<第三幕>

     一人の女の子が倒れている

 由梨  ・・・あれ?ここ、私の部屋じゃない・・・どこだろう?えっと、確か私、死のうと思って・・・
     睡眠薬たくさん飲んで・・・ってことは、ここって天国!?嘘!?・・・まさか地獄じゃないよねぇ?
     ははは。私に限ってそんなことはないよね・・・きっと。・・・なんだ。死ぬのなんて意外に簡単なんだ。
     天国も本当にあるとは思わなかったなぁ。死んでから知るってこともあるもんなんだ。
     ・・・それにしても、私って、これからどうすればいいのかなぁ?

     原田、永倉、中村がかけこんでくる
     中村は由梨を人質にとる

 中村  来るな!!それ以上少しでも近寄ってみろ。この女を殺すぞ。
 永倉  あぁ!!きったねぇ。お前最悪。人質とるなんて悪い奴のすることなんだぞ?そんでもって、
      弱い奴のすることなんだよなぁ。
 原田  そうそう。お前さぁ、長州の奴だろ?何企んでるのか教えてくんないかなぁ?
      俺らどうしてもそれが知りたいんだよねぇ。
 永倉  教えてくれたら命まではとらない・・・かも?
 原田  素直にしゃべっちゃった方が身のためだと思うんだけどなぁ。
 中村  静かに聞いてりゃ言いたい放題言いやがって。お前ら、自分たちの置かれてる状況がわかってんのか?
      本当にこの女を殺すぞ!!それでもいいのか?
 永倉  ・・・いいんじゃん?だって、俺たちその女知らないし。
 原田  まぁ、そういうこと。第一お前にはそんなこと出来ないだろう?
      人質を殺した時点で自分の命もなくなるんだからな。
 永倉  そうとわかっていて、みすみすその女を殺すほどお前も馬鹿じゃないだろ?
 中村  なんだと!?俺がお前たちに負けるとでも思っているのか?
 永倉  当たり前じゃん。お前もそれがわかっているから、人質なんかとってるんだろ?
 中村  違う!!これには色々と諸事情があってだな・・・。
 原田  おっ。何々?それが聞きたかったのよ、俺たちは。ほれ、言ってみ?
 中村  ふんっ。誰がお前たちになど言うか。
 原田  ま、そっちがそういう態度とるならこっちにも考えがあるんだぜ?
 永倉  そうそう。無理やりにでも、聞き出しちゃうぞってな。
 由梨  あのぉ。お取り込み中大変申し訳ないんですけどぉ、私を巻き込むのやめてくれません?
      なんか危険な香りがぷんぷん漂っている気がするんですけど、私一般ピープルなんで、
      離してもらいたいんですよねぇ。
 中村  お前は静かにしてろ。じゃないと、本当に殺すぞ。
 由梨  え?でもね、私もともと死んでるから。
 中村  黙れ!!お前らどうしても聞きたいみたいだから、一つだけ教えといてやるよ。
      勝つのは俺たちだ。あの計画が成功すれば、お前たちの勝ち目は万に一つもない。
      まぁ、せいぜいそれまで残り少ない余生を楽しんでおくんだな。

      中村は由梨を永倉、原田の方につきとばして逃げ去る

 原田・永倉  あっ、ちょっと待て!!

      永倉は中村を追いかけ、原田は由梨を抱き起こす

 原田  大丈夫?どこも怪我とかしてない?災難だったねぇ。
 由梨  あ、はい。大丈夫です。あのぉ、あなたも死んだ人?
 原田  はい?
 由梨  私、睡眠薬飲んで死んだんです。あなたはどうやって死んだの?
 原田  ・・・う〜ん、あのねぇ、ちょっと話についていけないみたいなんだよねぇ。

      永倉が戻ってくる

 永倉  だめだ。逃げられた。
 原田  そうか。まぁ、とりあえず、屯所に戻って報告だ。
 永倉  この女はどうする?なんかあやしい格好してるけど、まさか長州の密偵とかじゃないよな?
 由梨  長州?まるで、江戸時代みたい。あなたたちもその羽織、新撰組みたいだよね。
      さっきの人も刀さしてたし・・・あ、なんかのパフォーマンスとか?
 永倉  原田、こいつ何言ってるんだ?
 由梨  え?違うの?あ、じゃ、もしかして、天国って時代ごとに分かれてたりするんでしょ。
      で、ここは江戸時代ゾーン。すごいねぇ。テーマパークみたい。
      あ、もしかしてさぁ、歳くんとかもいたりするの?土方歳三!
 原田  お前、副長のこと呼び捨てにするなんて、副長の知り合いなのか?
 由梨  お前って呼ばないでよ。私には由梨っていうれっきとした名前があるんだから。
      やっぱりあなたたち新撰組の人たちなんだ?副長って呼んだってことはそうなんでしょ?
 永倉  なぁ、原田、どうするよ?見たこともない格好してるかと思えば、わけわかんない言葉話してるし、
      とにかくものすごっく怪しいぞ。
 原田  さっきも、死んだとかなんとか言ってたんだよなぁ。
      まぁ、たぶん長州の密偵とかではなさそうだけど・・・。
 永倉・原田  どうしよっか・・・?
 由梨  ちょっとぉ、何二人でこそこそ話してるの?私も仲間にいれて。
 永倉  女はお前の担当だろうよ、原田。
 原田  なっ、俺は普通の女がいいの。こんな怪しい女の相手はごめんだよ。
 永倉  う〜ん・・・じゃぁ、とりあえず屯所に連れて帰ろう。
 原田  えぇ?いいのか?怒られるんじゃないか?
 永倉  怒られる前に、沖田とかに押し付けちゃえばいいんだよ。
 原田  なるほどぉ。
 永倉  いいだろ?なぁ、由梨とか言ったっけ?原減ってないか?
 原田  俺たちこれから帰って鍋作るんだけど、一緒に来る?食べさせてあげるよ。
 由梨  え!?いいの?行く行く!
 原田  んじゃ、決定。人数多い方が楽しいからね。
 由梨  ありがとう。ちょうどお腹が空いてきたところだったの。
 永倉  こっちだよ、こっち。
 永倉・原田  大成功!!
 由梨  え?なんか言った?
 永倉  言ってない言ってない。さぁ、行こうぜ。

      永倉・原田・由梨退場