大きな大きな部屋>、C1に地形<ストーンサークル>をおいた。 (やっぱり儀式か……)  真夜と駿は表にあらわさず舌打ちした。とくに駿には、過去の敗北を思い出させるいやな地形配置だった。  いっぽう鳥井はというと、本陣に<ベルダンディー>と<バードマン攻撃隊長>を召還し、すでにターンを終えていた。 「バードマンか……。きっと弓矢だな」  真田が吐息を一つもらした。彼らは大型と小型を極端にわけ、こちらの戦力によって使い分けるつもりなのだろう。それでもかなわないときは儀式を用いる。やっかいなとりあわせだった。  真田の表情をみつめ、真夜は不安に襲われた。彼女は行動をしばる地形と、儀式と、弓矢がきらいなのだ。それがそろったデックに対抗するに、真田からは希望が見えなかった。自分独りではとうてい勝てるわけがない。しかも真田は浮かない顔をしている。とてつもない、不安であった。  大杉は最後に<フェンリル>を召還して、「終了宣言」をした。 「どうします?」  声をおとす真夜に、真田は自分の手札を見せた。どうやら彼女はかなり緊張しているらしい。さっきの独り言が悪かったのかも知れない。そう思い、彼は微笑しながら「大丈夫だよ」とこたえたのだった。  真夜の表情は、一変した。 「はじめはいつもどおりでいいから。でも、これはいりそうもないね」 「はい!」  真夜は第1手札調整フェイズで、<ブライアー・ピット>を捨てて1枚補充した。  二人がしたのは、けっきょく召還のみだ。真夜は本陣L4に<ドワーフ神官戦士団>を2体と<カラドリウス>を呼び、真田は本陣R4に<宙に祈るもの>と<ラミア>、それに<オーク歩兵隊>を普通召還した。 「<宙もの>だってよ。どうする、大杉?」 「し、知るか。じ、じじ…自分で考えろ!」  涙を誘う友情あついお言葉をいただき、鳥井は「やっぱ、受けるじゃなかったな。女の子と組むほうがゼッテェ楽しいよ」とこぼしたが、運よく大杉には聞こえていなかった。  それを耳にできたのは二つのチームの間に座っていた駿だけで、少年は彼への好感度をひそかに高めていた。  ともかくやるからには全力で、が鳥井のモットーである。彼はRR1に地形<ストーンサークル>を置き、ベルダンディーをそちらに動かした。  大杉は当然のしぐさでフェンリルをL2<戦慄せまる日々>に進ませる。  召還は大杉が<大砂蟲>、鳥井が<バードマン降下部隊><バードマン偵察隊>で、偵察隊には装備品<ブラック・ライトニング>がつけられた。  ターンがまわってくると、真田は真夜に説明した。  <戦慄>にいるフェンリルはとりあえず無視しよう。でも、<雲ひとつない空>があるかも知れないから、本陣は薄くしないほうがいい。ただ彼――鳥井――の手札の回転が鈍いところをみると、儀式と弓がたまっていると思っていいだろう。だからまずは、進軍できる環境をつくろう。  真夜は素直にうなずき、真田がC4に配置した地形<雷が鳴る前に>へ、神官戦士団を一つ進ませた。パートナーである彼はラミアと歩兵隊を移動させ、儀式対策をかためる。  ロコツにいやな顔をしたのは大杉で、鳥井は真田の洞察に苦笑していた。  真田の召還は<デザート・ビースト>、真夜は<ナーガ>である。 「デ、デザート・ビースト? い、今どきそんなのをつか…使ってるやつがいいた…いたとは!」  大杉は余裕をとりもどしたいのか、わざとらしい驚きかたをした。そのとなりでは、もくもくと鳥井が手札をきっている。まこと対照的な二人である。  鳥井が手札調整で捨てたのは、<パーフェクト・ワールド><カオス・ディメンション><インフェルノ><ロマンシング・ストーン>の4枚で、かわりに手にしたのは―― 「<雷>を<吹き抜ける>ぜ」  鳥井から放たれた一枚のカードが、戦況を逆転させる。真夜は慄然し、真田は顔を曇らせ、大杉は喝采する。 「こ、これでぎぎ…儀式を使えるぜ。そ、<宙もの>ぐらいは、ハハ…ハンデで残してやや…やるよ」  大杉は気前がいい。ついでに地形配置も気前がよかった。  L3に地形<鋼の門>を、C2に地形<戦慄せまる日々>を、C3に地形<大きな大きな部屋>を置いた。それからL2のフェンリルをC1の<ストーンサークル>に移し、一枚の儀式スペルを場に提示してから、<宙もの>の代償として<ミラー・イメージ>を捨てた。使った儀式は<ゲート>で、L3の<鋼の門>に<ヨルムンガルド>を召還する。  鳥井は調子のいい彼にかまわず、R2に<代理地形>をおいて、本陣のバードマン攻撃隊長、偵察隊(+雷弓)、降下部隊を進軍させた。 「<ファイア・ストーム>、吹き抜けたトコ」  代償に<シューティング・スター>が使われると、真田と真夜は隊列を決めて相手のダイスを待った。 「3・1? 目がくさってるな。ラミアと神官戦士が死亡だ」 「バ、バカじゃねぇのか? ほ、歩兵隊なんかの…残してどど…どうするんだ」  大杉に賛同するわけではないが、駿もそれが気になっていた。どうせならラミアが残ればコンボがつくれるだろうし、神官戦士なら堅くて魔法も使えるだろう。なのになぜ、よりによってオーク歩兵隊が最後列にいたのだろうか。 「大杉、バかはいくらなんでもいいすぎだ。それにそんな考えでいると、足もとをすくわれるぞ」  鳥井は彼に目さえむけずに言いはなつと、次のカードを出した。<デーモン・トレード>である。その使用のために破棄した手札は<バードマン降下部隊>だった。 「え〜と、真田さんつったっけ? あんたのほうが絶対ヤバそうだからな」 「買いかぶりだよ」  真田が肩をすくめて手札をつきだすと、鳥井は「3枚な」と宣言して、カードを抜いた。  <ナーガ><宙に祈るもの><ロマンシング・ストーン>だった。  当然のように喜ぶ大杉をしりめに、鳥井は召還フェイズに移行した。からっぽの本陣に、三体目となる<バードマン降下部隊>と<バードマン偵察隊>を召還し、それぞれに<シューティング・スター>を装備させた。  大杉は大砂蟲が動けないので、召還なしでターン終了。 「ヨルムンガルドは危ないね。わたしがこれを使おうか?」  真田の申し出に真夜は首をふった。 「これくらい、自分でなんとかします。……進軍! カラドリウス1体で目の前の<鋼の門>へ」 「カ、カラドリウスだとぉ? し、死ににきた…きたのか?」  <鋼の門>はユニット1体制限である。即時召還も隊列も関係なく、ただダイスがふるわれる。  先攻、大杉。  凶暴なまでの攻撃命令を受け、世界を震撼せる大蛇は、荘厳なる金色の鳥に喰らいついた。だが、真夜は勝てるみこみのない勝負は挑まない。 「<ディスペル・マジック>、そして<ポリモルフ>!」  真夜の指令は迅く、気高き黄金鳥にとどき、彼のものは魔法を発した。すると何者にも屈せぬはずの大蛇が、みるみる消えていくではないか。 「こ、こざかしいコンボを……!」  大杉の憤りを平然と無視し、真夜はL2の地形を<代理地形>にかえた。そして本陣にいるナーガを合流させる。  真田はR3にやはり<代理地形>をおき、デザートビーストを進ませたが、宙に祈るものはそのまま本陣にいた。そしてC4<吹き抜ける風>のオーク歩兵隊が真夜の本陣にはいり、ひと息つく。  これ以上の進軍はないので、真夜は本陣に<鉄と鋼の王>、<碧鱗の王>、<コボルド・ライダーズ>を召還し、真田は<ナーガ>を呼びだした。 「次はこっちの番だな。さて、どうする大杉?」 「カ、カラドリとナナ…ナーガのところはいいいけ…いけないな。や、やはりデザビだな」  鳥井もそれに賛成だった。ナーガにはかならずカエルがついているものだ。だが一方で、デザートビースト側のみえみえの即時召還スペースも気にかかる。また先ほどのように、罠をしかけているやもしれない。  悩んだ末、鳥井は儀式スペルを発動させた。<コール・ライトニング>で、安全にナーガとカラドリウスを倒すつもりなのだ。 「よし、ギリギリだ」  転がったダイスを見て、真夜は何度か目のくやしさを味わった。大切なユニットを捨て山に移動させ、“絶対に負けるもんか”と心の中でくりかえす。  そんな彼女に、真田は声をかける。気負ってはだめだ。それじたいが相手に弱みを見せることになる。大丈夫、あせらずにいこう。  彼女をリラックスさせた真田だが、直後に彼のピンチがやってくる。鳥井の部隊がR3のデザートビーストに襲いかかったのである。 「こっちはバードマンの隊長と偵察隊と降下部隊。ブラック・ライトニングは偵察隊が装備している」  「そっちの即召(即時召還)は――?」とたずねかけて、鳥井は絶句した。  真田は2レベルのユニットを出した。攻撃力0、防御力も1しかない、一見なんの役にも立ちそうにないかわいらしいユニットだった。が、対戦者の顔がひきつるほどの力を、このひ弱なユニットは持っているのだ。 「<キキーモラ>……。マジかよ……」 「ダイス勝負だね」  駿が楽しそうに身をのりだした。真夜も舞美も、先ほどまでの暗さをふきはらっていた。  二人は静かな気合いとやけくそな気迫をぶつけあいながらダイスをふった。 「4!」 「こっちは5」  先攻は、真田だった。先攻さえとれれば、バードマンの薄い裝甲などデザートビーストのパワーの前では紙切れである。実力の半分を出しただけで、敵は全滅した。 「チッ、<メテオ・ストライク>を使うぜ」  鳥井の顔がはじめて険しくなった。彼はカードを投げ出し、ダイスをつかむ。 「ま、待て、まま…まだはやい。メメ…メテオは、まだつつつか…使うべきじゃない!」  大杉が鳥井の腕をつかむ。まだゲームは序盤なのだ。それなのに切り札を使ってどうする? これからもっと細かいやつらが出てくるに決まっているんだ。だからそのときまでとっておくべきだ……。彼はいつものようにどもりながら、パートナーを説得した。  だが、鳥井は反論する。 「オレのデック構成は知ってるだろ? キキーモラがいたら、バードマンの能力は封じられ、先攻がとれるとはいえなくなる。もしデザートビーストに先攻をとられたら、絶対に勝てないんだぞ。だから、キキーモラだけは倒さなきゃダメなんだよ」 「それに、ユニットも少ないだろうしね。儀式と弓をつめこめば、当然そのしわよせはユニットにくる。今だって、手札にユニットが2体もいればいいほうだろう。そのうえキキーモラじゃ、彼は活躍する間もなくやられるよ」  敵である真田に指摘され、大杉は呆然とし、鳥井は顔をしかめた。 「まったく、敵に見透かされてるんじゃしょうがねぇよな。……大杉、これはタッグマッチだぜ。おまえ独りで、二人とも相手にするつもりか?」  大杉はさすがに相手の正論を認めずにはいられなくなり、「勝手にしろ」と言い捨てて自分の作業に戻った。  本陣の大砂蟲がL2<代理地形>に移動し、再び<鋼の門>にはりかえられる。そのあいだに、鳥井の隕石が戦場に落下し、R3のデザートビーストとキキーモラは燃えつきたのだった。  敵のいなくなった戦場に、鳥井の本陣から降下部隊(+星弓)がR2へ移動、大杉は儀式スペル<ゲート>を用いてR3<代理地形>に<リヴァイアサン>を、本陣に<ウォーター・ドラゴン>を普通召還した。鳥井は、本陣に<バードマン遊撃隊>を1体だけおいた。  両者ともいらないカードを捨てて手札調整をし、ターン終了。  真夜は手札からカードを一枚ぬきとり、C4の<吹き抜ける風>を<雷が鳴る前に>にはりかえた。そこにコボルドライダーズ、碧鱗の王が移動。  真田は真田で、RR4に同じく地形<雷が鳴る前に>を配置、宙に祈るものにまもらせる。 「<雷>が2つか……。これはもう、儀式はあきらめたほうがいいな」  鳥井のつぶやきには、落胆と安堵の二つが混じっていた。“落胆”は手札にある儀式が役に立たないからで、“安堵”はメテオを使っておいたことが結果的によかったと思ったからだ。  彼のパートナーはといえば、めずらしくグチもこぼさないでいる。まるで<雷が鳴る前に>など、無関心なようだった。  真田はまたもピンときた。 「そうか、彼――大杉――はユニットと地形専門なんだな。儀式のほとんどは鳥井君にまかせているんだ。だから<メテオ>を切り札といい、使わせるのをとめたのか」 「なるほど」  真夜をはじめ、駿も舞美も深く感心し、感動した。相手のいち動作で、そこまでよめるものなのか。  あせったのは大杉である。「お…憶測でなな…なにを言ってるんだ」と動揺をみせまいとするが、視線は逃げてしまい、事実を肯定する結果となっていた。 「どうやらあたりらしい。ではまず、鳥井くんをなんとかしよう。そうすれば、儀式の心配はなくなるからね」  真夜は、真田のとなりにいられる自分を誇りに感じていた。やはり絶対に負けるとは思えなかった。嬉しくてしかたがなかった。  だが、戦力不足は否めない。彼女たちにできたのは、本陣にユニットを召還するだけだ。真田は2体目の<デザート・ビースト>を、真夜は<ドワーフ王国警備隊>と<リザードマン斬込隊>であった。  真夜は<ミラー・イメージ>を捨てて手札調整を行ない、ターン終了。 「大杉、<宙もの>のいる<雷>をおとしてくれ。まだ儀式は使わなきゃならないんだ」  大杉は舌打ちしつつもそれに従った。たしかにやっかいな敵が多すぎる。ならば儀式は発動しなくとも、せめてその代償くらいは払わせたかった。  彼はRR3に地形<ストーンサークル>をおいて、リヴァイアサンを移す。それからC1の<ストーンサークル>にずっと居座っていたフェンリルをC2<戦慄せまる日々>に、本陣のWドラゴンをL2<戦慄せまる日々>に進軍させた。  鳥井は本陣のバードマン偵察隊(+星弓)と遊撃隊を、R2<代理地形>にいる降下隊(+星弓)に合流させ、そのまま召還フェイズにはいった。呼びだしたのは<バードマン攻撃隊長>と<バードマン遊撃隊>である。  大杉が本陣に<イビルアイズ>をおき、カードの補充をすますと、ターンは終わった。  真田はすこし考えこみ、ひとり納得のうなずきをした。手は本陣のナーガにのび、それをとなりのRR4<雷が鳴る前に>の宙に祈るものに重ねた。そして本陣にいたもう1体・デザートビーストを、今度は前(R3)の<代理地形>へいかせる。 「<雷>には<滅びの粉塵>つきのナーガ、バードマンの前にはたぶんキキーモラがひかえているデザビか。……まったく、やりにくい人だな」  鳥井のぼやきには、嫌味がなかった。むしろここまでやられると感嘆するしかなかった。だが、鳥井にも作戦は残されていた。  真夜は真田が<代理地形>にはりかえてくれたC3に、コボルドライダーズと碧鱗の王を移動させ、本陣のリザードマン斬込隊と鉄と鋼の王をC4<雷が鳴る前に>へ配置した。  召還フェイズ。真田は<ナーガ>と<ポイズン・トード>、<オーク長槍隊>を、真夜は<ポイズン・トード>だけである。 「よし、いける!」  鳥井は歓喜の声をあげ、指を鳴らした。真田の本陣はすべて防御力3以下。たとえキキーモラが出てこようと、弓矢でなんとでもなる。真田さえ倒せば、勝てるはずだ。鳥井にはその自信があった。 「地形をかえる! R2の代理地形を<雲ひとつない空>に――」 「それは認めないよ。<風と共に去りぬ>を使う。リミットを越えるから、1体破棄してくれ」 「あんたまだ――!」  鳥井はついに感情を爆発させた。屈辱的だった。なぜこうまでこちらの作戦がよまれるのか、納得できなかった。こちらのデックを洞察し、作戦を看破し、完璧な対策をうってくる。なぜわかる、なぜ見える、なぜ対策カードを持っている。信じられない光景だった。 「そんなに難しいことじゃない。ただ儀式対策を多めにいれておいただけさ。それに大杉君のデックについては、以前駿くんから聞いていたからね、地形を排除できるように<吹き抜け>や<風と共に>を増やしていたんだ。それがうまくまわってくれただけだよ」  ほほえみながらそう言われては、鳥井は反論できなかった。だが不快さはおさまらず、奥歯をかみながらリミットオーバー分のバードマン遊撃隊を破棄する。  鳥井は、乗り気でなかったこの勝負に勝ちたいと、いつしか本気で思うようになっていた。せめて真田だけは倒す。彼はひさびさに、熱いものがこみあげる感覚を発見していた。 「本陣奇襲は失敗したが、まだまだ!」  彼の手がR2<風と共に去りぬ>のバードマン降下部隊をつかみ、C3<代理地形>に飛翔させた。即時召還で<バードマン遊撃隊>を場にさらす。  真夜は困惑しながら真田の提案を待った。彼女の手札には、即時召還用ユニットがいなかったのだ。  真田は真新しいデニムシャツの首ボタンを片手ではずしながら、考えてみた。<攻撃隊長>がいないのは、こちらが<キキーモラ>を出すと予測しているためだろうか? この戦場ではたとえ先攻がとれなくとも、矢があれば敵は倒せる。だが、デザートビースト相手では必ず先攻をとらねばならない。そのための陽動作戦とみて間違いないだろう。それなら、こっちにも考えがある。 「即時召還は<ブルー・シルフ>」  音もなく場に現れた1体のユニットが、真田以外の全員を驚かす。鳥井はまたも、真田を上回れなかったのである。 「キキーモラは温存か……?」 「まぁね。ビーストを倒すには先攻しかないといわれたら、残しておくのが当然だよ」 「あんた、ヤな人だな」  鳥井は深いふかいため息をついた。真田はそんな彼に、ただ苦笑するだけだ。  パートナーである真夜は、やはり真田と冴木彰は違うのだなとふと思った。もし彰なら、きっとひょうひょうと「ありがとよ」とでも答えていただろう。いやそれどころか、ついでに相手を挑発するかも知れない。こんなとき、人間的な差がはっきりとわかる。だからといって真田が好きだとか、彰が嫌いだとか極論をだすつもりは彼女にはなかった。それぞれちがった個性でも、好感の範囲にあれば、それはやはり自分と他人をつなぐラインになりえるのだ。だから真田も好きだし、彰も嫌いではない。駿だってかわいいし、舞美は守ってやりたいと思う。そういう意味では、彼女はけして鳥井を嫌ってはいなかった。 「とりあえず、勝負、勝負」  真夜が隊列変更を終えた二人にダイスをわたした。鳥井は唐突な出来事に、「あ…ありがと」とあっけにとられている。  呆然が無心をよんだか、鳥井の目は「6」を上にしてとまり、真田のダイスより2つ大きかった。 「遊撃隊がブルーシルフに“急襲”」  バードマン部隊の天敵ブルーシルフがいる以上、彼はこの戦場での負けを覚悟していた。それならば、相手の手札にダメージを負わせるくらいはしておきたかった。  真田がしかたなしに手札をきろうをするのを、真夜の声がさえぎった。 「コボルド・ライダーズが<クォーター・スタッフ>」  鳥井が真田を消耗させたいのと同様、真夜も鳥井に矢を使わせてしまいたいのだ。バードマンというユニットはともかく、弓矢だけはなんとかしなければならない。特に<トルクメン>と<テルブレット>は、いかなる戦術も一瞬で打ち砕く力を持つ、最悪の対抗兵器だった。 「テルブレット」 「ブルーシルフが撃つ」 「トルクメン」 「もう一発」 「こっちもまたトルクメン」  駿はきっと真田はもう一枚手札をきって、弓を持つバードマンを撃墜するだろうと思っていた。だが、尊敬する用兵家は、もう抵抗をみせなかった。 「……これ以上はだめだな。<キキーモラ>と<滅びの粉塵>はきれない。すまない、真夜くん」  彼としても無念そうだ。だが、その2枚を残しておかなければ、R3のデザートビーストと、RR4のナーガ&宙に祈るものは守れないのだ。真夜にもその気持ちがわかったので、「気にしないでください」と彼の手札を見てほほえんでいた。 「と、鳥井、リリ…リヴァイアサンをいい…いったんもど…戻すぞ」  大杉も真田の言葉にリヴァイアサンを退かせるしかないと判断したようだ。RR3にとどまってはムダ死にするのは目に見えているので、これは正しい。あくまで大杉側の主観としてだが。 「そうだな、深追いは禁物だ。ここは戦力の立て直しといこう」  大杉はしきられているようで腹立たしかったが、コンボを組んだ敵に勝つには鳥井の部隊がどうしても必要だった。だから表面上は素直にうなずいてみせた。  リヴァイアサンがRR3<ストーンサークル>からLL2<大きな大きな部屋>へ深海移動し、本陣イビルアイズはC1<ストーンサークル>へ進行。鳥井本陣のバードマン攻撃隊長と遊撃隊は、R2<風と共に去りぬ>へ。本陣をガラ空きにするわけにはいかないので、RR1<ストーンサークル>のベルダンディーが、自分のホームへと帰った。  召還は大杉のみで、<ストーム・ドラゴン>と<セイレーン>である。  ターン終了の言葉を耳にすると、真田は文字どおりひと息ついた。 「ふぅ、とりあえずは助かった。あのまま攻められていたら、こっちの被害は甚大だった」 「ホントですね。真田さんの手札、まったく役に立たないものばかりなんだもん。ハッタリにひっかかってくれてよかったわ」 「なっ……! じゃ、じゃあキキーモラと滅粉は――?」 「持ってなかったよ」  返す言葉を失い、まのぬけた表情の対戦者二人に、真田と真夜はおたがいを見合わせのどの奥で笑っていた。駿と舞美も大杉たち同様、口をあけたまま硬直している。 「さぁて、今度はこっちの番」  戦場でただ一人の女性は歌うように宣言しながら、手札の<ドワーフ神官戦士団>をすて、2枚補充した。真田のほうは4枚を山札から拾う。 「まず、攻撃隊長からいこうか」  R3<代理地形>のデザートビーストを、R2<風と共に去りぬ>へと突進させる。バードマンの隊長+遊撃隊+偵察隊(+星弓)で、イニシアチブ修正は相手に+4だ。これならまだ勝てるみこみはある。  おたがいに即時召還はない。そして先攻をとったものの勝ちだ。  ダイス勝負! 「攻撃!」  確率からみても順当な、鳥井のセリフだった。真田は対抗能力を使って、手札に戻らせる。バードマンを指揮する男の手には<ロマンシング・ストーン>がかなり前から眠っていたのだが、弓を持っているために使えなかった。  実はこれも真田の作戦である。ここでの勝負は勝てれば幸運としか考えていなかった。彼は真の目的を果たすべく、真夜と相談し、C4<雷が鳴る前に>にいるリザードマン斬込隊をC2<代理地形>へと進ませてもらった。 「即時召還は彼女の<リザードマン斬込隊>とわたしの<ブルー・シルフ>だ」 「に、二体目!?」  大杉と鳥井は同時に声を上げた。ブルーシルフだけでもやっかいなのに、イニシアチブ修正はむこうに+2がついている。敵が先攻をとれば無傷の勝利、後攻でも手札数枚でこちらを倒せる。 「こっちは隊長しか出せない……」  無念そうに手札を抜こうとする鳥井に、大杉がストップをかけた。 「こ、ここはすす…素直にやられたほうがいい…いいだろう。か、かわりにオレ…オレがこいつを出す。ああ…あいつの手札をあっぱ…圧迫してやや…やる」  はじめて協力的になった大杉に、パートナーである彼でさえ驚いたものの、その作戦は悪くなかった。彼は<セイレーン>を召還したのである。  隊列が決められ、ダイスが宙をまう。両者が同じ目を上にして着地させていた。  真田は静かに攻撃を指令し、リザードマンは嬉々としてそれを実行にうつす。  野蛮なトカゲ人間の刃が襲いかかる瞬間、セイレーンはせめて1体だけでも道連れにしようと魔法を唱える。  はじめは小さな風だった。だがそれはみるみる大きく、迅くなり、大気を斬りさく鋭い音が断続的にきこえるようになった。  風刃はリザードマンを無視し、背後で舞っているブルーシルフを目指す。  危機を感じとった青い精霊は、魔法を唱える元凶に雷撃をはなった。  が、それは幻影によってつくられた分身を貫いただけだった。ブルーシルフはあわててもう一撃を見舞った。  今度は狙いあやまたずセイレーンをいぬいていた。と同時に、風刃の魔法も消えさり、ブルーシルフは安堵のため息をついたのだった。  真田は、予定どおりにデザートビーストを捨て札にしていた。バードマンさえ倒せればもう必要なかったので、はじめからブルーシルフの弾にするつもりだったのだ。 「セイレーンは意外だったな。このぶんだともう1体いるはずだ。はやめに決着をつけなければ……」  そうは言うものの、すぐそばに倒せそうな敵はいない。真田も真夜も、移動と召還をするだけだった。  真田は、本陣のオーク長槍隊をC4<雷が鳴る前に>へ、同じく本陣のナーガ&ポイズン・トードをR3<代理地形>へ、RR4のナーガをRR3<ストーンサークル>へそれぞれ派遣し、普通召還で<ラミア><欲深き皇帝><オーク傭兵団>を呼びだした。  真夜はといえば、本陣のドワーフ警備隊をC4<雷が鳴る前に>へ移動させて、<ナーガ>を召還しただけである。それでも真夜の本陣は堅く、厚い。なにせナーガ&トード、ドワーフ神官戦士団、それに真田のオーク歩兵隊がいるのだ。そう簡単に陥落するような陣形ではない。  ターンが移ると、鳥井は大杉と作戦会議をはじめた。鳥井としてはブルーシルフをなんとかしてもらいたかったし、大杉はコンボ連中をかたづけてほしかった。そのたがいの願望をかなえるために、二人は動きはじめる。 「ま、まず大砂蟲が、ブル…ブルーシルフのところにしし…進軍」 「来たか。こっちは<オーク傭兵団>を即時召還する」 「同時さえおきなければ勝てるわ」  真夜は楯になるために来てくれた傭兵団に感謝しながら、隊列の先頭においた。  頭をかく鳥井の姿を目の端にかるく流してから、真夜はダイスをふり、「2」という数を出した。真夜と真田の部隊はリザードマン斬込隊が2体とブルーシルフ、オーク傭兵団で構成されている。したがってイニシアチブは4となる。  大杉は声に出して「4、4、4!」と念じ、鳥井も無言で祈っていた。が、ダイスの女神はほほえまなかった。 「クォーターだろ? 捨てといてくれ」  鳥井はもはや投げやりである。  真夜はなんとなく罪悪感にとらわれながら、<クォーター・スタッフ>を捨て山にかさねた。  が、鳥井のおちこみは見せかけである。彼はここにいたって、反撃ののろしをあげる作戦を実行しはじめたのである。  まずC4<雷が鳴る前に>を再度<吹き抜け>た。  本陣のベルダンディーがRR1<ストーンサークル>を占拠した。  大杉のL2のウォーター・ドラゴンと彼の本陣のストーム・ドラゴンが入れかわった。そしてLL2のリヴァイアサンが鳥井の本陣を守りに向かう。 「喰らえ、<オーバー・ザ・レインボー>、属性は水だ!」  真夜は絶句した。真田のナーガは2体とも本陣をはなれており、しかもすでに2体のナーガ――真夜と真田がそれぞれ1体ずつ――が捨て山に葬られている。さらにここで失えば、こちらの戦力はガタ落ちとなってしまうだろう。しかしふせぐには、ゆいいつ残されているRR4<雷が鳴る前に>にいる<宙に祈るもの>を破棄せねばならない。これはこれでつらい選択であった。  真田は自分の手札を眺めながら考えこんでいた。判断がつきかねてふと視線をあげると、真夜の心配そうな瞳を見つけてしまった。  彼は吐息し、優しくほほえむと、彼女の捨て山を念入りに調べてから一つうなずいた。 「……わかった、“水”だね」  真田の意外な答えに、鳥井も、大杉も、駿も、舞美も、そして真夜も驚いた。彼の主力となるべくユニットを捨ててしまって、勝てるのだろうか。このさい他の儀式が使われたとしても、ナーガ・コンボは残すべきではないのだろうか。真夜はうまく言葉にできなかったが、彼を説得した。 「大丈夫だよ」  彼は笑顔をみせた。人を安心させる、輝くような表情だった。  鳥井は自分の作戦が間違っていたのではないかと、心配になった。真田のこわさはこの短時間に何度もあじわっている。その彼がこうも自信に満ちているのは、鳥井にとって不安以外のなにものでもなかった。  だが、もうとまれない。 「次、いくぜ。<シングル・イズ・ベスト>を、ブルーシルフのところに」  真田はこれも受け入れた。真夜にあやまりながら、ブルーシルフだけを残す。 「な、なんだ、だったらそそ…それをはじめからつつつか…使えばよかったじゃなな…ないか」  とは大杉のグチだ。気持ちはわかるが、鳥井にも鳥井なりの計画があったのだ。ゆえに「そうだな」と素っけなく返事をし、次の儀式を披露した。  <ロケート・オブジェクト>だった。 「それで手札は残り2枚だね。一枚は<雲ひとつない空>で、もう一枚が隊長だな?」 「え!?」 「どうやら、あたりらしい。……でも、それは認めるから、好きなアイテムを戻していいよ」  「真田さん!?」真夜は声をあらげた。鳥井が<トルクメンの矢>をひくのは自明の理ではないか。なのになぜそれをゆるしてしまうのか。  真田の答えは簡潔だった。 「彼らはもう、詰んでるよ」 「なに?」  鳥井と大杉と真夜の納得しかねる声が重なる。しかし真田は理由を語らなかった。 「……上等だ。あんたの本陣、おとしてやるぜ」  鳥井はR2<風と共に去りぬ>を<雲ひとつない空>に交換し、バードマン攻撃隊長、偵察隊(+星弓)、遊撃隊が真田本陣に奇襲をかけた。今度は<風と共に去りぬ>はなかったらしく、鳥井としてはひと安心だった。  真田の陣容は、<ラミア><欲深き皇帝><オーク傭兵団>である。 「即時召還は<攻撃隊長>。これで先攻はこっちだ」 「そうだね。では、わたしはこれだ」  真田が出したそのカードは、単なる<オーク歩兵隊>だった。 「バカにしてるのか?」  憤慨するのも無理はない。こちらにトルクメンの矢が2本ある以上、負けはないではないか。  真田は語らず、ダイスをにぎった。鳥井もそれにならう。  先攻はバードマン部隊。 「何をしてくるかわからないからな。遊撃隊がラミアを“急襲”」 「歩兵隊が<封印>」 「<トルクメン>」 「傭兵団が<滅びの粉塵>」 「<トルクメン>」  これで鳥井の手札はなくなり、真田が小さく笑った。その一瞬のしぐさを見て、鳥井の中で恐怖が駆けめぐった。まさか<ファイナル・ストライク>か。もしそうなら、防ぎようがなかった。真田本陣攻略は、果たせないままになってしまう。  真田が口を開いた。 「……終わりだな。これ以上の対抗はないよ」 「ええ!?」  一同は真田によってまた衝撃を与えられた。彼は自分のユニットをいさぎよく捨て山へうつし、あっけにとられるみなに「どうしたんだい?」と首をかしげた。 「ど、どうしたって……。真田さん、本陣おとされちゃったんですよ?」 「ああ、そうだね。でも、まだ君が残っている。だから勝てるよ」 「そんな……!」  とっさに反応できないのが、人間の限界である。皮肉やの大杉でさえ、嘲笑するまでに10秒を要したほどだ。 「こ、こりゃあいい。ここ…この男さえ倒せば、あああと…あとは楽だ。さ、さささす…さすが鳥井だな」  歓喜する大杉だが、当の鳥井はそれほど楽観的ではなかった。たしかに真田の本陣はおとした。だが、彼に本陣など関係があるのだろうか。考えてもみろ、彼のユニットで大型だったのは<デザートビースト>と<宙に祈るもの>、それにせいぜい<ナーガ>と<ラミア>だけではないか。  鳥井の中で、想像もできなかった真田の戦略が、今になってわかってきた。もしかして彼は、はじめから美浦真夜を援護するためだけに、デックを改造していたのではないのか? 大杉のデック構成を知っていた彼は、それを援護するオレを封じれば、彼女なら絶対に勝てるとわかっていたのだろう。だから自分のユニットを犠牲にしてまでオレの手札を消耗させ、本陣が陥落するのもいとわずにオレの全戦力をださせていたのだ。そしてオレは、一時の凱歌に酔いしれているだけの、ただのバカ者だった。矢のなくなったバードマンが、いったい何の役に立つというのか、何ができるというのか。鳥井は真田の言葉の意味を、今さらながらに痛感していた。もう、自分を嗤うしかなかった。  “彼らはもう、詰んでるよ”  それはとても重い、深い言葉だった。                 5  鳥井が「投了」を告げたのは、大杉が様子のおかしい彼に声をかけてから、すぐのことだった。突然の敗北宣言に、真田以外の全員が目をみはった。 「あんたやっぱヤな人だ。戦う前から、オレたちの負けだったんだな」 「そんなことはないよ。カードのまわりがそちらよりよかっただけさ」  向かい合う二人の男の笑顔の交換は、急変した事態についていけないでいる真夜にとっても、心地よい感動だった。駿も、舞美も、同じ気持ちだった。  だが、それを認められない男が、一人いた。 「な、なな…なにを言ってるんだ。まだオオオレ…オレたちの本陣はおち…おちてないじゃないか。ゲゲ…ゲームは続――!」 「やめろよ」  鳥井はカードをかたづけながら、大杉の見苦しい言葉をさえぎった。 「勝てねぇよ、オレとおまえのコンビじゃ。オレの援護もなしに、ただデカイだけのおまえのデックが勝てると思ってるのか?」 「そ、それは……」 「やめようぜ。第一、おまえと組んでもぜんぜん楽しかねぇよ。それなら、シングルで真田さんと戦うほうがはるかにおもしろそうだ」  鳥井はカードの束をデックケースにおさめ、新たなデックをとりだす。 「――と、そういうわけだ。今度はオレの最高傑作で勝負するぜ」  歯をみせて笑う鳥井に、真田もつられて口もとをほころばす。彼にも異論はないようであった。 「と、鳥井ィ! おお…覚えとけよ、しゃしゃ…借金の利子はばばばい…倍だからな!」  大杉はパートナーにまで見捨てられたくやしさに、怒声を残してクツ音も荒く帰っていった。鳥井はまったく動じた様子もなく「はいはい」と応じたきり、無関心だった。 「……大丈夫なの?」 「お、心配してくれるの、真夜ちゃん?」 「ふざけないで、だれが……あ、そういえば、勝負は本陣賭けだったはずよ。ちゃんとこっちの借金も払ってよね。わたしと真田さんの分」 「ゲッ、大杉は――!?」  あわてて腰をうかす鳥井だが、彼はとっくに消えていた。 「……なぁ、冗談だろ?」 「本気です。あの人のぶんも、くださいね」 「ふんだりけったりだな、オレ……」  ぼやく鳥井に、一同は笑いだした。結果的に大杉は、たった一つ真夜や駿たちに“いいこと”をしたのだ。それは新しい仲間をつれてきたこと。鳥井にとって幸運なのか不幸なのかは知るよしもないが、こうして笑っていられるのはきっと悪いことではないだろう。 「それと真田さん。ありがとうございました」 「礼を言うのはこっちだよ。ありがとう」  真夜の知る真田はそういう人だった。結局、自分は何の役にもたっていなかったのに、彼は自分を信頼してくれていた。冴木彰といるとき、彼女は自分で思ういつもの自分でいられる。それはとても楽な気分だった。だが真田といるときは、自分の知らない自分をときどき発見できる。それもまた、彼女には気持よい喜びがあった。だからここにいられること、駿と舞美の姉に、彰の友人に、真田への憧憬を持つ女性となれるこの場所にいられるのが、とてもすばらしいと思うのだった。 「真田さん、その勝負が終わったら――」  真夜は真夜らしく、今も真田を見つめていた。  モンスターコレクション・ノベル 第五章・あとがき  はじめにおことわり申し上げます。この作品は、外伝1のあとに書きかけて、4ヵ月ほど筆をとめておりました。その間に年が明け、カードの表記が一部変わったりしましたが、作品時間は98年11月はじめごろだと思ってください。ですがルールは99年以降のものを使っているという、矛盾があります。この点については、最近モンコレをはじめた人が混乱しないようにする配慮なので、ご了承ください。  さてタッグマッチです。以前からルールは考えていたのですが、プレイする機会がなかったので今まで小説にはできませんでした。ともかくプレイしてルールをまとめないことには、どうしようもなかったからです。ところが最近になって秋葉原・某所でひんぱんに行なわれるようになったので、これ幸いとルールの定義をして何度も対戦を繰り返しました。ここではさらにローカル・ルールがきびしくありますが、興味がある方は一度対戦にきてください。  作品の対戦については、読み物としてはともかく、実際の対戦という観点からはできすぎでしょうね。「こんなはずでは」とため息をつきたくなるような展開になってしまい、少しとまどっております。一番の失敗は真田のデックを強くしすぎたことでしょう。理論上、無理のないデックを持たせたのですが、本当にカードまわりがよすぎたらしく、大杉と真夜の出番がほとんどないままになってしまいました(伏線の<オーク歩兵隊>も、まったく活躍できませんでしたし)。これではタッグの意味がないとそしられても、わたしは反論できません。本来なら真田の本陣が落ちたところからが本番だったのに、鳥井というもうひとりの戦術家の頭の回転がよかったのでこういう結末となった次第です。確かにあの状況からでは、どう考えても真夜の負けはないでしょうけど。  それにしても、やはり儀式はつまらないですね。長い対戦のわりに、ユニットどうしの闘いがヤケにすくないのですから。実際の対戦でも、儀式を使って強さを誇る人がいますが、あれはなにが楽しいのでしょうね。――と、これは筆者の偏見ですが。  ともかく今後またタッグマッチをするときは、きちんとしたフロー・チャートを用意したいと思います。  また、作品のラストですが、いつの間にか真田ではなく真夜の話になっていました。これはこれで予想外で、でもいいやという気分です。真田はやはり主役というより、サポート役がお似合いですから。  恒例のキャラクター紹介。  鳥井哲也(トリイテツヤ)は、もとの設定では大杉巨史(オオスギマサフミ)の友人だと納得できるキャラクターだったのですが、それではおもしろくないと思い、今のように軽い人間になりました。まるで冴木彰の分身のようですが、細かなところで違うはずですので、今後に注目していてください。  冴木彰と鳥井哲也の対決を、お楽しみに。  真田洋平は、とくに深い設定のあるキャラクターではありません。第一章のときと同様、影の実力者ということでおしまいです。このようなキャラは必要なときにだけ出てくればいいのだと、今回の作品で学びました。もう二度と対戦する光景はみられないことでしょう。……わたしの言うことですからあてにはできないでしょうけれど。  それでも、雨宮士郎よりはめぐまれています。なにせきちんとセリフまであるのですから。  デックについて。  真夜のは「魔道士の黙示録」を組みこんだ新しいものです。主力はウォータードラゴンとナーガ、それにドワーフ神官戦士団です。スペルが豊富にはいっているのですが、あまり出てこないまま終わってしまいました。自分でもいいデックだと思っていますので、機会があれば紹介したいと思います。  大杉のデックは以前の大艦巨砲デックをタッグ用に調整したもので、儀式を減らし、地形とユニットが増えています。でもやはり、1ターン1体召還の弱点は補えませんでした。  鳥井については、作品を読めばわかると思います。バードマンと弓矢、それに儀式で構成されています。  真田のデックは、普段使用しているものではなく、今回の対戦用に改造してあります(作品時間わずか10分で)。「ラミア&ブルーシルフ」と「ナーガ&トード」のコンボを基本とし、サポートとしてオーク軍団がはいっています。その他には儀式対策を重点においた追加がされているだけです。いちおう<カントリー・ロード>がはいっていたのですが、使わずじまいでした。  次回については、まったくの未定です。次の新カード「空中庭園の降臨」を待って、考えたいと思います。ただ、草野駿と竜堂舞美、雨宮士郎は高校生となって登場するのは決定しています。彼らはどんな学校にいくのでしょうね。じつは筆者が一番楽しみだったりします。  では、次回またお会いできること願って、さようなら。                  1999年3月30日  筆者