ふうちゃんは、何でもこわしてしまう、こわしやです。 いたずらの話は山ほどあるのですが、今日は、ふうちゃんが、まだふうちゃんと呼ばれる前のことをお話します。 |
一匹の犬がいました。 どこで生まれたかとか、どんな名前だとかは誰も知りません。 いつの間にか街にやって来て、そこいらあたりをうろついていました。 |
一日中歩いても、食べ物は見つかりません。 おなかはぺこぺこだし、足のうらはすりへってしまいました。 すると、どこからかおいしそうな匂いがしてきました。 |
おいしい匂いは、パン屋さんの匂いでした。 焼きたてのパンのいい匂いです。 |
扉はふしぎなことに前へ立つとひとりでひらきました。 おいしい匂いがたくさん店の中からあふれてきました。 |
たまらなくなって店の中に入ると、扉はまたひとりで閉まってしまいました。 |