3月某日 クラタク号の退役と関係あったようで実は何もなかったのですが、伍角号のクラッチペダルからナゾの音がするのでディーラーへ持ち込んだところ、クラッチベアリングの磨耗の可能性が高いとの診断。 しかもベアリング本体ならまだしも、ケース側が減っている可能性もあり、最悪新品のケースにミッションの中身一式組み替えなければならない場合もあるとの由。既にギアそのものも10数万km以上走っており、シンクロもガタガタのヘロヘロ。 当然の如くミッションごと中古品と載せ替えと相成った次第。 クラッチ3点セット交換はもとより、どうせミッション載せ替えるのにエンジン下ろすなら前回交換から5万km以上経っているタイベルもやってしまった方が良い、ついでにオイルシールも交換がオススメだ、そう言えばプラグホールにオイルが溜まって来るからヘッドのプラグホールシールも替えたい、こうなりゃエンジンマウントも取っ換えてしまえ・・・細かい所ではボンネットのロックワイヤーが固着しているだとか何だとか、伝票一枚に収まらない数の部品を交換され、結構な出費と相成ったのでありました。結構どころか何しろ車両購入価格より高い。 しかし修理が上がって乗ってみると、クラッチの繋がり具合がまるで別のクルマ。 マァ購入時からかれこれ一年近く乗って充分慣れてる筈なのに、それでも発進時にちょっと油断するとすぐジャダってしまうなんてオカシイとは思っていたんですよ。いくら何でもタカが量販街乗り軽乗用車のクラッチミートがそんなにシビアなハズがない。 何の事はない、ただ壊れていただけだったワケです。 しかしそれはまた、別のハナシ。 今日の主役は別のクルマなわけで。 修理に当たって代車を希望したところ、軽トラックしかないという返事。 別に軽トラでも何でも良いですよと答えたところ、現行型の某社製軽トラック・A車(仮名)が充てられました。 |
某社軽トラック・A車(仮名) |
拙宅にもキャブオーバー時代のアクティ・スーパーデラックス号があるので、それほど軽トラにも抵抗がありません。とりあえず広くはないし快適とも言えないけど別にイイヤ、と。 ところが、いざ実車に乗ってみてビックリ。 一旦拙宅に迎えに来てもらったため、最初に乗り込んだのは助手席でした。 軽トラの助手席ですから、当然シートスライドとかそういったものは付いていません。 この時点で激しくイヤな予感がします。 いざディーラーへ着いて、今度は運転席に乗り込みま何じゃこりゃ。 運転席には一応、10センチのシートスライド機能が付いています。 また座面と連動して、上端がキャビン背面位置で固定された背もたれも多少角度が変わります。 乗った時点ではシートは目一杯後ろに下げてありました。足元のスペースを取るためでしょう。 |
(図1) |
が、背もたれがまるっきり垂直90度です。背筋を伸ばすとかそういうレベルではありません。 いまどき、小学校に入学したばかりのピカピカの一年生でさえ、こんなに背中を真っつぐにして椅子に座ったりはしないでしょう。 それに、シートを一杯まで後ろに下げているにも関わらず、それでも恐ろしく狭い足元。 止むを得ず、シートを少し前に出します。 「少し出す」と言ったところでそもそもスライド量自体が大した事ないので、すぐ目一杯前までスライドしてしまいます。 |
(図2) |
背もたれの角度の方は、何とか人間工学の許容範囲に収まりました。 しかし当然、今度はただでさえ不足していた足元のスペースが減少、というか圧迫、むしろ相当に逼迫して来ます。足を揃えようにもステアリング・コラムがすぐ上に来て、ヒザの置き場がありません。どうしようもないので思いっきりガニ股で、真上から踏み下ろすようにペダルを踏む以外ありません。 自動車雑誌にありがちな「足元スペースが不足気味云々」とかそういう次元ではなく、むしろ「乗車スペースが絶対的に不足している」「乗員の身長制限を設ける必要がある」といった感じです。かろうじて運転は出来ますが、相当に無理のあるドライビングポジションなのは明らか。 最新型らしく運転席エアバッグ、シートベルトのプリテンショナーも付いていますが、それらの効果をもってしても、万一事故に遭った時にはプラスチック製のセンタークラスター直後数センチに位置せざるを得ない左ヒザの無事は諦めた方が良いでしょう。 ついでにその運転席エアバッグも、設置位置から考えるに少なからぬ確立で胸部へのクロスカウンターとなる気がします。 更に悪い事に―これは個体差なのかそれとも設計上なのかは不明ですが―、現車はアクセルが異様に硬く、少しずつ踏み込んでいくという運転の基礎も基礎のごくごくアタリマエの事が出来ません。足を載せてもペダルが引っ込まない。少し力を込めてもまだ引っ込まない。もう少しだけ・・・カクッ「ヴオーーン」。一気に吹け過ぎ。 何が辛いって。発進はまだ攣りそうになる左足で半クラ使えば何とかなります。でも任意の踏み込み量でハーフスロットルが出来ないと言うことは、つまり前走者に合わせた定速走行が出来ないということで。仕方がないので、たまたま丁度いい踏み込み加減になるまで何度もアクセル踏んだり離したりの繰り返し。更に更にこれまた設計上なのか何なのか、パーキングスピードで舵を切ると舵角が合ってなくて外側のタイヤをズルズルと引きずる音がします。 ホントに21世紀に作ったクルマかコレ。 一応軽トラック界の名誉のために申し上げておきますが、決して世の軽トラックが皆このように恐ろしく狭いなどと言う訳では勿論ありません。そもそも我が家のスーパーデラックス号は決して広くはないものの、「ま、軽トラックだからこんなもんだろうね」と納得できるスペースが確保されています。あくまでこのA車が、想像を絶する狭さだったという話です。 後日A車のカタログを取ってみると、実車を前にしてはタチの悪い冗談としか思えないコピーが踊っていました。 「サッと乗ってスッと降りる。ムリなく自然にラクラク乗り降り」 ハシゴ潜りの世界記録保持者なら可能かも知れません。 「運転はお好みのポジションで。」 立錐の余地もないほど散らかった部屋で『好きなとこ座って』と言われた時のような困惑を感じます。 「おっ!乗っても乗っても疲れにくいぞ。」 まぁ運転中は、な。乗り込むだけでウンザリしてしまうってのはどうなのよ。 「それもそのはず人間第一の快適設計。」 この場合の『人間』は恐らく召使いとか奴隷とか基本的人権の保証されていない人を指しているのだと思われます。 言うまでもなく拙宅のスーパーデラックス号が多少広かろうとも大型トラックと正面衝突したら為す術もなくペッチャンコ、と言うのは残念ながら判り切った事です。乗員を守るためにクラッシャブルゾーンを取る事は現代のクルマとして至極尤もな事。異論の余地はありません。 しかしそれでも、もし仮にキャブオーバーのアクティから思い切って奮発して新車のA車に買い換えたとして、こんなのが来たら小生は買い換えるの止めます。軽トラックとなると試乗もせずカタログだけで検討して買ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。現物チェックできるものは、決める前に出来る限りチェックしておきましょう。 尚このA車、モデルチェンジしてキャブオーバーからハナ付きになった約一年後、フロントバンパーをボンネット先端ギリギリまで削ぎ落とし、その分を荷台長に充てて70ミリ拡大するという荒業を施されています。一説によると自社の汎用部門商品である耕運機が積めなかったから、と言われますが定かではありません。 しかし改めて考えると、ただでさえさしたる張り出し量のないフロントバンパーだけで70ミリも稼げるか? 荷台前面(つまりキャビン背面)パネル見ると下半分がかなりえぐられており、えぐった部分で荷台寸法を測っているようです。もしかして、荷台寸法の数値だけを稼ぐために乗車スペースまで削ってしまったのではないか?という勘繰りもあったりするわけです。実際どうかは判りませんが。 「ロングでワイドな頑丈荷台。さらにこれ、A車史上最大の荷台面積です。」 そりゃ数字の上だけでも先代と同じ荷台長を確保してて、軽規格の全幅増えてるんだから 当然でしょうよ。 っつーか、同時にA車史上最小の室内長なんじゃないのか。 |