「筝」   と   「琴」  に つ い て


「コト」という言葉は、古くは木製の弦楽器すべてを指す日本語でした。「木音」、「コトコト(擬音)」が語源と言われています。

中国から伝来した、「琴」「筝」「琵琶」も弦楽器なので、当初は 「琴のコト」「筝のコト」「琵琶のコト」 と言われていました。

しかし、いつからか「コト」という日本語を、万葉仮名でなく 「琴」という漢字を当ててしまったのです。

「琴」という楽器は中国では、現在も弾かれている「七弦琴」いわゆる「古琴」ですが、日本では平安時代の中頃にいったん廃れました。

「筝のコト」を「筝の琴」(そう の こと)と書いていましたが、単に「琴」とだけ書いても「筝の琴」の意味でも用いるようになりました。

その為、「七弦琴の琴(こと)」が廃れてから、「筝」と「琴」とが文字の上では混乱するようになってしまいました。


現在、日本の筝を一般的にはまだ、「琴(こと)」と表記していますが、正しくは「筝」の字を用いて「こと」と読みます。

「お琴」と書いてしまうのは昔の混乱したなごりで、筝の音楽ジャンルである「筝曲」も、昔は「琴曲」と書くこともありましたが、今ではそのように表記することはありません。

ちなみに、大正琴は、柱の無い琴(きん)の仲間ですから、「大正琴」で正しいのです。

つまり、筝も琴も 「こと」 なのです。


筝のこと(十三弦筝)

琴のこと(七弦琴)
「風俗博物館」より