Reginleif Saga

第六歌章  さだめ囚われし者  



 レヴィンは、弟の声を聞いたような気がして、顔を上げた。
 四六時中、霧に包まれたスカルディは、日が上っているのかも、沈んでいるのかも分からない。海からも、陸からも隔絶されたその場所から外に出る方法を探しはじめてから、一体どのくらいの時が流れたのかも、知らなかった。
 相変わらず視界の端を黒っぽいものがうごめいてるが、それ以外に、生き物らしい姿は見かけない。
 エノーラは、いつも憂鬱な灰色の襤褸をまとい、くたびれた靴を履いて一人で出歩いていた。
打ち上げられた海草を拾ったり、鴎の落とした獲物を探したり。時に、霧の中に迷い込んだ小さな獣を石で撃ち殺して持ち帰ることもあった。そんなものでも、何とか、毎日を食いつなぐことは出来るのだった。
 無口な少女だった。
 ほとんど会話らしい会話も無く、だが、彼女は黙々とレヴィンの世話をした。
自分の呪われた容姿を誰かに見られたくない、とは思いつつも、やはり、生きた人間と出会えて嬉しかったのだろう。
 だが、彼女はこの岬を出ることを、ひどく恐れているようでもあった。レヴィンがそれについての質問をすると、決まってはぐらかしてしまうのだ。
短い間とはいえ、レヴィンは、この少女が、見かけ以上に目の利くことに気づいていた。もしかすると、この霧を逃れる方法くらい、とっくに知っているのかもしれない。

 ――やはり、何かを隠しているのか。

 問いただすことを、考えないでもなかった。しかし、強いれば少女は、あの諦めたような瞳で自分を見るに決まっている。
 拷問されることも、死さえも恐れないその目は、すべてを放棄したものの目。
その目を見ていると、何も出来なくなってしまうのだ。
 少女からの答えを引き出すことが出来ないまま、レヴィンはひとり、霧の中を手探りで歩き回っていた。
 そんな時だった、ナルヴィの声が聞こえたのは。
 (兄さん、後ろだよ! その霧の中に、何かがいる!)
反射的に、レヴィンは振り返った。…そして、見た。
 霧の中にひときわ濃く、何かが、慌てふためいて逃げていくのを。
 「待て!」
こんなところにナルヴィがいるはずはない、それに霧が生きているはずもない。幻聴と幻覚だ、普通ならそう思う。けれどレヴィンは何故か、そのどちらも信じた。
 現に、霧は、薄くなりもせず、目の前を逃げていくではないか。
 このままでは追いつけない。そう思ったレヴィンは、剣を抜いた。そして、岩の間を縫って走っていく、その奇妙なものめがけて思い切り投げつけた。
 「ギャウウウ!」
とたんに、この世のものとは思えない、ゾッとするような声が、辺り一体に響き渡った。岩の間で霧が一瞬、赤く染まる。
 空気が震えて、レヴィンはあやうく尖った岩に倒れ掛かりそうになった。
 …手ごたえは、あった。
 用心深く、その場所に近づいてみると、そこには剣だけが落ちていた。生き物の姿は、どこにもない。だが、岩は、強い酸でも被ったように溶けている。
 剣のまわりで、岩がシュウシュウと音をたてていた。飛び散った赤いものが溶かしたのだと、レヴィンは気が付いた。
 血ではない。
 生き物の血は、岩を溶かしはしない。
 「あんた…」
振り返ると、目を大きく見開いたエノーラが岩の上に立っていた。顔を隠すことも忘れて、表情はこわばっている。
 「霧の王を傷つけたの? なんてことを」
聞き返すより早く、ただならぬ気配とともに空気がビリビリと振動するのを感じた。霧の流れが変わっている。走り回る黒い影は、何かを恐れて逃げ出そうとしているようだ。
 「隠れるのよ。霧の王が襲ってくるわ。急いで」
エノーラが走り出す。レヴィンは剣を拾い上げて、すぐさま後を追った。
 彼は知った。少女が隠していたもの。
 彼女は「それ」の存在を恐れていたのだ。
 岬の上はそれほど広くないはずだったが、果てが見えるまで随分走った気がした。
後ろから何か、とてつもなくまずいものが追いかけてくるような気配がして、始終落ち着かない。首筋のうしろがぴりぴりとした。
 人でも、獣でもない。おそらく、この世の生き物でもないのだろう。

 「ここよ」
エノーラが足を止めたのは、レヴィンなら思いつきもしなかったような場所だった。
 岩が柱のように突き立った裏に少しだけある、お情け程度の砂浜。岸壁が大きくえぐれて、岩の固まりが積み重なっている。まだ朽ちていない木片が、そこかしこに屍をさらしていた。
 船だ。
 そう大きくは無い、だが、荒波を越えられるほどに丈夫な船の残骸だ。難破したのは、それほど昔ではない。まだ完全に朽ちてはいないからだ。
 レヴィンが折れた船の柱を見上げていると、エノーラは、早く、と促した。
 「中へ。少し湿っぽいけれど、大丈夫。潮が満ちても沈まないわ」
 「どうして知っているんだ?」
 「…たまにここへ、魚や海草をとりに来るから。」
なるほど、半分に折れて海に沈んだ船の胴体は、小魚たちの格好の住処だ。ここに来れば、簡単に魚を捕らえることが出来る。水の中には、朽ちた板を温床にして、緑の草がたゆたっていた。
 ここだけ、霧が薄いような気がした。
 船の中には、潮の香りに混じって、人の居た気配がまだ残っている。レヴィンは、なぜだか、その船に奇妙な懐かしさを感じていた。
 「難破船か?」
 「いいえ。母さんが沈めた船。この船の持ち主は、とても勇敢な人だった。普通はその場で沈んでしまうものを、諦めず、何度も何度も舵をきって、どうにか陸にたどり着こうとしたの。でも…」
エノーラは、顔を伏せた。船が激しくぶつかった崖には、抉れて、こすれた跡が黒々と残されていた。
 「母さんは、月を見ると狂ってしまう。自分自身でかけた呪いがそうさせるのよ。船を見ると、自分を捨てた父さんのことを思い出して、苦しくなってしまうの。…船はひどく崖に叩きつけられて、乗っていた人も死んでしまったわ。」
死んだ者をどうしたのか、レヴィンには、それ以上聞くことが出来なかった。

 その男は、自分を待つ家族のいる小さな町のことを思い出しながら、息絶えた。
 そして、二度と立ち上がることは無かったのだ。

 レヴィンは、半ば沈んだ船体の底から、見覚えのある小さな箱を取り上げた。月日の中で箱の表面は潮に腐食され、小さな貝がはりついている。
 「ここで死んだのか…。」
待っていても、帰ってくるはずもなかった。父は、とうの昔にここで命を落としていたのだから。
 けれど、その事実を、彼は不思議と納得することができた。
 死の知らせは、身近な者に届くという。本当は心のどこかで、父は、もうこの世にはいないのだとずいぶん前から感じていたのかもしれない。
 だからこそ、アルドレットにそのことを言われたとき、塚を暴くのを手伝う気になったのかもしれなかった。
 「しばらくここに隠れているの。ここなら、霧の王も気づかないかもしれないから。」
エノーラは、忙しなく辺りを歩き回りながら外をうかがっている。どうやら彼女には、霧の濃さで分かるらしかった。
 「その、霧の王というのは、何者なんだ?」
 「……。」
 「教えてくれ。あれは何者なんだ?」
少女は、苦虫を噛み潰したように口元をゆがめ、苦しげに、切り出した。
 「太古の時代から生きている存在よ。人間に力を貸す代わりに、その人間の力を奪い取っていく怪物なの。新しい神に追われて、この岬に閉じ込められたのだと思うわ。」
霧は、切ることも刺すことも出来はしない。殺すことは出来ない。
 唯一、古い神々の力が宿るものでだけは、触れることが出来る。だが、そんなものは、邪悪なものとして処分されてしまって、今ではほとんど残っていない。
 その稀有なるものを、侵入者は持っていた。
 「あんたがこの岬に入ってこられたのも、きっとその剣のお陰よ。霧の王は、剣の力を怖がっている。だから、あんたを付け回して、様子をうかがっていたの。あたしは、…。」
罰せられるのが怖くて言えなかったのだとしても、臆病だとは思うまい。この見捨てられた土地で、彼女はたった一人、霧の王の支配の下で生きてきた。
 レヴィンは少女に言った。
 「だったら、俺があいつを殺せば、霧は晴れるのか? この岬から出られるのか?」
 「もしかしたら。でも…」
エノーラは、うつむいた。失敗した時のことを、恐れているのだった。
 「あたしは、母さんに自由になって欲しい。呪いが解けても、きっと元には戻れないけれど。でも…」
 「今のまま、苦しんでいるのを見るのは嫌なんだな?」
うなずく。
 「だったら、力を貸してくれ。どうすればいいのか。オレの知らないことも、あんたならよく知ってるんだろう。オレ一人じゃ、あの化け物は倒せない」
 「……。」
それは、決断を下すまでの、ごくごく僅かな時間。
 ひと呼吸おいて、エノーラは小さく頷いた。
 外を、かさかさと黒っぽいものが走り抜けていく。
 「あれは…」
 「霧の子たちよ、霧の王が生み出すもの。ここも知られたわ。急がなくては」
心を決めたエノーラの動きは素早かった。水に沈んだ、錆びた剣を引き上げると、レヴィンに剣を貸してくれるよう言い、何かを囁いた。
 そして、彼に何かを手渡すと、自分は、外に出て、岩陰身を隠したのだった。


 霧は静かに、だが、確実に、足元からじわじわと迫って来る。
 黒っぽい小さな生き物が、長い不恰好な手足を振り回しながら周りにつき従う。それは霧の王の生み出す従者たちで、生き物とは言っても性別はなく、そう長く生きることもない。単独で増えることはなく、この霧の中でしか生きていけない存在なのだとエノーラが教えてくれた。
 レヴィンは、朽ちかけた船の上で待っていた。身を隠そうともしない。霧はどんな隙間からでも入ってくるものだ逃げ隠れしても、無駄だからだ。
 彼は剣を抜き、渦巻く濃い霧の中心を見据えて、言った。
 「来い、化け物。オレが相手になってやる」
霧は、たじろがなかった。どこにあるのか分からない脳みそで、相手が自分に向かってくることを、予想していたのかもしれない。
 その動きは本能的なものだった。
 息を吸い込むような一瞬の間、次の瞬間、激しい風とともに白い風が一気に彼の顔めがけて叩きつけてくる。
 レヴィンはとっさに横に転がった。ヒュウ、という音がして、耳のあたりが切れる。
鋭い突風が目を狙っていたのだ。
 この霧のすべてが化け物の体、しかし、濃い霧の一点だけが、傷つけることの出来る本体だ。もやもやした敵の体の中で、急所を探するのは、ひどく辛い賭けだった。
 「くそっ…」
焦れば焦るほど、剣は空を切り、辛い一撃ばかりが体を切り裂く。狭い船の甲板を選んだのは、せめて敵のかかってくる方向を見定めやすいように、との考えもあったからだが、逆に、そのせいで逃げ場がない。
 最初から勝ち目の無い戦いである。
 さしもの彼も、頭上を覆う濃い霧のうごめくのを目にした時、気分が萎えそうになった。
 ―――上から見下ろされている。
 こんなとき人は、神にも祈りたい気分になるものだが、祈るべき神は何処にもいないのだ。
 新しき神は、この化け物を岬に閉じこめるだけで、滅ぼすことはしなかった。
 それは慈悲なのか? 違う。
 滅ぼすだけの力が無かったからだ。
 輝く無敵の天使の群れを持っていながら、神は呪われた小さな岬と、そこに流れ着く者たちを見放したもうた。あまりにも大きな全能の神にとって、それは、あまりにもちっぽけで、見落としてしまうほどの存在だった。

 …ならば、何に祈る。
 レヴィンは、荒げた息を整えるため、腕を下ろした。
 剣には、去り行く古き神々の力が宿っているという。その力だけが、化け物に対抗できるのだと。
 刻まれた文字も、神々の名も、彼は知らない。祈る方法も、唱える言葉も判らない。
―――だが、おぼろげに聞いたことがある。かつて、この地方に居た神々は、戦と豊穣の神であった、と。
 貧しい土地に暮らし、生きるために剣を手にしなければならなかった人々は、願ったのだ。戦って運命を切り開くこと、帰るべき大地が豊かにあることを。――
 「古えの戦の神よ」
彼は声に出し、低く呟いた。霧が、びくんと震えた。
 「聞こえるなら応えてくれ。少しでいい、力を貸してくれ。せめて最後まで、オレがここから逃げ出さない勇気を――」
それ以上言わせまいとするように、黒っぽい生き物がレヴィンの足元から飛び掛ってきた。岩の間から湧き出すようだ。
 彼はその生き物をはじめて見た。
 不恰好な、つぶれた胎児のような形をして頭ばかりが大きく、目はぎょろりとして、体中が赤黒い。皮膚にはりついた血管が波うち、長い手足には、五本の指がついている。
 醜い生き物だった。光の神に見捨てられた、闇の世界にしか暮らせぬ哀れな存在。
 「どけ!」
彼は、体にはりついてくるそれらを振り落とそうと剣をふるった。だが、数が多すぎる。
 化け物たちが小さな歯をたてて噛み付いてくるせいで、皮膚が破れ、あちこちから血が滲み出す。身動きの取れない彼めがけて、霧が降りてくる。
 「卑怯ものめ!」
レヴィンは、濃い霧の中心めがけて怒鳴った。
 「一対一の勝負なんて、最初から無理な話だったな。お前たち化け物は正々堂々なんて言葉は知らないんだ。」
剣を高く差し上げる。それが、合図だった。
 赤い炎が、空から落ちてきた。
 「!」
声にならならない叫びを上げて、小人たちが離れていく。
 霧の王はあわてて身を翻そうとするが、叶わなかった。レヴィンの周りを、炎が走って取り囲んでしまったからだ。
 崖の上には、エノーラがいた。見えない場所で火をおこして、船の残骸に投げつける機会をうかがっていたのだ。
 「霧の王は火を恐れるわ。なぜなら、火は太古より聖なるものだから。火に触れると、溶けてしまう。」
彼女はそう言っていた。火こそが、霧の王の、唯一の弱点。船に油を染み込ませて燃やせば、逃げられなくなる。
エノーラは、難破船から流れ着いた油樽のたくわえをレヴィンに渡した。そして、霧の王の本体を近くまでおびき寄せられたら、自分を呼ぶようにと言っていたのだ。
 炎の中心で、霧は、体を覆っていたすべての白いヴェールを失って、裸同然だった。
油が焦がす木のムッとするような異臭、黒い煙の中で、それは、惨めな、痩せこけた男の姿に見えた。あばら骨の浮かび上がった体が、よろよろと右往左往する。
 人ではなく、獣でもない。遥かな昔からこの大地に住まい、取り残された存在。この者を呼び覚まし、繋ぎとめていたのは人自身の呪いだった、だが、それも、今終わる。
 今まで、この霧が奪ってきた命と、人々の幸せのことを思った。
 「消えろ」
懺悔の猶予も、命乞いの機会も必要ない。―――レヴィンは、剣を振りかざして、男の、しなびた毛に覆われた頭の頂点めがけて力いっぱい振り下ろした。

 ぐにゃん、とした感触があって、霧は二つに避けた。崖を割るかと思うほどの、すさまじい断末魔の悲鳴。真っ赤な酸がほとばしって、レヴィンの上着とブーツを溶かした。
 爆発的な風がレヴィンを船底へと叩きつける。そして、その勢いで、船の残骸は沖へ向かってゆっくりと動き始めていた。
 エノーラは慌てた。
 「たいへん、どうしよう」
レヴィンは、倒れたまま、ぴくりとも動かない。気を失っているようだった。
だが船は、沈まない。
 甲板の一部にぱちぱちと燃える炎を残したまま、うまく海に浮かんで、岬を離れていく。
 下は、ものすごい騒ぎだった。薄れていく霧の、少しでも濃いところにすがりつこうと、必死になって走り回る霧の子らで一杯だったからだ。
 そう、霧は目に見えて薄まり始めていた。
 霧の王が倒されたことで、岬にかけられていた呪いも消えて、そこは、異界からもとの世界に戻りつつある。清浄な外の空気を吸い込んだ黒っぽい生き物は、一声、甲高く鳴くと、まるで蝋のように溶けて消えてしまった。
 エノーラは恐怖に囚われたまま、ただ呆然と、その姿を見ていた。
 自分は消えずに済むのだろうか。それとも、あの生き物たちと同じように消えてしまうのだろうか。
 その時、誰かが小さな声で自分を呼んだような気がした。
 「…母さん?」
はっとして、彼女は辺りを見回した。
 「母さん、どこ? 母さん」
霧の王が死んだなら、呪いも解けるはずだ、と。
 「母さん…?」
だが、母の姿は見つからなかった。
崖を滑り降り、波打ち際の、いつも母がいた辺りに行ってみる。
そこにうずくまっていたのは、小さな、白い蛇が一匹だけだった。
 「ああ、エノーラ」
蛇は苦しそうに首をもたげ、見覚えのある黒い瞳で彼女を見上げた。
 「ごめんなさいね。もうすぐ私は、お前と話をすることも出来なくなってしまうでしょう」
 「どうして? 人間に戻れるんじゃなかったの」
 「そう簡単なことではないのよ。私は、あの化け物に魂を売ってしまった。だからもうだめ。人間には戻れないの、このまま完全な蛇になってしまう。」
そう言って、蛇はひどく苦しそうに息をついだ。エノーラはそっと両手で蛇を抱え上げ、泣きながら胸に抱いた。
 銀色に輝く蛇の鱗は冷たく、人の手の温かさも、やわらかい肌触りも、微塵も感じられなかった。暖かな大粒の雫が、その鱗の上に落ちて、流れた。
 「私のために泣いてくれるの、エノーラ。私はおなかの中にいたお前にまで不幸を背負わせた、そのために、こんな醜い顔で生まれてしまったのに」
 「いいの母さん。あたしは、このままでも辛くない。でも母さんが…母さんが」
 「お前はやさしい子ね。」
蛇は悲しそうに、泣くことの出来ない目を閉じた。
 「あの人を探しにゆきなさい」
 「誰?」
 「霧の王を倒してくれた若者を探しなさい。私の呪いは解けても、あの人の呪いはまだ続いているのでしょう。」
エノーラはうなずいた。そう、自分たちの苦しみを終わらせてくれた人に、恩返しをしなければならない。それ以外に、どんな理由があるだろうか?
 「母さん、少しだけ我慢しててね。」
彼女は、もうもの言わぬ蛇を懐に抱き、崖を上り始めた。

 白い霧の向こうに、彼女が見たこともないほど澄んだ、青い空が広がっている。
 風は湿っぽくなく、暖かく、からりとしている。
 黒い小人たちの姿は、いつのまにか、どこにも見えなくなっていた。



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