2008.06.22

鳥飼校区地域学習学級(館外学習)

安武・城島・大川の探訪


日時:08年6月19日(木曜)9:30〜15:30
コース:鳥飼コミュニティセンター−@エツ養殖所(安武)−A海津城跡(安武)−B学童遭難の碑(
三根町飛区)−C頼母荒籠跡(三潴町)−D卍板碑(城島町)−E阿弥陀塚(城島町)−Fエツ大師堂(城島町)−G清力美術館(大川市)−Hエツ伝承碑(大川市)
参加者:学級員41名、市職員1名、運転士2名、ボランティアガイド2名、古賀=計48名

筑後川と伝説紀行

同行講義原稿

 今回皆さんとごいっしょします筑後川は、阿蘇外輪山と九重高原を水源とし、有明海に注ぐ九州最大の一級河川です。
 阿蘇と九重から流れてきた水は、途中いくつにも名前を変えながら、筑後平野を経て有明海に注ぎます。その延長距離(流路延長)は143キロだそうです。(国土交通省)
 筑後川は、利根川の坂東太郎や吉野川の四国三郎と並び称され、「筑紫次郎」の愛称で親しまれてきました。これは何も、日本で3本の指に入る大きな川という意味ではなさそうです。もっと長くて、流域面積でも大きいものがいくつもあるからです。下記の表を比べてください。

日本の主な河川

河川名

所在

流路延長(km)

流域面積(ku)

流域内人口(人)

天塩川

北海道

256

5,590

94,000

石狩川

北海道

268

14,330

2,500,000

十勝川

北海道

156

9,010

340,000

釧路川

北海道

154

2,510

177,000

北上川

東北

249

10,150

1,389,000

阿武隈川

東北

239

5,400

1,380,000

最上川

東北

229

7,040

999,300

那珂川

関東

150

3,270

912,217

利根川

関東

322

16,840

12,140,000

荒川

関東

173

2,940

9,300,000

多摩川

関東

138

1,240

4,250,000

阿賀野川

北陸

210

7,710

590,000

信濃川

北陸

367

11,900

2,950,000

大井川

静岡

168

1,280

90,000

天竜川

静岡

213

5,090

720,000

木曽川

中部日本

229

9,100

1,700,000

由良川

近畿

146

1,880

300,000

淀川

近畿

75

8,240

11,650,000

斐伊川

中国

153

2,070

435,000

江の川

中国

194

3,900

202,000

吉野川

四国

194

3,750

641,000

四万十川

四国

196

2,270

100,000

遠賀川

九州

61

1,026

666,406

矢部川

九州

61

647

182,889

筑後川

九州

143

2,863

1,090,000

まず、筑後川とはどんな川なのか、おさらいしておきましょう。

筑後川の特徴

@筑後川の水源は、いずれも火山地帯にあります。

 瀬の本近くの水源では、「雀地獄」と呼ばれるくらいに強力な硫黄分を含んだ水が間断なく噴出しています。人が跨げるくらいの小川(田の原川)から始まり、小国に到着すると、阿蘇の外輪山から下りてきた志賀瀬川などと合流して、杖立川と名を変えて山を下っていきます。
「小国の招福の水源」参照

松原ダムでは、鯛生川川原川など、津江方面からの川と合流し、大山川となって日田の三隈川に到着します。
一方の九重連山を水源とするほうは、見上げる山がすべて雄雄しい火山の連続です。ご存知の千町無田などから音無川−振動の滝−鳴子川を経て玖珠川と名を変えながら、日田の三隈川にたどり着いたところで大山川といっしょになります。
三隈川には四方の山から下りてきたいくつもの中小河川が流れ込み、その川幅が一挙に大河の様相をなします。
筑後平野に入った筑後川は、夜明ダムまでの急流が嘘のように、ゆったりした速度で西に流れ、やがて終点の有明海に届くのです。

A平野部に入ってからも、筑後川には、北と南から「筑後川水系」と呼ばれる無数の河川が流れ込んで次第にその川幅を広げ、やがて日本有数の大河となるのです。

 従って、「筑後川の水源は?」と問われても、簡単に答えられる数ではないのです。

B筑後川は、土砂もろともに急流を流れ来て、平野部に入って中洲を形成しています。

 中州はやがて巨大化して陸地となり、川は別の場所を蛇行しながら下っていきます。洪水などによってその流れが一変するのも、このような軟弱な地盤ゆえに水の勢いの方が勝るからです。筑後川のことを別名「一夜川」と呼ぶことも、その所以がわかろうというものです。
     伝説紀行「御幣流し」参照

     「一夜川(榧の木物語」をご参照ください。

C源・上流で培われた栄養分豊かな水流は、平野部に入って人々に計りしれない恩恵をもたらします。

 魚介類を初めとするたんぱく質や、生きるために不可欠な飲み水、農・工業用水などがそうです。また、鉄道や車がない時代、大河は貴重な運搬手段として活躍しました。終戦直後までの筏流しを覚えている方も多いのではないでしょうか。夜明ダムで見られる水力発電も、川が恵んでくれた財産です。

筑後平野の特徴

@筑後平野は、日本有数の穀倉地帯だと言われます。

 前述の筑後川の特性からもわかるように、何億年も前から蓄積してきた肥沃な土地が、穀物や野菜・綿花などを育ててくれました。また、古代から住む先人たちの知恵と苦労で造られた溜池や堰・用水が、豊かな農産物の収獲を保証してくれるのです。
筑後川左岸は、「道の駅うきは」から耳納連山を迂回して大牟田まで。筑後川の右岸は夜明ダム下流域から宝満川を越えて佐賀平野まで、筑後川と矢部川・嘉瀬川などが造り上げた沖積平野なのです。

A従って、土地に起伏はなく、また基本的に地下には岩盤層がありません。

 周囲に連なる山々からおりてくる伏流水によって、いずこも地下水が豊富です。

Bそんなことから、下流域には湿地帯が多いことが頷けます。

 旧三潴郡のクリーク地帯で見るヘドロと有明海のヘドロは同質のものだろうと考えます。これは、数億年(或いはそれ以上)かけて固まってきた土地が、いまだ取り残されているとは考えられないでしょうか。
     伝説紀行「天昇りばばしゃん」参照
     
沖積平野:流水の堆積作用によって川筋に生じた平野

流域に定着していった文化

@水辺には、自然と人が集まります。

 豊富な水と温暖な気候は、農作物の栽培を可能にします。そうなれば、人間は最低限の暮らしを保証されるわけです。筑後川に並行するように、右岸と左岸に無数の古墳が見られるのは、この地方に古くから人が住んでいた証です。彼らは、川から受ける恩恵を大切にしながら、新しい文化を築いていったのだと思います。

A人は、より豊かな暮らしを求めて、各地から情報を集めます。

 信仰(宗教)を通じて、心の安定を求めます。また、布教する人は、旅(行脚)をしながら各地の情報や技術をもたらしていきます。溜池を作る技術、堰を築く技術、橋を造る技術、文字や音楽を知る術などなど、人々は居ながらにして全国での出来事を知り、技術を身につけるのです。
情報や技術をもたらすのは、お坊さんだけではありません。旅芸人であったり薬売りであったり、はたまた琵琶法師などもその役目を担って各地を旅していたのです。

B暴れ川との戦い

 上流から流れてきた土砂が堆積してできた沖積平野を流れる川は、護岸が軟弱です。従って、いったん大雨が降れば、洪水をひき起こしますし、川の流れさえひと晩のうちに変えてしまいます。
川辺で暮らす人々は、常にこれら自然の猛威に備えなければならないし、家族や家畜・農作物を守らなければなりません。
そのようなことから、人は住み処や避難場所などで知恵を働かせます。耳納連山や筑紫山地の麓まで居住地を下げているのはそのためではないでしょうか。柳坂の櫨並木の土堤などは、洪水に備えて家畜の避難場所だといわれるし、鎮守の森が石垣で土盛りされているのも、いざという時のための逃げ場所として確保されているのだと考えられます。

C肥沃な土地では争いも

 人類が集団で生活するようになると、そこに領土を拡張しようとする勢力が押し寄せてきます。それが高じて戦争にまで発展していくのです。
筑後川周辺は、古代より戦の繰り返しでした。筑紫国造磐井と大和政権が筑後川を挟んで斬り結んだ戦は、歴史上あまりにも有名です。平安末期には源氏と平家が、南北朝時代は征西将軍側と大宰府の少弐が、戦国時代は大友、島津、龍造寺が、そして関ヶ原の戦いの後、八院地区を舞台に、鍋島と立花が斬り結んでいる。明治維新以後も、秋月の乱、佐賀の乱、西南戦争などで、多くの罪のない庶民をしに追いやりました。
筑後川流域のいたるところが、古戦場跡だといっても過言ではありません。
    伝説紀行「筑後川の戦い」「原鶴戦争」「筑後川の戦い」「八院戦争」参照

関連する伝説紀行

 流域文化を象徴するものが伝説である。これまでに取り上げてきた伝説紀行を紹介します。是非一度読んでください。

@一夜川(日田−神代)
A子供と遊ぶ神さま(安武住吉)
B満腹長者(筑後川土堤)
C水天宮起源(水天宮)
Dエツと坊さん(城島)
E六五郎橋(城島)
F浮島開基伝(城島)
G御幣流し(大川)
H魚屋の嫁さん(下流域)
I三太夫地蔵(大川)

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