<第二章>

の国


 腹ごしらえのあと、満腹になったジャスパーは緩慢な動作で船を対岸の岸辺に引っ張り始めた。未知の海に来ているというのに、ずいぶんのんびりしたものだ。ここには、ジャスパーの敵になりそうなものはいない。むしろ、競合する相手がいないお陰で魚は取り放題、人目を気にする必要もないから存分に羽を伸ばせるのだろう。
 「どこから上陸すればいいのかな…」
岸辺に沿って進む船の上から、海岸線を眺める。巨人の国と違い、こちら側には何があるのか見当もつかない。地形も複雑で、岩場があったり、長い浜辺から成る海岸線があったり。ただ、全般的に緑が少なく、海から内陸の丘陵まで岩だらけの平原が続いている場所もある。
 「ルー君」
上空から辺りを確認しに行っていたミズハが戻ってくる。
 「町みたいなとこがあったよ、この先。でももう、誰も住んでないみたい」
言いながら、キャビンの屋根に舞い降りる。「あと、ずっと奥のほうに変な形の山… みたいなのが見えたの。岩みたいっていうか、尖ってる感じの…」
 「ふうん? なんだろうな、人工的なものなのかも」
船の向かう先に、確かに町らしきものが見え始めた。港だった、のだろう。海岸線は石で護岸工事が成され、透明な海水の中に船の残骸と思しきものが沈んで、海の生き物たちの住処と化している。建物は天井が落ち、港には長年のうちに砂が溜まって、喫水の浅いハーヴィ号でも半ばまで進んだところで止まってしまった。
 「ジャスパー、このへんで待っててくれ。もしかしたら、何日か陸を探検してくるかも」
しょうがないな、というような顔をしたものの、ジャスパーはジャスパーで、朽ちた船のあたりにいる魚たちに興味津々だ。
 「ジャスパーも海を探検してみるって」
 「そうか。ま、退屈しないならいいことだよ。おれたちのほうは――」
海水の浅いところを渡り、崩れた護岸の岩の上に飛び上がる。驚いた船虫のような生き物たちが、我先にと岩の隙間に逃げ込んでいく。ミズハは、翼を広げてふわりとルークの少し前に降り立った。
 「人を探すんだよね」
 「そうだな。もし、まだ住んでれば…だけど。」
だが、この港町は放棄されて久しいようで、見回す限り、最近使われたような建物は見当たらない。一歩通りの奥に踏み込むと、奇妙な沈黙が支配していた。足元の石畳は砂に埋もれ、ところどころ石の間から草が生えている。狭い通りはところどころが崩れた建物に塞がれ、かつて人が住んでいた痕跡さえも見当たらない。
 砂に埋もれた大通りに出た。
 そこもやはり、人の気配はおろか、生き物の気配というものが完全に消え失せている。かつては、フォルティーザと同じように栄えていたのだろう。通り沿いには店だったらしき建物が立ち並んでいる。落ちている朽ちかけた看板には、読めない文字で店の名前らしきものが書かれていた。
 「ここに住んでた人たちは、どこにいってしまったんだろうな…」
火事や地震で大きな被害を受けたふうには見えない。建物の形はほぼ完全だし、武器や骨が落ちているわけでもないから戦争があったのでもなさそうだ。人々がここを放棄した原因は、一体何だったのだろう。
 大通りを歩いているうちに、町を出てしまった。町並みが途切れても、道は内陸のほうまで続いている。
 「さっきミズハが見たっていう変な形の山、って、こっち?」
 「うん、そう。道があるってことは、この先にも町があるんだよね」
 「たぶんね。」
他にしるべはない。行ってみるしかなさそうだ。
 草に埋もれかけた石畳の道に沿って、二人は歩き始めた。見渡す限り、岩だらけの草原。建物はおろか、木も生えていない。
 歩くにつれ、ふたりは周囲の景色が変わっていくことに気がついた。道を覆う砂は、ただの砂ではない、雨に固まり、岩のようになったきめ細かな砂は、あたりを満遍なく覆い隠し、木々も、建物も、牧草地も、その下に埋もれてしまっている。
 「火山灰だ」
ルークは、ようやく何が起きたのかを確信した。「大きな火山の噴火があったんだ。――」
見渡す限り、ここから山は見えない。見えないほど遠いのに灰が届くとしたら、よほど大規模な、大量の灰を吹き上げるような噴火が起きたに違いない。
 「でも…」
次第に灰に覆われて陰鬱なグレーに沈んでゆく景色を見回し、ミズハが呟く。
 「どうして誰もいないの? ここは、灰が降ってきただけなんだよね」
 「たぶん…」
たとえ直接的な被害はなくとも、その噴火を目にした人々は、凄まじさに恐れおののいて逃げ出したのかもしれない。畑も牧草地も失って、ここで暮らしていくことに絶望して、どこか別の場所へ。そうであって欲しかった。
 緑もほとんどなく、動くものの少ない灰色の世界に生命の気配はほとんどなく、進むだけでも気が重い。
 と、ミズハが足を止めた。
 「誰かいる」
 「え?」
二人の足音が消えると、辺りは無音の世界。ただ風の音だけが耳元にささやきかける。
 「あっち」
言うなり、ミズハは道を外れて小走りに歩き出した。彼女のこういう急な動きには慣れているつもりのルークでも、反応するのはいつも一瞬後だ。慌てて荷物を担ぎ直して後を追う。少女が向かっているのは、ほんの少し小高くなった丘のような場所だ。その向こうに気配を感じ取ったらしい。辿ってきた道からは随分離れている。
 丘を越えたあたりまで来て、ミズハはようやく足を止めた。丘に遮られた風の吹き溜まりのような場所。そこにあったのは漆黒の、きらきらと輝く屹立した岩塊だった。
 「…これ?」
ルークが怪訝そうに聞き返したのと同時に、岩の影から光の粒が浮かび上がってきた。色とりどりにきらめくそれは、どこかで見たような――、いや、思い出した。カーリーに見せられた、あの”白い森”の写真だ。そして、ルークの遠い記憶の中にもある。
 「これは…何なんだ…?」
 「まさか、精霊の灯を知らないとお言いではないでしょうなー」
おどけたような、奇妙に余韻を残す幼い声。いつの間にか岩の上、ルークたちの顔より少し高い場所に、半透明な小さな赤ん坊が、青白い服の裾を揺らめかせながら寝そべっていた。
 「こんにちは海の魔女。お久しぶりだね巨人の王。…いや、今は人の殻をかぶった別のもの?」
 「よく知っているじゃないか。でも、こっちは君のことは知らない」
 「いや知っているはずさ。精霊の灯は、精霊の家に灯るもの。」
岩に寝そべったまま、丸々とした赤ん坊の姿をしたそれはニヤニヤと笑っている。
 「精霊? だって、精霊たちは皆、消えてしまったと――」
 「そうだよ、酷いもんさ。ぼくらは意外とデリケートな生き物だっていうのに、生きていける場所が極端に減ってしまったんだ。住処を失った仲間たちは皆、力尽きて消えてしまったよ。」
 「どうして、あんたは生きてるんだ」
 「幸いにして、うちの宿はこうして無事だからさ。節約のためにこの姿。そうしていつもは、この中で寝てる」
と、体の下の岩を愛おしそうに撫でる。「黒曜石の家はちょいと冷たくて無骨だが、丈夫なのが良い所でね。お陰で何とかこうして生きてられるってわけ」
 「あんたも炎の魔神の配下?」
 「いんや、ぼくは大地の精霊さ。じゃなきゃ岩に住んでいないよ。炎の魔神の炎の精霊たちは、家のかまどや火口の中、そうじゃなきゃもっと温かい砂漠なんかに住むもんだ」
ルークは、何だか混乱してきた。精霊という存在は伝説の中でしか知らない。そんなに沢山の種類がいて、様々な特性があったとは、想像もしていなかった。ロカッティオの住人なら、もっと詳しい話を聞けたのかもしれないが――。
 「聞きたいのは人間のことだ。どうしてこの辺りには人がいない? 火山の噴火があったから? それは空から月が落ちてきたことと、何か関係があるのか」
 「答えてあげてもいいけど、それには条件があるよ」
 「言ってみろ」
 「ここのところ、ちょっとばかり家が傾いていてね。倒れそうなんだ。直してくれないかね」
 「……。」
漆黒の屹立した岩は、確かに、僅かに傾いている。
 ルークは無言でゴーレムを一体生み出し、岩の角度を修正するよう命じた。ゴーレムが力いっぱい押し込むと、傾いて倒れ掛かっていた岩は、地面から真っ直ぐに安定した角度になった。
 「おお、さすがさすが。助かったよ、ありがとう」
半透明な体の周囲で、光の粒が嬉しそうに踊る。だった体がうっすらとした光に包まれている。
 「このへんには、他にも精霊がいるの?」
ミズハは興味津々だ。
 「いんや、さっきも言ったように、みんな消えてしまったね。それに、この国は火の国、火の精霊が大勢住んでた国さ。ぼくと同じ大地の精霊なら、むかしは巨人の国に大勢いた。巨人だってもともとは”大地の子”だしね。」
と、お喋りな精霊は、聞きもしないことまで教えてくれる。
 「その話にも興味はあるけど、さっき聞いたこと――」
 「ああ、そうそう。人間のことだっけな? 大半は死んだと思うよ。都が月に潰されちゃったらしいからね。そう、伝令の風の精霊が、消える間際に教えてくれた。生き残った連中は、たぶん海を越えたか…、大陸のどこか、もう少し暮らしやすいあたりまで逃げたんじゃないかな。巨人の国へ行ったんじゃなきゃあね。」
 「…巨人の国には、もう人間はいない」
 「そうかい。なら、それ以外の何処かへ行ったんだよ。月が落ちてきたときは、そりゃあえらい騒ぎでね」
黒光りするガラス質の岩の上に寝そべりながら、精霊は相変わらずのおどけた調子で深刻な話を続ける。
 「でも、そんな大きなものが落ちてきたわりに、この辺りは被害を受けたみたいに見えない。月なんてものが落ちたら、大陸ごと吹っ飛ぶんじゃないのか」
 「そのまま落ちりゃあね。そこはそれ、ここは炎の国。かつて炎の魔神が守ってた土地だからね」
その口調からして、大地の精霊にとって、炎の魔神は他人のようなものらしかった。
 「何度か地響きがあった、大きな力が膨れ上がって――消えた。おれが知ってるのは、それだけさ。何しろ見てないし、その頃にはもう、仲間の精霊たちはみんな消えてしまってた。火山が噴火したのは、そのあとさ。空は真っ暗になっちまうし、空気は淀むし、灰はひっきりなしに降ってくるし。そんな状態が何ヶ月も続いて、さすがの人間たちもヤバいと思ったんだろう。思うに、魔神が死んで制御の効かなくなった火山が次々破裂したんだと思うね。火山の中にあった精霊のすみかもそん時にぜんぶ吹っ飛んじまって、生き残ってた火の精霊たちはみんな居なくなっちまったね。」
 「巨人の国のハハヤマが枯れたのも、関係していると思うか」 
 「さあね。だけど、もしその山が火山だったんなら、根っこの部分じゃ繋がってるのかもな。一斉に爆発したあと、火山はみんな死んだみたいに静まり返ってる。おれは大地の精霊だから、地面のことなら遠くまでわかるよ。大地の下を流れる熱い流れが向きを変えたんだ。今は海のほうに向かって流れてる」
 「海底火山、か…。」
ルークは、少しの間考え込んでいた。説明は納得できる。今までに見てきた光景とも一致する。しかし、
 「もう一つだけ教えてくれ」
 「んん? いいけど…」
 「精霊たちが消えてしまったのは、何故なんだ? ――火山の噴火で精霊たちが沢山消えてしまったのは分かったけど、お前の話を聞いていると、それは火山の噴火が起きる前から始まってるみたいに聞こえる」
大地の精霊は、にやりと笑って体を起こした。
 「それを知ってる者は誰もいない。あんたたちが知らないのならね」
 「…どういう意味だ」
 「言ったまでのことさ。誰も、何が起きてるのか分からなかった。炎の魔王だって同じさ。”世界が変わろうとしてる”、ただそれだけ漠然と感じてた。月が落ちてきたのは人間たちのいう一年の百五十倍くらいの昔さ。でもそのずっと前から、異変は続いていたんだよ。ただ思うに、多分それらはぜんぶ繋がってる。――精霊もあんたたちも、その力の大きさや質に従って神だの魔神だの王だの、神域だのパワー・スポットだのと呼ばれるだけで、本質は同じさ。精霊が消えるのと、神が消えるのは同じ事さ。」
 「……。」
 「追加料金は頂かないよ。それに、おれもそろそろ眠る時間だ。あんまりはしゃいでると体が消えちまう。じゃあな、おやすみ」
言うが早いか、赤ん坊の姿は薄れて一瞬で消えてしまった。ふわふわと浮遊していた光が一つに集まって、岩の中に吸い込まれてゆく。
 「いなくなっちゃった」
呟いて、ミズハは岩の周囲を一周する。「眠っちゃったみたい」
 「変わったやつだったけど、…嘘はついていないみたいだったな」
 「精霊さんは嘘はつかないよ。嘘でもほんとでもないことはよく言う、ってお母さんが言ってたけど。」
 「嘘じゃないなら、いいさ。知らないって言ったことはほんとに知らないんだ。」
そう、神魔戦争の始まりに関わる出来事のことは、本当に知らない。ただ、やはり全ての異変は、繋がった一つの出来事なのだ。
 「精霊が消えるのと、神が消えるのは同じ事、――か」
半ばひとりごとのように呟いて、ルークは、周囲に広がる灰に覆われた大地に目を向けた。神々は死に、それに連動して精霊たちもまた消えた。…
 「ねえ、ルー君」
 「うん?」
 「さっきの精霊さん、”都”って言ってたよね」
 「都…」
 「もう! 聞いてなかったの? 都が月に潰されちゃった、って」
 「あ…」
そうだ。確かにそう言った。
 「都って、どこだろう」
 「わかんないけど、道があるってことは辿っていけば着くんじゃないかな。都って、ヴィレノーザみたいに人がいっぱいいるところだよね?」
 「普通ならね。この状況だと、そこには誰もいない可能性のほうが高そうだけど…」
だが、行ってみる価値はあるかもしれない。もし、四散した人々が戻ってきているとしたら、可能性が一番高そうなのはかつて人が多く住んでいた場所のはずだ。
 「月に潰された、っていうのが気になるけどな…。」
いつしか空には薄雲がかかり始めていた。着いたのは朝だが、日は傾き始めている。早めに今夜の宿を探したほうがよさそうだ。


 村の跡らしき場所を見つけ、たどり着いたのがちょうど、雨の降りだす直前だった。
 どうにか屋根のある小屋に駆け込んだ直後、最初の雨の一粒が、ぽつりと足元に落ち、それを皮切りに、空は一斉に泣き始めた。辺りはあっという間に夜のような暗さに変わる。ほんの一瞬のことだ。滝のような雨が屋根の隙間や崩れた壁の間に流れ落ちる。屋根があるといっても、その屋根は建物の半分までしか覆っておらず、残りは腐り落ちて床に散らばっている。だが取り敢えずは、ここにいればずぶ濡れにはならずに住む。
 ほっとして、ルークは髪から落ちてくる雨水を拭った。
 「とりあえず、雨が止むまでここで待つしか無いな。」
遠くで雷の音がして、ミズハはびくっとなった。よほど雷が苦手らしい。
 「心配ないよ、音は遠いし。ほら、こっち」
湿った干し草をどけて、床にマットを敷く。持ってきた荷物の中からランプを取り出して火をつけると、辺りは薄ぼんやりとした光りに包まれ、積み上げられたがらくたの作る大きな影が踊った。
 ここも港と同じように、使われなくなって久しい。人はみな、取るものも取り敢えず逃げ出してしまったのだろう。木製の家具や、カーテンか絨毯の残骸らしい繊維の塊、空になったビンなどが、土埃に埋もれた石造りのそこかしこに散らばっている。
 雷の音は、近づいてくる気配がない。ほっとしたのか、最初は表情を強ばらせてルークの側に蹲っていたミズハも、そろそろと動き出す。
 「ここに住んでた人たち、今も生きてるのかな」
 「もういないと思う。月が落ちた、っていうのが百五十年前の話…。人間は、せいぜい百年しか生きられないから」
生きているとすれば、かつての惨劇を語り継ぐ、その子孫たちだろう。ルークはもう一つのランプを手に、まだ形を留めている家の中を見て回った。辛うじて残されている家具からして、ここは家族が暮らす小さな農家だったようだ。錆びてほとんど原型のない鍬、大鍋、割れた陶器。灰をかぶったままの、もう動かない大時計…。
 彼は、うつぶせに床に倒れているサイドテーブルに目を留めた。まだ形が残っている。一夜の仮住まいに使えるかもしれない。
 引き起こすと、積もっていた土が舞い散った。半分開いたままの引き出しの中に何かが見えたが、湿気で錆びた引き出しの取っ手は、触れただけでぼろりと落ちてしまう。仕方なく、陸を探検する時はいつも持ち歩いているペンナイフを隙間に差し込んで無理やりこじ開けられた。
 なかを覗きこんだルークは、思わず息を呑む。
 「何かあったの?」
ミズハもやってきた。入っていたのは、何冊かの本と写真、それに折りたたんだ紙。本は表紙が完全に朽ちていて、ページは引き出しのなかでばらばらに散らばっている。写真も色褪せ、うっすらと座っている誰かの姿が見えるくらい。だが四つに折りたたまれた紙は、広げてみると、それなりに読み取れそうだった。
 ルークはそれを、火の側に持ち帰って慎重に広げてみた。穴だらけで文字も滲んでいるが、海岸線と街道くらいは辛うじて読み取れる。
 「地図だ…」
思いがけない収穫物だ。
 「ミズハ、おれの荷物から手帳とペン、出して。これ使えるかもしれない」
 「うん」
脆すぎて持ち歩くには向かない。書き写せるところまで書き写そうと思ったのだ。ただ、この地図の内容が、どこまで今も有効かは分からない。
 「大きな街道が幾つか走ってるな。主要な港は、四…五か。それぞれから内陸の中央部に向かって街道が伸びてる」
掠れた線の上に指を走らせる。計画的に建設されたと思しき道。その中心にあるのが、おそらく、国の中心。首都、だろう。地図上には、そこに城壁に囲まれた町のマークが描かれている。
 「さっき着いた港は… これかな。だとすると、この道がこの街道…」
 「真ん中の町まで、そんなに遠くないね」
ミズハもルークの肩越しに地図を覗きこんでいる。「ここが都、かな。」
 「たぶんね。よかった、この道を辿っていけばすぐみたいだな。それに、火山…火山はっと」
驚いたことに、火山の数は十近くもあった。都の背後に連なる三つ子の火山。それに港とは反対側、平原の真ん中、海につきだした半島の上にも、大きな山の絵と火山を示すらしき湯気のようなマークがつけられている。
 「火山だらけだねえ」
 「さすが”火の国”ってことか。」
これだけある火山が一斉に噴火したら、人は逃げようがない。いや、どこに逃げても火山に阻まれてしまう。ルークは心配になってきた。この国にいたはずの人々は、本当に逃げ切れたのだろうか。


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